XXXHOLiC WiZARD story   作:1202155@

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絶望があふれる中、青年はすべてを失った。
唯一残されたのは『死んでしまった少女』と魔法の指輪。
青年は、その指輪に魔法をやどし、絶望を希望に変える



東洋の魔女―An Eastern witch

「さぁ、ショータイムだ!」

 

 宣戦布告をすると共に、ウィザードは手にした銃―ウィザーソードガンをソードモードに切り替え、斬りかかる。

 

「お前は何者だ?」

「我らは魔獣。魔力を持つ人間を喰らうもの。我が名はその一人『バール』」

 

 そう名乗ると、彼の体は猫、蛙、人の頭に蜘蛛の胴体をつけたような姿に変化する。

 

「この姿こそ、我が真の姿。戦闘形態だ」

 

 そう言うと、八本の手を器用に使い、ウィザードに襲いかかる。ウィザードはそれらを華麗な動作でいなし、突き、切り裂く。その戦いなれた様子にバールはうれしそうに応戦する。ウィザードも蹴り技を織り交ぜながら戦う。だが、互いの技量は互角。なかなか決定打がなく、しびれを切らしたウィザードは自ら後方に跳びながら、ウィザーソードガンをガンモードに切り替え、銃弾を放つ。やがて一定の距離まで離れると、指輪をはめ、ドライバーを操作する。

 

〈ルパッチマジック、タッチゴー!〉

 

「その腕が邪魔だな」

 

〈バインド!プリ~ズ!〉

 

 地面に手を向けると、バールの足元に魔法陣が現れ、そこから手足にチェーンが巻き付いた。

 

「な!?貴様も魔法使いだと!?」

 

「今さらかよ!?まぁいい。フィナーレだ」

 

 そう言うと、ウィザーソードガンについたハンドオーサー開き握手する。

 

〈キャモナシューティング!シェイクハンズ!〉

〈シューティングストライク!ヒーヒーヒー!〉

 

 フレイムリングを読み取ったことによって、銃口から高熱の炎弾が撃ち出され、バールに直撃した。ウィザードはため息をつきながら、煙が晴れるのを待った。

 

「ふ…なかなかやるな!」

 

 煙が晴れると、そこには腕を数本失いながら、立っているバールの姿があった。どうやら、火事場の馬鹿力かわからないが、どうやらギリギリでバインドを引きちぎったのか、バインドの鎖が腕に巻き付いていた。

 

「これから…と言いたいが、夜の闇も近い。また、出直すとしよう」

 

 そう言うと黒い霧と共に消えていった。ウィザードは変身を解除すると、二人の元に駆け寄った。

 

「怪我はないか?」

「はい。大丈夫です」

「俺も…」

 

 二人に怪我がないことに安堵すると、晴人はマシンウィンガーに股がった。晴人はひまわりにヘルメットを渡すと、乗るように告げた。

 

「もし襲われたら危ないから、俺が送ってくよ」

「え?いいんですか?」

「いいよ。乗りなよ!」

「でも…」

「大丈夫。俺には君のそういうのは、効果ないから」

 

 そういった瞬間、ひまわりはびっくりしたような表情をしたが、ヘルメットをかぶった。残された君尋はポカーンとした表情で二人を見つめていた。そんな君尋に

晴人は指輪を渡した。

 

「そいつを持っておけば、見えないもんには襲われない。またあとでな!」

 

 そういうと、晴人は去って行った。

 

 

「たく、こんなことなら寄り道しないで帰れば良かったぜ。しかもなんだよ、あの全身宝石野郎に猫、蛙、人間のネカニコンボ!」

 

 バールやウィザードをぐちぐち言いながら、『ミセ』へ入ると、使い魔のマルダシとモロダシが出迎えた。

 

「あーワタヌキだー!おかえりー!」

「お帰りなさい!」

「ただいま」

 

 そう言うと鞄を部屋に置くため、居間に向かう。居間には和服姿の女性―『ミセ』のオーナーである、壱原侑子がソファーに座り、指輪を眺めていたが、四月一日が来たことに気付き、声をかけた。

 

「あら、ワタヌキ。帰ってきたのね。どうかしたの?イライラしてるようだけど」

 

「聞いてくださいよ。ひまわりちゃんと帰ってたら、いきなり変な怪物に襲われて、あげく変なシャバドゥビうるさいベルトつけた、魔法使いに助けられ―」

 

「ひまわりちゃんを取られたわけね」

 

「そうなんです…って、何で知ってるんですか!?」

 

「大体わかるわよ。それくらい…というか、その指輪…ふーん、なるほどね」

 

 侑子は一人で理解したような表情になると、着ていた着物を脱ぎながら君尋に告げた。

 

「ワタヌキ、準備なさい。お客が来るわよ」

 

 

 

〈コネクト!プリ~ズ!〉

 

 空間に特殊な魔法陣が現れると、そこにマシンウィンガーに乗った晴人が現れた。侑子は庭先でそれを待っていた。

 

「あら、来てくれたの」

 

「ああ。他ならぬ侑子さんの頼みだからね。てか、俺が来ることくらい、わかってたでしょ?」

 

「ええ。それより…魔獣はどうだったかしら?」

 

 侑子の問いに晴人は申し訳なさそうな表情で答えた。

 

「予想以上に頑丈だった。まぁ、対策は考えてあるから、次は大丈夫」

 

「そう。ならいいわ。でも、ワタヌキが心配だわ。彼の魔力はなかなか高いもの」

 

「そうならないように、俺を呼んだんでしょ?任せてよ。絶対に絶望させないから」

 

 そう言うと、晴人は指輪を取り出し、侑子に見せつけた。

 

「俺があいつの最後の希望になる」

 

 その瞬間、侑子は優しく笑った。

 

「頼むわね。私は『彼ら』をサポートしないといけないから」

 

 侑子についていき、居間にたどり着くと、四月一日がテーブルに料理を並べていた。その四月一日に晴人は声をかけた。

 

「よ、さっきぶりだな」

 

 すると、四月一日が驚いて目を見開き、指を指し、声をあげた。

 

「あーっ!指輪野郎!何でここに!?」

 

「よう。今日から、ここで働く操真晴人だ。よろしくな」

 

 晴人は苦笑しながらも、挨拶をする。驚いたままの四月一日に侑子が説明する。

 

「夕方、あなた襲われたわね」

「あ…はい」

 

 バールのことを思い出しながら、四月一日が頷いた。

 

「奴らは『魔獣』…普通の人間達からすれば悪魔と呼ばれる存在。本来であれば、地上に出てくることもおかしいのに、何故か現れた……」

 

「悪魔……?」

 

「魔界に住む住人。といっても、今回現れたのは、その魔界を追放されたものだけど」

 

 そう言うと侑子は一息つくかのように、煙管を吸った。その後でポツリと呟いた。

 

「気を付けなさい。四月一日。奴らの狙いはあなたよ」

 

 このとき、四月一日はその意味がわかっていなかった。その意味を知るのは、もっと後になる………。

 

 


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