鎮守府の片隅で   作:ariel

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初霜改二記念に、だいぶ前に書いていた話を投稿します。本当は、『初霜の野望2』で初霜の頭にゲンコツが落ちてからこの話を投稿したかったのですが、まさかのこの時期に初霜の改二が来ましたので、本来の予定とは逆になってしまいましたが、こちらを先に投稿します。近況報告に書きましたように、仕事の事情で通常話を書いている時間があまりとれません。そのためしばらくは物語を停止していますが、時々このように書き貯めしていた物や、少しずつ書いていた物が完成した時は、その都度投稿していきたいと思いますので、よろしくお願いします。


外伝7 初霜の野望2

「初霜ちゃん!大丈夫?」

 

「初霜!しっかりしなさい!」

 

や…やられたわ。完全に夕立ちゃんの突撃のタイミングをよみきったし、それに対する対応も完璧だった筈。やれるだけの事はやった自信はあるわ。雪風ちゃんと霞ちゃんが心配そうな顔をしているけど、私は大丈夫。…でも、初霜達の天一号組の隊列に、ソロモン組の夕立ちゃんが単騎突撃を成功させてしまって、隊列をかきまわされたから…今回は初霜達の負けね。

 

「初霜、良くやったわ。結果は残念だったけど、あなたは良く頑張ったわ。」

 

「ごめんなさい、矢矧さん。やっぱり初霜では…。」

 

…そう。悔しいけど初春型の初霜では、初霜よりも新しい白露型…しかも特別改装まで施された夕立ちゃんとまともにやりあったら勝てないわ。錬度なら初霜だって負けないのに…本当に悔しいわ。…あれ?目の前の景色が霞んで…滲んできちゃった。努力しても勝てない事が分かった時って、こんなに悲しいのね…。

 

「初霜…泣くのは止めなさい。貴方は本当に頑張ったわ。きっと貴方も報われる時が来るから、これまで通り頑張るのよ。」

 

「…はい…矢矧さん。」

 

矢矧さんが慰めてくれるのは嬉しいけど…それでもやっぱり悔しいわ。初霜だって、初春ちゃんのように特別改装をしてもらえたら、夕立ちゃんにも勝てるかもしれないけど…。このままじゃ、どう頑張っても無理よ…。…はぁ。あっ、もうこんな時間。そういえば今日は金剛さんのお手伝いをする日だったわね。正直、こんな沈んだ気持ちの日に金剛さんと仕事をするのは…でも約束しているから行かないと…。とりあえず涙を拭いて…。

 

「あのっ、矢矧さん、初霜に気を使ってくれてありがとうございました。初霜はこれから用事があるので、先に上がりますね。もう大丈夫です。」

 

矢矧さんも雪風ちゃん達と同じように心配そうな顔をしているけど…初霜は大丈夫よ。さぁ、気持ちを切り替えて次の戦場(提督の執務室)に行きましょう。

 

 

「提督、金剛さん、初霜今来ました。これからお手伝いに入りますね。」

 

「ん?Hey! 初霜。泣いた跡があるネ。誰かに苛められたデ~スか?私がFireしてあげるから、誰にやられたか早く言うネ。頭に『鳳』がつく空母デ~スか?それとも最後に『翔』がつく空母デ~スか?」

 

えっ?ちゃんと涙も拭いているし、なんで初霜が泣いていた事が分かるの?しかも、チラッとしか初霜の顔を見ていない筈なのに…やっぱり嘘泣きのプロの金剛さんだけあって、本当に泣いていた時も直に分かるのね。提督もちょっと心配そうな顔をして初霜の顔を見ているし…でもどうやって答えるべきかしら。

 

「初霜、何があった?理由を言ってくれれば、私も力になってやれると思うが…」

 

「Hey!提督ぅ~。ちょっとTea timeしてくるネ。あとの仕事は任せマ~ス。」

 

「お…おぃ、金剛。さっき昼休みだったばかりだろっ!何を言って…あぁ、そういう事か。分かった、ちょっと初霜と一緒に休憩してきてよし。」

 

「Thank youネ、提督。さぁ初霜、私と一緒にTea timeするネ。」

 

初霜が泣いていた理由を言うよりも早く、提督と金剛さんの間で話が纏まったみたいね。とは言っても、こんな理由を金剛さんに相談しても、特に解決策があるとは思えないのだけど…。でもあの金剛さんが、初霜を慰めるためにお茶会に誘ってくれるみたいだから、折角のこの機会、噂の金剛さんのゴージャスなお茶会にお呼ばれするのは、悪くなさそうだわ。…それに金剛さんのお茶会と言う事は、美味しそうなお菓子も期待出来そう。…そうね、しばらく少し落ち込んだフリをして、しっかり美味しいお菓子を食べさせてもらおうかしら…ウフフフ。

 

 

「Hey! 比叡、榛名に霧島。Tea timeの準備をするネ。それと、紅茶のカップは二人分用意するデ~ス。あと準備が終わったら、三人とも少し外でwalkingしてくるネ。」

 

「えっ…今日はもうお茶の時間ですか、お姉様?それに…今日榛名達はお姉様と一緒にお茶を飲めないのですか?」

 

「いいから、早く言われたとおりするネ。私は、ちょっと初霜と話があるデ~ス。」

 

金剛さんに司令部の応接間に連れてこられたけど、ここ勝手に使ってもいいの?しかも応接間には比叡さん達が既に待機していて、金剛さんの指示でお茶会の準備を始めたわ。金剛さんは比叡さん達に、二人分のお茶の準備が出来たら、外に散歩に行くように言っているけど、まさか初霜は金剛さんと二人でお茶を飲むという事かしら。さすがに初霜も、金剛さんと二人で話す事には慣れたけど…一体何の目的かしら。普通に考えれば、傷心の初霜を慰めるためにお茶会に誘った…と思うけど、きっと他にも何か考えているわね。

 

わ…凄いわ。初霜はいつも大和さんに珈琲をいただいたり、その時にケーキを食べさせてもらう事もあるけど…金剛さんのお茶会には負けるわ。初霜の目の前に、ケーキスタンドに置かれた三段のお皿があって、そこにはサンドイッチや小さなケーキ…それにあれはビスケットかしら?傍に白いクリームやジャムが入った器も置かれて…。紅茶ポットに、ミルクのポット…凄いわ!金剛さん、いつもこんなに豪華なお茶会をしているの?

 

「それではお姉様、準備が出来たので私、榛名や霧島と一緒に散歩に行ってきます。」

 

「Thank youネ、比叡。さぁ初霜、とりあえず好きなもの食べて、少しcalm downするといいデ~ス。ここで食べた分は、後で初霜のお小遣いから精算するけどネ(エッ!?)。冗談デ~ス、今日は気にせずに食べればいいネ。」

 

まったく…酷い冗談だわ。でも本当に初霜が好きなお菓子を食べていいの?金剛さんからの物だから、どうしても何か裏があるか勘ぐってしまうけど…いつも搾取されている初霜としては、こういう機会に取り返すつもりで食べないといけないわ!まずは一番上の皿に置かれたチーズケーキからいただこうかしら。空母のお姉さん達が、クリスマスの時に鳳翔さんが焼いた美味しいチーズケーキを食べたと言っていたけど、このチーズケーキも美味しそうだわ。

 

うん!全体がしっとりとしていて、甘酸っぱい美味しいチーズケーキだわ。こんなチーズケーキ、初霜でも滅多に食べられないから、この機会に食べ貯めしておかないと…。そうだわ、やっぱり甘いケーキは、最初の一口が美味しいのだから、もう一度その一口目を味わうために、一度紅茶で舌の感覚を元に戻さないと。…紅茶も美味しいわ。凄く良い香りで、砂糖を入れていないからちょっとだけ苦味があって…これでさっきのケーキの甘みを消してから、もう一度ケーキを食べると…もう一回最初の感動が味わえるの。あぁ…幸せだわ。次は何を食べようかしら。次は、真ん中の皿にある、あのクッキーみたいなものね?横に白いクリームが置いてあるけど…あれをつけて食べるのかしら?

 

「初霜…それはスコーンね。一度半分に割いて、それから横にある白いクロテッドクリームとジャムをつけると最高デ~ス。私の大好物だけど、今日は特別に初霜に一つだけ食べさせてあげるネ!」

 

…つまり、このスコーンは金剛さんの物だから一つしか食べては駄目という事ね。これがスコーンね。初霜も話には聞いた事があるけど、食べるのは初めて。どんなお菓子なのかしら。とりあえず金剛さんに言われたとおり、横のクリームとジャムをつけないと。スコーンは一つしか食べては駄目みたいだから、このクリームとジャムだけはたっぷり使おうかしら。まずはスコーンを割いて…意外と柔らかいのね。さっきのチーズケーキ程ではないけど、柔らかいクッキーみたいな感じだわ。

 

それじゃ、これに白いクリームをたっぷり載せて(Hey! 初霜。欲張り過ぎネ!それは凄く太りやすいクリームだから、遠慮するネ!)…折角の機会だから遠慮なんてしないわ。ついでにジャムもたっぷり載せて…どんな味かしら…楽しみだわ。

 

ウン!これも美味しいわ。スコーン自体はそれ程甘くないし、クリームも甘すぎずに軽い感じだから凄く食べやすいけど、とってもクリーミーな味だわ。たしかにこのクリームは物凄く危険なクリームね。これを食べ過ぎたら、初霜でも戦艦のような重さになってしまいそう。それにこの甘すぎないクリームの上にジャムを載せると…もう止まらないわ。ジャムの甘酸っぱさにクリーミーで甘すぎない軽いクリーム、そしてしっとりとした少しだけ柔らかいクッキーのような食感…金剛さん、毎日こんなに良い物食べているのね…羨ましいわ。

 

あら?私なんで今日はこんな物を食べているのかしら…。まぁいいわ。折角初霜にも運が向いてきたのだから、この機会にたっぷり金剛さんのお茶会を堪能しないと。こんな幸運、次はいつになるか想像もつかないわ。

 

「Hey! 初霜。だいぶ落ち着いて、いつものMy best friendな初霜が戻ってきたネ。そろそろ何があったか私にあらいざらいexplainするネ。」

 

そうだったわ…たしか私の泣いた跡を目ざとく見つけた金剛さんが、その理由を知るために初霜をお茶会に連れてきたのだったわね。どうしよう…正直に言うべきか、誤魔化すべきか迷うところだわ。でも待って、今回の事を金剛さんに話したことで初霜にデメリットはないわ。それどころか、初霜が向上心あふれる艦娘だという事をアピール出来るメリットがあるじゃない!そうと決まれば…。

 

「実は…今日の演習で…。」

 

あら?さっきまでニヤニヤして私を見ていた金剛さんの目が細くなって…真剣な顔に変わったわ。いつもの金剛さんとは顔の表情が全然違うけど…初霜の事を本気でなんとかしようと考えてくれているのかしら。それじゃ、金剛さんがあまり見ていない今の内に、さっきのスコーンをもう一つ…ピシッ(初霜、スコーンは一つだけって言ったネ)、痛いわ…本当に一つしか食べさせてくれないなんて酷いわ。嘘泣きしようかしら。

 

「初霜…嘘泣きをしようとしても無駄デ~ス。それは置いておいて、演習の時は大変だったネ。But、私にこの事を相談したのは正しい選択デ~ス。この件については、私が解決策を持っているデ~ス。ちょっとそこで待っているネ。」

 

金剛さんが急に部屋を飛び出していったけど、何か持ってくるのかしら。でも解決策を持っていると言われても、金剛さんが初霜を強化出来るとは思えないし…それに金剛さんの装備を貸してくれると言われても、初霜では金剛さんの装備は大きすぎて持てないわ。一体何をするつもりなのかしら。あら?帰ってきたわ。紙を一枚持ってきたみたいだけど…何かの書類かしら。

 

「Hey、初霜。これが解決策ネ。ここに魔法の書類があるネ。この書類のここに初霜の名前を記入すれば…初霜の特別改装の申請書が出来るデ~ス。後はここに提督の署名が入れば、完成ネ。」

 

ちょ…ちょっと待って、なんで金剛さんがこんな書類を持っているの?それに、たしかに初霜だって特別改装をしてもらいたいけど、あれは艦政本部が決める事だって聞いた事があるわ。あと、いくら金剛さんがこの書類を作ったとしても、結局は提督のサインが必要なようだし…これは罠ね。初霜をぬか喜びさせてから落とす、高度な罠に違いないわ。

 

「金剛さん…流石にこれが冗談だという事は、初霜にも分かるわ。特別改装艦の決定は艦政本部の仕事だという事は、初霜だって知っているから、初霜をかつごうと思っても無駄よ。それに…たとえこの書類が本物だとしても、提督のサインが必要なのでしょう?それはいくらなんでも無理だわ。」

 

「初霜、分かってないネ。よ~くこの鎮守府の状況を考えてみるデ~ス。戦艦の中で、連合艦隊旗艦の長門達をさしおいて最初に特別改装をされたのは誰だったのかよ~く思い出してみるネ。それは私達金剛姉妹デ~ス。あの時の秘書艦は既に私だったネ。艦政本部に対して、鎮守府側からどの艦の特別改装を実施するか希望を出す事は可能デ~スし、この鎮守府は艦政本部に対して大きな貸しがありマ~スから、希望が通る可能性はと~っても高いネ。それと提督のサインの件は私に任せておけば、なんとでもなるネ。」

 

そういえばそうだったわ。戦艦の中で、長門さん達をさしおいて最初に特別改装があったのは、金剛さん達高速戦艦だったわ。あの時は、機動部隊直援だからという理由が言われていたけど…金剛さんがこの申請書を艦政本部に出していたのが真相だったのね。だとしたら…ここに初霜の名前を書いてもらえれば本当に?…でも、これは悪魔の契約ね。これを金剛さんにお願いしたら、初霜は間違いなく金剛さんにこれからもこき使われるわ。

 

「初霜…何を悩んでいるか、私はよ~く分かりマ~ス。でもあまり深く考える事はないネ。初霜が一言『お願いします』と言えば、初霜の名前を書き込んであげマ~ス。魚心あれば水心、初霜はmy best friendネ。」

 

調子のいい事を金剛さんは言っているけど、事はそんなに単純ではない事くらいは、初霜にだって分かるわ。でもこれは初霜にとっては、大きなチャンスでもあるのは間違いないわ。…『毒を食らわば皿まで』とは言うけど…大きな力を手に入れるために、初霜も覚悟を決める時が来たようね…。

 

「…金剛さん…お願いします。」

 

 

「Hey 提督ぅ。初霜の件は、全て解決したネ。という事で、この書類にサインするデ~ス。」

 

ちょ…ちょっと金剛さん、流石にこれは強引すぎると思うわ。何も説明なしでいきなりそんな書類を出しても、提督がサインをしてくれるとは初霜だって思えないわ。提督に何か言われたら、初霜も困るのよ。ほらやっぱり、提督が不審そうな顔をして金剛さんを見たわ。

 

「金剛…そこで俺が『分かった』と言ってすぐにサインすると思うのか?それにお前、この間は勝手に鳳翔との離婚届けを作って俺にサインさせようとしただろ。…まったく、今度は何の書類を持ってきたんだ…。」

 

金剛さん…何やっているのよ。そんな事を普段からしていたら、提督が不審がるのは無理ないわ。もっと初霜を見習って、普段は真面目なフリだけでもしておかないと、今回のようないざという時に困るじゃない。あぁ…提督が金剛さんの準備した書類をじっくり読み始めたわ。あんな書類、提督がまともに読んだら、とても通るとは思えないけど…どうするのよ…。これじゃ、初霜の特別改装も水の泡だわ。…やっぱり…書類を読むにつれて、提督の眉間に皺がより始めたわ。金剛さん、どうするのよ…さっき言っていた事と違うわ。

 

「おい、金剛。この書類の件だが…」

 

「提督ぅ~、何も言わないでサインするネ。これは今必要な事デ~スし、私の管轄にも関係していマ~ス。」

 

「…金剛、お前の管轄にも絡むという事は理解したが、この申請を通すとなると、艦政本部の正規の改装計画から外れる以上、かなり厳しい交渉になる事は理解しているな?」

 

「よ~く理解しているネ。でも提督ぅ、これまで艦政本部に対して、うちから資源を余分に引き渡して貸しを作っていたのは、こういう時に無理を聞いてもらうためネ。」

 

えっ?あの頭が固いと言われている艦政本部と交渉してまで、初霜の特別改装をねじ込もうとしてくれているの?それに金剛さんが今、艦政本部に対して資源が云々と言っていたけど、そんなパイプまで作っていたなんて知らなかったわ。提督が指示したのか金剛さんのアイデアなのか初霜には分からないけど、ちゃんと布石はうっていたのね。という事は、金剛さんがお茶会の時に言っていたとおり、あの書類に提督がサインをしてくれたら、本当に初霜が特別改装してもらえるのね。提督が目をつぶって考え事をしているけど…どうなるかしら…。

 

「…分かった。金剛がそこまで言うのであれば、この書類のサインはしよう。まぁ、艦政本部には貸しもあることだし、問題ないだろう。初霜、特別改装の申請を行うから、これからもしっかり頼むぞ。」

 

「流石提督ぅ~、Thank youネ。初霜、後は全て私に任せておくデ~ス。特別改装、楽しみにしているネ。」

 

「はいっ! 初霜、これからも皆を守るために頑張りますっ!」

 

やったわ!ついに初霜の時代がやってくるわ。これまで初霜の犠牲も大きかったけど、金剛さんと良好な関係を維持してきた甲斐があったわ…ウフフフフ。

 

 

既に天一号組が絶対優勢ね。この状態から捷一号組が一発逆転を狙うとしたら、島風ちゃんの個艦能力に全てを賭けて、初霜達の隊列に突入してこちらを混乱させるしかないわ。これまでの初霜だったら、相手の作戦が分かっていても個艦能力差で押し切られていたけど…今回はそうはいかないの。…ほら、やっぱり島風ちゃんが来たわ。

 

「島風ちゃん…甘いわ。初霜がそんな戦術にひっかかると思ってもらっては困るの。霞ちゃん、初霜に続いて!」

 

「わ…分かったわ、初霜。」

 

そう…天一号組で最初に特別改装を施された初霜が、ここで頑張らないと…。いくら島風ちゃんの能力が高いと言っても、突入のタイミングは完全によみきっているし、今はそれを阻止するだけの力が初霜にもあるの。もうこれまでのようには、やらせないわ!

 

 

「初霜ちゃん!凄いです。雪風感動しました。やっぱり、特別改装艦は凄いですね!雪風も早く特別改装をしてもらいたいです!」

 

「初霜、お疲れ様でした。私が率いる天一号組初の特別改装艦は、伊達ではないわね。この調子でこれからも頑張って頂戴。」

 

やったわ!今回の演習、初霜も大活躍出来たわ。MVPは、運よく捷一号組の旗艦能代さんを撃破した雪風ちゃんに取られてしまったけど、それでも初霜も頑張ったし、皆を守る事が出来たから今回は満足なの。金剛さんにお願いして、特別改装を施してもらっただけの事はあるわ。…金剛さんには物凄く大きな借りが出来てしまったから、これからもおやつを半分取り上げられる日々が続くけど…これだけの事をしてもらった以上、仕方ないわ。

 

それにしても、いい感じに特別改装をしてもらえたわ。まさに生まれ変わったような強化だけど、これで初霜も他の特別改装の駆逐艦と同じ力を手に入れる事が出来たの。矢矧さん達、天一号組の子達に初霜の新しい姿のお披露目も終わったし、次は大和さん達のような大型艦のお姉さん達の所に挨拶まわりをしないといけないわ。わざわざ可愛い初霜が挨拶に出向けば、きっと大型艦のお姉さん達は、初霜にお祝いの品物をくれると思うの…ウフフフ。

 

 

 

司令部 提督執務室 金剛

 

 

「おぃ、金剛。本当に初霜で良かったのか?まぁ、あの演習の様子を見れば、水雷戦隊の純粋な戦力アップが目的と言っても問題はないと思うが、お前の目的は別だろ?そっちの方は問題ないのか?」

 

「そっちの方は大丈夫デ~ス。これで駆逐艦寮の状態を把握するための駒が出来たと考えれば、安い買い物ネ。」

 

提督は心配性デ~ス。初霜は問題なくこの役割を果たす事が出来る子ネ。最初に提督と約束したとおり、鎮守府の艦娘の状態は私がしっかり把握しマ~スから、提督は作戦指導と海軍省との折衝に全力を投入するデ~ス。それが、私が秘書艦に任命された時の、提督との約束だったネ。

 

「しかし…駆逐艦寮の状態の把握なら、既に不知火が治安維持の役割を果たしているし、実力的に雪風や島風に任せた方が良かったのではないか?たしかに初霜も武勲艦ではあるが…ああいう素直な子には、こういう役割は合わないと思うんだが…。」

 

「提督ぅ~。艦娘達の事は私に全て任せておくネ。不知火は駆逐艦寮では恐れられていマ~スから、全体的な状況把握は難しいデ~ス。雪風や島風は優秀な子だけど、性格的にこういう役割には向かないネ。逆に初霜はこういう仕事に向いているデ~ス。提督ぅ?初霜は相当な狸ネ。甘くみちゃNoなんだからネ。それに大和や瑞鳳、My sisterの榛名も含めて、大型艦で初霜に借りがある子は多いデ~スから、駆逐艦以外にも初霜は顔が利くネ。」

 

色々な事に対して調整能力が高い初霜なら、あの駆逐艦寮の状況をしっかり把握できマ~ス。それに初霜の価値観はと~っても分かりやすいから、私もやりやすいネ。ちゃんと目に見える形で初霜にメリットを提示していれば、初霜はしっかり働くデ~ス。時々文句も言ってきマ~スけど、利害計算は長けていマ~スから、説得は難しくないネ。

 

これからこの鎮守府が更に難しい作戦に投入される事を考えれば、全ての艦娘の状態を正確に私が把握しておく事は、提督にとっても非常にimportantな事ネ。これまで駆逐艦の状態把握は難しかったデ~スけど、これからは大丈夫そうデ~ス。

 

「まぁ、お前の言うとおりなら、これで戦艦はお前達金剛姉妹に任せておけばよいし、空母はあいつがしっかり把握している。巡洋艦については高雄や愛宕達が居るし、課題だった駆逐艦は初霜を使って状態が把握出来るという事か…。金剛、ご苦労だった。お前には色々と面倒事や嫌な事ばかり頼んでいるが、助かっているぞ。」

 

提督は艦娘の状態把握や、メンタルケアには凄く気を使ってくれているデ~ス。鳳翔にあの店をやらせているのも、その一環だという事は私も理解しているネ。But、そこまで他の艦娘に気を使うなら、提督にとって一番importantな私にも、もっと気を使って欲しいデ~ス。

 

「Hey、提督ぅ~。そこまで言うなら、鳳翔じゃなくて私と一緒になるネ。今なら周りの環境もNo problemデ~スから、私をHugするネ。」

 

「馬鹿!お前と一緒になったら、毎日が腹の探りあいで俺の心の休まる時がなくなって、俺の胃が死ぬぞ。俺には鳳翔みたいなのと一緒の方が丁度いいんだ。コラッ…あまり抱きつくな。最近帰宅する度にあいつから、『あなた、今日も金剛さんの匂いが制服からするのですが…何をしているのですか?ちゃんと仕事していますか?』と厭味を言われるんだぞ。少しは自重しろ!」

 

相変わらずつれないネ。私の仕事ぶりはちゃんと理解して評価してもらえているから、文句は言わないデ~スけど、これはこれで寂しい気もするネ。出来る女はつらいデース…。憂さ晴らしに、鳳翔の店にSister達を連れて久しぶりに鳳翔の邪魔をしに行くネ。




初霜の改二、まさかのこのタイミングで来た事は嬉しいのですが…肝心の艦これをやる時間がw。冬のイベントはほぼスキップ、もしくはバケツを削る覚悟で短期決戦になりそうです。この機会に、天一号組の他の面子も改二出て欲しいのですが…いかんせんレア度が高い艦娘が多いので、次は霞あたりかな…と考えています(雪風は、もう少し後になりそうですし…)。

さて、今回初霜は期せずして金剛シスターズのお茶会にお呼ばれされ(事情聴取?)、アフタヌーンティーを楽しんだわけですが、著者もこれ何度かやった事あります。とはいえ日本でこれやると物凄くお値段かかりますので、シンガポールや台湾など比較的物価が安い(シンガポールは微妙なんですが)国でやった次第でして、これはこれで結構楽しめました。そしてスコーン自体はあまり好きではないのですが、クロテッドクリームは結構好きなため、ついつい食べ過ぎる訳でして…。作中にも書きましたが、このクリームはとても駄目なクリームです。食べやすい上にカロリー高め、ダイエットには最悪なクリームなのですが…まだ食べた事がない人には是非一度試してみることをお勧めしますw。

この物語の金剛さん、鎮守府で結構権力持ってますねw。艦娘の管理などは、ほとんど金剛に丸投げされていますし(鳳翔の件など、肝心なところは提督がしっかり抑えていそうですがw)、提督の中央へのコネクション作りのため、せっせと資源などの備蓄も励んでいる辺り、秘書艦の鏡とも言える存在です。とはいえ、提督には色々と袖にされているようですから、その憂さ晴らしを鳳翔さんのお店でやっているようですねw。まぁ鳳翔さん的には、金剛が憂さ晴らしに店にやって来て意地悪をしてくる間は、提督との仲は問題ないと思っていそうですがw

そしてこの物語での初霜ちゃんですが、秘書艦の金剛との関係を利用して、ついに特別改装(改二)が施される事になりました。これもひとえに、初霜の普段からの行動(?)のおかげだと思うわけですが…。この真相が矢矧さん達に知られたら、この件でも大きなゲンコツが頭に落ちてきそうですねw。

次回の更新、いつになるのかちょっと分かりませんが、そのうち通常回を投稿できたらな…と思っています。料理はなんとでもなるのですが、次の主人公誰にしましょうかね…。ここまでは比較的万篇なく様々な艦種を出してきましたが、しばらくは時間的な問題もありますから、物語を書きやすい大型艦が続きそうです。それにしても…初霜&金剛は、この物語では物凄く個性の強いキャラになってしまいましたww。

今回も読んでいただきありがとうございました。

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