鎮守府の片隅で   作:ariel

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土用丑の日は明日ですが、明日の夜ではもう鰻は終わっていると思うので、本日投下します。今回、少しだけ『鎮守府の片隅で』における艦娘同士の関係が出てきますが、基本的には単発物のお話のため、今後それ程大きく関わってこないかもしれませんが、楽しんでもらえたらなと思います。

そういう事もあり、今回は少しいつもとは毛色が違うため、外伝扱いという形にします(おそらく、次回も外伝のような形になると思いますが^^;)。


外伝1 土用丑の日のライバル対決

今日は土用丑の日、この日だけは私のお店も臨時に鰻屋に変更です。もうすぐ大作戦が発動されるようですし、この時期は暑いために夏バテしてしまう艦娘達も多いですから、鰻を食べて精をつけてもらわなくてはいけません。この日のために、浜名湖の養殖業者に連絡して、大量の鰻を確保していますし、丁度昨日の演習帰りに、この付近の港に停泊した駆逐艦娘や軽巡洋艦娘にお願いして、予約していた大量の鰻を運んでもらいました。ですから、私のお店の冷蔵室は既に鰻で一杯。後は注文に応じて料理するだけの状態になっています。

 

鰻は、「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」と言う様に、上手に焼くには長年の経験が必要だと言われています。私も近所の鰻屋のご主人の好意で、しばらくの間練習させてもらったため、それなりには焼く事は出来ますが、なかなか本職のようには行きません。一応、練習台として赤城さんに試食をしてもらった所、赤城さんは大喜びで食べていましたから問題ないと思うのですが…こういう場合の赤城さんの評価は、あまりあてにならない可能性もありますので、少し心配です。

 

また、私は横須賀生まれですが、焼き方を教えて頂いた鰻屋のご主人が関西出身の方だったため、腹開きで直接本焼きを行う方法を学んでいます。しかし話によると関東の方では、さばき方や焼き方が異なるようです。うちの艦娘達には、私と同じ横須賀など関東出身の子達も多いですから…大丈夫でしょうか。

 

「赤城さん!この鰻丼を、二番テーブルの北上さん達の所にお願いします。それとこっちの鰻重は、五番テーブルの利根さん達の所です。」

 

土用丑の日に、私のお店が臨時に鰻屋に変わる事を聞いていた艦娘達が、開店と同時に大勢詰めかけたため、今日は大忙しです。おそらくこうなるだろうな…と予想をして、赤城さんに手伝いを頼んでおいて正解でした。お手伝いのお礼は、後から鰻丼を食べさせてあげる事になっていますが、ツケを返済中の赤城さんにとっては、丁度良い報酬だと思います。

 

「鳳翔さん…本当に、今日のお手伝いが終わったら、鰻丼を食べさせてくれますか?さっきから匂いだけ嗅がされていて、お腹が…」

 

鰻は匂いから食べさせると言うとおり、今日の店内は鰻の蒲焼の匂いが充満しています。この匂いの中、労働に勤しんでいる赤城さんにしてみると、非常につらい時間なのでしょうね。

 

「大丈夫です、赤城さん。終わったら、ちゃんと鰻丼…しかも中入り丼をご馳走しますから、頑張ってください。」

 

「な…中入り丼…、それは良く知っている子です!」

 

通常の二倍増しで鰻が食べられる中入り丼であれば、この娘も満足してくれるでしょう。それに…開店当初の心配は杞憂に終わり、私のお店に来ている艦娘の皆さんは、関東出身の艦娘も含めて、大満足で鰻丼などを食べてくれています。本当に良かったです。

 

どうやら、今回の臨時の鰻屋は大成功です。後で、あの人に持って帰ってあげるための特製鰻丼も作らなくては…あっ…やはり来ましたか。問題発生です。

 

「ヘ~イ、鳳翔!今日は鰻屋があると聞いて、妹達とやって来たデ~ス。今、提督のハートに一番近い私が、昔の女が作っている料理を味見に来たネ。」

 

しばらく顔を見なくて済んでいたのですが…やはり来ましたね、金剛さん。その昔、あの人を巡って恋のライバル関係だった古株の高速戦艦四姉妹の長女。そして、私が第一線を退いた後に、あの人によって秘書艦に任命された子です。とはいえ、最終的にあの人のハートを射止めたのは私ですし、ここは正妻としての余裕を見せ付けるべきでしょうね。それに金剛さんはまだしも、妹の比叡さんや榛名さん、そして霧島さんは、とても良い子達ですから…。

 

「あら金剛さん、お久しぶりですね。いつもあの人の『仕事のお手伝い』ご苦労様です。あの人、『帰宅してから』私によくおっしゃっていますよ『金剛は、良い秘書艦だ』と。この調子で、あの人の補佐をよろしくお願いしますね。それと、今日は是非うちの鰻を楽しんでいってくださいね。」

 

「くっ…その余裕…いつまで保てるか、楽しみデ~ス。今日は、現在提督の寵愛をもっとも受けている私が、昔の提督の女の味を厳しくチェックしてあげマ~ス。さぁ、比叡達も早く注文するネ。」

 

相変わらずですね…。金剛さんも時々、私に色々な物を運んできてくれますので(先日はカレー粉もいただきましたし)、本当に仲が悪いわけではありませんが、どうしてもこの人と話をしていると、いつもこんな感じになってしまうのですよね…。それに金剛さんが今でもあの人の事を愛しているのは本当のようですし、あの人も満更でもないようですから…どうしても、私も厳しく当たってしまいます。

 

「鳳翔さん、私は鰻丼の中入り丼でお願いします!」

 

「Oh…流石、比叡は私の妹デ~ス。少し変わった鰻丼を注文して、鳳翔を困らせるつもりですネ。」

 

「ち…違います。お姉さま。私はただ、たくさん鰻が食べたいだけで…」

 

「大丈夫ネ、皆まで言わなくても、比叡が考えている事は分かっていマ~ス。姉のサポートをしようとしている健気な妹ネ。」

 

…比叡さん、そんなに私に頭を下げなくても、分かっていますから大丈夫ですよ。中入り丼は少しでもたくさん鰻を食べたい人にとっては普通の食べ方ですし、それ程手間も掛かりませんから、比叡さんが恐縮する必要はありません。

 

「は…榛名は、白焼きが食べたいです。鳳翔さん。」

 

「Oh…榛名は可愛い顔をしていますけど、怖い妹ネ。比叡と全く違う鰻を注文して、鳳翔を困らせるつもりデ~ス。それに、わざと味のついていない鰻を注文して、鳳翔の準備した鰻にケチをつけたり、焼き方にケチをつける算段ネ。流石は今日改良を施してもらった新鋭艦、私の妹ながら末恐ろしいデ~ス。」

 

「ち…違います、お姉さま。榛名は、ただ山葵醤油であっさりした鰻が食べたいだけです。決して、お姉さまが言っているような事は考えていないです!」

 

「榛名も皆まで言わなくても分かっているネ。姉の私の手助けを全力で行おうとしている榛名の健気さに、感動したネ!」

 

…榛名さん…そんなに小さくなって頭を下げなくても大丈夫ですよ。あっさりした食べ方が好きで、白焼きを食べたがる艦娘も多くいますし、榛名さんがそんな子ではない事は、私はよく知っていますから大丈夫です。

 

「わ…私は、鰻重をください。」

 

「Oh…霧島もいい妹デ~ス。比叡や榛名の注文と少しだけ変えて、鳳翔を混乱させようとする、その頭脳的な作戦。流石デ~ス。」

 

「お姉様…そんなつもりはありません。私は、見た目が綺麗なお重に入っている物が好きなだけで…」

 

「霧島も、皆まで言わなくても分かっているネ。私を助けるために、霧島なりに考えた方法だという事は、理解していマ~ス。」

 

…霧島さんも、私に手を合わせて謝る必要はありませんよ。霧島さんは、私のお店に来た時はよく、綺麗な小皿で出して欲しいとリクエストをしますから、霧島さんの考えている事はちゃんと分かっています。今日は霧島さんのために、特別なお重も用意してありますし、綺麗なお重に入れて鰻重を作りますよ。それにしても、自分の妹達をここまで小さくさせるとは…本当に金剛さんにも困ったものです。ここは三人の妹達のためにも、私が少し反撃しておきましょうか。

 

「金剛さんは、鰻のゼリー寄せでよろしかったですよね?英国生まれの帰国子女の金剛さんですから、やはり英国式ですよね?」

 

「くっ…Shit! そんな物、私は頼まないネ。…私の注文は、八幡巻きと鰻のせいろ蒸しデ~ス!」

 

…くっ、よりにもよって、手間のかかる注文をしてきましたね…。比叡さんや榛名さん、そして霧島さんの注文は、多少の違いこそあれ基本的な部分は同じですから、それ程作り分けるのに苦労はしません。しかし金剛さんの注文は、八幡巻きについては作り方が根本的に違いますし、せいろ蒸しは鰻丼などと基本的な部分は似ていますが、もう一手間余分にかかります。

 

私と金剛さんの遣り取りを見て、それまで賑やかだった店内は静まり返っていますし、手伝いの赤城さんを始め、お客さんとして来ている一航戦や二航戦の空母娘達も心配そうな顔をしています(そういえば、今日も五航戦の娘達は見かけないですが、大丈夫なのでしょうか。加賀さん辺りに『整列』をかけられていないか、心配になってしまいます。)。これ程注目を集めてしまっている以上、私も引き下がる訳にはいきません。少し大変な作業になりそうですが、ここはあの人の正妻として意地を見せる必要があります。

 

四人分の異なった注文ですが、出来上がりのタイミングはなるべく揃える必要があります。このタイミングが大幅にずれれば、間違いなく金剛さんはケチをつけてくるでしょうから・・・。従って、面倒な注文をした金剛さんの料理から作り始めなくてはいけません。まずは八幡巻きに使う芯となる牛蒡の準備ですね。八幡巻きは芯の部分として、アク取りをした牛蒡を日本酒や出汁、みりん、そして醤油で煮る事で味をつけます。そしてその牛蒡に、鰻を巻きつけて全体的に強火で一気に白焼きにします。その後、更にタレをつけて焼き上げてから盛り付けをする訳ですが・・・。面倒な事にせいろ蒸しまで注文していますから、同時に仕上げる場合、どのタイミングでせいろ蒸しの鰻を焼き始めるか・・・私の腕が試されている訳です。

 

いずれにせよ、まずは牛蒡の準備をしてしまいましょう。牛蒡は、明日に出す予定の金平牛蒡用の物がありますから、まずはなるべく先の細い部分を適当な長さに切り分けて・・・アク取りだけ一気にしてしまいます。本当は少し太めの牛蒡を使いたい所ですが、今回は時間がありません。ですから、細めの牛蒡を何本か纏めて芯の部分にする予定です。さぁ、アクが取れましたから次は味付けをしていきましょうか。

 

金剛さんのもう一つの注文であるせいろ蒸しは、鰻をご飯に乗せた状態でせいろに入れて蒸すため、ご飯までしっかりと鰻のタレが染み込む料理です。そのため、これと一緒に八幡巻きを食べてもらう以上、余程しっかりした味に仕上げておかなくては、八幡巻きの味が完全に負けてしまいます。ですから、芯の牛蒡も通常よりは少し濃い目で味付けをしておきましょう。日本酒、出汁、みりん、そして醤油を入れて・・・えぇ、これくらいの味付けならば問題ありません。後は、煮込んで味を染み込ませている間に、四人分の鰻をさばきます。

 

まずは比叡さんと霧島さんは、うな丼とうな重ですから通常通りに捌いてから、少し大きめに切り分けます。比叡さんは中入りを注文していますので、都合三人前の鰻を捌いてしまいます。次に榛名さんの白焼きですが、これは鰻丼の倍程の大きさで切り分けておきます。白焼きはお皿で出す予定のため、ある程度の大きさがなければ見栄えが悪くなってしまいますから、切り方も少し変えなくてはなりません。最後に金剛さんの鰻ですが、せいろ蒸しは通常の鰻丼よりも少し小さめに切り分けます。あぁ、忘れていました。せいろ蒸しは錦糸卵が必要ですから、急いで作っておかなければ・・・。そして八幡巻きの鰻は最終的に牛蒡に対して鰻を螺旋状に巻かなくてはいけませんので、頭部だけを切った形にしておきます。また、この料理だけは背開きで鰻をさばかなければいけません。そうこうしている間に、もうすぐ牛蒡の味付けが終わりますから、八幡巻き用の鰻以外は急いで串打ちをしないと・・・。本当に大忙しです。

 

牛蒡・・・なんとかいい感じで出来ましたね。時間短縮のために細めの牛蒡を使って正解でした。さて、ここから牛蒡に鰻を巻きつける前に、金剛さんのせいろ蒸し用の鰻だけは、先に焼いてしまいます。せいろで蒸す分の時間を考えれば、このタイミングで大丈夫でしょう。それにしても・・・流石に金剛さんと私の会話を聞いていた他の艦娘達は、このタイミングで注文を入れる事を遠慮してくれていますので助かっていますが、金剛さんからの嫌がらせに等しい注文は今も続いています。

 

「ヘイ、鳳翔!。ビール追加お願いしマ~ス。それと、グラスが汚れてしまったから、グラスの取り替えもお願いしマ~ス。後、待っている間にお腹が空いたから、何かツマミも注文したいネ。ほら、比叡達も遠慮せずにガンガン注文するデ~ス。今日は私のおごりネ。」

 

「お・・・お姉様、注文はそれくらいに・・・」

 

「はいはい。赤城さん、金剛さん達のテーブルに新しいグラスを持って行ってください。後麦酒の瓶も持っていってくださいね。それと、冷蔵庫の一番上におつまみ用に作ったほうれん草の白和えがありますから、それを小鉢に取り分けて出してあげてください。」

 

「は・・・はぃ、鳳翔さん。赤城、頑張ります。」

 

手伝いの赤城さんが居てくれて本当に助かりました。もしこれが私一人だけでしたら、流石にパンクしていたでしょう。それに・・・金剛さんと一緒に居る榛名さんは、更に小さくなっていますし、比叡さんや霧島さんは、金剛さんを止めようとしていますから、孤立無援という状態ではありません。もう少しですから頑張ります。

 

さて、焼き始めたせいろ蒸し用の鰻の焼き加減に注意しながら、先程の牛蒡に串を打ってから鰻を螺旋状に巻きつけていきます。巻きつけた後は、焼いている途中で分解しないように竹皮と糸でしっかり固定して・・・これで大丈夫ですね。後は一気に白焼きにするわけですが、これを焼くタイミングは、比叡さん達の鰻と同時になりますから、少しだけ先です。どうやら金剛さんの鰻が、良い感じで白焼きになりましたね。後はタレをつけて・・・あぁ、いい香りが出てきました。急いで、せいろの準備とご飯を準備します。

 

よし・・・せいろ蒸し用の鰻は完成です。これを先程準備したせいろに入れたご飯の上に載せて・・・錦糸卵も載せます。後は蒸すだけですね。そして、それと同時に残りの三人分の鰻と、八幡巻きも焼き始めます。ここまで来れば、あと少しですね。なんとかベストタイミングで料理を出せそうです。一応、私の意地は見せる事が出来ました。

 

「赤城さん、金剛さん達の料理が出来ましたから、全部持って行ってください。」

 

幸いな事に、ほぼ同時のタイミングで全ての料理が完成しました。鰻丼の中入り、白焼き、うな重、せいろ蒸し、そして八幡巻き。どれも自信作です。あとは、金剛さん達が満足してくれれば・・・あらあら、少なくとも三人は問題なさそうですね・・・うれしそうに食べてくれています。それに・・・金剛さんも、苦虫を噛み潰したような顔で、一心不乱に頬張っていますね。文句が言いたいけど言えない・・・といった所でしょうか。どうやらこの勝負、私の勝ちのようです。

 

「う~ん、やっぱり鰻丼は最高です。ご飯の中から更に別の鰻が出てくるのは、感動です。金剛お姉様、今日はお姉様が奢ってくれるので、比叡も安心して二匹分の鰻が食べられます。ありがとうございます。」

 

「は・・・榛名感激です。鰻もしっかり脂が乗っていて美味しいです。こういう美味しい鰻は、白焼きのような山葵醤油であっさりした食べ方が最高だと思います。金剛お姉様、今日は本当にありがとうございました。榛名感謝です。」

 

「流石に鳳翔さんのお店のうな重ですね。こんなに綺麗なお重で出してもらえるとは・・・私も脱帽です。やっぱり美味しい料理は、美味しい器でいただく・・・しかもお姉様の奢りとなれば、最高ですね。」

 

三人の妹達は、物凄くうれしそうな顔をして食べていますね。これ程嬉しそうに食べてもらえると、私も頑張って作った甲斐がありました。それにしても・・・金剛さんだけは、難しい顔をしていますね、少し追い打ちをしましょうか。今回は私もかなり苦労しましたし・・・これくらいの事は許されるでしょうから。

 

「金剛さん、いかがですか?一応、味には自信があるのですが、美味しくなかったですか?」

 

「くっ・・・お・・・美味しいネ・・・。」

 

・・・それでも一応は、美味しいと言ってくれる所は、金剛さんなりのプライドといったところでしょうか。自慢ではありませんが、今回の八幡巻きとせいろ蒸しは、今の私にはこれ以上は出来ないと言えるくらいの自信作です。

 

「そうですか、現在の秘書艦の金剛さんにも喜んでもらえて、あの人の正妻として本当に良かったです。」

 

「くっ・・・鳳翔・・・。でも残念だけど、おそらく私、近い内に秘書艦ではなくなるネ・・・。だから、今日はちょっと鳳翔に意地悪しに来たけど・・・今回は完敗デ~ス。」

 

エッ?私はあの人から秘書艦が交代するという話は聞いていませんし、これは初耳です。見れば、比叡さん達も神妙な顔をして私と金剛さんを見ていますし・・・どういう事でしょうか・・・。まさか・・・

 

「金剛さん、私はあの人から金剛さんが交代するという話を聞いた事ありませんが、それは本当ですか?」

 

「たぶん本当デ~ス。最近、提督は執務室を抜け出して、あの娘達の部屋にばかり行っているネ。だから、たぶん私は近い内に秘書艦を解任されると思いマ~ス。」

 

あの娘達???これは、聞き捨てならない言葉です。比叡さん達も何か凄く言いづらそうな雰囲気ですし・・・。ふと周りを見れば、赤城さんを含めて一航戦と二航戦の正規空母の娘達もヒソヒソ話しています。どうやら彼女達もあの人が誰の所に行っているか、知っているようですね・・・。少し聞いてみますか。

 

「加賀さん、金剛さんからは言いづらいようですから、あなたに聞きますけど。あの人は誰の所に行っているのかしら?知っているのですね?」

 

「その・・・」

 

加賀さんもなぜか知りませんが、凄く言いづらそうです。あの冷静な加賀さんでしたら、直ぐに答えると思ったのですが・・・一体誰なのでしょうか・・・。しかし、ここは今後のためにもしっかり聞いておかなければいけません!

 

「加賀さん!」

 

「そ・・・その・・・最近、提督は五航戦の部屋に・・・」

 

『ミシッ』・・・あら、いけませんね。なぜか知りませんが、使っていた金串が折れてしましました。使い過ぎて劣化していたようですから、新しい物に買い換えなくてはいけませんね。それにしても・・・五航戦のあの子達ですか・・・。最近私のお店に顔を出していないのは、そういう事だったのですね・・・。

 

「Oh…鳳翔、怒っているネ。ひょっとしたら、私の勘違いかもしれないデ~スから、翔鶴や瑞鶴を怒らないで欲しいデ~ス。」

 

「いいえ、金剛さん。私は怒っていないですよ。それに、浮気は男の甲斐性とも申しますし・・・あの人の多少の火遊びは覚悟していましたから・・・。」

 

『ミシッ・・・ミシッ』あら・・・今日はたくさん鰻を焼いたので、金串が相当数劣化してしまったみたいですね・・・。新しく一式買い直した方が良さそうです。金剛さんは若干引き気味ですし、比叡さん達は下を向いてしまっています。ですが、あの人の浮気性は覚悟していましたから、私はそれ程怒っていない『つもり』なのですが・・・。あっ、折角ですから今のうちに加賀さんに伝えておきましょう。

 

「加賀さん?もうすぐ、あなた達正規空母を中心とした作戦が開始されると聞いています。ですから、作戦開始前にあなた達正規空母を激励するために、一度私のお店に招待しようと思っていました。『五航戦の娘達も誘って』『必ず』来てくださいね。」

 

・・・私はただ激励してあげようと思って招待しているだけなのですが、加賀さんは震えていますし、飛龍さんや蒼龍さんも私と視線を合わせません。赤城さんに至っては、『出前がどうの』などと言って店外に出ていきましたし・・・変な事を考えていなければ良いのですが・・・。

 

「加賀さん・・・お返事は?」

 

「っ!は、はい、お母さん。必ずあの子達も連れてきます。」

 

加賀さんらしい良いお返事ですね。ですが、あなた達ももう一人前なのですから、私の事は『鳳翔さん』と呼ぶように言い聞かせてあった筈ですが・・・気が動転して忘れてしまったのでしょうか。私は怒っていない『つもり』なのですが・・・。いずれにせよ、そうと決まれば、今日の臨時の鰻屋が終わりましたら、あの娘達の激励会の下準備をしなくてはいけませんね・・・フフフ。

 

 

 

正規空母『加賀』

 

 

金剛さんが余計な事をお母さんに話した時、私達正規空母娘の間で時間が止まったような感じがしました。お母さんは、普段は私達に凄く優しいのですが、時々笑顔で怒りを貯めている事があります。お母さんは笑顔のつもりなのですが、今までお母さんの近くで育ってきた私達には怒っている事はすぐに分かりました。私もあの後お母さんから、『提督は誰のところに行っているの?』と問い質されましたが、あまりの怖さに一瞬口篭ってしまいました。それに、思わず昔の癖で『お母さん』と言ってしまった気もします。

 

私は栄光の第一航空戦隊主力として、赤城さんと共にこの鎮守府の最大戦力の一人という自負があります。そして私が搭載している艦載機の子達は非常に優秀で数も多いため、この鎮守府内に私よりも強い艦娘は数える程しかいません。しかしその数少ない艦の中に、本気で怒った時のお母さんがいます。勿論艦載機の数は、私の方がはるかに多いのですが、お母さんが持っている艦載機の子達は、第一線を離れた今となっても、私の艦載機の子達ではとても勝負になりません。ですから、笑顔でも内心で怒っているお母さんは、今でも本当に怖いと感じてしまいます。

 

・・・途中で赤城さんは逃げてしまいましたし、二航戦の二人も知らない振りをしてソッポを向いていますが、その気持ちは私にもよく分かります。それにしても・・・この私を、こんなに緊張させた五航戦のあの子達・・・どうしてやりましょう。とりあえず、お母さんが言っていた『激励会』には、首に縄をかけてでも連れて行かなければなりませんが、それだけでは私の腹の虫が収まりません。今日は消灯時間が過ぎたら、久しぶりにあの子達に『整列』をかけて、海軍精神をしっかり叩き込んであげなくては・・・。・・・腕がなります。

 




五航戦終了のお知らせ・・・(個人的には五航戦の鶴姉妹は好きですけどw)。

鰻・・・美味しいですね。私は昨日の日曜日に鰻丼を食べてきました。やはりこの時期、なんとなく食べたくなります。金剛さんが注文した八幡巻きも大好きですが・・・これを普段ではなく、土用丑の日で忙しい鰻屋で注文するのは・・・w。またせいろ蒸し、これもご飯までしっかりタレが染み込みますので美味しいのですが・・・やはり一手間余分にかかるので・・・。

個人的には榛名の食べた白焼きもあっさりしていて好きなのですが、一番好きなのは今回のお話では出てきませんでしたが、『ひつまぶし』だったりします。あれ、色々な食べ方が出来て味に変化が出るので、いいんですよね^^;。

ちなみに、この『鎮守府の片隅で』は、基本的に私の鎮守府がモデルになっているため、大鳳は実装されていません・・・いつ実装されるのやら・・・。また、鳳翔さんのレベルはカンスト、その他の正規空母娘はレベル110代 (あれ?これだと全員鳳翔さんに怒られるパターンでは・・・w)、金剛四姉妹はレベル90代の設定となっています(今日のメンテで、めでたく全員が改二になりました)。ですから、鳳翔さんはこれ以上経験値が入らないため、第一線から退いた・・・という状態です。そのため例え一航戦といえども、鳳翔さんが怖い・・・な感じになっています。

金剛さんの余計な発言で、大ピンチの五航戦ですが、どうなるんですかね・・・。鳳翔さん的には、『ちょっとチクリと言ってやりましょうか。』くらいの怒りですが(『浮気は男の甲斐性』なんて発言しているくらいですから、鳳翔さんの価値観は戦前のままだったりしますw。)、周りの加賀さん達が、勝手に暴走しそうです・・・。おそらくこの後、加賀さんが五航戦の二人に対して『整列』をかける事になると思いますが、間違いなくR18は行かないまでもR15くらいにはなってしまいそうなので、この場面は書きませんw。

次回は、今回のお話で出てきた正規空母達の激励会のお話になると思います。それが終わったら、しばらくイベント専念のために、投稿はお休みですかね^^;。

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