IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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二つの戦いが同時に始まります。


麗銀輝夜 ~ 白墜 ~

Lingyin View

 

ようやく見つけたわよ、あの大馬鹿女!

一夏に依存して周囲への迷惑すら考えないクソガキ!

 

「ラウラ!牽制いくわよ!」

 

「任せろ!」

 

ラウラがシャルロットから借りたらしいアサルトライフル『ガルム』を展開したのを確認し、アタシは龍砲を起動。

衝撃砲を撃ちまくる。シャルロットもそれに合わせて発砲を始めた。

 

「てぇ―!」

 

ラウラも本気、大型砲で狙い撃つ。

海上に水柱が立つ。

それで篠ノ之はようやくアタシ達の接近に気付いたらしい。

 

「貴様等、何をするんだ!」

 

「それは、アタシ達のセリフよこの大馬鹿女ぁっ!」

 

双天牙月を連結し、投擲。

刃がブーメランとなって空中を走り回る!

 

「貴様の行為はすでに反逆罪だ!

我々には貴様の拿捕の命令が下されている!

投降しろ!拒否は一切認めない!」

 

ラウラは続けてワイヤーブレードを展開する。

シャルロットも一夏たちを送り終え、こちらに合流する。

更にはセシリアも。

ラウラとシャルロットの連携は脅威、そこにアタシも加われば、篠ノ之に勝ち目はない。

そもそも、打鉄と同等になるまでスペックを下げたラウラにすら勝てなかったんだ。

1対1は当然、1対4になったら勝つどころか勝負にすらならない。

 

「素直に従ったほうが利口だよ、厳罰は覚悟しなきゃいけないけどね」

 

「ふざけるな!

私は一夏の援護に向かうんだ!

お前達が居たところで作戦成功は難しいのだろう!

だったら私が一緒に戦えば勝機が出てくるだろう!

邪魔をするな!!」

 

「邪魔をしてんのは!

アンタの方よ!

行くわよラウラ!シャルロット!セシリア!

手加減するんじゃないわよ!」

 

アンタのそのつまらない意地!

粉々に砕いてやるんだから!

 

 

 

 

Ichika View

 

時は少しだけ遡る

 

篠ノ之の処理はこの際、あの四人に任せておくしかない。

しかし、逃げ切ろうとする可能性も否定はできない。

 

「セシリア、俺達を運搬後、鈴達と合流し、篠ノ之の拿捕に向かってくれ」

 

「わたくしも?」

 

 

「福音は広域殲滅を得意とした機体だ、負傷する機体は少ない方がいい。

その為にも篠ノ之を海域から引き離すことで、鈴達は当然だが、セシリアの安全確保にも繋がる。

頼んだぞ」

 

「分かりましたわ」

 

これでいい。福音は、俺と簪とメルクとマドカの四人でなんとかする。

 

「ですけれど、一夏さんと簪さんとの関係を黙っていた件について訊かせていただきますわよ」

面倒臭ぇ…

 

 

「一夏君!接触まで残り10秒です!」

 

「セシリア!」

 

「御武運を!一夏さん!簪さん!メルクさん!マドカさん!」

ブルー・ティアーズの背を見送る。

ターゲットは既に視認出来ている。

だが、そのターゲットは…映像で確認したものよりも…遥かに美しかった。

俺以外の誰もが、銀色の天使に見惚れていた。

 

「よし、行くぞ!」

 

俺の掛け声と同時にメルクと共に連続個別瞬時加速を行う。

凄まじい加速感に体が痺れる、だがそれを今は無視する。今は目の前のターゲットに集中だ。

 

「『零落白夜』発動!」

 

刀身がスライドし、レーザー刃が展開、それが金色に染まる。

それを俺が出せる限りの最速で振るう。だが殺気を感じ取られたのか、命中直前で回避される。

即座に零落白夜を解除。

シールドエネルギーは無駄遣いは出来ない。

福音は射撃攻撃を始める。

それも全方位広範囲に。

白式が持ち合わせる機動性にものを言わせ、ぎりぎりで回避。

防ぎきれない攻撃はマドカがシールドビットを飛ばして防御してくれた。

メルクもほとんど回避しているが、若干シールドエネルギーが削られたようだ。

簪も何とか回避、春雷で弾丸を撃ち落すほどだ。

その間にも福音は両腕にブレードを展開する。

ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンに搭載されているプラズマブレードに形状は似ている。

だが長さは長剣と言ってもいい。それが二刀流だ。

何が『格闘戦用のデータが無い』だ、フザけるな。

しっかりと準備してるじゃねぇか…。

 

「ちぃっ!」

 

その両手のブレードを二刀流で俺も受け止める。

だがレーザー刃を展開はしない。

エネルギーが勿体無い。

マドカがビットを展開、援護射撃を始める。

それに気づき、福音は離れていく。

メルクも両手にレーザーライフルを構え、マドカと共に撃ち始める。

直線状の射撃に偏向射撃も加わり、海域は幾条ものレーザーが交差する。

 

「逃がさない!」

 

簪も山嵐による一斉砲撃を行う。

呼応するように福音は一斉射撃を行う。

山嵐の大半が撃ち落される。

だが、それでも充分だ。奴の視界を封じた!

 

「頼むぞ、白式!」

 

瞬時加速で一気に接近!

背後からの零落白夜!

 

「―La♪」

 

歌声が微かに聞こえた。

それと同時に急速離脱、またも回避された。

零落白夜を徹底的に警戒された。

生半可なやり方じゃ当てられそうにない。

 

「兄さん!援護を行う!」

 

再び偏向射撃。

簪も春雷による砲撃を繰り返す。

だが動きを封じるには至らない。

あまりにもスピードが速く、六条氷華でも当てられない!

 

「頼むぞメルク!簪!マドカ!」

 

「はい!」

 

「任せて!」

 

「わかった!」

 

メルクが福音を追い越し、両手にブレードを展開。

右後方からマドカがナイフを構えて接近、左後方からは簪が夢現を構える。

三方向からの瞬時加速!囲まれてしまえば!逃げ場は上だけだ!

 

「待って!一夏!」

 

簪の叫び声が聞こえ、俺はレーザー刃の展開を中断。

物理刀状態で福音と衝突した。

 

「簪?どうした?」

 

「生命反応有り、福音には…パイロットが乗ってる!」

 

無人機って話すら嘘かよ…。

要は機体諸共パイロットを見限ったのか。

簪の悲しむ顔は見たくない、このパイロットを死なせるわけにはいかない。

あくまでエネルギー切れにさせるしかない。

絶対防御を発動させ続ける以外に手段は無い、か。

こいつは最悪の事態だ。

白式は長期戦になると圧倒的に不利だ。

レーザー刃はもう使えない。

なら思いつく限りでの方法は…。

 

・零落白夜でエネルギー切れにさせる

・物理刀状態で戦う。

・コアを破壊する。

 

…最後は無い。コアはとりわけ頑丈で、最も強固な装甲に守られている。

そもそもコアがどこに収納されているのかも分からない。

だから、正攻法でやるしかない!

 

物理刀でも無理だろう。

シールドエネルギーを突破できないし、突破できたら今度は頑丈な装甲と絶対防御がお出迎えだ。

 

「一夏君!後ろ!」

 

「あの大馬鹿!振り切ってきたのか!」

 

篠ノ之が背後から接近してきていた。

ラウラ達と戦ったんだろう、装甲はあちこちがボロボロだ。

訓練時間に誰かが搭載させていたのだろう高機動パックを使ったのか…!

 

 

「一夏!援護する!」

 

「引っ込めバカ!作戦の邪魔だ!」

 

「何が邪魔だ!苦戦しているではないか!

私が援護すると言っているんだ!感謝ぐらいしろ!」

 

本ッ当に面倒だ!

 

「メルク!

このバカを連れて急速離脱!

ラウラに引き渡せ!福音に追いつかれるな!」

 

「はい!」

 

メルクの両腕に搭載されている杭状武装、『イーグル』が打鉄の非固定浮遊部位を貫通しロックする。

これで後は…

 

「一夏!私は邪魔にならない!そうだろう!?何とか言え!」

 

「…足手まといだ」

 

 

「ふざけるなぁっ!」

 

非固定浮遊部位を今度は本当に脱離させる。

これであの打鉄は防御能力を失った。

そのままたいした加速もせずに福音に突っ込もうとする。

だが、今の無駄な時間の間にも福音は広域殲滅砲撃の用意を既に終えていた。

 

「まずい!」

 

瞬時加速!

篠ノ之がまとう打鉄の脚部装甲を掴み、後方へと放り投げる。

錐もみしながら落ちていく篠ノ之を確認したが、もう手遅れだった。

 

「兄さん!」

 

「一夏!」

 

「一夏君!」

 

背後から襲いくる無数の弾丸と砲弾、更にはレーザーが雨霰と降り注ぐ。

急な瞬時加速にマドカも対応しきれなかった、シールドビットも間に合わなかった。

激しいダメージに白式のシールドエネルギーが今までに見たこともないような速さで削られていく。

残り1%、それを確認した瞬間。

 

ドン!!!

 

背後からの爆発に背中を焼かれた。

 

アラートの表示が現れる。

そこに表示されたのは…右翼スラスター大破。

確認すれば『葵』が突き刺さっている。

これが原因か!

何を考えているのか知らないが篠ノ之が投げつけでもしたのだろう。

 

その確認が命取りになった。

 

「…が…!?」

 

両肩から脇腹に走る激痛。

福音のブレードに切り裂かれたのだと理解した。

更に腹部から背中に焼けるような痛みがと肉が焦げるよう匂い…。

福音に串刺しにされたのだと認識した瞬間には…もう、俺の意識はブラックアウトしていた。

 

 

 

 

Kanzashi View

 

一夏が撃墜された。

白式は強制解除され、一夏は海に落ちた。

 

アカイイロヲナガシナガラ…

 

「嫌…嫌…いや、いや、いやいやあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!」

 

「落ち着いてください簪さん!」

 

落ち着け!?こんな状況で落ち着けるわけがない!

一夏が!一夏が死んじゃう!

そんなの私には耐えられない!

一夏が居ない世界で、私は生きていけるわけがない!

一夏が居ない世界なんかで!

私は生きたくない!

一夏が死んだのなら…私だって死を選ぶ!

 

「嫌だ、兄さん…私を置いていかないで…そんなの嫌だ…」

 

「しっかりしてください!マドカさん!簪さん!今此処で!貴女達の死を一夏君が望むと思っているんですか!?」

 

その言い方は狡い。

そんな事を言われたら…私は死ぬ事も出来ない…。

 

 

 

Lingyin View

 

作戦領域で起きた事が信じられなかった。

一夏が撃墜された、それだけじゃない、尋常じゃない流血をともなって海に落ちた。

 

「嘘よ…そんなのって…無いわよ!」

 

視線を下に向ける。すべての原因はアイツだ!

今は岩に叩きつけられた事で気絶しているあの大バカ女のせいで!

 

「落ち着いて!鈴!」

 

「落ち着けですって!?

そんな事出来るわけないでしょ!?

見なさいよ!一夏がやられて、簪もマドカも完全に取り乱してる!

福音だって今は戦意を見せてないだけで、いつ攻撃してくるか分からない!

全ての原因は!アイツよ」

 

「だが、あのバカを殺したところで兄上は…!」

 

そんなの分かってる!だからアタシだって落ち着けないのよ!

 

「来ますわ!」

 

セシリアの金切り声にアタシは前を向いた。『福音』が上空に再び飛翔する。

エネルギーを貯めている。

…まさか…さっきの…広範囲殲滅攻撃を…!?

 

「簪!マドカ!メルク!逃げてぇっ!!!!」

 

もう手遅れだった。

無限の弾丸、レーザーが降り注ぐ。

ラウラがAICを、マドカがシールドビットを展開するけど、この攻撃はさっきの比じゃない。受け止めきれない…!

 

もう、ここまで

 

そう悟った瞬間、巨大な水柱が立ち上る。

 

 

 

 

 

 

災厄が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び現れた

 




咆哮する雷龍

陽光より見下ろす白銀の天使

戦いの果てに染まるのは、ただ一色だけなのか

次回
IS 漆黒の雷龍
『麗銀輝夜 ~ 絶望 ~』

此処で終わるのなら

惜しいとは思わない

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