鎮守府の片隅で   作:ariel

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そろそろ鍋の美味しい時期になりましたね。そんな事もあり、今回は少し変則的な書き方かもしれませんが、鍋料理の定番中の定番、常夜鍋を登場させました。鍋料理はいろいろありますが、やはり普段使いの鍋となると、落ち着いた味でホッと出来る常夜鍋に軍配が上がる気がしています。そして今回の主人公は、一水戦旗艦の阿武隈さん。ちょっと頼りなさそうな言動が目立つ阿武隈さんですが、一水戦の旗艦としての権威復活に成功するのでしょうか?


第七一話 阿武隈と常夜鍋

「それで…鳳翔さん。全部の値段がこれくらいなら…あたし的には、とってもOKなんですけどぉ…。」

 

「その予算でしたら勿論構いませんが…。しかし阿武隈さん、今回の作戦に参加しなかった第一水雷戦隊の駆逐艦の子達全員に奢るとなると、かなり大変なのではないですか?どうやってお金を準備したのですか?」

 

そろそろ今日のお店の準備をしようとしていた矢先、第一水雷戦隊を預かっている軽巡洋艦の阿武隈さんがやってきました。普段あまりこのお店で見かけない阿武隈さんが来ましたから、珍しい事もあると思ったのですが、阿武隈さんからの注文を聞いて少し驚いたというのが正直なところです。なんでも阿武隈さんは、自分の指揮下の第一水雷戦隊の子達が、今回の作戦でほとんど前線に立てなかったため、その士気維持を目的として全員を連れて来店するため、今夜は鍋の準備をして欲しいとの事のようです。

 

現在、阿武隈さんが自分の指揮下に置いている駆逐艦と言いますと、暁ちゃん達の第六駆逐隊の4人、そして初霜ちゃんを除く第二一駆逐隊の3人、そして第二七駆逐隊の白露ちゃんと、8人もの大所帯です。普段倹約している阿武隈さんと言えども、軽巡洋艦のお給金で自分も入れて9人分の食事代を出すとなると、かなり大変なのではないでしょうか。

 

「鳳翔さん、心配してくれて本当にありがと。でも今回は、普段護衛をしている第一戦隊から援助してもらったから、あたし的には大丈夫なんです!」

 

なるほど。普段から大型艦の護衛を勤める事が多い第一水雷戦隊らしいやり方で予算を掻き集めたという事ですね。神通さん達の第二水雷戦隊は、大作戦などで出撃する機会が多いため、出撃手当てなどで比較的自由に使えるお金があるようですが、阿武隈さんの第一水雷戦隊は、鎮守府の防衛任務が中心のため出撃手当てを稼ぐという訳には行きません。しかし普段から大型艦の護衛をしていますから、大型艦の皆さんに顔が利くため、このような形で寄付を募るという事が出来るようですね。それに大型艦の皆さんも、普段自分たちを守ってくれている第一水雷戦隊のためなら偶には…という事で快くお金を出してあげたのでしょうね。

 

「なるほど…そうだったのですか。そういう事情でしたら大丈夫ですね。それでは、今日はお鍋を準備しますけど…何か希望はありますか?なるべく希望に沿う形で準備しようと思いますが。」

 

「あたし的には、なんでもOKなんですけどぉ。鳳翔さんに全部お任せします。」

 

お任せの鍋料理ですか…。まだ開店まで時間がありますから様々な種類の鍋が準備出来ますが、今回のお客さんは駆逐艦の子達です。となると、少し変わったお鍋よりは、オーソドックスな普通の味のお鍋を準備して、具材の種類を増やして楽しませてあげた方が良さそうですね。

 

「分かりました。そういう事でしたら、最もシンプルな常夜鍋を準備しますね。それでは今夜お待ちしています。」

 

「鳳翔さん、よろしくね。阿武隈も楽しみにしてるから。」

 

 

さて、それではその他の料理の準備も粗方終わりましたから、今夜やってくる阿武隈さん達の常夜鍋の準備を始めましょうか。まずは味付けですが…大型艦の皆さんから注文があった場合は、昆布を沈めた湯に日本酒などを少し混ぜた物で具材を煮込み、漬けタレにはあっさりとした麺つゆのような物をお出ししています。しかし今回は駆逐艦の子達がお客さんですから、少しはっきりした味の方が喜んでくれると思いますので、ポン酢のタレと少し刺激が楽しめるように大根卸しを準備しておきましょう。

 

次に具材ですね。まずは定番の白菜、そして歯応えを変化させるために水菜も準備しましょう。そして豆腐にしめじ…。あとは肉類ですね。豚肉の薄切りでも良いのですが、今日は鶏の挽肉が多目にありますから、これを使ってつくね団子を用意してあげましょうか。まずはネギを細かく切り刻んで、そして鶏の挽肉と混ぜ、ここに臭みを消すための生姜のおろし、ごま油、卵、塩、片栗粉を混ぜていきます。そしてヘラを使って十分に混ぜましたら、一口大程に取り分けて丸めたら出来上がりです。

 

具材はこの辺りで良いでしょうか。いえ、今日のお客さん達の事を考えると、もう少し目で楽しめる物も出してあげたいですね。色合い的には人参が良さそうですから…。まずは人参を薄切りにして、そしてこれを…ちょっと手間は掛かりますが、今日は少し頑張ってみましょう。

 

「あれ?鳳翔さん。小さい包丁なんか取り出して、どうしたの?何かやるの?」

 

「えぇ、瑞鶴さん。まぁ、見ていてください。」

 

まずは桜の花からですね…輪切りの人参の縁に五箇所切り込みを入れて。次に削り込むように花びらの片側を…そして逆側から反対側の花びらの形…と、後は全体的に丸みが付くように花の形を整えます。そして最後に花びらの形が目立つように切り込みを再び入れてから、切込みに向って斜めに包丁を入れて立体的にして…こんな感じで良さそうですね。

 

「あっ、それ桜の花だよね!そういえば鳳翔さんがまだ空母寮に居た頃に、瑞鶴達が食べる料理でも時々やってくれたよね!久しぶりに見たよ~。」

 

「えぇ、瑞鶴さん。よく覚えていましたね。細工切りはどうしても手間がかかりますから、普段はあまりやらないのですが、今日のお客さんは駆逐艦の子達ですからね。もう少し違う形も作っておきましょうか。」

 

そうですね…後はお星様でも作りましょうか。これも縦に切り込みを入れてから、薄切りにすれば比較的簡単にお星様を作る事が出来ます。こちらも…大体良い形に作る事が出来ましたね。久しぶりにやりましたから、上手に出来るか少し心配でしたが、問題なく作る事が出来ました。後は…〆のうどんの準備をしておけばお鍋の準備は完了です。後は、阿武隈さん達が来たらすぐに鍋を開始出来るように、鍋の底に昆布を敷いて水を入れておきましょう。今から昆布を水につけておけば、阿武隈さんと約束した時間には丁度良い状態に昆布がなっていると思います。

 

 

「みなさ~ん、あたしの指示に従ってください!も~ぉ、従ってくださ~い!」

 

お店の前が騒がしくなってきましたね。阿武隈さんの叫ぶような声も聞こえますし、駆逐艦の子達がやってきたようです。今日はお店が騒がしくなると思いますから、既に常連客の大型艦の艦娘達には事情を伝えてありますが、皆さん快く理解してくれましたから、おそらく問題はないと思います。

 

ガラッ

 

「こんばんは。今日は鳳翔さんのお店で夕食よ!電、楽しみね!」

 

「なのですっ!」

 

「わらわも今日は楽しみじゃ。」

 

「子日も楽しみぃ!」

 

扉が開きますと、われ先に小さなお客さん達が入ってきました。これだけ元気な駆逐艦の子が8人も居ますと、引率する阿武隈さんも大変でしょうね。大声で自分の指示に従うように言っていますが、滅多に来る事のない私のお店で夕食を食べられる事が嬉しいのか、駆逐艦の子達は興奮しているようなので、統制を取るのに苦労しているようです。

 

「皆さ~ん。落ち着いてくださ~い!あたしの指示に従ってくださ~い!まずは今日の鍋料理のためにあたし達に寄付をしてくれた長門さん達に感謝しないと駄目で~す!皆さ~ん、あたしを中心に単横陣です!はぃ、長門さん陸奥さん、今日はありがとうございましたっ!」

 

「ありがと~ございましたっ!」

 

あらあら…。阿武隈さんの指示で、阿武隈さんを中心に横一列になった駆逐艦の子達が、長門さん達にペコリとお辞儀をして『ありがとうございました』と言いましたね。長門さんと陸奥さんも急なお礼で少し驚いたようですが、目を細めて微笑んでいますから満更でもなさそうです。

 

「ん…ま、まぁ、いつもお前達には護衛をしてもらっているからな。たまには私達がお礼をしても罰は当たるまい。そうだろ陸奥?」

 

「えぇ、そうね、長門。みんな、今日はしっかり鳳翔さんのお店で楽しんでいくといいわ。」

 

長門さん達からの言葉に駆逐艦の子達も嬉しそうな顔をしていますね。さて、既にお座敷には鍋の準備がしてありますから、上がってもらいましょうか。

 

「皆さん、今日はよく来てくれましたね。お鍋の用意がしてありますから、そちらのお座敷にどうぞ。」

 

「鍋か…こいつは素晴らしい。」

 

「一人前のレディーにふさわしい料理だわっ!」

 

「鍋か、それも悪くない。」

 

「さぁ~、はりきって食べましょ~。」

 

皆さん嬉しそうな表情をしていますね。それでは全員お座敷に入ってくれましたから、ガスをつけて鍋の準備をしましょうか。鍋の中の昆布も丁度良い状態になっていますし、まずはこのまま中火で沸騰寸前まで熱しましょう。

 

「阿武隈さん、すいませんが最初は私がやりますので…。次からはよろしくお願いしますね。」

 

「鳳翔さん、ありがと。あたし的には、最初だけでも鳳翔さんにやってもらえると、助かります。」

 

 

そろそろ沸騰しそうですね。それでは水の中の昆布を取り出して…ここに日本酒を加えて一気に沸騰させます。それでは具材を一通り一気に入れましょうか。まずは火が通りにくい細工切りした人参と白菜の芯の部分を入れて…次に鶏肉のつくね団子と豆腐、そしてシメジ、白菜の葉の部分、最後に火が通り易い水菜を入れて…後は待つだけですね。

 

「タレはポン酢を用意してありますので、これを使ってくださいね。それと大根卸しもありますから、刺激が欲しい人は少し混ぜてください。最初は私が皆さんの分をよそいますので、次からは好きなようにやってくださいね。」

 

 

そろそろ大体の具材に火が通ったようですね。それではポン酢の入った全員分の小鉢に均等になるように、全ての具材を取り分けて…これで問題ないですね。私は別に鍋奉行という訳ではありませんが、最初くらいは一番美味しい状態で食べて欲しいですからね…。

 

「これで全員分ですね。それでは皆さん、どうぞ召し上がってください。」

 

「いただきま~す!」

 

 

 

軽巡洋艦 阿武隈

 

 

今回の鍋パーティーの段取り、あたし的にはかなり頑張ったかも。あたし達一水戦は、北方作戦では主力部隊として選ばれる事が多いけれど、普段は主力部隊の護衛がメインで、二水戦のように最前線にはなかなか出られないのよね…。今回の作戦も留守番組で、士気の維持をどうするか…あたし的にはかなり悩みました。とはいえ、士気の維持にはやっぱり美味しい食事よね!長門さん達に掛け合って寄付をしてもらったから、今日はこうやってみんなを鳳翔さんのお店に連れてきたけれど、みんなあたしの頑張りを理解して、あたしの事をちゃんと尊敬してくれるかな…。二水戦の神通さんのようには阿武隈は出来ないけれど、それでも栄光ある一水戦の旗艦なのだから、あたしも頑張らないと…。

 

まぁ、それはそれとして…折角鳳翔さんが、よそってくれたし、温かい内に鍋料理食べないと。やっぱりあたし的には、冬は鍋よね。今回の鍋は、ポン酢で食べる凄くシンプルな味だけど、やっぱりこれが落ち着くわ。あれ?今日の鍋は、白菜と水菜が入ってるのね~。まずは白菜から…これは鍋の定番中の定番の野菜だけれど…阿武隈、早速いただきます!ウン、美味しい~。あたし的には大満足なんですけどっ!先っぽの少し緑色をした薄い白菜の葉の部分…シナッとしているけど、ポン酢の程よい酸味が染み込んでいて、クシュクシュした歯応えが最高ね。それにこの白くて厚い芯の部分も絶品なんですけどっ。こっちは、シャクッとした歯応えで、噛むと白菜の甘みがジュワッと出てきて…ポン酢の酸味にこの甘みが混じると止められないわ。この白菜だけでもずっと食べていたいですけど…やっぱり新しい味にも挑戦しないと…次は水菜ね。

 

あっ、これも美味しい。水菜のシャキシャキした食感…白菜とは一味違う食感と独特の弱い甘み。一度にこうやって、白菜と水菜という違う食感と甘味が味わえるなんて、本当にいいわね。シメジもプルンッとした食感で美味しいし、やっぱりこの辺りの野菜は、鍋料理の定番中の定番だけあって、凄く安定した美味しさだわっ。あれ?そういえば今回の鍋は、スライスしたお肉が入っていないのね。あたし的には、スライスした豚肉もお鍋の具としては大好きなのに!あっ、これひょっとしてつくね団子?白菜の下にあったから気付かなかったけれど、ちゃんとお肉は入っているのね。これは一口で…。

 

えへへ…これだけでも幸せになってくる感じ。鍋料理の具材は、さっきまでの白菜みたいに味を染み込ませて美味しく食べる具材もあるけれど、このつみれ団子のように味を出す具材も良いわね。噛んだ瞬間に中から溢れ出てくるお肉の旨味の塊。つみれ団子自体にも味が付いているけれど、表面についたポン酢の酸味と、つみれ団子に入った少しだけ刺激のある生姜と塩分。これが挽肉の旨味と合わさると…幸せが込み上げて来るような気分になるわね。やっぱり美味しい料理を食べると幸せになれるのね。

 

後お椀に入っているのは…人参と豆腐。人参はとっても可愛いお星様。これなら駆逐艦の子達も喜んでくれそう…本当に鳳翔さんには感謝ね。それにこの豆腐も、とってもOKです。昆布の出汁と鍋の他の具材から出た味を全部吸い込んだ豆腐。ポン酢とも凄く合うし、この豆腐自体のほんのりとした甘さ…鍋の王様ね。そうそう…少しだけ大根卸しを乗せて…。んぅぅ…大根卸しの刺激が、豆腐の甘さを引き立てるわっ!あたし的には大満足なんですけどっ!…はぁ…幸せだったわ。さてお代わりをお椀によそわないと…あっ。

 

「人参で出来たお星様なのですっ!もっと入れるのですっ!」

 

「このつみれ団子も美味しいわ。電、これも入れるわよっ!」

 

「хорошо、この白菜も素晴らしい。」

 

「暁は、この水菜ね。やっぱりこういう落ち着いた野菜こそ、大人のレディーにふさわしいわ。」

 

「わらわは、やっぱり豆腐じゃな!」

 

「雷ちゃん…そのつみれ団子は、子日のだよっ!」

 

「若葉は、しめじが気に入ったな…。これも入れる。」

 

「あたしは全部気に入った。全部マシマシで!い~っけぇ~!」

 

何を勝手に具材を鍋に入れているのですか。これは阿武隈の仕事です。勝手に鍋を荒らさないでください!ちょっと取り分けてもらった鍋を堪能して味わっていただけなのに、少し目を離すと、もうこれ…。阿武隈、急いで出撃です!

 

「みなさ~ん、鍋に具材を入れるのは、阿武隈の仕事ですっ!勝手に鍋を荒らさないでくださ~い。あたしの指示に従ってください。んぅぅ…従ってくださぁい!」

 

 

 

鳳翔

 

 

あらあら…お座敷の方は収拾がつかない状態になっているようですね。阿武隈さんが自分の分を味わっている隙に、駆逐艦の子達がわれ先に自分が食べたい具材を鍋につっこんだ結果、大変な事になっているようです。阿武隈さんも大声で駆逐艦の子達の統制をとろうと頑張っていますが、一端興奮してしまった子達を落ち着かせるのは、なかなか難しそうですね。このままでは店内もかなり騒がしくなってしまいますから、私の方から少し駆逐艦の子達に注意して、阿武隈さんを助けてあげましょうか。

 

「鳳翔さん…それには及びません。駆逐艦の子達のことは、私達軽巡洋艦がなんとかします。ですから鳳翔さんの手は煩わせません。」

 

「神通さん…その、お願いしてもよろしいでしょうか?」

 

どうやら私の不安そうな顔を見て直に私の心情を察したのか、今日もカウンター席で三人並んで甘味を食べている二水戦の旗艦三人組の中から神通さんが声をかけてくれました。しかし…今騒いでいる子達は一水戦組ですし、いくら旗艦の軽巡洋艦とはいえ二水戦の神通さんの言う事を、あの子達はちゃんと聞くのでしょうか…。ちょっと心配ですね。しかし、私の心配を他所に、神通さんはスーッと、まるで音を立てないような歩き方でお座敷の方に向っていきました。

 

「一水戦の皆さん…ここは鎮守府食堂ではなく、鳳翔さんのお店です。あまり騒いではいけません。それと…皆さんとても元気がよろしいようですから、今度私が直接皆さんの訓練の指導をしてあげましょう…。」

 

神通さんの、決して大きくはないおっとりとした声が座敷に流れた瞬間、座敷に居た一水戦の子達の騒ぎがピタッと止みましたね。こちらから神通さんの表情を見る事は出来ませんが、神通さんの姿を見た駆逐艦の子達が、まるで震えるような表情になり、『阿武隈さん助けて…』という声と共に、我先に阿武隈さんの後ろに隠れるような位置に移動しました。そしてそんな駆逐艦の子達の様子を見た阿武隈さんが、ため息をついています。

 

「神通さん、手を煩わせてしまって、ごめんなさい…。後は阿武隈が何とかします…」

 

「そうですか…」

 

あらあら…神通さんがようやくこちらを向き、カウンター席に戻ってきましたが、物凄く落ち込んだ表情ですね…。たしかに、命令系統が違う駆逐艦の子達からも、あそこまで怖がられている…という事を目の当たりにすれば、神通さんとしては不本意なのかもしれません。

 

「神通さん、そんな事くらいで落ち込んでいたら駄目よっ。二水戦の駆逐艦の子達は、決してそんな風に神通さんの事は見ていないから。そ…そうよね、能代姉!」

 

「そ…そうですね。矢矧が言うとおり、二水戦の子達はそんな風に神通さんを見ていないと思いますね。だからそんな風に落ち込まなくても…。」

 

一緒に居る能代さんと矢矧さんが、神通さんを一生懸命慰めていますが、神通さんが復活するまでしばらく時間が必要なようですね。…そして、お座敷の方でももう一人の軽巡洋艦の旗艦が落ち込んでいます。

 

「…やっぱり、あたしの言う事には従ってくれないのに…神通さんの言う事には従うのね…。阿武隈じゃ、お役に立たないって事?…うぅぅ。」

 

「そ…そんな事ないわっ!雷は、阿武隈さんの事を尊敬しているからっ!だから、二水戦の訓練に放り込むのは止めてね?ね?」

 

「なのですっ!電も阿武隈さんの方がいいのですっ!今日もこんなに美味しい鍋料理を準備してくれましたし、電は阿武隈さんの事を、とっても尊敬しているのですっ!」

 

「わ…わらわも、阿武隈さんの事をいつも尊敬しておるゆえ…そんなに落ち込まないで欲しいですじゃ。…それに初霜からよく二水戦の訓練の話は聞いておるのじゃが、あれはわらわ達には…。」

 

あちらは、駆逐艦の子達が阿武隈さんを慰めているようですね。私のお店で鍋料理という事で、いつもよりテンションが高かったために起こった今回の暴走だと思いますが、やはりあの子達にしてみると、阿武隈さんが一番頼りになる旗艦なのでしょうね。…そういえば、二水戦と一水戦、どちらも経験をしている初霜ちゃんも今日は来ているのですが、まるで空気のように存在感を消していますね。いえ、今日は大和さんと小鍋仕立ての海鮮鍋を食べていますから、食べるのに忙しいのかもしれませんが…おそらく、余計なやっかい事に巻き込まれないように気をつけているのでしょうね。とはいえ、カウンター席とお座敷があの様子では、早晩巻き込まれる事になると思うのですが…。ほらやっぱり。

 

「初霜っ!あなたからも何か言って、神通さんを慰めてあげて!何そこで我関せずに鍋食べているのっ!大和っ!あなたからも言ってやってよ。」

 

「初霜、わらわ達の座敷に来てくれぬか?阿武隈さんがなかなか復活しないから、わらわ達も鍋の続きが食べられないのじゃ…。」

 

初霜ちゃんにとって直接の旗艦である矢矧さんと、同部屋の初春ちゃんの両方から同時にヘルプが入りましたね。そして初霜ちゃんもヤレヤレといった表情で席を立ちました、私もその気持ちはとても良く分かります。大和さんも苦笑いをしていますが、今回は仕方なさそうですね。初霜ちゃんが自分の席に戻ったら、今日は何か一品サービスをしてあげましょうか。

 

 

「あ~っ、それは阿武隈のうどんですっ!あたしが鍋から取り分けますから、静かに待っていてください!勝手に鍋から取らないでください~!」

 

初霜ちゃんの活躍もありましたし、一水戦駆逐艦達の必死の説得もあり、阿武隈さんはなんとか立ち直りました。そして今は〆のうどんに入っていますが、再び騒がしい事になっていますね。とはいえ、今度ばかりは先程の出来事もあったため、阿武隈さんの注意に全ての駆逐艦の子達が従っています。阿武隈さんもホッとした表情で、鍋からうどんを取り分けていますね。結果的にですが、阿武隈さんの一水戦旗艦としての権威が復活したようで、良かったのかもしれません。それにひきかえ…。

 

「どうせ私は、駆逐艦の子達から恐れられている鬼の神通ですよ…ヒック。これまで二水戦の事をひたすら考えて、皆さんの錬度を高めるために努力してきたつもりですが…ヒック、ここまで恐れられているなんて…ヒック、おかしいと思いませんか!?矢矧さん、能代さん…ヒック。それに初霜さん!あなたも私の事を怖がっていますね?さっきから逃げよう逃げようと考えている事が、私にはよく分かります…ヒック。どうせ私は、鬼の神通ですよ…ヒック。」

 

「神通さん、まぁまぁまぁまぁ、お酒はその辺にした方が…。それに二水戦の子達はそんなに怖がっていないって。そ…そうよね、初霜?」

 

「は…はいっ矢矧さん。初霜はそんな風に怖がっていないわ。ただ…ちょっと初霜の鍋が冷めそうだから、戻ろうとしただけで…怖くて逃げようだなんて思っていないわ。」

 

こちらは、神通さんが拗ねてしまい、復活の兆しが見えませんね。それに完全に絡み酒モードに移行しています。おそらく途中で、矢矧さん達が神通さんにお酒を飲ませたのが敗因だと思いますが…初霜ちゃんも撤退に失敗したようですし…これはもう少し復活に時間が必要なようですね。困ったものです。




実は昨夜の夕食が、まさに常夜鍋でした。そして具材もまさにこんな感じでして…丁度私の夕食がそのままお話になったのが今回だったりしますw。常夜鍋は、様々な具材の組み合わせや味付けが出来る万能鍋です。私のところですと、今回の具材の他には、ほうれん草でやる事もあります。ただほうれん草で鍋にする時は、他の野菜との相性があまりよろしくないため、白菜などは入れずに野菜はほうれん草のみでやっている事が多いですね。後は、つくね団子ではなく、豚肉のスライスで行く方が定番かもしれません。

さて、阿武隈さんですが…艦これキャラのイメージとしては、私の中ではまさにこんな感じでしてw。戦闘中の台詞回しを聞いていますと、一水戦の統制大丈夫か?となってしまう訳ですw。とはいえ史実では武勲艦である阿武隈さんですから、いざという時はやってくれると信じているのですが。

という事で、今回はまさにそんな阿武隈さんを襲う悲劇を描いてみました。最後は神通さんという強力なキャラの出現で、駆逐艦の子達は阿武隈さんの影に隠れたようですから、一応普段から旗艦として信頼はされているのかもしれません。とはいえ、その後は駆逐艦の子達に慰められていますから、駆逐艦の子達からすれば、結構扱いの難しい軽巡の先輩なのかもしれませんねw。

それと…神通さんの絡み酒。神通さんなら絡まれるのも悪くないな…なんて思っているそこの提督さん。たぶん絡まれたら、霧島さんの絡み酒同様に大変な事になると思いますよw

ゲームの方ですが、イベントも終了し、クリスマスボイスも出ましたね。当初私の鎮守府には初風はいませんでしたから、『初風?知らない子ですね…』状態でした。とはいえ、マンスリーの2-5出撃をしましたら、なんと一回目のボスドロで初風が来まして…w。おそらくイベントの際のドロップ運が悪すぎたため、その反動が今になって来たのではないか…と思っている次第です。という事で、私の鎮守府は残すところ、風雲さんと嵐さんの二人になりましたが、この二人通常海域では落ちませんので、少なくとも次のイベントまでは揃わなさそうです。完全コレクションまではまだ先が長そうですね^^;

来週は忘年会の嵐になっていますので、ちょっと更新は難しいかもしれません。
今回も読んでいただきありがとうございました。

常夜鍋のレシピですが、これは好きな物を好きなだけ入れる鍋ですから今回はスキップです。代わりといっては何ですが、つくね団子のレシピを載せます。




つくね団子(鍋の具材として四人分)
鶏の挽肉:300 g
ネギ  :10cm分くらいを微塵切り
生姜のおろし:一欠片分
ごま油:数滴
卵:1個
塩:適量
片栗粉:3-4 g

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