「ああああああああああああああああああああああああ!!!」
気分転換のために散歩をしようと外に出たルドラの耳に叫び声が聞こえてきた。
「なんだ!?」
難民キャンプの難民居住エリアの方から聞こえた。
そう判断したルドラは、急いでオーラを纏い全力で地を駆けた。
「落ち着け!・・・落ち着くんだ!」
「だ・・・団長!急に難民たちが!」
「これはどういうことだ・・・」
複数の難民たちが、暴れているのを団員たちが取り押さえるという光景を見て、ルドラは唖然とした呟きを漏らす。
「わ・・・わかりません急に暴れだしたんです!」
その呟きを聞いた直ぐ近くにいた団員も、何が起こっているのか把握できないといった様子で答えてくる。
「物資が不足したことによる暴動の可能性が一番ですが・・・」
「ああ・・・だが・・・」
「はい。そんな兆候は・・・」
そうだ。物資が不足したことによる不満は、難民たちから感じてはいた。
しかし、暴動が起きるほどではなかったはずだ。我々の置かれている状況も、理解してもらえていたはずなのだから。
なのになぜ・・・!?
そこまで考え、ある一つの可能性たどり着き暴れている難民を、凝をして見る。
「・・・っ!?やはりか!団員それと難民に通達!ハンターからの襲撃だ!団員は小銃を構えながら、難民たち保護するとともに避難しろ!私は、ハンターの撃退に当たる!」
「りょ・・・了解しました!」
命令を聞いた近くにいた団員は、そう返事をして伝達しに急いで駆け出す。
暴動の理由が、分からないことからハンターしかも念能力者からの襲撃だと考え、暴れている難民を、凝をしてよく見るとその難民は自分自身のオーラだけではなく、別人のオーラを僅かに纏っているのが分かった。おそらく操作系の能力者による襲撃だ。
そうあたりをつけたルドラは、近くにいた団員に命令を下した後、円を広げて敵の索敵に当たろうとしたその時―――。
「え・・・?これダイナマ・・・」
「がああああああああああああああああ!」
近くで暴れている難民を、取り押さえている団員の呆然とした声と難民の断末魔とともに―――。
爆発。そして、爆風。
「ぐぅぉぉぉおおおおおおおおおお!」
爆風を食らい吹き飛ばされながらも、堅をしてどうにか耐える。
即座に立ち体勢を整えようとした時また―――。
爆発。そして爆風。
爆発。そして爆風。
爆発。そして爆風。
難民キャンプの各所から連続して爆発が起こりだした。
「わあああああああああ」
「きゃああああああああああああああ」
「ひいいいいいいいいいいいいいいい」
難民キャンプは最早、阿鼻叫喚の地獄絵図へと姿を変えていた。
「なんだ・・・これは・・・」
あまりにもあんまりな状況に、ルドラはただただ呆然とした呟きを漏らす。襲撃だという事は分っていた。だが、ここまでひどいとは予想できなかった。
「下衆がぁ・・・外道がぁっ!」
操作系の能力者による襲撃。ダイナマイトを持たせ自爆させる非道な行い。
「ありえん!・・・許せぬ!」
団員や難民のほとんどがバラバラになって飛び散って無残な死体と化している。生きている者もほとんどが瀕死の状態。状況を正確に理解したルドラは、かつてない怒りを感じ、体を震わせ顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らした。
「爆発の巻き添えを食らっていたはずですが、元気そうですねぇ」
「・・・っ!?」
背後から唐突に聞こえてきた声に驚き、振り向いて、そして、絶句する。
そこにいたのは白いゴスロリに身を包み、白いブーツ履いた黒いセミロングの髪に黒い目をした小さな10歳に歳が届いているかも怪しい少女だ。首にはサファイアと思われる宝石がはめ込まれたネックレスをぶら下げ、左手首には似合わない男物の腕時計をしている。
整った顔立ちで、とても愛らしい見た目をしている。そして、その顔に似合う愛らしい微笑みをこんな状況で浮かべている。
だが、驚いたのはそこではない。驚いたのは身に纏っているオーラの静けさだ。纏っているオーラは膨大にもかかわらず、脅威を全く感じない。それが、どうしようもなく恐ろしい。
この状況を作り出した存在が目の前の少女だと確信して、背筋から冷汗が流れてくる。
「ここまで・・・ここまでする必要があったのか?」
だが、外見が少女ということもあり、ルドラは思わず質問する。
「はい・・・?どういうことでしょう?」
「操作した挙句に自爆させるようなことが、必要だったのかと聞いているんだ!?」
しかし、その質問に全く、罪悪感を感じさせない少女の様子に、怒りを抑えられずに怒鳴りつけてしまう。
「ああ・・・そういうことですか」
質問を理解した少女は数秒、思案気に考えた後、こう言った。
「ごみを有効活用しようと思いまして」
「な・・・なに・・・?」
「ですから、ごみの有効活用ですよ。言い換えればリサイクルですねぇ」
「ごみとは・・・何のことだ・・・」
「そんなの決まってるじゃぁないですかぁ」
少女の言っていることの意味が、理解できない、いや、理解したくない。だからこそ、問い返す。しかし、その問いに対する返答は――。
「ふふふ・・・。私が自爆させてあげた『お友達』のことですよぉ。」
嘲笑を含んだ返答だった。
「それは難民たちのことか・・・」
「難民・・・?ああ、A級賞金首であるあなたたちに頼らなければ、生きていけないゴミのことですよね。その通りですよぉ。A級賞金首であるあなたたちを生け捕りにするために、私の『お友達』として役に立ってもらったんです。A級賞金首に頼らなければ、生きていけないゴミたちですけど、これで少しはましになったと思います」
「・・・っ!?」
ルドラたちの真実を知らなかったとしても、あまりにもひどい難民たちに対する言葉にルドラは怒りを感じ、拳を強く、握りしめる。
「そういえば、他の方々はあっさりと片づいてしまいましたが、あなたがルドラ傭兵団団長ルドラさんでよろしいですか?」
「ああ・・・そうだ」
「ああ!よかったぁ!あなたは生け捕りにする必要があるので大人しく、捕まってもらえませんか?」
「断らせてもらうよ・・・。私を捕らえたければ、力ずくでするんだな」
「・・・はぁ。そうですか、残念です」
ルドラの拒絶に、本当に残念に思っているのか、溜息を洩らしながら少女は言う。
その様子を見ながらルドラは思う。
(そうだ、取り返しのつかない状況だが、無実の罪で捕まるわけにはいけない。)
それに・・・。
「随分、才能に恵まれているようだが、あまり私をなめてくれるなよ・・・?小娘が」
少女に対する怒りを確かに感じているルドラは、オーラを纏から練にして威圧するように言い放つ。
「・・・・・・・・・っ」
それに対し少女――アーデルハイト――は、自分の纏っているオーラと比べれば僅かとしか言えないオーラを纏ってる眼前のルドラに、対念能力者戦において初めて脅威を感じ、気圧されたのだった。
???「わざわざ、ゴミをリサイクルする私って、本当に礼儀正しい良い子ですねぇ」