鎮守府の片隅で   作:ariel

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今回は外伝の順番になります。今回の外伝は、一航戦の二人が主役の会になります。いつも鳳翔さんのお店や空母寮でやらかしまくっている一航戦の二人ですが、当然鎮守府の外でもやらかしまくっている訳で…。とはいえ、呉の街中の飲食店の経営者にとっては、ある意味神様のような存在でもあり…。そんな一航戦の鎮守府の外での姿が、今回の外伝になります。


外伝14 一航戦公認の印

呉市内 某所

 

 

「こ…この大馬鹿もんが!よりにもよって、ブラックリストと優良客のリストを間違えて無料招待状を送るとは…。お…お前は店を潰す気か!」

 

「も…申し訳ありませんっ…その…ついリストを間違えてしまって…本当に申し訳ありません、店長。」

 

どうする…。よりにもよって、ブラックリストの客に無料招待状を…。しかも、入店禁止にしていた客にまで招待状を出しちまうとは…。あんな招待状を受け取ったら、絶対に奴等は来る…間違いなくやってくる。そして…奴等が来店すれば…あぁぁぁ…どうする…どうすれば…。

 

 

 

鎮守府 空母寮  赤城

 

 

!これは。これは素晴らしい招待状です。このような招待状を受け取ったら…もう行くしかありませんね。丁度招待状は二人分。早速、今日の夜にでも加賀さんを誘って行かなくてはいけませんね。あぁ、今日は気持ちよく夕食が食べられそうです。それにしても、あの店長もようやく心を入れ替えて、食べ放題の焼肉屋の意味というものを理解してくれたようですね。

 

「加賀さん!これを見てください。半年程前に、赤城達を入店禁止にした例の食べ放題の焼肉屋さんから無料招待状ですよ。これは…前回の出来事を店長さんが反省したという事ですよね?早速、今日行ってみませんか?」

 

「あぁ…例の焼肉屋さんですか。たしか赤城さんが『食べ放題の店だというのに、お客さんにお腹一杯食べさせる前に品切れになるのは…少し問題ではありませんか?』と店長さんに言ったお店ですよね。…そのお店から招待状ですか…多少店長も反省したという事のようね。…いいでしょう。私も少し気になりますから、一緒に行くわ。今日はたくさん食べられると良いのだけれど。」

 

そういえば、そんな事もありましたね。以前、赤城達が来店した際、赤城達がお腹一杯食べる前にお肉が品切れになってしまったお店でした。あの時は、店長さんが土下座して『どうか、これで勘弁してください』と言ってきましたので、大人しく帰りましたが、食べ放題のお店だというのに、食べ物が品切れになってしまうというのは、どうかと思った記憶があります。ですから今回の招待状…加賀さんが言うように、あの店長さんも反省して赤城達にお腹一杯食べさせてやろう、という気持ちになったのですね。これは今日の夜が楽しみです。久しぶりに心行くまで焼肉が食べられそうですね。

 

 

 

鎮守府 戦艦寮 大和

 

 

あら?これは…。そうですか、あの焼肉の食べ放題のお店からの招待状。たしか、『轟沈』という名前のお店でしたね。店から家に帰る時に轟沈してしまう程たくさん食べられるお店という事で、以前大和も武蔵と共に行った事があるのですが…。途中で店長さんから泣きが入ってしまい、中途半端な状態で鎮守府に戻る羽目になったお店です。あの時は轟沈どころか…至近弾程度しか食べられませんでしたが…このような招待状を大和に送ってきたという事は、私達を満足させる事が可能なお店になった…という事なのでしょうね。これは是非、再び武蔵と一緒に行かなくてはいけませんね。店長さんの心意気を今度こそ見せてもらわなくてはいけません。

 

「武蔵?このような無料招待状が届いたのですが…。良かったら、今日の夜は一緒に焼肉を食べに行きませんか?例の中途半端な量しか出てこなかったお店ですが、今度こそ私達を満足させてくれそうですよ?」

 

「ほぉ…あの食べ放題の店か。このような招待状を送ってきたという事は、私達を満足させられる準備が出来ているという事だな?勿論、私も行くぞ。」

 

あら、武蔵も楽しみにしているようですね。そういえば武蔵も大和と一緒に、あの店から『もう来ないでください』と言われていましたね。それにしても、入店禁止にまでしていた大和達を今度は歓迎する…どのような心境の変化があったのでしょうか。いずれにせよ、今日行ってみれば事情も分かるという事だと思います。今日はお腹一杯焼肉が楽しめそうですね。あら?ビスマルクさんも嬉しそうにしていますね。それにあの紙は…

 

「あの…ビスマルクさんの所にも招待状が来たのですか?それ…大和達に来た招待状と同じですよね?」

 

「あ…大和の所にも来たの?これ。このお店、以前行った時に、店長さんから泣きつかれて中途半端な量しか食べられなかったのだけれど…心を入れ替えたようね。その心意気、このビスマルクが見てあげるわ。大和達も行くみたいだから、私も一緒に行くわよ。」

 

「なる程…ビスマルクさんも入店禁止組ですか。大和達と同じですね。そういう事でしたら、今日は一緒に行きましょう。」

 

武蔵、そしてビスマルクさんの三人で焼肉の食べ放題ですか。あまり一緒には食事に行かないメンバーですが、偶には良さそうですね。今日は戦艦同士、焼肉を食べながら色々とお話をするのも良さそうです。

 

 

その日の夜  焼肉食べ放題『轟沈』  店長

 

 

「店長…来ました…来ましたよ。赤に青、それに…お化け戦艦姉妹に、金髪のお化けまで…どうしましょう…。」

 

「う…うろたえるな。間違いとはいえ、招待状を出したのはこちらだ。それに…赤字覚悟で食材の大量発注もしてある。たとえ化け物が五人相手でも、今度こそ轟沈するくらい食べさせて…焼肉食べ放題の店の意地を見せてやる。いいなお前達、冷静に…冷静にな。」

 

やはり来たか。そうだよな…無料招待状をもらって奴等が大人しくしている筈がない事くらい、この俺だって分かっている。しかし…今回こそ、この食べ放題『轟沈』の名にかけて、奴等が引っくり返るくらい食べさせてやる。間違っても以前のように、『食べ放題と言っても、この程度ですか…。他の都市なら兎も角、呉鎮守府のお膝元で、食べ放題を名乗るには少し早すぎましたね、店長』などとは、二度と言わせないぞ。

 

幸い、今日は奴等が大挙してやってくる事は予想していたから、食材は大量に発注してある。赤字覚悟だが、この店の名前にかけてこっちも負けられんからな。それにしても…鎮守府の奴等は化け物揃いだな。赤と青の化け物は勿論、お化け戦艦姉妹もそうだし、金髪の化け物にいたっては、一人でこの店の食材を食べつくしやがったからな…。あの時は、流石の俺も焦ったぞ。

 

畜生…並んでいる他の客の奴等も、あの化け物達が来た事に気付いたようだな。並んでいた客まで奴等に順番を譲ってやがるし…他の客達も今日の顛末がどうなるか気になるってところか。これは本当にこっちも負けられんぞ。今日も前回と同じような事になったら、あっという間に呉中に噂が広がって…本当に店を畳む羽目になりかねんからな。

 

「い…いらっしゃいませ、皆様。今日はお手柔らかに…」

 

「こんばんは店長さん。折角招待状をもらったので、今日は加賀さんと一緒に来たのですが…そこで丁度、大和さんに武蔵さん、それにビスマルクさんとも会いまして…皆さん招待状を持っていたので、一緒に来ました。今日は本当に楽しみですね…『今回こそ』赤城もお腹一杯食べたいですからね。」

 

「焼肉食べ放題の店の名前にかけて、今回こそ皆さんに満足していただける量を用意しておりますので…ご満足いただけるかと…。」

 

「おっ!店長。赤城ちゃん達に挑戦状か?なかなかの自信だな~。たしか…前回は泣きを入れたんだろ?今回こそ、食べ放題『轟沈』の名にかけて、頑張れよ!」

 

く…くそ…客達は気楽なもんだよな!こっちの気も知らないで。こちとら、これから店の名前を賭けた大勝負なんだぞっ。もうこっちも覚悟は決めているさ。勝負だ化け物ども!

 

「さぁさぁ、皆さん席に案内しますので…。お~ぃ、五名様ご案内。V(ery) I(ncredible) P(erson)席(とっても信じられない奴等)にご案内~。」

 

「おぃ、轟沈屋。お前の店にVIP席なんてあるのか~。ワハハハ」

 

馬鹿言ってるんじゃねぇ~ぞ、客ども。どうせ今日はこの五人に大被害を受ける事になっているんだ。少しでも、被害を取り戻すためにも、今日は外からも良く見える席を準備して、大食する姿をたくさんの人にも見てもらうことで、店の宣伝くらいにはなってもらうさ。

 

「まぁ、VIP席ですか。これ程大切にしてもらえると、赤城も嬉しいですね。加賀さんもそうですよね?」

 

「えぇ、そうね。流石に気分が高揚します。」

 

VIP席はVIP席でも、Very Incredible Person(まったくもって信じられない奴等)の意味だけどな。さて…いよいよ勝負だ。かかってこい、この化け物ども。絶対に今日は轟沈させてやる!

 

 

 

航空母艦 赤城

 

 

久しぶりにこのお店に来ましたが、やはり食べ放題のお店は雰囲気が良いですね。しかも今日は特別な日のようで、前回赤城達が来た時以上に、肉や野菜などが大量に店内のいたる所に置かれています。店長さんも、今日は赤城達のためにVIP席を準備してくれたようですし…早速食べさせてもらいましょうか。このVIP席は窓際の席のため、窓の外から多くの皆さんが見ているのが少し気になりますが…皆さん嬉しそうな笑顔ですし、楽しそうにしていますから、あまり気にしていても仕方ありませんね。さて…それではまずは肉を取りに行きましょうか。

 

はぁ…見ていて目移りしますね。どのお肉から行きましょう。本当はこのお店では、小さな取り皿に大皿に盛ってあるお肉を取り分けなくてはいけないのですが、このような小さな皿でちんたら取っていては大変です。幸いな事に今日は店長さんの特別サービスで、大きな取り皿を準備してもらいましたし…まずはこのカルビから行きましょうか…。

 

「オ~ッ」

 

えっ?何かあったのでしょうか。赤城が大皿に盛られたカルビ肉を、さらう様に取り皿に移し変えますと、周りのお客さんからのどよめきが聞こえました。食べ放題のお店ですから、自分が食べたいだけのお肉をお皿に載せる…ごく当たり前の行為をしただけなのですが、周りのお客さんからしたら珍しいのでしょうか。それに…この程度では、前菜にもならない量なのですが…。さて…他のお肉…次は…そうですね、この牛タンも良さそうですね。牛タンは通常の肉以上に薄切りですから、直に火も通りますし…時間をかけずに食べられる事が良いですね。

 

あっという間に、取り皿の上には山の様にお肉が載りましたね。まずは、前菜の前の腹ごなしとして、丁度良い量です。それでは席に戻って焼きましょうか。あら?加賀さんは勿論、大和さんや武蔵さん、それにビスマルクさんも各自、山のようにお肉を持ってきましたね。皆さん最初の腹ごなしのようですね。

 

「店長、飯を頼む。この武蔵、肉は勿論好きだが、やはり飯がないとな。大和はどうする?」

 

「そうですね…。店長さん、大和にも御飯をお願いします。…大盛りで。」

 

「はいはい、ただいま。お~ぃ、VIP席の皆さんに御飯を持ってきてくれ!炊飯器ごとな。」

 

大和さん達は御飯を頼むようですね。たしかに焼肉に御飯は正義です。赤城もついでにいただきましょうか。それにしても…流石に店長さんも一度失敗していますから、今回はよく理解していますね。前回赤城達が来た時は茶碗で御飯が出ましたから、何度も何度もお代わりをしなくてはいけませんでしたが、今回は炊飯器ごと出してくれ、丼茶碗まで用意してくれています。やはり招待状を出しただけあって、気が利いていますね。さて…机に配置されている二箇所の網には、既にお肉が隙間なく並べられていますし…薄い牛タンには既に火が…入りそうですね。それでは小さな容器にレモン汁を入れて…さぁ、塩を少しだけふったら早速頂きましょう。

 

「オ~ッ!」

 

う~ん、美味しいですねぇ!面倒なので、鉄板に並んでいる牛タンを一列分、箸でさらう様にして掻き集め、レモン汁に少しだけつけて口に運びましたが、最高です。お肉に少しだけついた塩味は勿論、最後につけたレモン汁の爽やかな酸味の後、牛タンの表面が焼けた香ばしい香り、そして脂っぽさを全く感じさせない素晴らしい肉の旨味が赤城の口の中に広がります。また牛タンは普通のお肉よりも歯応えがしっかりしていて…本当に素晴らしいですね。流石に一列分を一気に口に入れますと、薄い牛タンとはいえ、肉を食べた…という気分になりますね。周りのお客さん達は赤城達が食べている姿を注目しているようで、赤城達が一列ずつ牛タンを食べる度にどよめくような声が聞こえてきますが、このような美味しいお肉を食べているのですから、そのような些細な事を気にしてはいられません。

 

あっという間に取り皿に山の様に置かれていた牛タンが無くなってしまいましたね。まるで魔法で肉が消えるような感じでしたが、たしかに赤城の口の中には、先ほどの牛タンの美味しい味が残っていますので、赤城達が食べた事実は間違いありません。次はカルビですね。勿論、先ほどの牛タンも美味しいのですが、焼肉はやはりカルビが王道です。このお店のカルビは少し薄いのが難点ですが、それでもカルビはカルビ。次の素晴らしい味を楽しむためにも、一度口の中に残った牛タンの味を消さなくてはいけません。とりあえず、丼の御飯をいただきましょうか。…えぇ、良いですね。焼肉を食べながらの御飯。これは正に至高です。先ほどまで口の中に残っていた、あっさりとしてレモン汁の酸味を含んだ牛タンの味覚が、御飯の甘味によって少しずつ消えていきます。…そろそろカルビの番ですね。網の上では既にカルビが、その表面で細かい油の泡をパチパチさせながら、赤城の口に運ばれるのを待っています。

 

「あら?赤城さん、まだ食べないの?もう火は通っているとは思うけれど。早く食べないと、無くなるわよ。赤城さんらしくもない。」

 

…そうでした。この面子で焼肉に来ているのですから、待っていたらどんどん肉が無くなってしまいますね。それでは赤城も、カルビをいただきましょうか。先ほどと同じように一列分を箸で掻き集めて…。こちらはお店が準備したタレをつけて…さぁ、いただきますよ。…う~ん、美味しいですねぇ。先ほどの牛タンとは異なり、まさにお肉!と言った感じの肉の旨味、それと牛タン以上の肉の香ばしさが赤城の口の中に広がっていきます。そしてタレの少し濃い目の甘辛い味…焼肉としては完璧な調和ですねっ!これは…御飯と一緒に食べなくてはいけませんね。先ほどの丼は既に空ですから、お代わりを…あら?もう炊飯器は空ですか…大和さん達、最初から飛ばしていますね。

 

「すいません、店長さん。御飯がなくなってしまいましたので…赤城達に次の炊飯器をだしてもらえますか?」

 

「えっ…え~っ?」

 

店長さん、驚いていないで早く次の御飯を出してください。このような美味しい焼肉を食べているのですから、御飯と一緒に赤城は食べたいのですから。

 

 

 

店長

 

 

ありえん…ありえんスピードで肉が消えていくじゃないか。最初から山盛りの肉を持ってきたと思ったら、その肉の山が見る見る内に消えていくし…網の上で焼かれた肉も、まるで魔法でも見ているかのようなスピードで…。それにあのお化け戦艦姉妹はどうなっているんだ!あっという間に…まさに魔法のようなスピードで、炊飯器の中の米が消えてしまったじゃないか。

 

「お、おぃ…次の御飯を早く持ってこい。勿論、炊飯器ごとだぞっ。それと厨房のスタッフに、肉をスライスにする速度を上げるように伝えてくれっ。このままじゃ、店内に置いてある肉が直に無くなってしまうぞ。お客様を待たせるんじゃない!急げっ!」

 

そう、お客様はこの化け物五人だけではないんだ。この化け物五人のために、他のお客様を待たせるような事になっては…。今日は厨房のスタッフも大変な事になりそうだな…はぁ。それにしても…窓際の席にしたから、通行人の皆さんも窓の外で群れになっているな。そりゃそうだよな…こんな速度で肉や御飯が消えていく姿を見れば、興味を持つのが普通だよ。

 

「ちょっと、店長。焼く場所、もうちょっとなんとかならないかしら?これじゃ、ホルモンなどのような時間がかかる部位は食べられないじゃない。なんとかしてよ。」

 

今度は金髪の化け物か。まぁ、たしかに言いたい事は分かるがな。あの四人と一緒では、絶えず焼き場は隙間がない程に肉が並べられているから、時間がかかる物を焼いている暇は無いって事だよな。仕方ない…今回だけは店の宣伝も兼ねている訳だから、多少の我侭を聞いてやるしかないだろうな…。

 

「お~ぃ、ビスマルクさんがホルモンを焼いて欲しいそうだ。悪いがお前…ちょっと、店の厨房で焼いてきてやってくれるか?ビスマルクさん、ホルモンは店の方で焼きますので、少々お待ちいただけると…。」

 

「あら、流石は店長、気が利くのね。Danke。」

 

…それにしても、よく食べるよな…。一応、いつもよりもかなり余分に食材は用意しているが…本当に大丈夫だろうな。さっきから、次々と肉や野菜を山のように自分達の席に運び込んだかと思ったら、あっという間に消えていくし…店側としては冷や汗ものだぜ…まったく。鎮守府の奴等は化け物揃いだな。俺は会った事もないが、その鎮守府を纏めている司令長官という奴の事は、尊敬するぜ…。おっ?少し食べる速度が遅くなって来たか?既に準備した食材のほとんどが奴等の胃袋に消えてしまったが、流石に化け物のあいつ等も、満腹に近づいてきた…という事か。なんとかなりそうだな。

 

 

 

赤城

 

 

今日は、かなり満足出来る結果になりそうですね。赤城達の机の上には、既に空になったお皿の山が摩天楼のようにそびえたっています。これだけのお肉と野菜を食べれば、流石の赤城達も満足ですね。今日はとても良い夕食になりました。お肉の方も、食べ放題の焼肉屋としては素晴らしいですね。最初に食べ始めた牛タンも悪くありませんでしたし、カルビも十分合格点、そして脂がきちんと載った豚トロも牛肉とは違う豚肉特有の香りが楽しめましたし、鶏肉もあっさりとして最高でした。またビスマルクさんが食べていたホルモンは、赤城も貰いましたが、あのクニュクニュした食感…歯応えの変化が楽しめて本当に良かったと思います。

 

さて…腹八分目と言いますし、今日はこの辺りで鎮守府に戻りましょうか。…いえ、デザートがまだでしたね。甘い物は別腹と言いますし、このお店はたしか、デザート類もかなり豊富だったと思います。とりあえず…先ほど見かけた杏仁豆腐をボールごと持ってきましょうか。

 

「加賀さん、赤城はそろそろ甘い物を持ってこようと思います。加賀さんはどうしますか?」

 

「…そうね。私もかなり今日は満足したわ。私も甘い物を最後に食べて、今日は戻ろうかしら。」

 

「!満足していただけましたか。そうですか!」

 

店長さん…とても嬉しそうな顔をしていますね。お客さんを満足させる事が出来て、店長さんも嬉しいのでしょう。それでは最後のデザートを加賀さんと取りに行きましょうか…あら?先ほどまであった筈の杏仁豆腐が…それにミニケーキが入っていた筈の大皿も空…。

 

「赤城さん…デザートが一個も…そんな馬鹿な…。」

 

「おかしいですね…加賀さん。先ほどお肉を取りに来た時はたしかにあったのですが…あら?」

 

少し離れた三人の女性客が座っている机にも、取り皿が赤城達の机と同じように積みあがっていますね…しかも何処かで見たことがあるような後姿…あっ、まさか…。なる程…神通さん達も今日は招待状を貰って来店していたのですね。たしか神通さん達も、このお店でデザートだけを食べ尽くして入店禁止になっていた筈ですから…それが此処に居るという事は…今日のデザートは無理ですね。流石の赤城も、あの三人のところに行って甘い物を取り上げたら、大変な事になる事はよく理解しています。

 

「加賀さん…あれを…。あの様子では、今日は諦めるしかありませんね。帰りに違うお店に寄りましょうよ。」

 

「…そ…そうね、赤城さん。」

 

デザートは食べられませんでしたが、今日は肝心の焼肉の部分で大変満足出来ましたし、この辺りで帰るとしましょうか。帰り道にケーキバイキングをしている店がありましたから、今日はそちらでデザートを食べる事になりそうですね。丁度腹八分目ですし、ケーキバイキング程度でしたら、十分まだ楽しめそうです。それに…店長さんの満面の笑みとホッとしたような表情を見れば…。しかし店長さんも大変ですね。あの三人のようにお店の料理を食べ散らかすお客さんが居ると…本当に苦労すると思います。…そうです!

 

「店長さん、大和さん達も満足したようですし、赤城達もそろそろ帰りますね。今日は大変満足しました。それにしても店長さんも大変ですね。あそこに居る二水戦の三人のように、料理を食べ尽くしてしまうお客さんが居ると本当に苦労するな…と思いますよ。」

 

「…そ…そうですか(いや、あちらの三人より貴方達の方が…)。」

 

「それでですね。赤城は少し考えたのですが、これだけ私達を満足させてくれたお店ですから、『一航戦公認』の印を渡したいのですが…。これがあれば、呉では商売繁盛間違いなしですよ。」

 

「えっ、まさかあの印を。あ…ありがとうございます。」

 

私も加賀さんもあまり気にしていなかったのですが、時々鎮守府の外で食事をして、気に入ったお店があると、『一航戦公認』のお店という事で、赤城と加賀さんのサインをメッセージ入りの色紙と共に残していたのですが…この印がある飲食店は、必ずと言って良い程繁盛しているようです。最近はあまり書いていなかったのですが、このお店でしたら問題ありませんね。それでは…赤城のサインをして…メッセージは何を書いておきましょうか。…そうですね。

 

『一航戦も大満足!』

 

これで良いですね。さぁ、それではケーキバイキング経由で鎮守府に戻りましょうか。今日は本当に良い一日でしたね。

 

 

 

店長

 

 

被害甚大…されど成果も多し…といった所だな…。あれだけ買い揃えた食材の大半を食べられ、今日の赤字は確定だが、『一航戦公認』の印が手に入ったとなれば、今後の事を考えれば御釣りが来るわな…。この呉で飲食業に携わっている人間にとって、喉から手が出る程欲しい『一航戦公認』。これがあるだけで、お客が連日並ぶ程来てくれるようになる、まさに錦の御旗。しかも最近は、ほとんど貰えないと言われている公認マークだからな…。

 

「店長!今日の赤字額ですが…」

 

うっ…やっぱりな…。公認マークがあれば今後の客入りは保証されているが、今日の赤字が…。しばらくかなりキツイ経営になりそうだな…。しかし、収支の確認は俺がするしかないからな…はぁ、頭が痛いぜ。

 

「ど…どれくらい赤字なんだ…」

 

「それが…思っていた程赤字ではありません。おそらく今日は特殊な客が多かったですから、一般客は来店したものの、そちらの見物に気を取られていたようで…。」

 

!そうか。たしかにあれだけ派手に食べている姿が近くにあれば、そちらを見学するという気持ちは分かるな。実際、窓の外から通行人の連中も奴等が食べている姿を見ていたからな。…という事は、今回は俺の大勝利じゃないか!一航戦様々だな、おぃ。

 

「そうか!それは目出度いな。一航戦の公認も貰えたし、これで商売繁盛間違いなしだぞ!」

 

「そうですね、店長。我々にも運が向いてきましたね。」

 

全くだな。あれだけ食べ散らかされたが、本人達に悪気はないようだし、この俺の店に福を呼び込んでくれたわけだから…これからも『偶には』無料招待状を出して、店に呼んでも良いかもしれんな。一応、『一航戦公認』の店でもある訳だし、偶には来てもらわないと、そっちの方が問題になりそうだかな。いや~、今日は本当に良かった、良かった。

 

 

 

鎮守府への帰り道  加賀

 

 

「赤城さん。久しぶりに一航戦公認のマークを渡したけれど、本当に良かったの?まぁ、私も今回は満足出来たから良いのだけれど。」

 

「えぇ、加賀さん。今日は赤城も満足出来ましたから、良いと思いますよ。それに…あのマークを渡しておけば、また私達に招待状を送ってくれるでしょうし…。」

 

なる程…流石は赤城さんね。食の事に関しては、頭の回転が早いわ。たしかに…何時の頃からか忘れたけれど、一航戦公認のマークは飲食店にとって商売繁盛のお札のように思われているようだから、あれを貰ったお店からは時々、私達に招待状が届くようになっているわね。それを考えれば、あのお店にそれを渡したという事は、時々あの店からも私達一航戦に招待状が届く…そうすれば私達も大手を振ってお店に行き、満足な量を食べる事が出来る。赤城さんも考えたものね。

 

いずれにせよ、これで招待してもらえる(只で食べられる)焼肉屋が、呉の街中に出来たという事ね…やりました。




一航戦があれだけ食べるにも関わらず、赤城はともかく、加賀があまり食費には困っていない理由が分かった気がw。あの二人、自分達が公認を出したお店から、時々招待されて好き放題食べていた訳ですね。おそらく、一日に何軒か無料招待状を送ってきたお店をハシゴした事もありそうな…w。しかし…『一航戦も大満足』するような食べ放題の焼肉屋…怖い物見たさで、少なくとも一度は行ってみたい気がします。

最近でこそ、年を取ってしまいあまり食べられなくなりましたから、食べ放題のお店ではなく普通の焼肉屋に行きますが、若い頃は結構お世話になった気がします。肉はたしかに薄くペラペラですし、露骨に赤身と脂身が分かれるような『素晴らしい』お肉なのですが、あれはあれで量を食べるには良かったですし、意外と普通に食べられる訳で…。若い頃の胃袋を安い料金で満たす事が出来る素晴らしいお店だな…と思っていました。それに…当時の事を考えると、同じ世代の友人と一緒に行っていましたから、全員食べるスピードが早く、薄いお肉で直に火が通らないと大変な事になる訳で…。そういう意味では、あの肉の薄さはちゃんと意味があったのだな…と今は思うわけです(まさに、赤城さんの心境ですねw)。

それにしても…二水戦の旗艦組も、食べ放題のお店でブラックリスト入りしていたようですし…あの三人も色々と鎮守府外でやらかしていそうな気が…。おそらく呉市内の甘味処には、『神通さん公認』のマークもあるのではないかとw。そう考えますと、呉の街中にあるお店と鎮守府内の艦娘、以外と良い関係が気付けているのかしれませんね(色々とやらかしているでしょうから、こいつ等は…と思われてもいそうですがw)。

さて、公式からは今度のイベントは八月に行われ、規模は少し小さめとのアナウンスがあったようですが、どうなりますかね…。一応、前回のイベント消費分のバケツなどはある程度復活していますし、資源もあるのですが…どのようなイベントになるのか、怖さ半分、楽しさ半分といった感じで待っています。

今回も読んでいただきありがとうございました。

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