ふと視線を感じた気がして、俺は人の流れから道の脇へと視線を移した。
そして、思わず息を飲み込む。
つぶらな瞳がじっと俺を見つめていた。それは俺から目をそらすことなく、こちらをじっと見つめている。その瞳に吸い込まれるように、俺もそれをじっと見つめた。
騒がしいはずの喧騒が遠い。
ごくりと自分の喉が鳴る音だけが、やたらと大きく響いた気がした。
これは運命の出会いだ。俺は確信する。
一目惚れだった。
彼(もしかすると彼女かもしれないが便宜上そう呼ぶ)を見た瞬間、俺の体中に電撃が走ったのだ。
もし、神の采配だとか、運命だとかそんなものが存在するのならば、俺はそういった常識を超えた何かに導かれて、彼に出会ったに違いない。そう思えるほどその出会いは衝撃的だった。
周りの他の何よりも、彼は輝いていた。そして、次々と道行く人の手によって去っていく他とは違い、彼は俺を眺めたままその場を動こうとはしなかった。
彼もまた、俺と共に来ることを望んでいるに違いないのだ。俺は理由もなく確信する。
彼は俺の手元へ来なければならない。
しかし、俺と彼の間にはどうしても埋めようがない三メートル程度の距離がある。
許されるならば、俺は一足飛びにその距離を超えて彼の元に駆け寄りたい。しかし、その距離こそが何よりも長い三メートルなのだ。埋めようにも埋めることができない三メートル。あぁ、その僅かばかりの距離がこの上なく憎らしい。
どうすればいいのか。俺が真剣に悩み始めた時、不意に背後から聞いたことのある声が聞こえた。
「……そんなところで何をやってる?」
「げ」
振り向くと共に、俺は思わず女としてはあまりに好ましくない声を上げてしまう。振り向いた先にいたのが、うちはサスケであったからだ。
現在、俺のうちはサスケに対する好感度は低い。とにかく低い。ものすごく低い。
以前から別にサスケと仲が良かった訳ではなかったが、ここまで毛嫌いすることもなかった。サスケの好感度が落ちるところまで落ちたのは、つい最近の出来事が原因である。
始まりはいのの、ふとした一言だった。
「私ね、サスケ君が好きなの」
ぽきり。
いのの突然の告白に、俺は咥えていたチョコスティックを噛み砕いた。
はたして、どうして突然いのの告白を聞く羽目になったのか。その経緯が俺には全く分からない。
俺の記憶が確かならば、その時、俺といのは俺の部屋でだらだらと駄弁っていただけだったはずだ。
話題も他愛のないことばかりで、例えば最近のアカデミーの授業でまた四馬鹿(ナルト、キバ、シカマル、チョウジ)がイルカ先生を怒らせていたとか、このままではイルカ先生の毛髪か胃袋か血管かが重大な問題を抱えるのではないかとか、とにかくくだらないことばかりだった。
いの以外に誰もいないことをいいことに、だらしなく寝そべりながらあまり人には見せられないような格好で俺はいのの話に相槌を打っていた。
確かその時、俺は菓子を片手に雑誌をペラペラめくっていたのだったと思う。
「パンツが見えるわよ」
そんな俺に、「はしたない」といのはお小言を食らわせてくる。
さすがに俺もそろそろお年頃になりつつあるので、近頃では、ミニスカートで寝そべりながら足をパタパタするなんていのの前でくらいしかやらない。そのような言い訳を述べれば、いのは盛大にため息を吐いた。
きっと俺のことを女の子らしくないと呆れているんだろう。そう確信するのは、最近では俺に対するいのの苦言はよくある出来事だったからである。
近頃、いのはぐんと女の子らしくなったと思う。
女の子なんだから、とは一昔前(と言ってもたかだか二、三年前の話だが)のいのが最も嫌う言葉の一つだった筈だ。けれど、最近では容赦なくその言葉を俺に向けてくるようになった。
大人になりつつあるってことなんだろうなぁと、俺は友人の成長を感じながらしみじみと思う。
同年代の男どもは相変わらず馬鹿やっているのに、何だかいのだけが一気にに大人に向かっている気がする。その要因が、誰にあるかなどということは、勿論俺には知りようもない話だ。
元々、ファッションだのスイーツだのが大好きな娘であったが、近頃のいのは何となく仕草の一つとっても女らしいと感じることがあって、時々ドキリとさせられることもある。
俺は、今の馬鹿みたいに呑気でくだらない子ども時代が結構気に入っていたりするので、そんな友人の成長に一抹の寂しさを覚えてしまうこともしばしばだ。
前を向くのは怖くはないが、今が幸せである分、足元が過ぎ去っていくのは何となく悲しい。本来なら、成長は喜ぶべき過程なんだろうけれど。
今思えば、いのの急な変化は、女は恋をすれば変わるというヤツだったんだろう。
年頃の女の子が急に女の子らしくなる。そうなる切欠を与える出来事とは何か。考えるまでもなく、そんなものは古来から決まっているのだ。
いのは多分女の子らしくなり始めた辺りから、既に淡い初恋とやらを経験していたに違いない。
とにかく、俺の預かり知らぬところで、いつの間にかいのがサスケに惚れていたという衝撃の告白を聞いて、とりあえず上半身を起こすことにする。それから、俺は何故かいのの正面に居ずまいを正して座った。
何とも不可思議な光景である。菓子や雑誌が広がる自室で友人を前に正座。シュールな光景であるとしか言い様がない。しかし、それに違和感を覚えている余裕など当の俺には全くなかったのだ。
俺はいのの顔をまじまじと見つめながら、とりあえずチョコスティックに手を伸ばした。
俺自身、お姫様に淡い恋心を抱いたという経験はある。しかし、そこから恋バナだとか恋愛相談だとかに発展したということはなかった。
彼女には既に王子様が存在したし、俺は俺で切ないと思いながらも片想いで満足してきた節がある。そんなどう見ても恋愛相談とは無縁の男に恋バナを振ってきた相手など誰もいなかった。
俺自身のお姫様への片恋も酒宴の席で酒の肴に上がることはあれど、本気で誰かに相談したりしたことなんてない。
はっきり言おう。俺は今まで、今世でも前世でも恋バナとはほぼ無縁に生きていた。こういう時、どうすればいいのかなんて全く分からなかったのだ。
言い換えるならば、突然もたらされた友人の恋愛事情に、俺の脳内は嵐のように混乱していたのである。
「で?」
俺はいのに続きを促しながら、チョコスティックをポリポリとかじる。
酒の席などでもそうだが、こういうどうすればいいのか分からない時、別に腹が減ったでもないのに飲み物や食べ物に手が伸びてしまうのは何故なのだろうか。いのに問いながら、俺は変に頭の中で冷静な部分で、現実逃避でもするようにそんなことを考えていた。
年齢を考えれば、いのが誰かに恋愛感情を抱いたとしても普通のことであると思う。女は男より早熟だと言うし、恋だの愛だのが特に好きだ。恋に恋するお年頃、なんて言葉があるくらいだから、好きな人の一人や二人いたっておかしくはないのだろう。
そういえば、俺もアカデミーに通っていた頃に俺のお姫様に出会ったんだったっけと、何だか懐かしい気持ちで当時のことを思い出した。別段、お姫様と仲良くなれるような甘酸っぱい青春イベントはただの一つも存在しなかったので、俺の回想は一瞬で終了したが。思い出したのは俺がお姫様をひっそりと見つめていたという、何とも哀れな思い出だけであったので致し方あるまい。
俺に先を促されたいのは、頬をバラ色に染めながら如何にうちはサスケが素晴らしいかをとうとうと語った。
アカデミーでは常に好成績。他の男子と違って馬鹿みたいなことで騒いだりしない。クールでとにかく格好良い。どこからそんなに言葉が出てくるんだろうという勢いでいのはまくし立てる。
俺はそんないのの話を、チョコスティックをかじりながら黙々と聞いていた。いのの語りはいよいよ熱さを増し、口を挟むことができなかったのである。
しばらく話を聞き続けた後、俺はチョコスティックの袋に手を伸ばして中身が空になっていることに気づいた。いつの間に、俺はこれだけの量のチョコスティックを食べてしまったのだろうか。
仕方なく、俺は手持ち無沙汰に右手の指を、時折宙に彷徨わせながらいのの話を聞き続けることとなった。
さて、いのが帰った後、幾分か冷静になった頭で俺は先ほどのいのの様子を思い浮かべていた。
いのは少しばかりミーハーなところがある少女だ。恋に恋するお年頃よろしく、初恋に酔っているだけなのではないだろうかと俺は冷静に判断を下す。
一方で、もしいのが真剣だったらどうする? と自問した。
どうするもこうするも、そもそもいののことなのだから、俺に口出しする権利など微塵もある筈がない。
俺の脳みそが平常のままであれば、その事実に気がつけたのかもしれない。けれど、冷静になったつもりで、結局は俺は冷静になりきれていなかったのだろう。その事実に俺はその時気づくことはなかったのだから。
しかし、まぁ、冷静になれないのも仕方ない。こういう時は、割と男の方がパニックに陥りやすいものなのだ。
娘が「紹介したい人がいるの」と言って、突然男を連れて実家に帰ってきたときの状況を想像すれば分かりやすいだろう。そういう時、母親はにこやかに対応できるものだが、父親はそうはいかない。例え、表面で冷静を装っていても、その内面は、誕生日の日に笹に願い事を書きながら、仮装しつつお菓子を要求し、赤い服を着たじいさんが煙突から侵入した後、リンボーダンスを踊り狂うくらいにハチャメチャなのである。
そう、その時の俺の心境を一言で表すのならば、『可愛い我が子を嫁に取られる父親』の心境だったのだ。
それにしても、うちはサスケか。
俺は脳内でサスケの姿を思い描いた。
ぽわぽわと思い浮かんだ俺の脳内サスケは、なんだよと眉間に皺を寄せながら不機嫌そうに鼻を鳴らす。
うん、あかん。俺は心の中で独りごちる。
恋愛はするものではなく落ちるものと世では言うが、それにしたってあれは恋愛の対象としては最悪なのではないだろうか。そんなことを考えずにはいられない。
顔は確かに良い。成績だって優秀だ。無愛想なのも異性から見ればクールでカッコイイと映るのかもしれない。
しかし、あれだけはダメだろうと思う。
あの手のタイプと付き合えるのは、趣味がボランティアとか募金活動だとか、前世が観音菩薩だとか、とにかく海のように心が広い人物だけだろう。
忍という職業柄、変わり者は非常に多い。おかげで俺はいろんなタイプの人間を見てきたと言える。その経験から言えば、あれは一番自分を不幸にするタイプの人間だ。
彼の瞳の奥にはいつも暗い炎が点っている。そういう人間を、俺は何度か見たことがあった。
そういう奴らは勝手に思いつめて、思い込んで、そして自滅するタイプのやつばかりなのだ。そんな男にいのを任せるなんかできる筈がない。
ここにもし第三者がいれば、何の権限あってそんなことをお前が言えるんだと言ったのかもしれない。しかし、現実ではここにはそんなツッコミをいれてくれる第三者など誰もいなかったのである。
結果、俺の暴走は思いもよらない方角へ向かうことになる。
翌日。
俺は朝一番。始業の開始の前に、うちはサスケの前に仁王立ちで立ちふさがった。
並々ならぬ俺の様子に、周囲の子どもたちは何だなんだと俺たちを注目する。だが、そんなギャラリーの視線など俺にはどうでも良かった。
うちはサスケを打ち倒す。
その時の俺の頭の中には、それしかなかった。
いや、本当は打ち倒す必要は全くなかったのだが、何故か俺の頭は一足飛びにその結論を叩き出したのである。
実際、俺がやりたかったのは、いののサスケへの好意を何とか下げることだった。
好意を下げる。それって、つまりいのの中の何でもできてクールで格好良いサスケ像を壊すってことだろ?
そうするには、俺がサスケを倒せばいいんじゃないかと俺は思い込んでいた訳だ。
あまりに短絡的であるが、俺は真剣だった。気分は崖っぷちである。
「うちはサスケ!」
サスケをビシリと指差しながら、彼の名を呼ぶ。
当時の俺は緊張していたのだと思う。だから、俺はあんな取り返しの付かない失態を犯してしまったに違いないのだ。
「いのを賭けて、俺と勝負しろ!」
振り返った先のサスケの顔を見た瞬間、俺はあの日の黒歴史を思い出して恥ずかしさのあまり頭が一瞬真っ白になった。
あの直後、教室内の全員が唖然とする中、いのに思いっきり脳天を叩かれて俺は教室を退場することとなった。
本当に何で俺はあんなことを言ってしまったのだろう。
あの出来事は、俺の中で人生で最も後悔するであろうワースト3に見事ランクインを果たした。
あれ以来、俺の発言のせいで『え? 何、あの二人ってそういう関係? 女の子同士なのに?』と俺たちは大変不名誉な噂を囁かれている。
おかげで、あの出来事から既に一週間経とうというのに、俺はいのから口さえ聞いてもらえなかった。どうやら、本気でいのを怒らせてしまったらしい。いのから突き刺さる無言の視線に、このところ俺のメンタルはガリガリとライフをすり減らす一方である。
本当なら、今日の夏祭りだっていのと一緒に出かける予定だったのだ。なのに、仲直りする機会すら与えてもらえず、結局俺は一人で屋台巡りをする羽目になってしまった。
俺だって分かっている。俺のやったことは自業自得だ。
だが、それでもその一件以来、サスケに対する好感度は、サスケ自身は何もしていないにも関わらず俺の中では最安値を記録している。
そんなサスケに思いもがけないところで出会ったのだ。思わず女の子らしくない声が漏れるのも仕方がないというものである。
そして、冒頭に戻る。
「……見ればわかるだろ」
何をしているのかというサスケの問いに対し、俺は少しだけ声を低くして答えた。
俺がいた場所は、夏祭りの出店の一つ。射的屋の前であった。
射的屋の前にいる以上、景品に何か欲しいモノがあるに他ならないじゃないか。サスケもそれを理解したらしい。
彼はついと射的屋の景品に目をやってから、何故か俺に半眼を向けた。
「あんなものが欲しいのか」
俺のねらいが何であるのかに気がついたらしいサスケが、呆れたようにそう言う。
あんなものとは失礼なヤツめ! 最高じゃないか! 俺は全力でサスケに抗弁したが、サスケは聞く耳を持たない。
俺の視線の先にいたのは、射的の景品として並んでいたピンクの豚の貯金箱であった。
いのと出かけることもできず、ひとり寂しく屋台を回っていた時だ。
ふと俺の視界にそれは飛び込んできた。
つぶらな瞳。可愛らしい微笑んでいるような表情。短い手足。
俺はビビビと体中に電気が走るのを感じた。
運命の出会いと称すにふさわしい出会い。
ピンクの豚の貯金箱は、菩薩のような微笑みで俺を見つめていたのだ。
俺は射的屋に金を払うと、ピンクの豚の貯金箱に狙いを定めた。
俺だって伊達にアカデミー生ではない。俺の狙い通り、射的の玉はすべてピンクの豚の貯金箱に見事命中した。
しかし、俺が彼を得ることはできなかった。
ピンクの豚の貯金箱は射的の玉に対して、あまりに重たくびくともしなかったのである。
そうして、俺は貯金箱を取ることもできず、しかし諦めることもできないままずっと射的の屋台の前にしがみついていた。
そんな時、多分通りすがりらしいサスケに出会ったのである。
「お前こそ何やってるんだよ」
一人祭り見物か。寂しいやつめ。自分のことを棚に上げながら、俺はサスケを鼻で笑った。
そんな俺にサスケは「散歩だ」と簡潔に答える。
曰く、散歩に出かけた時に、そういえば今日は夏祭りがあっているのだということに気がついたらしい。一人暮らしのサスケは自炊するのも面倒だったので、屋台で適当に何か買って食べるかという結論に至ったとのこと。そして、その際に偶然俺を見かけたらしい。
一通り、説明し終えた後、サスケは何故か射的屋の銃とピンクの豚を一瞥した。
「そういえばお前、俺と勝負とか言ってたよな」
言いながら、サスケは不敵に笑った。
「その勝負、受けてやるぜ」
「は?」
俺は言葉の意味が分からず、ぽかーんとしながらサスケを見つめた。
そんな俺の横で、サスケは射的屋に料金を払い出す。
「ちょ、ちょっと待てよ」
何してるんだと止める間もなく、サスケはピンクの豚の貯金箱に狙いを定めた。
それ、狙っても無駄だって! 俺が言うよりも早く、パンパンパンと軽い銃声が響く。
ごとり。
何かが落ちた音に、景品が並ぶ棚の方に目を向けると、そこにはピンクの豚の貯金箱の姿は既になかった。
「取れたぞ」
ドヤァと効果音がつきそうな顔で、サスケがこちらを見ていた。
「重心を見定めるのがコツだ」
ピンクの豚の貯金箱を店主から受け取りながら、某サスケさんはそのようにのたまった。
豚の貯金箱の重心は低い。故に、本体ど真ん中を素直に狙ったところで貯金箱は動かない。棚から落とすのならば、右足か左足かに狙いを定めそれを集中的に狙った方がいい。
別に聞いてもいないのに、サスケは俺にそのような説明を行った。
説明を聞きながらも、俺は返事を一切返さなかった。別に自分ができなかったことを、サスケがあっさりやり遂げたことが悔しかったからではない。断じて。
大体、何なんだ、お前。射的のプロか? 射的ハンターか?
「何でそんなに詳しいんだよ」
俺がムスっとした顔でそう問えば、サスケは何故か眉間に皺を寄せて押し黙った。
俺には知る由もなかったのだが、サスケのご高説は彼の兄直伝だったらしい。サスケは兄との穏やかな記憶を思い出して、複雑な思いを抱いたのである。
まぁ、俺にはそんなこと分かりっこないので、首をひねることしかできなかったのだが。
サスケの様子が変であることに内心疑問を抱きつつも、俺の視線はピンクの豚に釘付けだった。
それに気がついたのだろうサスケは、突然ひょいと、俺に向かってピンクの豚を投げてよこした。
俺はそれを慌ててキャッチする。
「やる」
俺が持っていても仕方ないからな。そんな感じのことをサスケは言った。
正直、あんまり覚えていないのは、ピンクのブタくんが俺の手元に収まっていることに感動していたからだ。
嬉しさのあまり、思わず笑みがこぼれる。半ば諦めていただけに、ブタくんが自分の手の中にいる喜びは大きい。
「ありがとう!」
俺は嬉しくなって、満面の笑顔でサスケに礼を述べた。
この瞬間、一時ストップ安を記録していたサスケ株は俺の中でぐぐーんと急上昇を果たした。
さすがにいのをくれてやる気はならないが、友人の下の下の下くらいにならしてやらんこともない。
うちはサスケは案外いいやつなのかもしれない。
俺はそんなことを思った。
こうして、俺の中のサスケへの好感度はほんの少しだけ上がった。
とはいえ、どうやら俺たちの知らぬところで偶然、俺とサスケのやり取りを見ていた奴がいたらしく、その事実を知ったいのが拗ねてさらに一週間口を聞いてくれなくなるまでの短い間だけだったが。
後日、いのに冷たくされた俺は人知れず涙を流すのであった。
やっぱり俺は、うちはサスケなんか嫌いだ!