IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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二回戦の始まりです。
鈴ちゃん、セシリア、君たちの戦闘をすっぽかしてゴメンね。


双重奏 ~ 敗北 ~

Houki View

 

 

「予言してやるよ。

お前は準々決勝にも進めず…三回戦までに敗退する。

俺の予言が当たったら、俺もお前に命令する。

『お前は専用機を求めるな』」

 

一夏の言葉が今でも耳に残る。

何故だ、何故、一夏は私にあんな冷たい言葉を吐いたんだ。

笑顔の一つも見せてくれない。

それはクラス対抗戦以降からだ。

あのときから、一夏は決して私には表情の一つすら見せてくれない。

そして一夏の周囲には専用機を持つ女ばかりが集まってくる。

それに合わせて一夏は間違った道を進んでいく。

私が正しい道に進ませてやらねばならない。

その為には、私が奴らと同じ場所に…いや、奴らを蹴散らすほどの力が必要だ。

私だけの力が…!そうすれば一夏を正しい道に連れ戻せるんだ!

その為にも、まずはこのトーナメントを勝ち抜いて見せる!

 

「篠ノ之さん、そろそろ順番だよ」

 

「ああ、分かっている」

 

「それじゃあ今度の対戦相手に合わせた連携なんだけど」

 

「不要だ、どんな相手だろうと、私の力で捻じ伏せてやる!」

 

相方の相川が何か叫んでくるが関係ない。

相手が誰だろうと、私一人の力で充分だ。

そうだ、たとえ誰だろうと、接近してしまえば、私の剣で叩き斬る。

それができる自信も、技量も有るんだ。

この対戦を私一人の力で勝ち抜く、そうすれば、一夏とて私を見てくれるんだ!

 

 

Laura View

 

対戦表を見てみる。

鈴とセシリアのコンビ、兄上とメルクのコンビ、簪とマドカのコンビは無事に一回戦を勝ち抜いていた。

戦闘中の様子はモニターにて見ていたが、その中でも簪とマドカの連携は見事だった。

あれなら軍にスカウトをしてみたいが、兄上や教官がストップを掛けてくると思うので辞めておくことにした。

人材としても人間としてもなかなかの逸材だと思うのだがな…。

 

「ラウラ、次が僕たちの出番だよ」

 

「了解だ、すぐに行く」

 

私とて今回はタッグを組んでいる。

それも兄上からの推薦でだ。

ひょんな事からルームメイトになったシャルロットが私のパートナーだ。連携は…まあ、なかなかにやり易い。

ドイツ軍でも、リズやクラリッサとチームを組んで模擬戦を行う事があったが、今回のパートナーはその頃よりも戦いやすい。その原因はシャルロットの技量によるものだ。

操縦の技量も中々に見事だが、その根本的な理由としては、本人の器用さにある。

拡張領域に入れている武装を状況に応じて一瞬で的確に選択して即座に展開する技量『高速切替』による武装変換。あれが脅威だ、敵には回したくはない。

 

「相手は…あの女か」

 

私達の対戦相手は同じクラスの相川、そして篠ノ之 箒だった。

簪からは話を聞いている、兄上を苦しめ、感情の全てを失わせた輩だと。

 

「連携はどうする?僕らは僕らでいろんなパターンを用意してきたけど」

 

「私が片方を固めておく、シャルロットはもう一人を片付けてくれ」

 

「各個撃破か…うん、それで行こう」

 

「各個撃破ではなく、相川を先に撃破してから、私に合流してほしい。

頼めるか?」

 

「…?

うん、構わないけど…?

どうして?」

 

その理由は、私達の後ろに居る人物に理由がある。

 

「あれ?簪にマドカ?

どうしたの?二人とも試合はまだ後のほうだったと思うけど」

 

我々の居るピットに、その二人が訪れていた。

いや、それだけではない。先に二回戦を勝ち抜いた鈴もこのピットに入ってきた。

それぞれ表情は神妙だ。

応援が目的ではなさそうだ。

何か重要な話でもあるのだろうか

 

「ラウラにお願いがあるの」

 

一番最初に口を開いたのは簪だった。

私とシャルロットは簪たちが口にする言葉に耳を傾ける。

それは兄上に代わる怒りの言葉だった。

だからこそ私はその頼みに対し、二つ返事で聞き入れる。

あの女に対して抱く感情は私とて同じだったからこそ。

 

「了解した、あの女は叩き潰す。

全力を出すまでもないがな」

 

ピットに到着し、機体を展開する。

私はドイツ軍上層部からかつては押し付けられ、今自在に操る『シュヴァルツェア・レーゲン』を、シャルロットは自身がカスタマイズをも加えたとする『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』を。

機体のカラーはバーミリオン、本人が好きな色なのだとか。

そして私の機体のカラーはシュヴァルツの名が示す通りの『黒』だ。

 

「じゃあ、先に出るよ。

最初のフォーメーションは『ヴァーサス』だね」

 

「ああ、頼んだぞ」

 

シャルロットが先にカタパルトに足を乗せ、アリーナに飛び出していく。

私はそれを後ろから見送った。

そして聞こえてくる放送。

 

『Aピットから飛び出してきたのは!フランス代表候補生、シャルロット・アイリス選手!

書類不備により、最初は二人目の男性搭乗者として転入してきましたが、本当は女性でした!』

 

どういうパフォーマンスをしているんだ、あの放送室の女は…。

いや、構うまい、私も出撃しよう。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、シュヴァルツェア・レーゲン、出撃する」

 

カタパルトから射出され、私はアリーナに飛び出した。

 

『続けてタッグをご紹介!

ドイツ国家代表候補生にしてドイツ軍中佐!Follow Me!どこまでも私についてこい!

黒兎隊隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒ選手!』

 

…あの女、篠ノ之同様に消し飛ばしてやろうか…。

 

「ラウラ!抑えて!怒りを抑えて!」

 

「…私は冷静だ…」

 

前方を見る。どうやら篠ノ之は我々よりも前に飛び出していたらしい。

早くも打鉄のブレードを引き抜き、私を睨んできている。

だが、脅威にも感じられない。

兄上の努力も知ろうとせずに否定するのは許さない。

織斑教官もマドカも簪もこいつが兄上に近寄ろうとしているのを警戒している。

いや、警戒どころか敵視している。

ならば、私とてこの女を牽制する必要がある!

 

「あの頃から少しは成長しているか?篠ノ之 箒?」

 

「なんだ、藪から棒に…?」

 

「話には聞いている、兄上をギャンブルに惑わせているそうだな」

 

兄上の部屋の前での一部始終を私は聞いていた。

いや、聞こえてしまっていたと言うべきか。

兄上の返答も聞かず…聞く耳も持たずに立ち去ったとか。

コミュニケーション障害、それも意識しての行動だ。

それもまた兄上を苦しめているというのなら、私も同じことをしてやろう。

 

「どうだ、我々とも賭けをしてみないか?

そうだな…、我々のシールドエネルギーを30パーセント削れた時点でお前の勝ちにしてやろう」

 

「な…!?」

 

「だが、試合終了までにそれだけ削れず、なおかつ我々が勝利した暁には…篠ノ之、お前は金輪際、兄上の交友関係に口出しをするな」

 

もっとも、この賭けはすでにアンフェアだ。

私は前回こいつとの模擬戦に於いて、シュヴァルツェア・レーゲンにリミッターを施し、35%にまで稼働率をダウンさせ、それに付け加えて腕部、リボルバーカノンの展開を解除させていた。

本来の稼働率にまで戻している以上、篠ノ之に勝ち目は無いと言い切れる。

だが、この挑発に対し、この女がそれを気にするだけ気持ちに余裕など有ろうはずもない。

 

「私を侮辱するか貴様!」

 

「そうだ、それくらいを自覚出来るくらいには頭はあるか」

 

「貴様ぁっ!」

 

「無駄に頭に血を上らせておくがいい」

 

試合開始のブザーが鳴るより早くに動けば、その時点で失格だ。

試合開始以前の問題だ。

 

「あの…それって私もかな、ボーデヴィッヒさん?」

 

タッグパートナーの…相川だったか。あいつは賭けには関係がなかったな、その断りだけ入れとこう。

 

「いや、篠ノ之個人の問題だ、結果はどうなろうと相川にはペナルティを与えるつもりはない」

 

「よかった~…」

 

試合開始のブザーが鳴る。さあ、気持ちを入れ替えて行こう

 

「だあああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

 

篠ノ之がブレード『葵』を大上段に振りかぶる。実に分かり易い攻撃だ。

だが、私の前には意味がない。

意識を少しだけ向ける、それだけで篠ノ之の動きが完全に停止した。

 

「シャルロット、作戦通りに頼むぞ」

 

「了解!相川さん!勝負!」

 

シャルロットが空中を駆け、相川にぶつかっていく。

右手に銃『レイン・オブ・サタディ』を、左手にはレールガンを持って。

シャルロットは遠近両用の戦闘を一定距離をたもちながらの戦闘を得意としている。

『砂漠の逃げ水』と本人は言っていた。

射撃と近接格闘を高速で入れ替えながら相手に合わせて行っている。

…兄上が挑んだところで勝てるのだろうか…?いや、たぶん負けてしまうな。

 

「さて、暇だと思うかもしれんが、お前にはそのまま固まっていてもらおう」

 

「き、貴様ぁっ!」

 

篠ノ之はこちらを睨んでくるがどうでもいい。

AICを発動させ続けている間、こいつは動けない。

兄上が日本に帰国してからというもの、私はシュヴァルツェア・レーゲンを自在に操れるように特訓した。

AICの欠点も含めて。

AICや、ほかの第三世代兵装もだが、共通して必要なのは、高い集中力。

そして確かなイメージだ。

最初、AICを扱う際に私が描いたイメージは、『掴み取る』だった。

だが、いつの頃からか『視線を向ける』に変化していった。

イメージが変わったのは、クラリッサの部屋に置いてある本をリズに教えてもらい、実際にそれを見てからだった。

視線を合わせることで、相手を石に変えてしまうという化け物『メデューサ』だとか『ゴーゴン』を知ってからだったか。

『石に変える』というのは、AICに酷似しているかのようにも思えた。

ハイーパーセンサーを利用すれば、例え真後ろに居る相手だろうと拘束が可能になっている。

無論、最初は上手くいかず苦労していた時期もあった。

それでも私は訓練を重ねに重ねた。兄上とて日本に帰国してからは刀を振るい続けているだろうと思っていたからこそ。

それからはAIC発動に手を向ける必要もなくなった。

手を向けるのは、イメージを補助するために必要になっていたプロセスでしかなかった。

視線を向けるだけで、イメージを増幅させ発動が可能になるのなら、手を向ける必要もない。

 

そしてこの戦いでは、簪、マドカ、鈴からの頼みもある。

あの篠ノ之 箒を叩き潰してほしい、と。

彼我の実力差を考えれば、全力で挑むにも値しない。

そのうえで叩き潰す!

 

「言いたいことがあったのではないのか?それとも全て言い尽くしたか?

語学が足りないな、もう少し言葉のボキャブラリーを増やしてみたらどうだ?」

 

「おのれ…卑怯者め…」

 

「訊く価値もない言葉だな」

 

フィールドの片隅に相川が下りてくる。

どうやらあちらの打鉄はシールドエネルギーが尽きたらしい。

そして開かれる通信ウィンドウ。

 

『ラウラ、こっちは終わったよ』

 

「残存シールドエネルギーは?」

 

『ノーダメージ!』

 

見事だ、お前を相棒にしたのは間違いではなかったようだ。

なら、この試合は終わらせよう。

 

「フォーメーション、ラウンド()!」

 

『了解!』

 

ワイヤーブレードを展開し、AICを解除する。

スラスターを吹かせるがそれは無意味だ。

打鉄の右足にワイヤーを絡ませ

 

「吹き飛べ!」

 

そのまま力任せに円(ラウンド)を描くように振り回す。

 

「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「そら、行くぞシャルロット!」

 

シャルロットが待ち構えるシャルロットの方向に投げ飛ばす。

一定距離にまで近づいたところでシャルロットの銃撃が始まる。

幾つもの銃を入れ替え、持ち替え、そしてグレネードランチャーを撃ち、吹き飛ばす。

そこを今度は私が追撃する。

両腕にプラズマブレードを展開し、背後から切り刻む。

そして最後に蹴り飛ばす!

 

「ラウラ!フォーメーション、デュアル インパルス(二重衝撃)!」

 

「了解!」

 

シャルロットが瞬時加速で吹き飛ばされた篠ノ之に追いつく。

背後からブレード『ブラッドスライサー』で襲撃、正面からは私がプラズマブレードで切り刻む。

 

「…あ!…ぐ!」

 

篠ノ之はとうとうブレードを落とした。

こいつは銃を使わない、剣道に拘り過ぎて銃を使うのを自ら禁じている。

結果、近接戦闘しかできない。

更に言えば剣を握っていなければ戦えない。

兄上とは違って。

 

「「フォーメーション、クリムゾンスカイ(紅空)!」」

 

私とシャルロットの声が重なる。

一瞬、シャルロットが後退する、物理シールドに内蔵された武装を構える。

それは鈍色の杭だ。『楯殺し』と呼ばれる、第二世代機最強級の武装、パイルバンカーだ。

小型なれど、その質量・威力は馬鹿にはならない。

火薬を使って打ち出すが、シャルロットのそれは連射が可能だ。

シールドエネルギーを大きく削るだけでいえば、最強級の武器。

 

「いっけぇっ!」

 

「な!?あぐぅっ!?」

 

下段からからアッパーカットのようにパイルバンカーが炸裂する。

その鈍色の杭は顎下から直撃。

絶対防御が発動され、シールドエネルギーが大きくダウンする。

篠ノ之が上空に吹き飛ばされる。こいつは空中戦闘も苦手ときている。

どこまでも、剣道に執着し過ぎているあまり、『足を地に着けていなければ戦えない』のだろう。

情報は戦うよりも前に収集している。

だからこそ、幾らでも対策の立て様があった。

空中で姿勢制御すらままならない篠ノ之の動きを、AICにて束縛、恰好の的にした。

 

「タイミングを合わせろ!」

 

「いつでもいいよ!」

 

背後から二つの砲撃武装が投げ渡される。

それを両手に一つずつ受け取り、上空にその砲口を向ける。

私もシャルロットも両手にグレネードランチャーを構えている。

これらの武装は本来はシャルロットの武装だ。

他者の武装は使えないのが常識だが、使用許諾が出ていれば話は別だ。

 

「ならば…てーっ!!!!」

 

シュヴァルツェア・レーゲンに搭載されているリボルバー・カノンの砲口をターゲットに向け、砲撃。

それと同時にグレネードランチャー四丁が同時に火を噴く。

狙うは、上空で固まっている篠ノ之だ。

それもこちらに背中を向けたままの格好の的だ。

その背面の…スラスターこそが五つの砲門の照準だ。

 

ドガガガガガアアアアアアァァァァァァァァァァンン!!!!!!!!!!

 

空中に巨大な爆発。まるで空が紅に染まったかのようだった。

打鉄の残るシールドエネルギーをすべて奪い去り、試合は終了した。

その少し後、スラスターが大破した打鉄が私達から離れた場所、アリーナのど真ん中に落下してきた。

 

「ラウラ、ナイスコンビネーション!」

 

「サポート感謝する」

 

互いに腕部装甲の展開を解除させ、そのままハイタッチ。

これはドイツ軍でもよくやっていた。どうせだ、相川にも挨拶をしておこう。

 

「相川、今回は我々の勝ちだ」

 

「あはは、負けちゃった~。アイリスさんとの戦闘じゃ、全然ダメージを与えられなかったよ…それが悔しいな」

 

「ゴメン、ちょっと本気を出しちゃった」

 

大人気のない奴だ。

 

「訓練機が相手だったんだ、少しは加減してやれ」

 

「それ、ラウラに言われたくないよ」

 

「何を言う、前回篠ノ之と模擬戦をした際には充分に加減はしていた、出力を35%にまで下げていたのだからそれで勝てないほうが情けなかろう」

 

「そんな事をやってたんだ…それは充分な手加減、かな?」

 

なんだ、その中途半端な物言いは。

 

 

 

 

Houki View

 

「負け、…た…」

 

目に映るのは、アリーナの上空の青だった。

ものの1分前、私は空中に放り出されて砲撃を受け、撃墜された。

接近すればたとえ国家代表だろうが、専用機だろうが勝てる自信があった。

技量も充分だと思った。

なのに…多大なハンデを与えられながら、一矢報いることさえできずに私は敗北した。

 

「俺の予言が当たったら、俺もお前に命令する。

『お前は専用機を求めるな』」

「お前は金輪際、兄上の交友関係に口出しをするな」

二人の言葉が私の頭の中を反芻する。

始まりは私が言い始めた事だ。

今更それを無かった事にしろだなんて言えない。

だけど…あの二人の言葉になんて従いたくない…!

 

「何故、私は負けたんだ…なんで、私ばかりがこんな思いをしなくてはならないんだ…!」

 

全ては機体が問題だ!こんな機体だから私は私の思うように戦えない!

私にも…私の全力を出せるような専用機が

 

『お前は専用機を求めるな』

 

一夏の冷たい言葉がまたも頭の中を反芻する。

学園の訓練機とて、簡単には貸し出してもらえない。

予約していても、貸し出してもらえるのが随分と先になったり、その時に別件の用が入ったりで使えない事もあった。

一夏を間違った道から力ずくにでも連れ戻したいと思っても

 

「兄上の交友関係に口出しをするな」

 

ボーデヴィッヒの言葉が頭の中をよぎる。

 

「なんで…なんで…私ばかりがこんな目に遭わなければいけないんだ!」

 

「自業自得だ」

 

ボーデヴィッヒが私を見下ろしてくる。一夏と同じ…いや、それ以上に冷たい視線で…。

 

「兄上は間違ったことなどしてはいない。

誤った道を進もうとしている者にすら手を差し延べる人だ。

困っている者がいれば、悩んでいる者がいれば、自分の身すら厭わずに助けようとする。

そこに悪意など何も無い。

一人で悩む時が無いわけでも無いがな。

だが、それは独り善がりのものではない…。

少なくとも、私も、シャルロットも、簪も、セシリアも救われている。

兄上がいなければ、今の私達は無い」

 

「何をわかったような口を…あいつは…6年前と大きく変わり過ぎてしまっている!お前たちのせいで」

 

「それを『成長』と呼ぶのだろう、『変貌』ではない。

『変貌』したように見えるのなら…お前の眼が曇っているだけだ」

 

違う、私が誰よりも一夏を理解しているんだ!お前よりも、誰よりも…!

そうだ、誰にも一夏の事を理解できていないんだ…私に比べれば…

あの時の一夏の言葉だって本心じゃないんだ!

だったら…だったら私が一夏の言葉に従う必要なんてない!

 

 

 

 

Chifuyu View

 

ボーデヴィッヒと篠ノ之の試合が終わり、私はBピットに向かった。

念には念を入れて様子を見ておこうと思ってのことだ。

 

「織斑先生…やっぱりあの二人って…国家代表候補生って、凄い強いですね…」

 

「特にアイリスの戦闘方法が脅威だっただろう、今後とも訓練を積め」

 

「はい、頑張ります」

 

相川を見送り、それに遅れて戻ってきた篠ノ之の様子を見る。

…随分と暗い雰囲気を感じた。

与えられた敗北がよほど衝撃的だったのだろう、茫然自失といった感じだ。

 

「千ふ…」

 

「自分に足りないものが何なのか、理解できたか?」

 

「いいえ、何も…」

 

この期に及んで何も学べないのか、困った小娘だ。

 

「お前が束の件で苦しんだことは知っている。

10歳で両親とも離れ離れになった事もな。

同情はする、だがそれ以上は踏み入る気は無い。

そして、だ…一夏は何も間違っていない。

今、その手に持っている剣を振るうにしても相応の理由がある。

剣道を捨てたのは、それを示すための覚悟だった。

あいつは自分の間違いを時には知りながらも、自分で訂正できるだけの器量もある。

それだけでなく、他者の誤りすら訂正させてきている。

私はすぐ傍で見てきていたからな、それくらいは理解している。

だが、お前はどうだ?一夏に何をしてきた?」

 

「…………」

 

「それすら答えられないのであれば、お前を今後、一夏に近づけさせるわけにはいかない。

お前が自分を変えようとしないのであれば、私達は全力を持って、お前を一夏から遠ざけるだけだ。

これは最終警告だ。

理解しておけ。

そしてこれは教職員としての言葉だ。

『お前は専用機を持つに値しない、何処で何を間違えようが専用機を求めるな』」

 

此処まで言って何も変わらなければ、それまでだ。せいぜい自分を磨け、小娘。




おはようございます。
レインスカイです。
始まりました、第二回戦。
ですが二回戦の実況はこれが最初で最後だったり…

そしてモッピーは一夏の予言(予想)通りに二回戦にて敗退です。
改心の切欠には…なるのでしょうか、コレ?

それではまた次回!お昼にお会いしましょう!

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