時空を駆ける大魔導士   作:月影2号機

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前回の投稿から約5か月も経ってしまいました……

感想板に感想を書いていただいた方、お気に入り登録していただいた方、本当にありがとうございます。

これからも、こんな不定期亀更新ですがお暇な時に読んでいただければ幸いです。


第5話

「おぅ、そこのおめぇ。俺の事色々嗅ぎまわってるんだって?一体何の用だ」

 

 

尋ね人を探してパプニカの町を散策していた俺は、聞き覚えのある声に呼ばれ、立ち止まった。

彼の最期を見届けてから既に4,50年は経っていたが、この声を聞き間違えるはずがない。

俺は振り向いて、かつての師の名を呼んだ。

 

 

「アンタのことを探してたんだよ。大魔導士マトリフ」

 

 

「・・・・・・まぁいい。着いてきな」

 

 

そう言って、踵を返し路地裏の方に歩いて行った師匠を追いかける。

過去に師匠と酒を飲み明かした時に、パプニカの相談役時代からの馴染みの店を聞いておいて正解だった。

その店の周りで俺みたいな面識のない子供が師匠を探しているという情報を故意に流せば、

疑り深い師匠の事だ、必ず食いついてくれると思ってた。

 

 

パプニカの相談役を辞めた師匠は既にバルジ島近くの孤島に移り住んでいた為、ルーラで行こうと思えばすぐに行けた。

しかし、それをやっちまうと、師匠にいらぬ疑いをかけることになるのはわかっていたから、回りくどいがこういう手段を取らせてもらった。

 

 

「入ったら適当なとこに座んな」

 

 

「あぁ。そうさせてもらうよ」

 

 

師匠に続いて洞窟の中に入ると、懐かしい光景が目の前に広がった。

修行はヒヨっ子だった当時の俺にとって、苦行に近かったけど、今思えば心のどこかで嬉しかったんだと思う。

弱虫ですぐ逃げる癖の付いていた俺なんかの才能を見抜いて、鍛え上げてくれた師匠の心意気が。

師匠のシゴキがあったからこそ、俺はその後の冒険で最後までダイ達の隣に立ち続けることができた。

久方ぶりに見た光景につい昔を思い出して懐かしんじまったが、今の俺にはやるべきことがある。

俺は適当に空いたスペースに腰を下ろし、師匠に向かって言った。

 

 

「あんたを魔王ハドラーを倒した勇者アバンの仲間、大魔導士マトリフと見込んでお願いしたい。俺に呪文を教えてくれ」

 

 

「・・・・・・おめぇがどこでそれを知ったかは知らんが、俺が弟子を滅多に取らねぇと知ってて言ってんのか?」

 

 

「あぁ、それでもだ。これでも呪文の才は勇者アバンのお墨付きだ。」

 

 

「なんだ、もうアバンに弟子入りしてんじゃねぇか。それなら俺が教えられることなんざねぇよ」

 

 

案の定、俺がアバン先生に師事していることを知った師匠は俺の弟子入りを拒んできた。

元から、表舞台に出たがらない上に、パプニカの神官たちにイビられ、人間嫌いが加速している。

だけど、ここで折れるわけにはいかない。

師匠のオリジナル呪文は全て継承しているから、自力で契約することは可能だ。

でも、それだと冒険の途中でそれが師匠に知られた場合、疑いの目を向けられることは必至。

それを打開するにはここで師匠に弟子入りして、オリジナル呪文を再び継承する必要がある。

 

 

「頼む、この通りだ!!アバン先生には一通りの事は教わったけど、呪文に関してはアンタの方が専門家だ。アンタできなきゃ駄目なんだよ!」

 

 

俺は地面に頭を擦り付け、必死に頼み込んだ。

そうして10分、20分ほど過ぎた頃だろうか。

 

 

「・・・・・・一体何がおめぇをそこまで駆り立ててるんだ。10やそこらの年の餓鬼がすることじゃねぇぞ」

 

 

俺の必死の様子に何か感じてくれたのか、師匠から発せられる声が幾分か和らいだ。

押し切るなら今しかない。

 

 

「・・・・・・救いたい仲間がいる。その為に力が欲しい」

 

 

「おめぇの口振りじゃ、もうアバンが認めるくらい呪文の方はできるんだろう?今の平和な世の中でそれ以上力を付ける必要がどこにあるってんだ?」

 

 

魔王ハドラーが死に、世界が平和になった今、確かに進んで必要以上の力を求めようとする人間は少ない。

それが、まだ10歳そこらのガキじゃ猶更だ。

だから、俺はここで未来を知っているという最大のアドバンテージを使った。

 

 

「・・・・・・近い内に、魔王軍は復活する。大魔王バーンの手によって」

 

 

「なんだと!?てめぇ、一体どういう根拠があってそんな事言ってやがる!!」

 

 

案の定、師匠は俺の口から出た言葉に驚き、食って掛かる。

それもそのはず、数年後の未来の事をこんな得体の知れないガキから聞かされた所で、何の確証もなければそれはただの戯言だ。

だから、俺は師匠に嘘を交えた真実を、ほんの少しだけ開示した。

 

 

「夢を見たんだ。魔界から現れた大魔王バーンの手によって、魔王ハドラーが復活し、再びこの世界が危機に陥る。そんな夢を」

 

 

「夢・・・・・・だと?たかだかそんな事で・・・・・・いや、しかし・・・・・・」

 

 

「予知夢ってやつだよ。テランの国には俺と同じように、少し先の未来が見えたりする占い師がいるだろ?それと同じようなものさ。なんで俺みたいな小さな村の出のガキなんかにそんな力があったのかはわからねぇけどな」

 

 

そう言って、俺は師匠にほんの少しだけ未来の知識を話した。

もちろん、所々に嘘を散りばめ、本当に重要な事は隠して話してしまってもさほど影響の出ない範囲でだ。

合わせて、昔師匠から聞かされた、今この時点では魔王ハドラーを倒したアバンのパーティーにしか知らない事も話すと、師匠は俺の予知夢に対する疑問を晴らしていた。

もちろん、疑り深い師匠の事だから、完全に信じたわけではないだろうけど、それでも信用はされたようだ。

 

 

「・・・・・・いいだろう。俺の修行はアバンのような生温いもんじゃねぇぞ、覚悟しとけよ小僧」

 

 

「あぁ!望むところだ!!よろしく頼むぜ、師匠!!」

 

 

こうして、俺はかつての師であるマトリフに再び師事することになった。

師匠のシゴキは相変わらず厳しく、アバン先生のスペシャルハードコースをクリアした俺でもキツかった。

それでも、ダイを救う為ならどんな苦行にだって立ち向かって見せる。

この先、アイツを待ち受ける苦難の数々を共に振り払っていく為に。




次回辺りから本編まで時間軸が飛びます。
ようやくダイ大本筋の流れが書ける……けど、その前に原作もう一度読み直さなきゃ

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