幸せに生きたい少女   作:ヒロー

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大雨と雷の中でも、地元の祭りが開催されていたので驚きました。


はちわ   すらむがい

天空闘技場の郊外そこには貧民街が広がっている。

毎日のようにマフィアと警察が衝突し、まともに舗装されていない道には多くのごみが散乱している。道を歩くと時折すえたにおいが鼻をつく。

立ち並ぶ家の外壁のいたる所に落書きがされ、人通りはあまりない。

全体的に陰鬱な気配が漂い人々が隠れ住むような気配がする場所に、黒いブーツと黒いゴスロリに身を包み、サファイアのネックレスを首にかけた。金髪のセミロングに碧眼の将来美人になること間違いない「幼い」と言ってもいい少女が、似合わない男物の腕時計を左手首に付けどうしたことかたった一人で、夜のスラム街を歩いていた。

 

―――迷子か?気の毒に・・・。

 

隠れて様子を窺っていた住人たちはそう結論付け、少女のいく末に少しばかり同情しながらも、巻き込まれたくないとばかりにその場を急いで、離れていった。

 

家の外壁で左右を囲まれた道に入ったところで、10人ほどのガラの悪い男たち――この辺りを縄張りにしているギャング――が、少女の前方と背後を塞ぐ。

 

「近くで見るとマジ上玉だな」

「ああ、高く売れそうだ」

「おい!ガキ痛い目見たくなかったらおとなしくしてろ!」

 

若者たちは下卑た笑みを浮かべながら、口々に口汚い言葉を少女に向かって投げかける。

それに対して少女は10人全員の顔を見渡してから、可愛らしくこう言った。

 

「あのっ!私と『お友達』になりませんか!?」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

沈黙。

 

―――何を言っているんだ。このガキは・・・?

 

「なるわけねぇだろ!?」

「てめぇ!この状況分かってんのか!?」

 

意味が分からず怒鳴り返す。

 

「ですからっ、私と『お友達』になりませか?」

 

ここに至ってようやく男たちは少女の異常性に気付く。

10人もの男たちに囲まれているというのに、全く怯えた様子を見せずに、まるで本当に友達が欲しいのではないのか?と思ってしまうほど気恥ずかしげに声を上げている。おかしいと感じるのはそれだけではない。まず、話し始めた時から笑みを浮かべているが、よく見るとまるで貼りついているように、その笑みは変わらない。そして、何よりもおかしいと思うのは目だ。自分たちを人として見ていないのではなく、何か物を見るようなそう思えるほど無機質な目をしながらこちらを見てくるのだ。

 

若者たちは横目でお互いを見ながら、肩をすくめたり、こめかみの横で指をくるくる回すジェスチャーなどをしながら嘲笑する。

 

―――親に売られたか捨てられて、オモチャか何かにされ、頭がイカれたガキ。

 

そう判断した男たちは会話を切り上げ、実力行使に移ることにした。

 




アーデルハイト流『お友達』作りにご期待ください。

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