ごわ じこ
―――天空闘技場にようやく到着しました。
さっそく、近くにあるホテルをとって、エントリーをしに行きます。
「おい・・・嬢ちゃん悪ことはいわねぇリタイアしろ」
「そういわれましても・・・」
「ちっ・・・できるだけ手加減してやるが悪く思うなよ。嬢ちゃん」
さぁて、やってまいりました記念すべき初試合です。
「殺っちまえ!」
「ガキはお家に帰んな!」
周りから、ひどい罵声を浴びせられる中、どこか対戦相手の方は心配そうに私に忠告をしてきます。
―――良い人そうですぇこの人。
―――2メートル近い筋骨隆々とした古傷だらけの体に強面の顔なのに・・・
「・・・人を見かけで判断してはいけませんねぇ」
「余裕だな・・・これも試合だ。出来るだけ手加減するとはいえ、手足の骨折くらいは覚悟しておけよ」
思わずつぶやいた一言にどこか呆れた様子で良い人そうな方は言います。
「世間知らずの馬鹿なお嬢ちゃん」って感じで、少々恥ずかしさを感じ顔が赤くなります。
「それでは・・・始め!」
物思いにふけっている間に試合が始まりました。
良い人そうな方が、一気に駆け寄り右足から踵落しを繰り出してきます。
私はとっさにオーラを纏から堅にそこから流を用い、両腕に硬をして踵落しを防ぎます。
「・・・ぐぅう!?」
驚愕した声を上げながら、右足を抑えて座り込んだ彼を見て。
―――今!
リングを蹴って飛び跳ね、流を使いお返しとばかりに硬をした右足を顔面に叩きこむ―――!
破裂音。
風船が割れたような音と観客の悲鳴が鳴り響く中、血が雨のように飛び散りながら、首を失った巨体がリングに沈んでいった。
「やっちゃった・・・」
思わずしかめた顔を両手で覆いながら、自らの失敗を嘆きます。
念の扱いは虐待されている時に学びましたが、初戦闘ということもあって少し調子に乗りすぎましたね・・・防御までは上手くいっていた?と思うのですが・・・
まぁ、殺ってしまったものはしかたがないですね。
周囲の状況を確認して自分が、返り血ひとつ浴びていないことに安堵しつつ、先ほどの試合について考えます。
結論から言うと防御は完璧。
長年虐待に耐えてきたので、相手の体を考慮して防ぐことができるようになっています。
問題は攻撃です。
右足に乗せるオーラの量というより、硬を使ったのは、完全に間違えでした。
見た目が強そうな方だからといって、念能力者ではない人を相手に使うべきではありませんでした。
「・・・はぁ」
思わずため息が漏れてしまいます。
しかし、言い訳させてもらえるならそもそも強そうな見た目に反して弱い上に、手加減すると言っておきながら踵落しを繰出してきたこの方が一番悪いと思うんですよねぇ・・・。
普通の子だったら大変なことになっていたところですよ!
良い人そうだと思って騙されました!
「1967番・・・君は100階へ行きなさい」
「え゛っ」
悲鳴から歓声に変わった周囲の騒音を聞き流しながら、審判さんの怯えたような声を聞いて、私は驚きからおかしな声を上げます。
計画では、100階まで時間をかけて経験を積みたかったのですが・・・
「あ・・・50階くら「いえっ、100階でお願いします」
食い気味・・・しかも、敬語です。
まっ、まぁ・・・お金のこともありますし逆に良かった、と思うことにしましょう。
そう気を取り直して、ファイトマネーを受け取りに笑みを意識して浮かべながら、会場を後にするのでした。
・・・防御は完璧だったはず。