鎮守府の片隅で   作:ariel

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前回のあとがきでは、次はイタリヤ戦艦!と書いていたのですが、ちょっとイタリヤ戦艦でお話を考えた際、これは作戦終了後の話にした方が良さそうだな…と思いまして、急遽作戦中の設定で長良型軽巡洋艦に登場してもらう事になりました。私の鎮守府ではお留守番が多い長良型なのですが、時々ワンポイントで良い仕事をしてくれる縁の下の力持ち的な艦娘だったりします。という事で今回は、お留守番組のお話です。


第五〇話 由良とアスパラのベーコン巻

「はぁ…私達長良型軽巡姉妹、折角全員揃ったのに、今回の作戦から全員外されている。…私達だって、もっと働けるのに…。私達古いから、冷や飯食わされていると思うわ!…そう思わない、長良姉さん?」

 

「五十鈴…そんなに怒らない。いつ出番が来てもいいように、毎日走りこんで…って、前もこんな話をした気が…。」

 

「そうですよ、五十鈴姉さん。由良たちにだって、きっとまだ出番はあるはずです。」

 

多くの艦娘達が作戦行動のため遥かインド洋方面に出撃中ですが、当然の事ながら鎮守府防衛のためのお留守番組がいます。そして、そんなお留守番組の軽巡洋艦姉妹達が、今日は私のお店の一角を占領して管を巻いています。私に言わせてみれば、鎮守府の防衛も大切な任務ですし、それ程落ち込むような話ではないと思うのです。たしかに長良さん達六姉妹は、今回の作戦では全員がお留守番組ですが、先日のトラック沖における反撃作戦では、姉妹揃って大活躍をしていましたし…あの人から冷遇されているとは思えません。

 

それに今回は、うちの五航戦姉妹や、あの金剛さんも留守番組ですし…前線に出ていないから冷や飯…というのは、少し違う気がするのです。とはいえ、六人姉妹全員が作戦から外されているというのは、ちょっと気にしているようですね。以前、AL/MI作戦時もそうだった記憶がありますが、今回も少し美味しい物を料理して、長良さん達を元気づけてあげた方が良さそうですね。

 

(ガラッ)

 

あら?珍しいお客さんですね。北方艦隊に所属している重雷装巡洋艦の木曾さんが来店です。我が国の北方海域守備を担当する北方艦隊からは、今回の作戦に一部の艦娘が主力部隊の一員として合流していますが、木曾さんは北方艦隊所属のままだったと思いますから、本来ですとここには居ない筈の子です。何かあって、あの人から鎮守府に呼び戻されたのでしょうか。

 

「おっ、鳳翔さん。流石に作戦中だと、鳳翔さんの店もすいているな。まっ、俺にとっちゃ好都合だけどな。あっ、これ今回の土産な。はぁ…やっぱり俺の予想通り、あいつ等は留守番組か…。あのさ?あそこでウダウダしている奴らに、これで何か食べさせてやってくれよ。多少元気になると思うからさ。」

 

「まぁ、見事なアスパラガスですね、木曾さん。いつもいつも本当にありがとうございます。しかし木曾さんも、今回の作戦に参加出来なくて残念だったのではないですか?それに、木曾さんは北方艦隊所属のままだったと思いますが、今日は何かあったのですか?」

 

「ちょっと北方艦隊の件で用事があって、提督から呼び出されたから顔を出しただけさ。あと、アスパラガスは来たついでに持ってきただけだから、お礼なんていいってことよ。まぁ、確かに俺も作戦には参加したかったけど、うちは球磨の姉貴達が作戦に参加して頑張っているみたいだからな。それに…俺や多摩の姉貴まで北方艦隊から引き抜かれちまったら、北の守りががら空きになっちまう…。…まったく…摩耶の姉御まで今回の作戦に引き抜かれちまったから、那珂達が増援に来てくれたけど、こっちは大変なんだよ。提督も、あそこでウダウダしている軽巡の一人でもいいから、那珂達と一緒に北方艦隊に派遣してくれってもんだよ…なぁ?」

 

「え~っ、阿武隈はキス島作戦で北方海域に一度行った事あるけど…寒いのはもう嫌です。あたし的には、北はもう嫌なんですけど…。」

 

たしかに、北方艦隊から主力の摩耶さん達が引き抜かれた分、木曾さん達は哨戒活動で大変な事になっているようですね。とはいえ、その増援として長良さん達を北方海域に派遣する事になった場合、今回の作戦に参加出来なかった事でやさぐれていますので、今以上に『左遷された!』と騒ぎだす気も…。おそらくそのリスクを考慮して、あの人も北方艦隊の支援として、那珂さん率いる第四水雷戦隊の主力を増派したのだと思います。しかし…阿武隈さん?活躍はしたいけど、寒いのは嫌!というのは、わがままな気もしますよ?

 

「木曾さんが言いたい事は分かりますが、長良さん達は今回の主要作戦からは外されていても、鎮守府正面の哨戒活動で頑張っているのですよ。ただ…私自身はこのような裏方作業も非常に重要だと思うのですけど、長良さん達は割り切れないようですね。まぁ、たしかに木曾さんがはじめに言っていたように、美味しい料理でも食べて、早くいつも通りの元気になってほしいですね。」

 

まさに木曾さんが言ったとおり、こんな事は気の持ちようですから、ちょっとした切欠があれば直に立ちなおると思います。私の料理がその切欠になってくれれば嬉しいのですが…。折角の北海道の立派なアスパラガスがありますし…これを使って、少しでも気分が明るくなるような料理…何を作りましょうか。こういうのは、本人達に希望を聞いた方が良いですね。

 

「あの…長良さん、それに皆さん。木曾さんがアスパラガスを持って来てくれたので、これで料理を作ろうと思いますが、何かリクエストはありますか?今日はそれ程お客さんも居ませんし、皆さんの好きな料理を作りますよ。」

 

「う~ん…五十鈴達のような大正生まれの古い巡洋艦には、アスパラガスなんていうハイカラな野菜は…。長良姉さん、何かない?」

 

「…たしかにアスパラガスで料理と言われても…ねぇ?塩茹でしてマヨネーズつけたら美味しいかな?」

 

「長良姉さん…たしかに、茹でるだけでも美味しいと思うけど…折角だからもうちょっと料理らしい料理頼みましょうよ。…えっ?だったら名取が決めろって?…私もアスパラガスの料理なんてよく知らないから…。す、すみません。古くって…。」

 

「あたし的には、なんでもOKです!」

 

「阿武隈らしいね…って、鬼怒も好き嫌いはないから、何でもいいよ。」

 

たしかに、これだけ立派なアスパラガスですから、長良さんが言ったように茹でてマヨネーズをつけただけでも十分に美味しいですし、シンプルですがある意味最も美味しい食べ方かもしれません。私としては、もう少し違う物を考えていたのですが、皆さんそれが良いと言うのでしたら、それにしましょうか。

 

「…長良姉さん?もし特にリクエストがないなら、由良がリクエストしていいかな?ねっ」

 

そういえば、まだ由良さんが会話に参加していなかったですね。四女の由良さんは、長良さん姉妹の中では少し物静かなため、よほどな事がない限り自分の希望を通そうとはしないような気がしますが、今回は姉妹達全員が特に希望を出さなかったため、自分の希望を出そうと考えているようですね。

 

「由良さん?何か希望がありましたら、長良さん達は何でも良いようですから、由良さんの希望の料理を作りますよ。何がいいですか?」

 

「その…由良もあまりアスパラガスの料理は知りませんけど…アスパラガスとベーコンを使った料理があると聞きました。それをお願いしますね。」

 

「ほぉ~、またハイカラな料理を注文するんだな。折角だから俺も一緒に食べていくよ。鳳翔さん、こっちにもよろしく頼むわ。」

 

木曾さんも一緒に食べていくのですね。それに座敷の方には五航戦の二人と葛城さんも居ますし、ちょっと余分に作りましょうか。それにしても…アスパラとベーコンですか。スープなどで両方を具にする料理も美味しいと思いますし、アスパラとベーコンを合わせるのは、アスパラ料理ではよくあります。しかし今回は、定番中の定番かもしれませんが、アスパラをベーコンで巻いて焼くだけの、シンプルなアスパラのベーコン巻でも作りましょうか。お肉の旨みとアスパラの歯ごたえや甘味を楽しめば、きっと長良さん達は元気になってくれると思います。

 

それでは単純な料理なので、すぐに作ってしまいましょうか。まずはアスパラの下処理からですが、これだけの大きさの立派なアスパラガスですから、このまま巻いてしまうと流石に大きすぎます。とりあえず、アスパラの根本は固いのでこの部分を切り落としてしまいます。根元の歯応えがある部分は、それはそれで美味しいのですが、筋っぽい部分も残ってしまうので、今回は根本の部分は完全に除去してしまいましょう。

 

次は、アスパラの根本に近い部分の皮とハカマを取り除かなくてはいけません。この部分の皮は噛み切る事が難しい程固い場合がありますので、食べやすさを考えた場合、少し面倒ですが予め取ってしまった方が良さそうですね。…大体、皮が剥けましたね。それでは今度はベーコン巻を作るために、アスパラの大きさを揃えなくてはいけません。いつもでしたら真ん中の部分で半分に切れば良いのですが、今回木曾さんが持ち込んだアスパラは非常に大きいですから、三等分しておきます。

 

切り終わったアスパラは、一度塩茹でして柔らかくしてしまいます。この時に茹で過ぎますと、折角のアスパラの歯応えが損なわれてしまいます。ですから、全体的に火は通しますが、歯応えが残るようにサッと短い時間だけ茹でてしまいます。そして粗熱を取り除いたらしっかり水気を取り除いて…これでアスパラの下準備は終了ですね。

 

それでは、茹であがったアスパラをベーコンで巻いていきます。ここで気をつけなくてはいけないのは、オーブンで焼き色をつける間に、折角巻いたベーコンとアスパラがバラバラにならないように固定しなくてはいけませんから、巻き終わりの部分を爪楊枝で止めておきましょう。また今回は一本のアスパラを三分割していますので、一枚のベーコンで一本分のアスバラガスとなるように、三つのアスパラを一度に巻いていきます。

 

!そうです。折角ですから、単純なアスパラのベーコン巻ではなく、一緒にチーズも巻いてしまって、より複雑な味や香りを楽しめるような料理にしましょうか。そうと決まれば、チーズが溶けてもベーコンの外側にこぼれないように、ベーコンよりも少し小さめに切ったスライスチーズをベーコンに乗せて、ここにアスパラを合わせて巻いていきます。本来のアスパラのベーコン巻の場合、少しだけ塩コショウをまぶしてからアスパラを巻く事で塩味を調整しますが、今回はチーズを一緒に巻いていますので、塩味は十分な筈です。ですからこのままでも十分なのですが、今回はここに少しだけ七味唐辛子を振る事で、ちょっとしたピリ辛感も楽しめるように演出を加えておきましょうか。

 

これで全ての準備は完了しました。後はオーブンでしばらく焼いて、焼き色がつけば完成です。今回はチーズも使っていますので焼き過ぎは禁物です。ですから高温で短時間のうちに焼き色をつけてしまう方が良いと思いますので、オーブンは250℃という高温に余熱しておきます。この温度で数分焼けば、チーズが少しだけ溶けて、さらにベーコンの表面にしっかり焼き色がつくでしょうね。…そうですね、今回は5分もオーブンに入れておけば、アスパラにはあらかじめ火が入っていますので、問題なさそうですね。

 

 

良い感じで焼き目がつきましたね。チーズも外にはこぼれていませんが、十分に柔らかくなっているように見受けられます。由良さんからのリクエストでしたが、満足してもらえると嬉しいですね。

 

「由良さん?リクエストしてもらったアスパラのベーコン巻です。今日はしっかり楽しんでくださいね。長良さん達も、これを食べて元気になってくださいね。」

 

 

 

軽巡洋艦 由良

 

 

『今回も私達長良型軽巡姉妹は、鎮守府でお留守番…』なんて、五十鈴姉さん達は騒いでいます。ですが由良達の仕事だって凄く重要だという事は、提督や秘書艦の金剛さんからも説明されていますから、勿論皆分かっています。ただ…前回のトラック沖作戦で大活躍した由良達だっただけに、今回も前線で戦えると思っていた矢先の出来事なので…。

 

だから、今日鳳翔さんのお店に来て、何か美味しい物を食べて気分転換しよう!と姉さん達が言い出したのは、本当に良い事だったと由良も思っているのよね。そしていつもどおり、姉さん達は大好物の『鶏の唐揚げみぞれ和え』を注文しようとしたら、丁度北方艦隊の木曾さんが戻ってきて、アスパラガスを鳳翔さんに渡しました。アスパラガスは丁度由良達が生まれた頃にこの国で栽培され始めた野菜。鳳翔さんは由良達に好きな料理を…と言ってくれたけど、古い由良達はそんなハイカラな料理はほとんど知らないから…。でも、いつか雑誌でアスパラガスとベーコンが凄く合うという記事を由良は読んでいたから、思い切ってそれを注文したのよね。

 

しばらく待っていると、由良達の前に大皿でアスパラガスをベーコンで巻いた料理が出てきました。ベーコンにはしっかり焼き目が入っていて、さらに表面がまだジュージュー言っている、とても美味しそうな料理…。熱い内に食べないと…ねっ。それに早く由良も自分の分を確保しないと、姉さん達がもう既に両手で料理を確保し始めています。

 

とりあえず、まずは一口。丁度一口で食べやすい大きさになっているから、このままかぶり付こうかな。いいんじゃない!とっても美味しい!由良が想像していた味とは少し違う…と言うか…想像以上じゃない!てっきりベーコンでアスパラガスを巻いているだけのシンプルな料理だと思っていたのに、一口食べるとベーコンとアスパラガスの間にチーズが溶けていて…このチーズの香りとベーコンの少し焦げた香りが最高よね。

 

それに、オーブンで表面が少しだけカリッとしたベーコンの食感。でもベーコンの内側はまだ柔らかくて…アスパラガスの柔らかいけど食べ応えのある食感と本当に合うわ…。ベーコンを噛んだ時に出てくる旨味と塩味、それとアスパラガス特有の野菜のやさしい甘みが、溶けたチーズの香りと口の中で混じると…これは止まらないわね。あと…この…時々舌の上で感じる、ピリッとした辛さ。普通の唐辛子とは違うと思うけど…この僅かだけどしっかり感じられるピリ辛さが、癖になりそう!

 

次…そう早く次のアスパラガスのベーコン巻を確保しないと…。こんなに美味しい料理、ぐずぐずしていたら姉さん達や、こういう時は全く遠慮がない妹達に全部食べられてしまうんじゃ…そうはさせない!チラッと姉さん達の姿を見ると、次々に皿から料理を取って、黙々と口に運んでいるわね…。最初の料理を味わって食べていた由良は、ちょっと出遅れた気が…でも負けないから!

 

この料理なら、落ち込んでいた由良達もあっという間に元気になりそうよね。姉さん達も、鳳翔さんに色々な料理を次々追加注文しているし…作戦待機中でお酒は飲めないですけど、今日は楽しい時間が過ごせそうよね。ただ…一応作戦待機中だから、あまり食べすぎないように気をつけないと…ねっ?姉さんや妹達は次々食べているけど、大丈夫…よね?

 

 

 

鳳翔

 

 

…今回の料理、長良さん達を元気付ける事に成功したようですね。私がお出ししたアスパラガスのベーコン巻はあっという間に皆さんの胃袋に消えていきましたし、それを皮切りに次々と追加注文が入ります。長良さん達も凄く嬉しそうにおしゃべりを始めましたし…どうやら、もう大丈夫なようですね。やはり美味しい料理は、人の心を豊かにする…というのは本当のようです。

 

「私達と同じくらい古い球磨型なんかに、私達長良型軽巡洋艦は負けないよっ!もっと走りこんで、私達の強さを見せないとっ!今日は一杯食べて、元気つけるよっ!」

 

「オーッ!」

 

「な…なぁ、元気なのはいいんだけど、俺はその球磨型なんだけど…って聞いてないや…。」

 

 

「川内型がなんぼのもんよ!五十鈴だって、第二水雷戦隊の旗艦を勤めたのよ。私達よりちょっとだけ新しいからと言って、負けないわ!さぁ、どんどん食べて力つけるんだからっ!」

 

「オーッ!」

 

「いやいや…流石にあの神通とサシでやりあったら、やばいだろっ…。俺でもやばいんだからさっ…。」

 

 

「最新鋭の阿賀野型だって、あたし的には大した事ないんですけどっ!錬度だったら、絶対に負けないんだからっ!どんどん食べて、強くならないとっ!」

 

「オーッ!」

 

「お…おぃ、流石にそこまで言ったら盛りすぎだろっ!それに・・・その阿賀野型の酒匂がすぐそこに居るし…。この俺だってそんな怖いもの知らずな発言はしないぞ。お前ら、酒飲んでないよなっ?なんでそんなにハイテンション…っていうか、食べすぎだって。」

 

…元気になったのは良いのですが、どんどんテンションが高くなっていますし、怪気炎をあげています。それに…近くに居る木曾さんが心配しているように、こんなにも注文して食べてしまって大丈夫なのでしょうか。たしかにお酒は飲んでいませんから、急な出撃にも対応は…いえ…そろそろ止めないと、いくらお酒を飲んでいなくても、動けなくなってしまう気がします。

 

 

…ちょっと止めるのが遅すぎましたね。私も長良さん達に元気になってもらいたいという気持ちが強かったので、彼女達の注文にあまり疑問を持たずに料理を作っていた…という理由もありますが、まさかこんな状態になるまで食べ続けるとは…。

 

長良さん、五十鈴さん、そして名取さんは積載オーバーのようで、お腹を上にして転覆中ですし、お調子者の阿武隈さんと鬼怒さんも、完全に積載オーバーのようでお腹をさすっています。これではおそらく重油満載のタンカーよりもスピードが出ないのではないでしょうか…。まともに動けそうな子は由良さん…だけのようですね。座敷に居た空母娘達や、木曾さんは、流石に自重していたようですが、カウンター席の惨状を呆れたような表情で見ていますね…。

 

(ガラッ)

 

あら?加賀さんが駆逐艦の子を連れて来店しましたが、完全武装ですし、これから出撃するのでしょうか。

 

「鳳翔さん。どうやら作戦の最終局面になったようで、私も含めて作戦中の全ての正規空母娘に対して、リランカ沖に集結するようにとの命令が出ました。私もこれより出撃します。提督からは、リランカ沖までの護衛駆逐艦をつけてもらい、長良型軽巡洋艦も一人連れて行くように…と言われたのですが…これは…。」

 

加賀さんの眼前には、長良型軽巡洋艦姉妹の惨状が広がっています。折角出番が来たというのに、これは…。この状態では、誰が行くのか言うまでもありません。満足に動ける子は由良さんしかいないのですから、必然的に由良さんが出撃する事になると思います。由良さんは降って沸いた幸運にガッツポーズをしていますが、他の姉妹達…特に五十鈴さん辺りはかなり悔しそうな表情をしています。とはいえ、流石にこれは自業自得ですね。

 

…しかし加賀さんの護衛の面子を見ますと、作戦の最終局面でかなり厳しい戦いが待っているようです。加賀さんを確実にリランカ沖に届けるためだと思いますが、現在の鎮守府に残された数少ない精鋭部隊であり、秘書艦の金剛さんの直属部隊でもある第十六駆逐隊の浦風さん、浜風さん、そして谷風さんが護衛に入るようですね。どうやら、あの人も金剛さんも、最終作戦で加賀さんの力がどうしても必要だと判断したのでしょうね。出撃に興奮していた由良さんも、護衛艦の面子を見てかなり重要な任務になると認識したのか、少し緊張気味です。

 

「加賀先輩、どうか武運長久を…。赤城先輩達にもよろしくお伝えください。私達五航戦は、鎮守府をきちんと守りますから、後ろの事は気にせず、安心して戦ってきてください。」

 

「ありがとう、翔鶴。ここでヘマをするつもりはありません。それと葛城、そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫です。」

 

「あ…その…加賀先輩?あんまり慢心して沈まないでよねっ。加賀先輩達に沈まれると、瑞鶴達が一航戦にならないといけないから、べ…別に心配している訳じゃないけど、気をつけて戦ってきてよねっ!」

 

「…心配無用よ、五航戦。貴方のような未熟な空母に、一航戦の看板を譲るつもりはないわ。」

 

「なっ…」

 

流石に留守番組の五航戦の二人と葛城さんも心配そうですね。瑞鶴さんも口では悪態をついていますが、実際はかなり心配そうな表情ですし…。それに引き換え…

 

「長良姉さん達? 由良のいいところ、見せてきます!」

 

「肝心な所で不覚…私も走りたかったなぁ…」

 

「五十鈴…もっと働ける!…のに、肝心な時に無理しちゃったかな…」

 

「食べ過ぎたのは私の責任…これは…仕方ないこと…ね。」

 

「き…鬼怒もここまでのようね…やらかしちゃったよ…。」

 

「やっぱあたしじゃムリ……? でもこのまま出られないなんて…イヤ!」

 

嬉しそうな由良さんとは対照的に、長良さん達姉妹はお腹をさすりながら、とても悔しそうな表情でお見送りのようですね…。折角、美味しい料理で元気になった筈なのですが…また元の木阿弥に戻りそうです。…困ったものです。




皆さん、今回のイベントはいかがだったでしょうか?来週の月曜日に終了のようですが、私もなんとかE6まで完走出来、酒匂も登場したので満足してイベントを終える事が出来ました。また今回のお話で登場させた由良を、久しぶりにE6で使う事になりまして…まさに今回のお話は私の鎮守府のお話だったりしますw

さて、アスパラガスのベーコン巻。今回のお話を書くにあたって、アスパラガスの歴史を少し調べてみたのですが、我が国で初めてアスパラガスが栽培されたのは、今回登場した長良型軽巡洋艦が登場する1920年代の前半、1922年だったようです。そして1924年にアスパラガスの缶詰工場が稼動したようですから、当時はハイカラな食材…というイメージがあってもおかしくないかな…と思い、今回のようなお話にしてみました。

アスパラガスのベーコン巻ですが、私も普段はチーズを入れずにシンプルに料理します。ただ時々ですが、今回のようにベーコンとアスパラの間にチーズを入れて、チーズを少し溶かして味や香りを変化させたり、七味を入れてピリ辛を楽しんだりとアレンジをしていますので、今回はそんなアレンジしたアスパラガスのベーコン巻を登場させました。通常のものよりもボリュームがありますし、ピリ辛も意外と合うので是非トライしてもらえたらな・・・と思います。

しかし…この料理、私もそうなのですが、次の料理の呼び水になりやすい危険な料理かもしれません。流石にこれだけではお腹は膨れないのですが、この料理を起点に始まるコンボが胃袋に決まると、多くの場合食べ過ぎてしまっている感じが…^^;。という事で、この種の料理を食べる時は、最近は自制心を強くもって食べる事にしていますw

今回のレシピは…食べられるだけという事で、具体的な量は書いていませんが、ベーコン一枚に対してアスパラ1本(二分割した場合はアスパラ二つをベーコン一枚で巻く)な感じで読んでください。


アスパラガスのベーコン巻(チーズ入り)

ベーコン  :巻く分
アスパラガス:食べられるだけ
チーズ   :ベーコンと同じ数(ただしベーコンよりは少し小さめに切る事)
七味唐辛子 :適量
塩     :適量(チーズだけでは塩味が足りない場合、味の調整用)
胡椒    :適量(同上)


今回も読んでいただきありがとうございました。

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