幸せに生きたい少女   作:ヒロー

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きゅうわ  おともだち

「大人しくついてこい!」

 

男たちの中で最も若い10代半ば、まだ少年だと思われる男が近づきながら大声で警告する。

 

「はははっ!パパとママは助けにこねぇぞ!」

「お前は売られたか捨てられたんだよ!」

「碌な親じゃねぇな!」

「恨むなら自分の親を恨みな!」

「逃げられねぇぞ!」

 

背後の仲間たちの罵声が飛び、少女の背後で、退路を塞ぐ仲間たちがニヤつく中、少年は少女の左手をつかもうとして―――。

 

 

「・・・ぅえ?」

 

急に仲間たちの声が止み、静かになった。いや静かになる前に何か音が聞こえた。何かが一気にとけたような。そんな音が聞こえた。

 

「おっ・・・おい!みんなどこに隠れたんだよ!?」

 

声を荒げて叫ぶ。

仲間が一瞬で消えたのだ。

自分の目の前で、少女の退路を塞いでいた4人が消えた。

自分の背後で少女に罵声を浴びせていた5人も消えた。

 

恐慌状態に陥りそうになりながらも、自分よりもはるか年下に見える目の前の少女が、やったのだと直感的に理解して―――。

 

「それで『お友達』になってくれますか?」

「はっ・・・はい!」

 

その問いに思わず頷いてしまう。

 

「本当に『お友達』になってくれるんですか?」

「もっ、もちろんです」

 

確認するような問いかけにも、命欲しさに頷いてしまう。

 

「うれしい!初めての『お友達』です!」

 

本当に嬉しそうな今までの貼り付けた笑みとは違う、にこやかな笑みを浮かべ正面から抱きしめられて、首筋に噛み付かれた。

 

「っが・・・ぃた・・・くる・・・し」

 

噛み付かれた痛みと、恐ろしく強い力で締め付けられる。逃げ出そうとして、もがいてもビクともしない。

 

この少女はイカれている。その判断はある意味正しかった。ただ、化物であるという認識が足りなかった。

 

「目が・・・あか・・・い」

 

―――ああ、吸血鬼って本当にいるんだな。

 

そんなことを考えて意識が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

やってしまいました。

両親のことを侮辱されたことに激昂して、腐食の月光を思わず、発動していました。

私の円の範囲にいた方々は、目の前の少年と言っていい方以外は、腐って溶けてしまいました。

しかたがありません。予定は狂いましたが、年齢的にも丁度いいですし、好き嫌いは言わず、この方と『お友達』になりましょう。

そう思い私は2回、彼に確認を取る。

それに対して彼は快く、私の『お友達』になることを2回快諾してくれました。

そして私は彼に正面から抱きつき、首筋から血を直接吸った後、私の血を逆に送り込んだのです。

 

「これから、よろしくお願いしますね。私の初めての『お友達』!」

「・・・ぁは・・・ぃ・・・ょろし・・・く」

「早速ですが、あなたにして貰いたいことがあります」

「はぃ・・・わかりました」

 

『お友達』は私の言うことを何でも聞いてくれるのでとても便利です。

 

「あなたと似たような境遇で、私ぐらいの年頃の女の子を紹介してください。あと普段はできるだけ普通に暮らしてください。ではまた、ここでお会いしましょう」

 

「は・・いわかりまし・・・た」

 

―――うふ。初めて『お友達』が出来てうれしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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