XXXHOLiC WiZARD story 作:1202155@
銀の宝石が漆黒の布にちりばめられたように輝く、夜の闇。新月であるため月は出ておらず、辺りは暗い。その闇の中で晴人と侑子は『ミセ』の庭で一杯やっていた。晴人は本来はそんな飲まないのだが、今日は侑子に付き合っていた。
「このワイン、美味しいでしょ?」
「はい。今まで飲んだ中で最高だね。これ」
そう言いながらも二人の横には十本ほどの空き瓶が転がっていた。にも関わらず二人は全く酔っていない。恐るべき魔法使いである。
「その指輪、ワタヌキに渡してたわね」
「ああ。『ディフェンド』ね。なんとなく嫌な予感がしたからね」
「悪いわね。面倒見てもらって」
侑子が礼を述べた。晴人はいやいやと言うと、立ち上がって空を見上げた。
「ひまわりちゃんと帰ってたら、間違いなく君尋は狙われてたろうな」
「あら?逆じゃないの?」
侑子はバールは君尋が狙いだと思っていた。だが、晴人はそれを否定した。
「違うよ。何故かあいつはひまわりちゃんを絶望させようとしてる。その為に君尋を殺そうとするんだ」
「理由は?」
「さぁ?そこまではわからない。けど……来た!」
ひまわりを監視していた二体のプラモんスターの一匹、レッドガルーダが何かを発見して呼びに来た。晴人は庭先に止めてあるマシンウィンガーにまたがる。が、侑子はそれを見ていやらしく笑ってからかう。
「あら、正義の戦士が飲酒運転をしていいの?」
「う…」
「いいわ。そいつがいる場所まで連れていってあげる。来なさい」
晴人は侑子に案内され、屋敷の中に入っていった。
腕を数本失ったバールは再び、女を襲うため、地上に登ってきた。昼間は魔法使いに邪魔されたが、この時間ならば大丈夫だと思い、ひまわりと呼ばれていた女の元を目指す。
「ここか…」
暫く進むと女の反応が一番強い場所にたどり着いた。バールはどう襲うか考え、ドアの前に立っていた。
「はぁ…私の体質が効かない人なんてはじめてだなぁ」
そう言いながら、ひまわりは湯に浸かる。初めてだった。自分の体質に気付き、それを『効かない』と言ってくれた人は。
「あの人なんて名前なんだ―
〈コネクト!プリーズ〉
「?」
不思議なものが空中かに現れた瞬間、中から人が出てきた。
「はぁっ!はぁ!なんであんな道に続いてんだぁああああああッ!」
「まぁ、良かったじゃない♪ついたし」
「よくあるかぁあああっ!つか、何だよあのデカイ巨人に怪獣!しかもなんかデカイトーマスが合体したようなロボや、プテラ・トリケラ・ティラノの混じったロボやら、『ブレイブ、ブレイブ!』五月蠅い、変なトリ人間はいるし!」
「まぁまぁ。着いたみたいよ。にしても…かなりまずったわねぇ」
「は?」
回りを見渡すと、そこには裸姿のひまわりが湯船に座っていた。
「イヤァアアアアアアアアアッ!」
ひまわりの悲鳴が風呂場に響き渡った。
「…ごめん。ひまわりちゃん」
「い…いえ」
女の子の体を不可抗力ながらで見てしまい、必死で謝る晴人。ひまわりはあまり気にした様子はなかった。
「それより…なんで私の家に?」
「あー…」
「危ないからよ。あなたが」
「?」
侑子はそう言うと険しい表情を浮かべた。晴人はその表情から敵が来ていることを読み取り、立ち上がった。
「ちょっくら、鬼……いや、悪魔退治に行ってくるわ」
「え…?」
「大丈夫。安心して、君尋の作ったハーブクッキー食べて待ってな」
首を傾げるひまわりに、クッキーの入った袋を投げ渡す。一気に二階までかけ上がる。そして、ベランダから飛び降りた。綺麗に着地すると、ドアの前に立っていたバールに話しかける。
「悪いけど、そっから先は通行止めね」
「また、貴様か……」
「悪かったね。でも、そう簡単に、はいそうですか、とは引き下がれないんだよ」
〈ドライバーオン♪〉
〈プリーズ〉
飄々とした態度とは裏腹に、その眼は確かな決意が込められている。バールは笑いながら、問いかける。
「貴様に我が止められるのか?」
「止めるさ…絶対に……」
晴人は相手を見据えるように立つ。そして、フレイムリングのバイザーを下ろした。そして「変身」と叫んだ。その瞬間晴人はウィザードFS(フレイムスタイル)へと変身する。
「さぁ、ショータイムだ!」
「貴様を倒し、目的を達成する!」
〈コネクト!〉
〈プリーズ♪〉
ウィザーソードガンを握ると、手元で遊ばせ、フェイントをかけ、突き出した。バールはそれを受け止めたことで、互いの獲物の刃と刃が擦れ火花が舞い、互いに距離を取る。
「はっ!」
「ふん!」
ウィザードは手数の多さや小技を活かした高速剣術。一方、バールは前回と違い、残った全ての腕で巨大な矛を振り回す、一撃必殺の剣術。
対なる剣術だった。
「コネコネとうっとおしい…奴め!」
「よっと!」
豪快な一撃を軽く回避すると、ウィザードはそれを受け止めると、勢いよく押し返して、体制を崩し、そこへ蹴りを叩き込んだ。崩れるバール。すかさず、指輪をウィザーソードガンに読み込ませる。
〈ビッグ!〉
〈プリーズ♪〉
空中へ現れた魔法陣へ腕を通した。その瞬間、腕が巨大化。それを思いっきりなぐりつける。強烈な一撃がバールを軽々と殴り飛ばした。その隙にウィザードはウィザーソードガンにフレイムリングを読み込ませる。
〈キャモナスラッシュ!シェイクハンズ!〉
〈フレイム!〉
〈スラッシュストライク!ヒーヒーヒー!ヒーヒーヒー!〉
「はっ!」
ウィザーソードガンに炎を噴き上げる。その状態のまま、よろよろと起き上がろうとしたバールに駆け寄るウィザード。
バールは迎撃しようと、無理な体勢から残った拳を振りぬく。
それを、ウィザードは回転しながらよけ、すれ違いざまに撫でるように切りつけた。
「はっ!」
「ぐぅっっ!」
バールの体が真っ二つに切り裂かれ、地面に崩れる。ウィザードは倒したと思い、変身を解除しようとする。だが、それはひまわりの家から飛び出してきた侑子によって止められた。
「まだよ!魔獣は殺されると、残った魔力を使って巨大化するわ。もう一度、決めなさい!」
「サンキュー!侑子さん!」
ウィザードは礼を述べると、指輪を取りだし指にはめ、ドライバーへ読み込ませる。
「今度こそフィナーレだ」
〈ルパッチマジック、タッチゴー!〉
〈チョーイイネ!キックストライク!サイコー!〉
右足に炎を纏うと、側転、ロンダートをしたあと、空中へ飛び上がり、落下をいかし、そのまま蹴りを叩き込んだ。
ストライクウィザード
その必殺技が叩き込まれた瞬間、巨大化しながら再生しようとしていたバールは爆破。藍色の光となり、地面に降り注ぐ。着地したウィザードは今度こそホントに倒したことに安堵し、嘘臭いため息ではなく、ホントのため息をついた。
「ふぃ~…」
「倒せたわね」
「まぁね」
そう言うとウィザードは変身を解除。コネクトで取り出したマシンウィンガーに乗り込んだ。その際、侑子にもヘルメットを渡した。
「教えてあげた対価、払いに行きますよ」
「流石は今を生きる魔法使い。でも、今はいいわ」
「?」
「その時が来たら、その対価は払ってもらうから」
「わかりました。じゃあ、とりあえず戻りますよ?『ミセ』に」
晴人はアクセルを蒸かし、夜の道を走り出した。
FFFFFF
さて、三話が終わりました。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今回はウィザードの戦闘描写に慣れる意味もあるので軽めに書いてます。すいません。
晴人、お前侑子さんと飲んで、酒に飲まれないとは…おっそろし。つか、ワタヌキもマンガの最後は酒に強かったですよね??
ワタヌキは振り回されてばっかりです。でも次回は活躍しますよぉ!…え百目鬼くん?彼は……暫く待ちましょう!
因みに時系列はシャオラン達が旅立つ少し前くらい。ウィザードはフェニックスとの決戦後です。
以上、今日の更新でした。次回もお楽しみに。