IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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電脳世界にではなく、コアネットワークへのダイブとか、この作品だけだろうなぁ…。
たぶんですが。


麗銀輝夜 ~ 心星 ~

Kanzashi View

 

ISを機動させたのは、海岸だった。

なのに…私達の目の前に広がっていたのは…

 

「星の…海、みたい…」

 

見たことのない光景。

どこまでも広がる輝きに私の眼は埋められていた。

 

「こんな光景、見たことが無いわね…」

 

「うん、本当に初めて…」

 

鈴もこの光景に目を奪われてしまっていた。

誰だって無理もないだろう。

こんな光景を目にしたのは、私達だけだろうから。

 

「でも、此処からどうやって白式の反応を探せって言うんだ?」

 

…そう言えば、聞いてなかった。

後先考えてなかったなぁ、私って…。

 

『ご安心ください』

 

私たちの目の前にウィンドウが表示される。

そこに映っていたのは、クロエさんだった。

ラウラが一歩後ろに下がったのは何故だろうか?

…あ、思い出した、昨日装備を受け取った後で抱き着かれてたっけ…。

 

『皆様にはそちらの空間で自由に探索してもらって結構です。

みなさんの中で誰かが白式の反応を探知次第、こちらに情報が入るようになっています。

効率の為にも、みなさんはそれぞれバラバラに探してみてください』

 

「って事らしいけど、どうする?」

 

「各自で兄上を探すべきだろう。

私はあちらに向かってみる」

 

ラウラは此処でもサバサバしてるなぁ。

メルクも即断即決で歩いていく。

 

「お互いに連絡を取り合えるかな?」

 

「試してみません?」

 

お互いのISに備わっている通信回線を開いてみる。

反応は…サッパリだった。

こちらではお互いに連絡が取れないみたいだった。

仕方ない、かな。

それから各自思い思いの方角に歩いていく。

足元を見てみれば、幾つもの光があちこちに伸びている。

その一つ一つがコアを結ぶネットワークなのだろう。

 

なら、この道のどこかが一夏と繋がっているのかもしれない。

ううん、繋がっている。

 

そう信じて私は歩き始める。

 

「必ず…必ず見つけるから…!

もう一度出会える、二人で未来を歩めるから…!」

 

さあ、今は前を見て歩いて行こう。

 

取り戻すんだ…すべてを…!

 

 

 

 

Madoka View

 

兄さんが行方不明になってからの簪の様子は酷かった。

なのに、今はあんなにも前向きになり、強い目をしていた。

なんだろう…羨ましいな…。

 

「簪は将来、私の義姉になる人、だからかな…」

 

姉さんとはまた違った魅力が感じられた。

私がシスコンとブラコンだからだろうか?

まあ、それならそれでいいけど。

 

一度、大きく息を吸う

 

「…兄さあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!」

 

子供っぽいといわれるだろうけれど、これが私なりの探し方だ。

兄さんはどんな時でも私の声に返事をしてくれるだろうから。

そんな風に叫びながら、私は走り出す。

鈴からはブラコンなどとよく言われたりするが気にしない。

そんなの、私が普段から一番自覚しているからだし、私からすれば褒め言葉だ。

シスコンと言われたとしても同じだ。

 

「兄さあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!」

 

だから私は兄さんを呼びながら走り続ける。

必ず見つけ出す。

これは約束じゃない、絶対の誓いだ。

 

 

 

Melk View

 

一夏君とは普段からよくしてもらっている友人でした。

入学当日には、食堂で偶然出会い、握手をねだりはしたものの、それ以降は接する機会が少なく、クラス対抗戦後の会議で久しぶりに会話らしい会話をした。

その次にはタッグマッチトーナメントに向けての特訓をしてもらった。

絶影(たちかげ)流』の技をいくつか伝授してもらい、トーナメントでは順調に戦い抜き、優勝。

私は表彰台にあがったけれど、一夏君は都合によりボイコット。

なんだかなぁ、とは思ったりしたものの、私もそれに納得した。

それにしても…フリーじゃないとか言われたりした時にはビックリしましたねぇ…。

簪さんとお付き合いされているとか…なんだか羨ましいです。

絶影(たちかげ)流の技を教えてもらって、お兄さんが居たらこんな感じなのだろうかとさえ思ったりしましたけど…う~ん…改めて考えてみると、私からすれば一夏君は、『理想の男性像』というよりも『理想のお兄さん』といったほうが近いかもしれませんねぇ。

コアネットワーク上を歩き回る経験が得られるとは思ってもみませんでしたが、今回は私も全力で探してみますか。

イタリアの自慢は世界最速!

思ったらすぐに行動開始!

 

「お兄さ…じゃなくて、一夏くううううぅぅぅぅん!!!!」

 

私って…ブラコンの気が有ったりするんでしょうか…?

ちょっと自分でもびっくりです。

もうどちらでもいいですけど…。

 

「お兄さあああああぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!」

 

もう今後はこう呼んでしまいましょうか。

私たちに心配させた罰です!

 

 

 

Laura View

 

兄上の捜索を始めてからどれだけ時間が経過しただろうか。

このコアネットワーク上では、どうにも時間の感覚が曖昧だった。

ずいぶんと長い距離を歩いたような気がするといえば納得できる。

距離感も時折狂いそうになり、歩き始めたばかりだと言われれば、それでも納得できる。

要は、この空間では人間の意識など、間隔など役に立たないのだろう。

 

「兄上ええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!」

 

あの人はこんなところで絶対に死なせなどしない。

兄上の死など認めるものか、許すものか。

それを招いたあの女も赦すものか…!

 

私には野望がある。

戦いの道具として…遺伝子強化素体児(アドヴァンスド)として製造された命である私が、いつの日か、ドイツ軍のすべてをまとめ上げる。

その全てを兄上に見ていてほしい。

あの頃、兄上に出会ったばかりの頃は怒りをむき出しにしてばかりだった私が、これだけのことが出来たのだと。

いつの日か、兄上にも自慢できるような私でありたいから…。

だから…絶対に見つけ出す…!

 

 

「兄上ええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!」

 

だから、私の声が届いているのなら応えてくれ!

私には、兄上が必要なんだ!

 

 

 

Lingyin View

 

あたしがあいつと出会ってからすぐに好意を持った。

けど、その想いは突然砕け散ることになった。

簪が現れたから。失恋したとわかってからは荒れ狂った。

暴れに暴れた、弾にも、数馬にも。

もちろん一夏にも。

引っ掻いたりしたっけ。

今となっては悔しいけれど、いい思い出とも言える。

でも、身を引かざるを得なかった。

簪と一緒に居る一夏は、親友のあたしでも見たことが無いほどに幸せそうだったから。

私でも見たことのなかった笑顔がそこにあったから。

それからも一夏はあたしを親友だと言ってくれたのが嬉しくて、それらしい付き合いもした。

親友として過ごせる日々が何も変わらなかったのが嬉しかった。

だから、それを失う事が怖かった。

永遠に失われるのが怖かった。

 

「失いたくない…失わない…!

絶対に取り戻す!」

 

簪が一夏と歩むのなら、それでいい。

それを傍らから見ているだけでも、あたしは幸せだったから。

だから、その幸せを絶対に逃さない!

 

「兄貴…じゃなくて…一夏ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!

聞こえてるのなら返事しなさいよぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!」

 

アンタの未来、アタシに魅せずに消えてなくなるだなんて絶対に許さないんだからね!

 

 

 

Charlotte View

 

一夏との出会いは、まず奇妙な形だった。

父からはIS学園に転入するように、との指示。

義母からは、一夏の機体の強奪と、一夏自身の殺害の命令だった。

そしてそれが無理であれば速やかに自害しろ、と。

 

なのに、それが早々にバレてしまった。

殺害を命令されていたにも拘らず、一夏は僕を許してくれた。

それどころか、救いの道すら僕に教えてくれた。

だからだろう、そんな彼に強い好意を抱いてしまったのは。

しかもどんな時も無表情だったのが、さらに魅力的に見えてしまった。

交際している女性の話とかはまったく聞かなかったから、これは絶好の機会だと思い、いろいろとアプローチも仕掛けてみた。

けど、彼は何一つ反応する事が無かった。

ブラコンの妹が居るからだろうか、とも思ったけど、それは違った。

本人が隠していたけれど、実は交際している人がいた。

それどころか婚約者だった。

すっごい悔しかった。

なんで隠しているんだろうかと思ったら、本人達がそろって周囲に隠し続けるつもりでいたらしい。

真相を聞いて刀で切りかかる人が居たけれど、僕も何か一つ要因があれば彼女同様になっていたかもしれない。

 

「はぁ…それでも悔しいなぁ…」

 

でも、相手が居るのなら…婚約者まで居るのなら、もう僕にはどうしようもなかった。

あの二人の間に割り込むなん出来そううにないし。

一夏の周囲に居る女の子って…簪は当然として、マドカに、鈴、メルクにラウラ…あれ?

なんだかブラコンっぽい人ばっかりな感じが…?

僕の気のせい、かな?

 

「えっと…白式の反応と言っても、どこを探せばいいんだろう…?」

 

何処まで見渡しても星々の海が広がるばかり。

コアネットワークがこんな形になっているだなんて誰も知らなかっただろうなぁ。

一緒に突入してきた皆の姿も全く見えない。

 

「それでも、探し続けるしかない、か」

 

恋人にも成れないのなら…せめて、学園を卒業するまでは友達で居よう。

お互いに何の屈託もない友人として…。

 

「い~ち~か~?どこに居るの~?」

 

 

 

 

Tabane View

 

この娘達がコアネットワークにダイブしてから2時間が経過した。

見た感じでは機体を展開したままで眠っているようにも見えるだろう。

 

「くーちゃん、反応は?」

 

「いえ、未だ誰も接触が出来ていないようです」

 

たった2時間、されど2時間。

この時間だけで私はすさまじい時間が経過したように感じられた。

 

「時間が…時間だけが私を焦らせる、か」

 

早く、早く。

そう願うばかりだった。

いっくんが酷い傷を負っているのは明白だった。

だから、早くみつけてあげないと…多くを失い、自分自身を追いつめてしまった瞬間を思い出す。それでもいっくんは簪ちゃんとの未来を歩こうとしている。

そんないっくんは、私の罪の象徴でもあり、一筋の希望の欠片。

だから、失いたくない。

絶対に彼の命を失わせない。

未来も、希望も誰にも摘み取らせはしない。

 

「くーちゃん、ジョーカーを私に回して」

 

「まさか、もう使われるのですか?」

 

「仕方ないよ、時間は待ってくれないから」

 

だから、出来る事は早いうちにやってしまおう。

 

「わかりました、束様」

 

「もう、そこはママって呼んでほしいぞ」

 

くーちゃんにこうやって見せているのも、私が焦っているのを必死に隠しているから。

 

「私の希望を奪おうとする者は…そして、いっくんの未来を奪おうとする者は絶対に許さないからね」

 

そしてある場所にあるサーバーにハッキングを仕掛ける。

その目的はクラッキング。

そしてサーバー内のデータの簒奪。

私を本気で怒らせた奴には…相応の裁きを下してやる。

 

「やあ、久しぶりだねぇ、国際IS委員会の諸君」

 

さあ、国際IS委員会の終わりの時だ。

 

 

 

 

Kanzashi View

 

どれだけ歩き続けただろうか。

普通なら足が震えても仕方ない距離を歩いた気もするけれど、この空間は不思議で、そんな感覚すら感受居させない。

もしかしたら、無限に等しい距離を走っても同じなのかもしれないけれど、あまり試してみたい気分にはなれなった。

 

「どれだけ歩いたのかなんて考えてる暇は無い…!」

 

絶対に…絶対に見つけ出すんだ…!

 

ふと、手を見下ろしてみる。

目に入るのは、白金色の指輪。

あの日、一夏との婚約を教えられたその翌日に一夏と一緒に出かけ、そして彼が買ってくれた指輪。

対になる指輪が無いのに、この指輪は星々に照らされ煌めいていた。

 

「…あれ…?」

 

指輪が星の光以外で光ったように見えた。

周囲を見渡してみる。

その中で一か所、ほかの星とは違う輝きを見せている星が見えた。

完全な球形、なのに白と黒が半分ずつ。

 

「まさか…」

白式と…黒翼天…?

 

「見つけた!

あそこに、一夏が居る!」

 

『そうね、彼らが居る』

 

「ッ!?だ、誰!?」

 

背後からそんな声が聞こえた。

でも振り返っても誰も居なかった。

 

『慌てないで…敵じゃないわ。

それどころか、私は貴女の味方よ。

貴女をいつも乗せて飛んでいるでしょう』

 

「…え?」

 

『打鉄 弐式といつも呼ばれているわね』

 

打鉄 弐式?

 

『私はそのISコアのコア人格と言ったところかしら。

コアナンバー450『The Venus』』

「な、なんで…ISコアの声が私にも聞こえて…」

 

『あら、貴女の思いの強さに惹かれて私は呼び起されたのよ?

それに、私のようなコア人格と貴女は対話をしたことがあるでしょう?』

 

他のコア人格と言えば…まさか黒翼天の事だろうか?

でも、あの時には一夏の体を借りて顕現していたんだし…。

 

『外見やきっかけは何だっていいわ。

でも、貴女はそういった事を踏まえながらも彼の元を離れなかった。

それどころか、いつも傍でよりそっていたでしょう?

その想いの強さが、私を覚醒させたのよ。

まあ、話はまた別の機会があればにしておきましょうか。

今はほら、愛する彼のところに行きなさい』

 

 

「か、からかわないでよ、もう…」

 

Venusとの対話を終わらせ、私は黒白の星に近づく。

それは強い輝きと昏さを魅せていた。

そっと手を近づける。

 

『―――――――!』

 

『―――――――!』

 

聞こえた…一夏の声が…!

 

 

 

Tabane View

 

「束様!簪さんのバイタルデータに反応あり!

白式に接触した模様です!」

 

…きた!

 

「通信は!?」

 

「繋がりません、ですが…これは…簪さんが白式のコアと接触したことにより、他の人のバイタルデータが微かに…これは…一夏さんのバイタルデータと符合します!」

 

見つけた!コアネットワーク上からそれが探知できたということは…いっくんは生きている!

それだけ判れば…!

 

「位置情報の逆算!急ぐよ!」

 

「はい!」

 

私もくーちゃんと一緒に位置情報を計算する。

ようやく見つけた希望の欠片。

みんなの心を救う一筋の光。

これだけは…絶対に手元からこぼし落としたりしない!

 

「そうか…そこか!

サイバーダイブ解除!」

 

「了解、サイバーダイブ強制解除!」

 

星々が再び輝きだす。

それが静まった時には、皆に意識が戻っていた。




彼の居場所が判明した

少女たちは一斉に羽ばたき飛翔する

だが、彼女たちの目の前に現れたのは、彼だけではなかった

次回
IS 漆黒の雷龍
『麗銀輝夜 ~ 双心 ~』

刃を振るう、その欠落とは…

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