IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

62 / 217
Inレゾナンスはコレにてお終いです。


麗銀輝夜 ~ 反響 ~

Ichika View

 

アホっぽい会話をいったん打ち切り、再び俺と弾の視線は店の外に。

次に発見したのは鈴とラウラだった。

 

「この辺も結構変わったわねぇ」

 

「そうなのか?」

 

「そうなのよ。

一夏と簪がこの店でデートしてるのを発見した時を思い出すわね…」

 

「ふむ…なら今回も来ているかもしれないな。

邪魔が入ったりしないように周囲を確認しなければ…」

 

この二人は邪魔したりはなさそうだ。ほっとこう。

どうやら気遣ってくれているようだ。

 

「あっちの銀髪の娘って、お前と文通していた人だよな」

 

「ああ、今は日本に滞在している。

理由は…まあ、分かるだろ」

 

「IS学園、か」

 

ラウラが俺を『兄上』呼ばわりしているのも秘密だ。

すっかり友人にも秘密にしている事が多くなったな。

 

もう一度、店の外に視線を向けてみよう。

 

「う~ん、此処にも居ないや」

 

「一夏さん、何処の店を見て回っているのでしょうか…?」

 

今度はシャルロットとセシリアか。

しかも此処に居る理由は俺のストーキングときた。

 

「なあ、あれって…インフィニット・ストライプのモデルで有名なセシリア・オルコットじゃないのか!?」

 

「ああ、そうだな」

 

メルク以外で定期購読者が此処にも居たか。

なお、俺は読んでいないので詳しい話は何も知らない。

 

「髪を切ったっつー噂は本当だったんだな…ウィッグじゃないのか、なんて話もあったけど」

 

「まあ、色々と有ったんだよ」

 

その理由に俺が関与していると知ったら追求してきそうで面倒だ。

またこれで一件の機密情報が出来てしまったな。

 

また外に視線を向けると

 

「……やっぱりアイツも来ていたんだな……」

 

「……誰だよ?」

 

その人物とは

 

「おのれ…一夏は何処に居るんだ…!

他の奴等の姿が見えたから、この建物のどこかに居るのは分かっているというのに…!

他の奴よりも一夏を捕まえ、絶対に更正させてやる!」

 

 

蛇のように執念深い女がそこに居た。

 

「…お前、相変わらずモテモテなんだな」

 

「望んでそうなったわけじゃないし、そうなった覚えも無い。

物珍しいだけだろ」

 

なお、向こうから見えないのは、このガラスらしきものが、実はマジックミラーになっているからだ。

なので、中から外は見えるが、外から中は見えない。

なので、彼女達がこの軽食店に入店しない限り、俺達の居場所がバレる事も無い。

 

「しばらくはこの店に隠れておくか」

 

「…俺としてはセシリア・オルコットのサインが欲しい…」

 

諦めろ。

そもそもお前、虚さんとの仲はどうなっているんだ?

 

 

 

 

Madoka View

 

メルクに引っ張りまわされ、私は本当に水着売り場に到着してしまっていた。

周囲を見渡す限り、水着、水着、水着…。

もう、こうなったらヤケだ。

兄さんに気に入ってもらえるような水着を選ぼう。

 

「これなんてどうでしょう!」

 

「白のビキニ…」

 

白は嫌いじゃない、むしろ好きな色でもある。

なにせ、兄さんのIS『白式』の色だから。

 

「…試着してみる」

 

試着室に入り、服を脱ごうとする。その瞬間

 

カシャァッ!

 

「やはり来ていたのか、マドカ」

 

「姉さん!?」

 

「静かにしろ。

他の客に迷惑だ」

 

いや、姉さんのせいだし。

それに姉さんはこんな所に何の用事なんだろう?

 

「もしかして姉さんも、水着を買いに来たの?

それと…なんか妙に疲れてない?」

 

「まあな、一夏に選ばせてみようと思ったが…この際だ、マドカに選ばせてみようと思ってな。

それと、教職というのは嫌が応にでも疲れる仕事だからな、気にするな」

 

そう言って、姉さんが私に突き出してきたのは白のビキニと黒のビキニの二着。

 

「選択肢はこれだけなの?」

 

「…察しろ」

 

姉さんは私よりもスタイルが良い。

別に悔しくない。

私だってまだ成長期なんだし、姉さんを越える可能性だってある。

実際に、追いつくまでもう少しなんだから。

それに大きければ良いって訳でもない、ハリとか、垂れてないとか、他にも色々と…

 

「何をほうけている?」

 

「な、何でもない。

姉さんに似合うのは…」

 

視線は黒のビキニに向かった。

黒く長い髪に黒の水着。

その画はなかなかに映えると思う。特に姉さんにはピッタリだ。

だけど兄さんにもそうだけど、姉さんにだって悪い虫には近付いてほしくない。

此処は私と同じように清楚系で。

きっと兄さんだってそう言う。

 

「姉さんには白、かな。私とお揃いで」

 

「ふむ、そうか、では黒にしよう」

 

…え?人の意見聞いてるの姉さん?私は『白』って答えた筈だよ?

なのになんで全力でスルーなの?

 

「馬鹿者、お前の視線が真っ先に黒の水着に向かっていたぞ」

 

「…ぅ…」

 

バレてた。

 

「それに、虫けらが私に近寄れると思ったか?

そもそも私の目は曇ってなどいない。男を見る目が無いと思ったか?」

 

そう言って姉さんはレジへと歩いていく。

ちょっと悔しい。

スタイル以外でも同じ女として色々と負けた気がした。

 

「メルクは…」

 

山田先生と一緒に水着を選んでいるのを見つけた。

…山田先生はとりわけ大きい。多分、学園最大クラス。

 

「…負けた…」

 

私だって自信があった。

楯無先輩だって越えてるのは確かな話。

サイズは簪も同じ、なのに…1組には私を越える人ばかり。

 

「…牛乳ヤケ飲みしてやる…」

 

私だって成長期!

もっと大きくなってやるんだからぁ!

 

結局、私は最初に選んだ白のビキニを購入した。

姉さんが大人の魅力を発揮するのなら、私は清楚な白で兄さんを魅了だ!

 

 

Lingyin View

 

ラウラを追っかけ回し、水着売場に辿り着いた。ラウラは「水着バーゲンは何処だ!」なんて血眼になってたけど、それは明日からだった。

なので今日はそこまで人が込んでない。

 

「じゃあ、水着が決まったらレジ前で集合ね」

 

「了解した、各自の装備を整えよう」

 

装備って…いや、まあ間違ってはないかな。

そんな訳でラウラと解散して水着を捜す事にした。アタシのスタイルは…

 

「誰が貧乳よ!」

 

思わず叫んでしまっていた。

周りに誰も居ない事が救いね。

ラウラは…何やら通信機でやり取りをしていてアタシの様子に気付いてないみたい、助かった…。

 

「はぁ…アタシの周りには大きい奴が多過ぎるのよ…」

 

中学の頃には簪やマドカだって、アタシと変わらないくらいだったのに、一年振りに出会ったら敗北をした。

育ち過ぎなのよアンタ達は…。

アタシだって一緒に牛乳を飲んだり、三人揃ってマッサージだってしたのに…。

…後者は一夏に知られる訳にはいかなかったけど…。

 

「…これにするか」

 

アタシが選んだのはタンキニタイプの水着。

これが今の自分には無難。

これで海を満喫…。

 

「一夏は今年は泳ぐのかしら…?」

 

中学の頃、ドイツから帰ってきてからは水泳の授業は全て見学。市営のプールや、海では決して泳ごうともしなかった。

見送るか、やや離れた所で見ていただけ。着替えもせずに。

それは仕方ない話。

一夏の体には酷い傷が残っているらしいから。

 

「一夏にも楽しんでほしいんだけどな…」

 

きっとそれは、マドカや簪、それに千冬さんも同じ気持ちだと思う。

何か方法はあるのかしら?

 

「鈴、水着は決まったのか?」

 

「ん、まあね。じゃあ会計を…」

 

ラウラの買い物籠に視線を向けると…また大胆な

 

「み、見るな!これを見て良いのは兄上だけだ!」

 

一夏だけに見せるって…何処で着るつもりなのよ。

まあ、止めないけどね。

ラウラがとことん一夏のことを気に入って…もとい、慕っているのはアタシだって知ってるんだから。

もしかしたら一夏がラウラを妹のように見てたりして…だとしたら一夏はシスコンね。

よくよく考えたら私も妹扱いされてるかもしれない。

肩車とかおんぶとか自分から積極的にやってるんだから。

…だとしたら…私にもマドカやラウラと同じようにブラコンの気質があるのかもしれない。

 

 

Charlotte View

 

水着を売っている店があったので、セシリアと一緒に入ってみたけど…。

本当に多種多様な水着が並んでいる。

この中に自分に見合った水着があるのかが少し不安になってくる。

 

「これに決めましたわ!」

 

「セシリア決めるの早いよっ!」

 

セシリアが選んだのは青いビキニ、しかもパレオが付いていて、モデル体型のセシリアにはピッタリなものだった。

セシリアも一夏に好意を持っているのは僕にだって察するくらいは出来てる。

何があったのかまでは詳しくは知らないけど。

でも、いくら僕が新参者だとしても僕はその思いに負けるつもりなんて無かった。

 

「シャルロットさん、水着選び、手伝いましょうか?」

 

「だ、大丈夫だから!」

 

真っ先に目が向かった先には、オレンジ色の水着だった。

タンキニとビキニの中間、といえば良いのかな。

紐が背中や腹部でクロスしているのが特徴的だった。さっそく試着してみよう。

 

「これとかどうかな、セシリア?」

 

「まあ、よく似合ってますわ」

 

「えへへ、じゃあこれにしようっと!」

 

さっそく決定!絶対に一夏のハートを仕留めてやるんだから!

そして僕とセシリアの間で火花が散って見えるのはきっと気のせい、だって勝つのは僕だから!

さてと、あと残るは…

 

「一夏がここに来てるかもしれないから、僕は探しに行ってくるよ」

 

「あら、でしたらわたくしも一緒に行きますわよ」

 

お互いに視線で告げている。

『抜け駆けは禁止』だと。

こうなるのだったら黙って行っておくべきだったかなぁ。

例えば、別の買い物が有る、とかさ。

ちょっとしくじったなぁ…。

 

 

 

Ichika View

 

夏、俺はこの季節が嫌いだ。

いや、嫌いに『なった』と言うべきだろう。

自然と誰も彼もが薄着になる。

学生とて例外ではない。

俺の周囲の人間だって夏への移ろいに合わせて薄着を始める。

でも、俺はそれが出来ない。

両肩、腹部には銃で撃たれた跡である『銃創』が残り続けている。

そして左手にはいつも手袋をしておかなくてはならない身だ。

だから、簪達がプールや海に出かける場合は、一緒に楽しむことができない。

同行をしても、荷物を見張る番をしていたり、やや離れた影で静かに過ごしていた。

その時には、いつも申し訳ない気持ちで一杯だった。

学校の授業でおこなう水泳なんて片っ端からボイコットした。

泳げないわけじゃない、人前で肌を晒すようなことをしたくないんだ。

事情は簪を始め、鈴、蘭、楯無さん、マドカ、千冬姉が理解してくれている。

事情を理解してくれているからこそ、殊更に申し訳ない気持ちばかりが積もるばかりだった。

 

「食品売り場にそろそろ行ってみようか、なにか特売があるかもしれない」

 

「うん、そうだね」

 

軽食店で時間をつぶして早くも一時間、そろそろ買い物に戻っておこう。

弾と蘭に軽い挨拶をしてから軽食店を後にした。

なお、ここでの支払いは弾が全額負担した、それを見越したうえで蘭は値段の張るものを注文していたようだ。

そして弾の苦情などどこ吹く風、蘭は俺と簪の背中を押して食品売り場へと追いやった。

そんな形で弾は店に取り残され、全額を支払っていた。

 

「それで、何を買おうか?」

 

「そうだな、まずはお茶っ葉だな。部屋のソレが切れそうだったから」

 

言いながら通りに陳列している袋を見ずに掴み、買い物かごに放り込む。

このレゾナンスには時折に買い物に来ているから、どこの通りのどの棚に何が置かれているのかは大体は把握している。

なので、今のように見ずに掴み取るのも造作も無い。

 

「他には…」

 

料理の材料となるものは厳重に確認する。

産地とかの確認だって怠っていない。

千冬姉が買い物をすることはあまり無いから、こういうのは俺がしっかりと確認している。

マドカもしっかりと確認してくれているから本当に助かっている。

 

「近日の弁当の材料も買っておこうか、楯無さんの分も作る必要があるから、少し多めに…」

 

「お姉ちゃんの分も?」

 

「ああ、俺、簪、マドカ、千冬姉、楯無さん、ラウラ、鈴、メルク、これだけのメンバーから注文が入ってるんだ」

 

「お弁当屋さんじゃないんだから」

 

それは俺も同感だ。

なので明日の早朝訓練は中止だ、マドカと簪にもサポートを頼もう。

つくるメニューは…やっぱり和食にするかな。まずは…鰆だ

状態の良い鰆を買い物籠に放り込む。次に…

 

そうやって買い物籠は一杯になるまで買い物を続けた。

さすがにバイクで持って帰れないので、郵送してもらう、送り宛はIS学園事務室学生寮管理課だ。

長ったらしい送り宛を書いて終わり、それからようやく帰路につくことにした。

 

「…ん?」

 

駐輪場には見慣れた姿が四つ…四人が並んでいた。

 

「マドカにメルク、ラウラと鈴か、どうしたんだ?」

 

「アタシ達は買い物よ、臨海学校が近いから水着を買いに来たのよ」

 

「それで、どうして駐輪場に居るの?」

 

簪の疑問は尤もだ。

いつもの面々がこのレゾナンスに来ていることは知っているが、何故、この駐輪場に固まっているのやら。

 

「兄さん達のデートを邪魔しようとする人が居たのを見つけたんだ」

 

「その連中に絡まれないようにするために、その連中を兄上達から引き離しておいたんだ」

 

裏方の仕事をしてくれていたのか、暑い中ご苦労さん、さぞかし苦労したんだろうな。

この四人のチームワークは凄いもんだよ。

聞けばその邪魔者は、ここには居ない面々だそうだ。

 

「それじゃあ、私たちは私たちの買い物に戻りますね。お二人とも、御武運を!」

 

これから戦地に赴くわけじゃないんだがな。…まあ、良いか。

俺たちは買い物を終わらせているんだ、そうそうに退散するとしよう。

この場に留まっていたら、それこそマドカ達の苦労が水の泡になってしまう。

 

「すまん、世話になる!」

 

「ありがとう!」

 

キーロックを外し、すぐにサドルに跨る。

簪は俺の後ろに座る、これはいつもの見慣れたポジションだ。

俺の腹部に簪の手が回るのを感じるや否やエンジンに火を入れ、アクセルペダルを踏み込む。

今回の礼として鈴達には美味い弁当を御馳走しよう。

 

 

Madoka View

 

やれやれ、兄さんと簪のデートは波乱万丈のようだ。

邪魔者が入ろうとするから余計に。

さて、この後には私も買い物が残っている。

成長期のレディの目標であるスタイルを作るためにも!

 

「牛乳の買い占めに行くぞ!」

 

「アンタはもう必要ないでしょうがぁっ!」

 

私の宣言に応えてくれたのは鈴だけだった。

何故か怒りの声だったのかは…あ、成程、そういうことか。

 

「だいたいマドカ!アンタはたった一年でどんだけ育ってんのよ!」

 

「どれだけって…鈴が転校していった後からなんか大きくなって、今じゃ簪と同じ九十…」

 

「やっぱ言わなくていい!」

 

声が大きいと思う。

それに私よりも大きい人と同じクラスで毎日顔を合わせてるんだから、もっと大きくなりたいと思うのは仕方のない話。

成長期の女の子としては至極当然だ。そしていつかは兄さんだってメロメロにして見せるんだ!

兄さんよりもいい男なんてこの世の何処にも居ないんだからな!




買い物編はこれにて終わりですが、とうとう二人に例の報せが…!?
ではまた次回に!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。