ゆっくりとですが、更新し続けられたらいいなと思って頑張ります。
(強い・・・。これがA級賞金首)
今まで、葬ってきた2流以下の念能力者との違いを感じ―――。
「先手必勝です!」
その言葉通りに、凝をしながら、相手の懐に飛び込み硬をした右手を繰出そうとしたところで、突如背後に現れたもう一人のルドラからの攻撃を、体を捩って躱し、横合いに飛び跳ねます。
「・・・ダブル。いえ、トリプルですか」
「ああ、そうだ。元々、どこでも一人で手術が出来るように、身に付けた能力だ。だが、意外と戦闘にも役立つんだ。これが」
横合いに飛び跳ねてから、3人に増えているルドラを見て思わず漏らした私の一言にルドラさんはどこか、好々爺然とした様子で話してきます。ですが、その目は全く笑っていません。
「―――ならっ!」
「なに!?」
掛け声とともに、私は即座に円を展開して、分身のルドラを二人同時に腐らせながら、驚愕した声を上げている本人へと間合いを詰めて渾身の右ストレートを繰出します。
―――しかし。
「ふっ!」
「はぁあああ!」
「せい!」
「きゃぁあ!」
渾身の右ストレートは難なく躱されたどころか、腐せた分身が再び、二人同時に私の背後に現れ、攻撃してきました。
どうにか防いだはいいものの衝撃で吹き飛ばされ、地面に転がり無様に這いつくばります。
「・・・くっ」
アーデルハイトが屈辱から声を漏らしながらも、追撃を防ぐため円を展開し、腐食の月光を発動させ、また分身を腐らせ反撃に転じようとしたところで―――
「え・・・?」
「ふむ」
驚愕の声と得心を得たという呟き。
「な・・・なんで?」
アーデルハイトは珍しく本当に驚愕していた。
分身を一人腐らせることには、成功した。だが、もう一人の分身を腐らせることはできなかった。
なぜなら、腐食の月光オーラに触れる前に分身は避けたからだ。
そして、今はルドラ本人と共にアーデルハイトの円の外側でアーデルハイトの様子を窺っている。
「難民たちを操作した能力に、おそらくは、強化系の肉体治癒。それに、変化系と思われる触れたものを腐らすオーラ・・・特質系の強力な能力だな。オーラの量も私をはるかに超える。ハッ、ハハハ、まったく、末恐ろしいな。だが、応用が利かないと見える。実際、腐らせることが出来るのは円の内側まで、オーラの動きもうまく隠していたが凝をして注意深く見れば避けることもできる。様々な制約があるのだろうな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ルドラはまるで教師のような物言いで諭すように語りかけている。
対するアーデルハイトは無言。そこに表情はない。
それもそのはず、彼の言葉はすべて正しい。
今まで、彼女は格下に対するワンサイドゲームしか経験がない。一度も能力を見切られたことがないのだ。にもかかわらず、この一瞬の攻防で能力を見切られたのだから、当然である。
「確信したよ。部下や難民たちの仇である事以上に、末恐ろしい君を、今、殺しておかなければならないと」
「・・・ふざけるなっ!私は死なないっ!死ぬのは・・・お前だっ!」
どこか余裕を感じさせるその言葉に、アーデルハイトはまるで焦ったかのように再び3人に増えているルドラに向かって突撃した。
・・・・・・凝を怠って。
「・・・ぐ・・・ごほっ!」
―――首にかけていたネックレスが砕け散る。
アーデルハイトは痛みから表情を歪め、口から血を吐き出しながら苦悶の声を上げた。
4人目のルドラの貫手が背後からアーデルハイトの胸を貫いていた。
「う・・・そ・・・さん・・・にん・・・じゃ・・・」
「ああ、実は、手術をするのには3人よりも4人の方が適していてね。・・・驚いたかね?」
胸から腕を引き抜かれ、地面に倒れ伏し、驚愕から、かすれた声を漏らす私に、彼は、無感動な目で眺めながら淡々と告げる。
(おか・・・あさん・・・の・・・ねっくれ・・・すが・・・)
その言葉を聞きながら、無残な姿をさらしている最愛の母の形見を見つめ、私は涙を流した。そのせいで目に付けていたコンタクトレンズが外れてしまったが。
(しに・・・たくない・・・でも・・・それいじょうに・・・ユルセナイ)
胸を、心臓を、貫かれたことによる恐怖よりも、母の大切な形見を壊したあいつがユルセナイ。
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
・・・そうだ!新しい能力を作ろう!そうしよう!
「がああああああああああああああああああああああああああ!」
私は、オーラを未だかつてないほどに増大させ、潰された心臓すらも治癒して立ち上がる。
「な!?ばかな!?」
生ゴミから驚愕の声が上がっている。
「・・・うるさい。みみざわり」
生ゴミと目を合わせ、動きを封じる。
そして―――
「きゅっとして」
「か・・・らだが・・・」
「ドカーン」
構えと掛け声とともに、生ゴミに向けて全身全霊の拳を放った。
轟音と地響きが鳴り響いた。
「・・・はぁ」
(生け捕りにするはずが、一人残らず皆殺しとか。向いてないのかなぁ賞金首ハンター)
地響きが収まり、辺り一面の土煙が晴れてしばらくして、落ち着きを取り戻した私はとりあえず、考え事をしながら、ため息をつきました。
辺り一面に広がる血と肉片。結論から言うと生存者ゼロ。
でも、仕方がないじゃないですか。たぶん、オーラに余裕のない日中だったら心臓の治癒できなくて逆に、殺されてました。
今日の一件で、私には生け捕り前提の賞金首ハンターは向いてない事が分かりました。
ここは、面倒ですが収入のことを考え、契約ハンターになって誰かに雇われるのも良いかもしれないです。
とりあえず、オーラを使い切ったので、少し休みましょう。
疲れが取れたら一応、ルドラ傭兵団討伐の証拠になる物を公的機関に持っていこうと思います。もしかしたら、少しは収入になるかもしれませんしね。
では―――。
「おやすみなさい」
そう言い残して私は、血と肉片と死体が広がる地面に気を失うように倒れて眠りにつきました。
夜間エンペラータイム時のみ発動可能な能力。
相手と目を合わせることで相手の動きを封じる。
きゅっとしてドカーンの構えと掛け声とともに全オーラを消費して全力で殴る。
さすがに、ありとあらゆるものを壊すことはできないです。
次からは原作に突入させようと思います。