ご指摘いただいた設定とともに設定を追加・修正及び更新しました。
スラム街某所。
このスラム街でお人好しと住民達から時には侮られ、時には慕われる男―マサラガラム(32歳・独身)――は、今、懸命に走っていた。
親しくしている住人達から、このスラム街に幼い少女が迷い込んだという話を聞いた為だ。
ギャングやマフィアに少女が捕まった時のことを想像し、「一刻も早く助けないと」そう思い全速力で走り続ける。
―――見つけた。
左右を家の外壁に囲まれた一本道の手前あたりで、高価そうな黒いゴスロリに身を包んだ幼い少女が佇んでいる。
だが、様子がおかしい。
少女はぶつぶつと何か独り言を呟いている。
「・・・クソッ」
その様子を見て、最早手遅れだったと考えたマサラガラムは、忸怩たる思いで言葉を吐き出す。
「君。大丈夫かい?」
そして、傷ついた少女を保護するため怖がらせないようできる限り、優しい声音を意識して後ろから声をかけた。
―――さて、初めて『お友達』が出来て、新月の夜の制約も果たせた事ですし、そろそろ天空闘技場の自室へ帰りますか。
初めて『お友達』になってくれた方の遠ざかる背中を見ながらそう考え、踵を返します。
それにしても私怒ると目が赤くなるんですねぇ・・・。初めて知りました。
それに今宵は新月なのにもかかわらず、まるで満月の夜の様にオーラが増えているような気がします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
よ~し!決めました!
髪を黒に染めて黒のカラーコンタクトレンズをつけましょう!
だいたい、おかしいと思っていたんですよ。
だってそうでしょう?
私の両親は黒髪黒目なのに、私は金髪碧眼でそのうえ目が赤くなる?
HAHAHA。
ほらっ!やっぱりおかしいいですよ!おかしいですよね?
「君。大丈夫かい?」
「おかしいですよね!?」
怒声を上げて後ろから声をかけてきた男を振り向きざまに殴る。
「がゃぁあ!」
殴る。
「なっ・・・なに・・・をす」
「うるさい!」
殴る。
「・・・ぐふぅぉ」
「だまれ!」
殴る。
「・・・や・・・やめ」
「静かにしろ!」
殴る。
「った・・・たす」
「今、考え事してる最中なんだよぉ!!」
殴る。
「ぐぅおぇ」
「しね!」
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
―――あっ。
思わず、後ろから声をかけてきたスラム街の住人らしき男を、怒声を浴びせながら、オーラを纏った拳で殴り続けていた。
「スゥゥハァァ!スゥゥハァァ!」
肩で息をしながら、原形をとどめていない男の死体を、腐食の月光で腐らせて溶かし、気持ちを落ち着かせる。
そうです、落ち着くのです。
何を取り乱す必要があるのですか。
明日からいえ、今日にでも私は黒髪黒目になるのですから、取り乱す必要などないじゃないですか。自室へ帰る予定を変更して、髪を染めに美容院に行きましょう。
・・・あっ!?でも手と服が血で汚れていますね。
やっぱり、シャワーを浴びて服を着替えにまずは、自室に帰ることにしましょう。
可哀想なマサラガラムの名前の由来はカレー