IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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さてさて、みんなにプレゼントの紹介です。


麗銀輝夜 ~ 輝星 ~

Ichika View

 

プレゼント、とこの人は言った。

それが尋常なものではないだろうとさえ思う。

オマケに此処には専用機所有者が多く集まっている。

その状態でプレゼントとして扱う物は想像が用意だ。

ISの兵装だろう。

 

「ごめんね、いっくん。

いっくんの白式には用意が出来なかったんだ~」

 

「構いませんよ、あまり装備が多くなりすぎても、俺には扱えきれないでしょうから。

俺は武蔵坊弁慶のようには振る舞えませんよ」

 

「そっかそっか♪

それじゃあ、御開帳~♪」

 

上空から何かが落ちてくる。菱形のような形状のものが全部で…7つ。

音もなく落下し、同じように音もせずに着地した。

見たこともない形状のコンテナだ。

 

「先ずは~更識 簪ちゃんにプレゼント!」

 

コンテナの一つが開く。

そこに入っているのは…

 

「薙刀、ですか?」

 

薙刀は簪の十八番の武装だ。

実際に生身でも薙刀を振るっている光景を俺も幾度も目にしている。

ただ、この薙刀は見た目が奇妙だ。

まるでダブルセイバーのように見受けられる。

 

「薙刀型ダブルセイバー、『願星(ねがいぼし)』!もちろん、分離させて薙刀での二刀流としても扱えちゃう便利な武器だよ♪」

 

そう言いながら右手だけでコンソールを呼び出し、操作している。

こちらもまた尋常ではないスピードだ。

そして簪の目の前に別のコンソールが出現し、そこには『インストール完了』の文字。

簪の専用機である打鉄 弐式(うちがね にしき)にインストールさせたらしい。

コンテナは空になっている。

量子変換されたのだろう。

簪は束さんの言われるままに機体を展開し、新たな兵装も展開させる。

 

「簪、違和感は無いか?」

 

「うん、大丈夫。

これならすぐに扱えそう。

篠ノ之博士、ありがとうございます!」

 

「えっへへへ~♪

さあさあ、次の紹介に入っちゃうよ!

お次はマドっち!」

 

妙な呼ばれ方をされたマドカも機体を展開させる。

そして次のコンテナが開かれるとそこには…二つのL字型の何かがあった。

それも姿を消し、サイレント・ゼフィルスに量子変換される。

展開すると、グリップを逆手で握る形になる。

見てくれからすると…

 

「兄さん、これ、トンファーなのかな?」

 

やっぱりマドカにもそう見えるか。

だが、遠距離攻撃が得意なサイレント・ゼフィルスになぜ、近接兵装を?

「マドっちにプレゼントしたのは…トンファー型レーザーガン『祈星(いのりぼし)』!

高出力のレーザーを発射できるライフルを小型して、片手で思う存分に振るえる形にしてみたんだ~♪

次にグリップを連結させてみて」

 

「こう?」

 

二つのグリップを連結させるとHのような形状になる。

途端に二つの銃口からレーザーが出力され、Aのような形状になる。

 

「レーザーガンだけでなく、近距離戦闘に適したレーザーブレードにしてみたんだ」

 

これは凄い兵装だ。

この兵装一つだけで遠近両用の戦闘が出来るとは…。

 

「じゃあ次に行ってみよう!

中国の鈴ちゃん!」

 

「は、はい!」

 

甲龍が展開され、コンテナが開く。

そこにはシンプルな形状の日本刀のような武装がこれまた二つ。

そして束さんが勝手に甲龍にインストールさせていく。

 

「刀剣型武装『双星(ふたごぼし)』!

近接戦闘が出来るのは当たり前だけど、遠距離攻撃だってお手の物!」

 

上空に幾つかの仮想ターゲットが展開されていく。

 

「そこでその武器を振るってみて」

 

「ここで、ですか?」

 

「そうだよ、あのターゲットを撃ち抜くイメージでね」

 

鈴が二刀を十字に振るう。

その剣閃からレーザーが発生し、片方は放射状に、もう片方は扇状に出力され、ターゲットを撃ちぬいた。

これまた見事だが、鈴の技量では、まだ正確に射抜く事が出来ていないようだ。

此処は本人の技量次第だな。

 

「次にイタリアのテンペスタに!」

 

「はい!」

 

テンペスタ・ミーティオが展開され、真正面のコンテナが開く。

そこには、L字状の兵装が幾つか並んでいる。

それもまた勝手にインストールされ、テンペスタの翼に張り付くような形で展開された。

メルクがそれに意識を向けたのだろう、その兵装が飛び立ち、空中を走り回る。

 

「ブーメラン型武装『舞星(まいぼし)』!相手の攪乱にはもってこいだよ!」

「ありがとうございます!」

 

「イメージインターフェイスに直結しているから、思った通りに飛ばせるけど、最初は慣れるまで多くの数を展開したりしないように!

じゃあ次!イギリスのBT!」

 

「はい!」

 

次はセシリアの番か。

ブルー・ティアーズが展開されるが、腕部装甲が消え、新たな装甲が展開される。

腕の外側にはV字状の出力装置らしきものが搭載されている。

 

「大出力レーザーカノン『光星(ひかりぼし)』!

いっくんが撃つ『六条氷華(りくじょうひょうか)』をモデルにして作ってみました!射撃の腕は自身があるみたいだけど、反動がキツイから今後の訓練には気を付けてね!」

 

「このセシリア・オルコット!

鍛錬は欠かしませんわ!ふふふ…一夏さんの兵装をモデルにした兵装…お揃いみたいですわ…」

 

妙なつぶやきが聞こえたがスルーする。

 

「お次はドイツの黒ウサギ!」

 

なんつー呼び方しているんだか。

ラウラもシュヴァルツェア・レーゲンを展開する。

コンテナには…大型の兵装が搭載されている。

レーゲンの非固定浮遊部位の側面に張り付くような形で新たな兵装が展開された。

 

「スラスターとシールドを兼ね備えた兵装『流星(ながれぼし)』!」

「…ふむ…」

 

ラウラが意識を向けると、その兵装は前後上下左右と動き回る。

搭乗者のイメージに応じて動き、時にシールド、時にスラスターを併用できるようだ。

 

「じゃあ最後にフランスの僕っ娘!」

 

「は、はい!」

 

「君の機体は第二世代機だからシンプルにしてみたよ」

 

ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡの脚部装甲が新しく展開される。

 

「脚部装甲『霞星(かすみぼし)』!

機動力向上によって、イタリアの第二世代機『テンペスタ』にだって追いつける速度に早変わり!」

 

これで全てのコンテナが解放された。

だが気になることは幾つか有る。

 

「束さん、何の為に、この兵装の開発を行ったのか、説明していただけませんか」

 

「理由、か。

それは…謝罪も込めて、かな」

 

謝罪?

何のことについて謝罪したいのか、俺には分からない。

はっきりと説明してもらいたい。

 

「私がISを開発したから、いっくんにとっては生きにくい世の中に、ちーちゃんにとっては自由の少ない生活にしてしまった。

だから…」

 

「謝罪というなら、私に一番に謝罪すべきだろう!」

 

近くからそんな怒鳴り声。

声の主は…先ほどと同じだった。

 

 

 

Tabane View

 

なんだか残念だった。

箒ちゃんがこんな風に歪んでしまっているのを見るのは。

真っ直ぐに、今の現実を見てくれるようなら、いっくんとの約束を反故にしてでも、機体とコアを作っていたかもしれない。

けど…くーちゃんから教えてもらった通話内容、いっくんからの話から考えても、専用機なんて作れなかった。

もしも、今の箒ちゃんに専用機を渡したなら…いっくんや、ちーちゃんの命も危なくなる。

それを理解していた。

だから、専用機は作らないし、渡せない、渡さない。

 

「箒ちゃん、理解して。

今の箒ちゃんには専用機は作ってあげられない。

私は…これ以上世界を狂わせるつもりなんてないの。

私を咎めたいのなら、そうしてもいい。

だけど…自分の事も振り返ってみて。

箒ちゃんは本当に…『正しい事だけ』をしていたの?」

 

「私は何も間違ってない!

私は!

堕落してしまった一夏を更生させてやりたいだけです!

その為に私には力が必要なんだ!私の専用機が」

 

…見込み、無し、か。

ちーちゃんも溜息をつき、首を横に振っている。ちーちゃんも、見込みがないと言い切っているような感じだね。

 

 

Chifuyu View

 

間違いに気づいていない、か。

欠けているものが何なのかと問うてみたが、篠ノ之 箒 は『力』と答えた。

だが、私は真っ向からそれを否定した。

考え直せ、とも言った。

だがこいつは再考すらしていない。

専用機は確かに『力』と言えるだろう。

だが、こいつには『人間』として必要なものが欠けている。

相手の気持ちを考慮する点が、だ。

この大馬鹿者は、相手の思考を全て否定し、自分だけが正しいものだと言い張る。

故に、『相手を否定しなければ自身を肯定出来ない』のではなく、『相手が間違っていて自身だけが正しい』と思わなければ自分を保てない。

弱すぎる心、そしてその傲慢は見過ごせない。

 

 

Tabane View

 

「じゃあ、教えてくれるかな、箒ちゃん。

いっくんを箒ちゃんの言うように更生させて、どうしたいの?」

 

「それは…私が一夏の隣に立ち…」

 

「出来ないよ」

 

簪ちゃんの目が物凄い爛々と怪しくきらめいているのを見て寒気が走ったのは秘密にしておこう。

とはいえ、箒ちゃんのこの思い込みは解決させなきゃいけない。

 

「箒ちゃんはいっくんの隣には立てない。

箒ちゃんだけじゃない、だれもいっくんの隣には立てないよ。

いっくんの隣、その特別席にはもう座っている人が居るからね」

イギリスの子もフランスの子も狼狽えはじめた。

あの二人にも消えない傷跡を私は刻むことになってしまうかもしれない。

それでも構わない、その覚悟は決めてきているから。

 

「そうだよね、簪ちゃん。

君がいっくんのパートナー、ううん、正確には『人生のパートナー』、だよね。

いっくん、婚約おめでとう!」

 

 

 

Ichika View

 

とうとうカミングアウトされてしまったか。

よりにもよって、こんな面前で…。

しかも婚約していることもこの人は知っているのかよ…。

千冬姉も頭を抱えている、こんなところで暴露されるとは思ってもみなかったのだろう。

 

「どうするのだ、兄上?」

 

「どうするって…もうどうしようもないだろう」

 

ため息を零しながらも俺は頭を抱える。

そんな俺の心情を悟ることもせずに束さんは俺の左手首をつかんで掲げる。

 

「いっくん、簪ちゃん、その指輪、よく似合ってるよ」

 

そこまで暴露するのかよ…。

セシリアとシャルロットはあいた口が塞がらないといった様子。

鈴はニヤニヤ、メルクはニコニコとしている。

 

「兄上と簪の関係はそこまで進展していたのか。

では改めて兄上、将来が確約されているようだから先日の質問に答えていただきたい。

私は今の内から簪を『姉上』と呼ぶべきなのだろうか」

「…勝手にしてくれ…」

 

俺は束さんから左腕を離してもらい、頭を上げた。

 

「今回のプレゼントは謝罪も兼ねての私からの祝言祝いみたいなものだから」

 

「そうですか」

 

それよりも、この殺気は

 

「貴様があああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

 

篠ノ之だった。

どこから取り出したのか、真剣を握っている。

その先には

 

「なっ!?」

 

「簪!」

 

簪が標的にされていた。

もう全員が機体の展開を解除している。

武器は手元に無い。

このままでは簪が斬られる!俺は腰に提げておいた刀を引き抜く。

だが、踏み出す必要も無かった。

 

ガギィィィン!!

 

 

刃が刃にぶつかる音が鳴り響く。

 

「嫌な役回り、ごめんね、くーちゃん」

 

「いいえ、これもお仕事の内ですから」

 

どこかラウラに似た銀髪の少女が杖から刃を引き抜き、篠ノ之の刃を受け止めていた。

 

「そこを、退けええぇぇぇぇっっ!」

 

「退くのは、アンタよ!」

 

真横からの鈴の蹴りが篠ノ之の脇腹に突き刺さる。

 

「がぁっ!?」

 

続けてラウラが篠ノ之の右手を蹴り刀を吹き飛ばす。

その刀は千冬姉の手に収まる。

追撃とばかりにメルクとマドカが篠ノ之を背後から蹴り、回し蹴りで吹き飛ばした。

遅れる形にはなったが、俺も前に飛び出し、吹き飛ばされた篠ノ之の喉元に刀を突きつけた。

 

「一夏、出るのが遅いわよ」

 

「ああ、すまんな。

さて、お前のやったことは分かっているんだろうな…」

 

国家代表候補生はその国の重鎮、首相レベルに限りなく近い。

そんな相手を殺そうとすればどうなるか、無論、法の裁きを受ける。

IS学園の場合でも始末書では済まされないだろう。

 

「わ、私はお前の為と思ってやっているんだ!

それの何が…」

 

「それで殺人か?

随分と緩い頭をしているようだ。

束さんが言っていたように簪は俺の人生のパートナーだ。

すでに将来も誓い合った身、奪わせはしない」

 

もう…秘匿の必要も無いだろう。

 

 

 

 

Chifuyu View

 

「篠ノ之、お前は旅館に戻れ」

 

「ですが織斑先生!私は!」

 

「最終警告だ、旅館に戻れ。

今回の件、始末書程度で済むと思うなよ」

 

教師は生徒の間違いを正させるのも仕事の内。

それくらいは理解しているが、決して自身の間違いを認めない人間を正させる事など出来るのか?

今になってそれが疑問になってくる。

もう面倒だ、この臨界学校が終わり次第、アイツは別のクラスに放り込んでやる。

それ以降の世話など知るものか。

 

「二人の件は両家公認の元での決定事項だ。

お前ひとりの意志など無意味だ。

オルコット、アイリス、お前たちも言いたいことはあるだろうが、今は口を閉ざせ、これは命令だ」

 

「は、はい…」

 

「しょ、承知しましたわ…」

 

 

Kanzashi View

 

見ていて気分が悪くなった。

まるで一夏の全てを否定するかのような言葉の暴力に…。

一夏が間違った方向に進んでいる事を前提にして、あの人は言ってた。

私としては一夏がどこかで間違った道に進んでいるとは思えない。

間違ってなんかいない、間違っているだなんて私は認めない。

二年間も一緒に居るけど、そんな所は何もなかった。

鈴にも教えてもらったけど、そんな節なんて無かった。

私と交際する前は極めて鈍感だったらしいけど、それも昔の話。

篠ノ之さんは、それ以上の前の一夏しか見てないんだと私はすぐに悟った。

ただ、一夏は大人っぽくなっただけ、成長しただけ。

それをあの人は認めようとしない、ただ一夏の成長を認めず、周囲に八つ当たりしようとしてるだけなんだと私は頭の中で片づけた。

 

「でも…殺されるほどに憎まれるだなんて思わなかった…」

 

 

Laura View

 

篠ノ之 箒が山田先生に力ずくで旅館に連行されていく。

これでようやく重要事項の話を聞けるようだ。

私としてもようやく落着した空気に胸をなでおろした。

簪もマドカも気分を悪そうにしていたが、鈴の場合は怒りが炸裂したようだ。

とはいえ、鈴が殴らなければ私が殴っていた。

それも、ISを部分展開させてでも。

兄上は興味も無さそうにしていたが、胸の内はどうなっていたことやら。

…感情を失った今では、もう何も思っていないのだろうか…?

いや、そんな事は無い、それではまるで人形だ。

兄上は人間だ。自分を『人間だった抜け殻』とまで言っていたが、私はそれを認めない。

兄上は…人間だ。

兄上がそれを認めずとも、私はそれを信じる。

 

 

 

Madoka View

 

最悪の気分だった。

私は幼い頃にしか兄さんの記憶がない。

私が兄さんと接することができなかった長い時間、その全てをも否定したあの女が。

姉さんも危険視しているから、私も同じように危険視していた。

なのに…あんなにも傲慢になっていただなんて…。

決めた、アイツは私達の敵だ。

 

 

Ichika View

 

束さんによる検査は続いた。

この場に於いても「展開しちゃ駄目だゾ」とまで言われたが、黒翼天は現在展開不可能だ。

部分展開とて反応しない。

 

「ふ~ん、『黒翼天』って名前をつけたんだ」

 

「ネーミングは俺じゃありませんがね」

 

命名したのは簪だ。

なかなかに良いセンスだと思ってる。

だから俺は左手のコイツをそう呼び続けている。

 

「う~ん…やっぱり解析も分析も出来ないや、仕方ないか。

でもねいっくん、今後は黒翼天は展開しちゃ駄目だよ、部分展開も絶対に駄目。

もしも今後に黒翼天を展開したらいっくんがどうなるか分からないから」

 

「承知してます」

 

「はい、よろしい♪いい子いい子♪」

 

頭を撫でないでください、俺は子供じゃありません、成人年齢に達していないだけですから。

あ、でもこの人からしたら俺は子供かもしれない。

っつー事は、俺はいつまでもこの人からガキ扱いされるって事か?

勘弁してくれ…。

 

そして簪、「私もやってみたい」と言いたげな視線はそこでストップしてくれ。

更にはマドカとラウラと鈴もだ、「私にしてほしい」と言いたそうな視線を向けるな。

お前ら三人は揃いも揃ってブラコンなのか。…ん?鈴がブラコン?…何も言うまい。

 

「あ、あの、い、一夏さん、その、先ほどの話なんですけれど…」

 

「か、簪と婚約状態って本当なの…?」

 

検査を受けている間にセシリアとシャルロットが声をかけてくる。

随分と答えにくい事を訊いてくるんだな…。

 

「隠し立ては今さら無意味か…。

ああ、本当だ。

今回の臨海学校の暫く前に決まった話だ。

千冬姉も、そして簪のご両親とも話をしている」

 

「そんな…」

 

「なんで教えてくださいませんでしたの…?」

 

「言うつもりが無かったからだ。

そもそも、要望があったからこそ俺達は口を閉ざし、周囲の人にも口止めをしていた。

叶うのなら、卒業まで…いや、それ以降も誰にも言うつもりは無かった」

 

セシリアもシャルロットもがっくりと頽れている。

この二人が俺をどう思っていたかは知らないが、この様子を見れば流石に多少の罪悪感は感じる。

「唯一の誤算は束さんだな。

この人が俺と簪の婚約の事まで把握し、暴露するとは思ってもみなかった」

 

「いっくんの事だからね、言葉だけででも祝福したかったんだよ。

あ、式場には束さんも呼んでね、いつでも何処でも駆けつけるから!」

 

考えておきます。

 

 

 

Chalrotte View

 

し、失恋しちゃったよう…。

まさか、一夏には恋人を飛び越えて婚約者がいて、しかもそれがすぐ傍に居ただなんて…。

 

「セシリア、僕…」

 

「わたくしも、同じ気持ちですわ…」

 

「そういえばあの二人、いつも一緒に居るよね…」

「なぜ、気づきませんでしたのかしら…。

でも、こういう場合は…」

 

諦めて、祝福するしかないんだろうね…。

それが友情って言われるものなんだろうし…。

 

「でも、箒さんとは違って殺したいほど憎くは感じられませんわ」

 

「それは、僕も同じ感じかな…」

 

でも、教えてくれなかったのはショックだったな…。

 

「鈴はあの二人の関係は知っていたの?」

 

「流石に婚約の事は知らなかったわよ。

けど、一夏と簪が交際していることは知ってるわ。

二年前からあの二人の関係は続いてるのよ。

アタシ以外にも、ラウラやメルクも知ってるのよね。

ほかには本音とかそのお姉さんとか、簪のお姉さんの生徒会長もね」

 

結構居るんだ…。

なのに僕たちには教えてくれなかっただなんて…。

 

「何処で誰が見てるか、そして誰が聞いているか判ったものじゃないから仕方ないわよ」

 

そう言われると、もう何も言えないよ…。

 

「アンタ達二人が一夏をどう思ってるかは知ってるけど、今が引き際よ。

篠ノ之みたいになりたいわけじゃないでしょ」

 

「「うぐ…!」」

 

 

 

Lingyin View

 

さてと、これでようやく面倒な口止めも不要になったわね。

口止めを頼まれてから丸二年以上、まったく…長かったわ…。

それにしても婚約ね…それくらい親友(アタシ)にくらい教えなさいよね。

 

「婚約、ね…。

挙式はいつになるんだか…その時にはアタシも出席させなさいよね、盛大に祝ってあげるから」

 

 

 

 

Tabane View

 

これでみんなにプレゼントは渡し終えた。

ちーちゃんといっくんの刀は『雪』の名を冠し、いっくんの剣術が『月』を冠している。

だからだろう、私がこの後付武装(イコライザ)に『星』の銘を与えたのは。けれど、これらの武装には他にも機能がある。

 

「束様、よろしいのですか?

あれらの兵装のもう一つの能力を説明しなくても」

 

「うん、いいの。

使う機会なんて無ければいい代物だから」

 

私はあの娘たちに幾度も『イメージ・インターフェイス』という言葉を使ってしまった。

それから察する事は出来ないだろうけれど、兵装としての使い方以外はしないほうがいい。

だから、それらを使う機会は訪れないでほしい。

どうか…その力は眠ったままで…。

 

 

 

Ichika View

 

専用機所有者全員に新たな兵装を送る為に此処まで来たのは理解が出来た。だが、まだ理解出来ない点も有った。

『謝罪の為』とも言っていた。

それは何についての謝罪なのだろうか…?

 

「少し、お話したい事が有るのですが…」

 

「…ん?」

 

細い声が聞こえ、視線を向ける。

先程、簪を守ってくれた女の子だった。

 

「構わないが、君は?」

 

「申し遅れました、私は束様の助手を努めております、『クロエ・クロニクル』と申します」

 

外見がラウラに似ているが、何か関係は有るのだろうか…?

いや、気にしないでおこう。

 

「で、話というのは?」

 

「束様が謝罪したいという点です。

ISを開発した事で、世の中が混乱、男性が生きにくい世の中になってしまいました」

まあ、否定はしない。

 

「それで、貴方の人生をも狂わせてしまったのでは、と…そう思っておられるのです」

 

「確かに、色々と有ったさ。

けど、人生なんてそんなものだろう。

それに俺は…そのISのおかげでこうやって仲間が出来た。

中国に帰ってしまった幼なじみとも再会出来た。

11年間も離れ離れになってしまった妹とも出会えた。

明確な目標を見付ける事が出来た。

俺だけの剣術を編み出せた。

それに…簪と出会い、互いに支え合える関係になった。

今では、婚約だ。

悪い事ばかりじゃなくて、こうやって良い事も多く有ったんだ。

怨む筋合いは無いさ。

寧ろ、感謝してるよ。

だから束さんには罪悪感なんて持ってほしくはない。

そう伝えておいてもらえないか」

 

これが俺の本心だ。

女尊男卑だなんて気にする必要は無い。

女だから偉ぶる事に意味は無い。

男だから卑屈になる理由も無い。

そこに有るのは意識の違いだけなのだから。

 

「ふふふ、承りました。

それと私からも…婚約、おめでとうございます。

挙式の際には私も出席いたしますので」

 

そこは勝手にしてくれ。




とうとう二人の関係が暴露されました。
そして新たな武装も登場です。
そして今後の展開はどうなるのか、それではまた後日にてお会いしましょう

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