鎮守府の片隅で   作:ariel

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今回は新規参入組ですが、正規空母葛城の物語にしました。この子、お気に入りの空母娘である瑞鶴にどことなく似ていまして、凄く気に入りました。台詞でも瑞鶴との絡みがありますし…これは育てなければ…と思いながら、今回の話を作ってみました。料理の方は、柔らかい春キャベツを使って作る洋食です。


第四九話 葛城とロールキャベツ

「ほ…鳳翔さんっ!か…葛城、本日付で呉鎮守府に着任いたしましたっ!こ…こ…これから、ご指導ご鞭撻よろしくお願いしますっ」

 

「あら?葛城さんですね。先の大戦ではこちらこそ終戦後にお世話になりました。そんなに固くならなくても良いですよ。残念な事に今は作戦中ですから、ほとんどの空母娘は出撃中ですが、五航戦の翔鶴さんと瑞鶴さんはこの鎮守府で待機中ですから、もうすぐここに来ると思いますし…とりあえずカウンター席にでも座って待っていてください。」

 

私が所属しています鎮守府は、現在インド洋方面で、欧州との連絡線を確立するため、多くの艦娘を動員した大作戦に従事しております。そのため主力を担うほとんどの艦娘達が出撃中ですが、以前のAL・MI作戦時、主力部隊が出撃中に本土に直接攻撃をかけられた苦い経験から、大本営は私達の鎮守府に対して、増援として新鋭正規空母を護衛付きで配属してくれました。

 

昨夜あの人から聞いた話では、先の大戦時に復員船として活躍した雲龍型正規空母の葛城さんと、護衛として阿賀野型軽巡洋艦の酒匂さん、さらに夕雲型駆逐艦の高波さんが配属されるという事でしたので、私も葛城さんに会えるのを楽しみにしていました。そして今日、あの人の元に着任挨拶に行ったその足で、私の所に葛城さんが挨拶にやってきました。葛城さんは非常に快活で元気な子だったと思いますが、今日の葛城さんはとても緊張した面持ちですね…。私のように既に現役を半ば引退した人間に、それほど緊張しなくても良いと思うのですが…。

 

まぁ、葛城さんが着任した話を聞いた五航戦の二人も、もうすぐここにやってくると思いますし、今日は簡単に歓迎会を行わなくてはいけませんね。

 

ガラッ

 

「鳳翔さん。あの…新しい正規空母の子が着任したと提督から伺ったのですが、もうこちらに来ていますか?」

 

「あっ、新しく来た子って、葛城だったんだ。久しぶりっ…と言っても、前は少しの間しか一緒じゃなかったけど。今度はずっと一緒だから、よろしくねっ!翔鶴姉、この子が新しく来た正規空母の葛城だよ。前の大戦では、少しの間だけ一緒だったんだ。良い子だから、よくしてあげてね。」

 

「瑞鶴先輩っ!よ…よろしくお願いします。それと…あなたが翔鶴先輩ですね?瑞鶴先輩からお話をよく聞かせていただきました。お会い出来て光栄ですっ!」

 

そういえば、先の大戦で少しの間だけ、葛城さんは瑞鶴さんを見ていましたね。あの当時、帝国海軍に唯一残された歴戦の大型正規空母として、機動部隊を支えていた瑞鶴さんの姿は、葛城さんにとって頼もしい先輩と映っていたのでしょうね。葛城さんはとても緊張した面持ちで瑞鶴さんに挨拶していますし、瑞鶴さんもそんな葛城さんの態度に満更でもないような感じが見受けられます。

 

「よっし!今日はこの瑞鶴が葛城に奢ってあげるね。もう聞いているかもしれないけど、鳳翔さんがこの鎮守府でお店を開いてくれたから、瑞鶴達はいつも美味しい料理が食べられるんだよ!という事で、今日は好きなの注文していいよ!」

 

「あらあら、瑞鶴ったら。新しく後輩の子が来てくれて良かったわね。そうね…折角ですから、今日は私達だけですけど葛城さんの歓迎会をしましょうね。鳳翔さん、今日は私と瑞鶴で払いますから、葛城さんに色々と出してあげてくださいね。」

 

「そ…そんな、尊敬する先輩方にそんな事をしてもらえるなんて。…あ…ありがとうございますっ!」

 

雲龍さんと天城さんが配属されたとはいえ、未だに加賀さん達から面倒を見てもらっている瑞鶴さんにとって、自分を純粋に尊敬してくれている葛城さんの存在は新鮮なのかもしれませんね。今日は気前よく奢ってあげるようです。とはいえ、今日は私も簡単な歓迎会をしてあげたいと思っていましたから、瑞鶴さんや翔鶴さんだけではなく、私からもご馳走してあげないといけませんね。作戦待機中ですからお酒は出してあげられませんが、何か美味しい料理を作ってあげましょう。おそらく正式な歓迎会は赤城さん達が戻ってからになると思いますが、今日は気楽に楽しんでもらえたら良いですね。

 

「葛城さん、今日は私が葛城さんが好きな料理を作りますから、なんでも言ってくださいね。」

 

「ありがとうございます、鳳翔さん!そ…それでは、何か洋食をお願いします。」

 

洋食…ですか。葛城さんは和食が好きな子だったと思うのですが、たまには何か違う系統のご飯が食べてみたいという事なのでしょうね。そうですね…洋食という事ですし、今日は春キャベツがありますから、この柔らかいキャベツを使ってロールキャベツでも作ってあげましょうか。

 

「分かりました、葛城さん。それでは今日はロールキャベツを作りますね。少し時間がかかると思いますので、先に何品かお出ししますから、翔鶴さんや瑞鶴さん達とゆっくりお話しして待っていてください。瑞鶴さん?申し訳ありませんが、適当にその辺りから料理を小分けして、持って行ってください。」

 

「は~い、鳳翔さん。了解~。適当に持っていくね。」

 

瑞鶴さんは私のお店でよくお手伝いをしてもらっていますから、どこにどの料理があるのかよく分かっていますので、後は任せてしまいましょう。それでは、私の方は急いでロールキャベツを作らなくてはいけませんね。

 

春キャベツは冬のキャベツとは違い、とても甘くて柔らかいキャベツです。ですからこれを使ってロールキャベツを作れば、とても柔らかい食感を楽しむことが出来ますし、キャベツそのものの甘味も感じる事が出来るのではないでしょうか。ですからサワークリームなどを使ったしっかりした味のロールキャベツではなく、シンプルなトマトソースの物にしてキャベツの味がよりはっきり楽しめる形で料理しましょうか。

 

それではまずは、キャベツの芯の固い部分を取り除いて、巻くためのキャベツの準備をしなくてはいけません。まずは芯を中心にして丸く包丁を入れて切り込みを作ってから、丸ごとキャベツを茹でてしまいます。こうすると、キャベツが勝手に剥がれていきますので、このキャベツの葉を使ってロールキャベツを作ります。…折角黄緑色の綺麗な葉ですし、色合いを良くする為に一度冷水に茹でたキャベツを浸して、色が抜けないようにしておきましょうか。後は一度水を切ってから、キャベツの葉に残った固い白い部分を包丁でそそぎ落して葉と同じ厚さにして巻きやすくしたら、キャベツの準備は完了です。

 

次は中に包む具材の準備ですね。これは定番の玉ねぎと挽肉で良いのではないでしょうか。まずは玉ねぎをみじん切りにして、バターを使って玉ねぎが飴色の透明になるまで、じっくり炒めておきます。そして一度冷やしてから、玉ねぎと挽肉で粘りが出るまで十分にボールの中で混ぜておきましょう。後はここにつなぎと下味を付けるため、卵の黄身、牛乳、塩、胡椒、パン粉、コーンスターチを入れてさらに混ぜていきます。…そうです、たしかベーコンが余っていましたし、折角ですから食感と食べた時の香に変化をもたらせる為に、これも少しだけきざんで、具材に混ぜておきましょうか。

 

これくらいで大丈夫でしょうか。それでは作った具材を準備したキャベツを使って包んでいきます。今回は挽肉がたっぷり入っていますし、ベーコンも入っていますから、料理の途中で肉汁がこぼれないようにキャベツ二枚を使って包みましょうか。まずは茹でたキャベツから外側の黄緑色が綺麗な葉と、内側の白っぽい葉を選んで二枚重ねます。

 

そして中央に具材を乗せて、片側から具材を覆うように折りたたむ事で一方の端を作ってしまいます。後は、折り曲げた側と90度異なる側から一気に巻く事でロールキャベツを作ってしまいましょう。最後に残されたもう片側を閉じるため、余ったキャベツの部分を指で真ん中に押し込んでいきます。これで肉汁などを完全に内部に閉じ込める事が出来るはずです。あとは…煮てる間に形が崩れないように、かんぴょうを使って中央の部分でロールキャベツを縛って準備完了ですね。

 

次は煮込むためのソースを作らなくてはいけません。まずは残っているベーコンを細かく切ってから鍋で炒めて、ここにみじん切りにした人参と玉ねぎを混ぜて炒めます。後は玉ねぎや人参に十分に火が通ったら、最後にホールトマトを粗く潰した物を投入して、白ワインを混ぜてアルコール成分が飛ぶまで一度火にかけます。これで煮込む準備は完了ですね。

 

それでは最後に、準備したロールキャベツを、ソースを作っていた鍋に敷き詰め、ここにローリエとチキンブイヨンを溶かした水を投入して、強火で煮込みましょう。途中でどうしてもアクが出ますので、これを取り除きながらになりますが、蓋をして45分程煮込んで完成です。葛城さん達は、楽しくおしゃべりしていますし、既に何品か料理も並んでいるようなので、これくらいの時間でしたら問題なさそうですね。

 

 

そろそろ良さそうですね。最後に塩と胡椒を使って味の調整をして、コーンスターチでソースの部分にとろみをつけたら完成です。お皿にロールキャベツを取り分けて、ソースを上からかけてから三人に出してあげましょう。

 

「葛城さん、それと翔鶴さんに瑞鶴さん。メインの料理が出来ましたよ。今日は葛城さんのリクエストに応えて、春のキャベツを使ってロールキャベツを作ってみました。熱いうちに召し上がってくださいね。」

 

 

 

正規空母 葛城

 

 

ついに葛城も、雲龍姉ぇ達の居る鎮守府に赴任出来たわ。雲龍姉ぇや天城姉ぇから話は聞いていたけど、この鎮守府にはあの瑞鶴先輩も居るんだから本当に嬉しいわ。しかも運が良い事に、瑞鶴先輩は鎮守府防衛の任務についていたから、こうやって着任したその日に会う事も出来て…葛城は運が良いわ。

 

今日提督の元に着任の挨拶に行ったら、提督からこのお店にお母さんが居るから、すぐに行くようにと言われて来たけど…。提督からは『鳳翔は怖いから、気をつけるように』なんて言われたから緊張しちゃったけど、私が知っているお母さんと全く変わらないみたいで安心したわ。たぶん提督が私をからかったのだと思うけど…今度会ったら許さないから!

 

しかも、私がこのお店に来てお母さんに挨拶していたら、あの尊敬する瑞鶴先輩と、先輩から話しを何度も聞いていた先輩のお姉さんの翔鶴先輩がわざわざ来てくれて、葛城の歓迎会をしてくれる事になって…私本当に感動しちゃったわ。お母さんが『何でも好きな物を作ってあげますよ』と言ってくれたから…あこがれの洋食を注文したんだけど、本当に夢みたい…楽しみ!

 

葛城は料理が苦手で、葛城の料理は「猫のヘド」なんて呼ばれていたけど、メインの洋食を待っている間に瑞鶴先輩の話を聞いたら、先輩はお母さんのお店でお手伝いをしている内に料理の腕が一気に上がったらしいから、葛城もお母さんにお願いしてお手伝いをしながら練習しようかな…。とはいえ、まずはこのあこがれの洋食を食べて、味をしっかり勉強しないと!瑞鶴先輩達には申し訳ないけど、折角のこの機会、しっかり料理を味わって美味しい味を覚えないといけないわ!

 

えっと、トマトソースのような物がたっぷりかかったキャベツの巻物。真ん中の部分でかんぴょうで結ばれていて…とても可愛い料理ね。お母さんはロールキャベツと言っていたけど、キャベツの黄緑色とトマトソースの赤色の色合いが本当に綺麗で、美味しそうな料理だわ。まずは、このロールキャベツが崩れないように、ナイフとフォークを使って慎重に切り分けて…っと。これまで和食一辺倒だった葛城だって、ナイフとフォークの使い方は完璧なんだからっ!尊敬する瑞鶴先輩達の前で、汚い食べ方は出来ないし、なんと言ってもお母さんの前でグチャグチャにして食べたら怒られちゃうから、慎重にやらないと…。

 

よしっ、これなら一口で食べられる大きさね。それじゃ、早速一口…どんな味がするんだろ。…あっ…美味しい。ロールキャベツを切った時、中から肉汁のような物が染み出してきたから、すごくジューシーな料理だとは想像していたけど…想像以上だわ。それに、この周りの黄緑色のキャベツが凄く柔らかいし…それになんて甘いの。キャベツって、ちゃんと料理するとこんな味になるんだ…。上からかかっているトマトソースと混じると、トマトソースの少し弱い酸味と物凄く合っているわ。ロールキャベツの中身…これ挽肉だよね?それに挽肉とは違うしっとりとした歯応え…あっ、これ玉ねぎなんだ…これも甘みが強くて凄く美味しい。それに、この小さな肉片のような物なんだろう。…ひょっとして、ベーコン?歯で噛むたびに挽肉とは違う肉の旨味が出てきて、少し固い食感が最高だわ。…こんな美味しい料理があるんだ。洋食って凄いよねっ!

 

それにこのトマトソース…。こっちも凄く美味しいわ。さっきはあまり気にせずにトマトソース食べていたけど、こっちにも人参や玉ねぎが入っているんだ…。それに…こっちもベーコンの欠片が入っていて、ロールキャベツと合わせて食べると本当に美味しいよねっ!これならどんどん食べられそう。葛城もたくさん食べて、早く瑞鶴先輩みたいに強い正規空母にならないと!

 

 

あ~ぁ、美味しかったから、あっという間に食べちゃった。あんまり美味しいから、何もしゃべらずに一気に食べちゃったけど。…今考えると、ガツガツ食べていたような…瑞鶴先輩達に笑われないといいな…。

 

「葛城、物も言わずに食べていたね。凄く気に入ったみたいだから、瑞鶴のロールキャベツも一つ分けてあげるね。今日の主役は葛城なんだから、遠慮しなくていいよ。」

 

ありがとうございますっ、瑞鶴先輩!やっぱり瑞鶴先輩は凄い人だよねっ!前の大戦で、瑞鶴先輩が瑞鳳さんや千代田さん、そして千歳さんを率いて捷一号作戦に出撃していった最後の勇姿は、葛城今でも思い出すんだよね。葛城も出来る事なら、あんな風に機動部隊の一員として出撃したかったな…。でも今度こそ、その夢を叶えるんだからっ!瑞鶴先輩といつでも一緒に出撃出来るように、武装もあの時の先輩の真似をして完璧にしてあるし!

 

「あらあら、葛城さんはよく食べますね。瑞鶴があげたロールキャベツだけでは足りなさそうね。私のもどうぞ。」

 

ありがとうございますっ、翔鶴先輩!こんなに優しい先輩ばかり居る鎮守府に赴任してこれて葛城は本当に幸せだわ。今頃、雲龍姉ぇ達も元気に作戦頑張っているかな…。

 

 

 

鳳翔

 

 

どうやら今日の主役の葛城さんも喜んでくれたようで、良かったです。それに、瑞鶴さんが葛城さんの面倒を見ているようですし…やはり自分の事を尊敬している後輩というのは、嬉しい存在のようですね。これで瑞鶴さんも、これまで自分の面倒を見てきた加賀さんの気持ちが少しは分かると思いますし、また一つ成長するのではないでしょうか。瑞鶴さんの隣に居る翔鶴さんもそれが分かるのか、葛城さんと瑞鶴さんが話している姿を嬉しそうに見守っていますね。

 

ガラッ

 

…あら?作戦中だったと思いますが、どうしたのでしょうか。何か用事があって、加賀さんが鎮守府に戻ってきたようですね。

 

「こんばんは鳳翔さん。丁度作戦の合間に鎮守府への帰還指令が来ましたので、少しの間ですが戻ってきました。…五航戦…貴方達は鎮守府待機で暇そうね。一応、いざという時の備えなのだから、あまり気を緩められても困るわ。もっとシャンとしてもらわないと。私達が戻ってくる場所くらいは、ちゃんと守ってもらいたいものね。」

 

「フンッ、加賀先輩達が居なくても、瑞鶴達だけでちゃんと鎮守府は守ってみせますよ~だ!」

 

加賀さんも加賀さんですけど、瑞鶴さんも相変わらずですね…。こればかりは、葛城さんという後輩がやって来ても、一朝一夕では変わらなさそうです。瑞鶴さんが眉間に皺を寄せて加賀さんに反論している姿を葛城さんが不思議そうに見ていますね。そういえば、葛城さんは加賀さんの事を直接知らないと思いますし、何かあってからでは遅いですから、先に教えてあげたほうが良さそうですね。

 

「あのっ…瑞鶴先輩?この人がさっき先輩が言っていた『蛇のようにしつこくて、鬼のように怖い加賀先輩』ですか?」

 

「ちょ…ちょっと、葛城…。」

 

…葛城さん…そういう事は、大きな声で言ってはいけません。それに…瑞鶴さん、貴方一体どういう風に加賀さんの事を説明したのですか…。先程、私が料理をしている間に話題に上ったのだと思いますが…もう少し、きちんと説明した方が良かったと思いますよ。加賀さんの顔があっという間に曇りましたし、瑞鶴さんと葛城さんを睨んでいる…ような気がします。翔鶴さんは、無関係を装うように明後日の方角を向いていますが…翔鶴さんとしては、自分までとばっちりを受けたくないのでしょうね。まぁ…変な説明をした瑞鶴さんの自業自得な面もありますが、葛城さんの機雷に自分から当たっていくような天然な言動も要注意ですね。

 

「五航戦…あなたがいつも私をどのように見ていたのか、よく分かりました。一度きちんとお話をしないといけないようね。それと…そっちの五航戦の子分、あなたにもお話があります。とりあえず、そこに正座しなさい!…まったく、鎮守府に戻ってきて少しは休めると考えていたのですが…これだから五航戦は…。」

 

流石の葛城さんも、自分が拙い状態に居る事が理解出来たのか、少し震えていますね。今日は折角の歓迎会だったのですが…。致し方ありません。今回は助け船を出してあげますか…。

 

「加賀さん、瑞鶴さん達は貴方達の留守をちゃんと守っていますし、立派に役目を果たしていますよ。それに加賀さん?瑞鶴さん達をここまで育てたのは貴方達ですよ。もっと信用してあげてください。それと葛城さんはこの鎮守府に着任したばかりの子ですし、今日は折角の歓迎会ですから…今回は大目に見て上げて下さいね。」

 

「ま…まぁ、鳳翔さんの言う事には一理ありますね。分かりました。そこの五航戦、その子は貴方を慕っているようだし…私が貴方にしたように、しっかりその子の面倒を見てあげる事ね。ところで鳳翔さん、流石にしばらく戦闘食ばかりだったので、今日は美味しい物が食べたいです。あら?それはロールキャベツですね。私にもお願いします。」

 

どうやら加賀さんも機嫌を直してくれたようですね。ただ…ロールキャベツは作るのに時間がかかりますし、先程作った物は全て出してしまっています。少し困りましたね…。

 

「あの…加賀さん。ロールキャベツは作るのに時間がかかりますので…お腹が空いているようでしたら、他の料理を作りましょうか?」

 

「あっ!…か…加賀先輩っ!よ…良かったら、ロールキャベツまだ一つありますので、これ食べてくださいっ!」

 

葛城さんのお皿にまだロールキャベツが一つ残っていたようですね。たぶん瑞鶴さんか翔鶴さんが葛城さんにあげた物だと思いますが、加賀さんに渡すようですね。こうして見ると、葛城さんは失言癖があるかもしれませんが、結構気が利く子なのかもしれませんね。

 

「…そう、感謝します。貴方…葛城さん…でしたか?それなりに気が利くようね。そこの気が利かない五航戦…貴方もこの子をもっと見習うべきね。」

 

「あ~っ!それさっき瑞鶴が葛城にあげたロールキャベツじゃん!何、加賀先輩に媚売ってるのよ!」

 

どうやら、面白そうな子がこの鎮守府に赴任してきたようですね。これまで加賀さんと瑞鶴さんの掛け合い漫才には、私も楽しませてもらってきましたが、葛城さんの加入でこれからは更に面白い物が見られそうです。作戦期間中なので、まだあまりリラックスして楽しむ訳には行きませんが、今日は私も楽しい時間が過ごせそうですね。そうと決まれば、加賀さんの分も含めて、途中で中断してしまった葛城さんの歓迎会用の料理を急いで作らなくてはいけません。今日も鎮守府は平和です。

 

 

 

葛城

 

 

ふぅ…危なかったわ。雲龍姉ぇ達からは、『葛城は、もっと普段の言動に気をつけるように』と言われていたけど、まさかこんな大事な時に失敗するなんて…。お母さんのフォローで助かったけど、本当に危なかったわ。もっと気をつけないと。

 

それと、あれが伝説の一航戦の加賀先輩なんだ。歴戦の瑞鶴先輩でも気を使わないといけない先輩みたいだし、やっぱり漂っているオーラが違うわねっ。第一印象が悪かったから、少しでも葛城の事を良く見てもらおうと思って、残っていたロールキャベツを献上したけど…これで少しは印象良くなったかな。瑞鶴先輩からは、ちょっと怒られちゃったけど、今回ばかりは仕方ないわ。

 

それに…その加賀先輩でも、有無を言わせないお母さん…。やっぱり提督が言っていたとおり、絶対に怒らせてはいけない人だわ。葛城は復員船時代にお母さんと一緒に頑張ったけど、やっぱり凄い人だったんだ。それにしても、加賀先輩にお母さん…怒らせてはいけない怖い人たちがたくさん居る鎮守府に赴任してきちゃったけど…本当に大丈夫かな…。瑞鶴先輩や雲龍姉ぇ達にその辺りの事も色々聞いておこうかな。よ~し、これから葛城も頑張らないとっ!




春イベント。なんとかE6まで無事にクリアー出来ました。それにしてもE2で手に入った葛城。結構良いキャラですね。瑞鶴となんとなく似ていますし、瑞鶴好きな私としては早速気に入って物語に登場させてみました。

今回物語を書いていて感じたのですが、瑞鶴って設定考えていくと物語の主人公キャラなんですよね。最初は末っ子ポジションで先輩達について戦いに赴いて、それによって成長していきますし、その後先輩達が傷つき倒れていき、最後は先輩達から引き継いだ機動部隊の栄光と挫折の歴史を一身に背負い戦いに赴く(ハッピーエンドに終わらない所がなんとも言えませんが…)。そういう意味では、主人公である瑞鶴を葛城が尊敬しているというのもなんとなく分かる気がします…。

とはいえ、このゲームでは赤城達が沈んでいませんので、瑞鶴はいつまでたっても末っ子キャラなのですがw。そういう事もあり、今回瑞鶴を尊敬している葛城が登場した事で、加賀VS瑞鶴に更に面白いキャラが参入したな…と感じて、今回のような物語にしてみました。

今回の料理については、正直和食で行くべきか…かなり最後まで迷った経緯があります。ロールキャベツは早い段階で決めていたのですが、この料理は和風にも洋風にも出来る料理なんですよね^^;。決め手は、葛城の台詞で洋食屋に関する台詞があったので、洋食に少しあこがれている(おそらく歴史的には登場がかなり遅いですから、食糧難の時代に生まれている筈なので、洋食はほとんど食べられなかったと思いますし…)という設定にして、今回のような洋食風のロールキャベツにしてみました。

ロールキャベツはおそらく色々なレシピがありますが、今回は私がいつも作っているレシピを紹介してみました。料理の本などでは、ベーコンは切らずに鍋に敷いてからロールキャベツを入れて、その後ソースを入れて煮込むタイプも結構あるように思いますが、個人的には他の野菜と一緒にベーコンも小さく切ってからソースに入れてしまうタイプの方が好きなため、少し変則的なレシピかもしれませんが、今回はこれを採用しています。こうするとベーコンの少し固い食感をソースと一緒に楽しめるんですよね^^;

次回の鎮守府の片隅では、おそらくイタリヤ戦艦になるような…。なんとか一つは手に入ったのですが、もう一方がE6で落ちなかったため、一人のみ登場になる気がします。流石にE6周回は時間的にも厳しいですから、ちょっとやれなさそうなんですよね^^;。ただ今回のイベント、欲しかった酒匂と高波は手に入ったので、個人的には結構満足していたりします。酒匂…折角手に入りましたし、そのうち登場させたいですね。今回も読んでいただきありがとうございました。




ロールキャベツ 四人分(8個くらい?)
(少し大き目のロールキャベツになります)

キャベツの葉:大(外側)8枚
       中(内側)8枚
かんぴょう :8本

中身の具
挽肉    :300-350 g
玉ねぎ   :1個
卵の黄身  :1個
牛乳    :30 mL
塩     :少量
胡椒    :少量
パン粉   :50 g
コーンスターチ :5 g
ベーコン  :4枚

ソース
人参    :1本
玉ねぎ   :1個
ベーコン  :4枚
ホールトマト:1缶
白ワイン  :50 mL
ローリエ  :1枚
チキンブイヨン:800 mL
コーンスターチ:適量
塩      :適量
胡椒     :適量

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