続けて簪ちゃんとマドカちゃんが大活躍!
Ichika View
『さあ、続けて第九試合!
まずはAピットからの入場です!
一年一組所属!
整備課のエースにして生徒会のマスコット!
布仏 本音 選手!』
Aピットからのほほんさんがラファール・リヴァイヴに乗って入場してくるのが見えた。相変わらずのんびりとしているようで、観客席に両手を振っている。
何か叫んでいるようなので集音してみよう。
『布仏 本音で~す!
お菓子が好きな人~、居たら後で食堂で一緒に食べようね~~~』
…早くも昼飯の事を考えていたようだった。俺の後ろでメルクも苦笑しながら脱力していた。
のほほんさんの相方も頭を抱えている。
『続けてBピットからの入場!
世界にその名を知らぬ者は無し!
世界最初の男性搭乗者!
現代に蘇った白騎士!
織斑 一夏 選手!』
カタパルトから射出され、空へと飛び立つ。
会場は一気に喧噪が大きくなった。一応、片手をあげて声には応えておく。…更に喧しくなっただけだったが。
『続けて~!
最新鋭中の最新鋭!
イタリアにて開発された世界最速の翼を見よ!
嵐をも貫く白銀の流星!
テンペスタ・ミーティオを駆る少女!
メルク・ハース!』
白銀の機体が飛び立ち、非固定浮遊部位の翼を広げたテンペスタが俺の隣に飛んでくる。その手には既にレーザーブレード『ホーク』が握られている。
「お、大袈裟ですよね、今の放送って…」
「黛先輩は煽るのが上手いからな…苦情を言っても受け付けないと思うぞ」
「ですよね」
言って簡単に聞き入れてくれるのなら、既やっている。
あの人はいつか、火の無い所に煙を起てまくるのだろう。なんつー報道者だ。
『それでは、試合開始!』
「メルクは高槻さんを、俺はもう一人をやる」
「了解!」
二対の翼を広げ、メルクが飛び立つ。
一方、のほほんさんはというと
「やっほ~、おりむ~」
暢気に両手を振ってきていた。その手にラファール・リヴァイヴに搭載されているマシンガンを持って。しかも何も無い上空に銃口を向け
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガ
そんな音をエンドレスに起てながら。言ってしまえば無駄弾を空にぶっ放し続けている。
それと同時に大量の薬莢がボロボロと地面に向かって落ちていく。
ISによる通信を妨げたりしないように、搭乗者にはマシンガン等の発砲音を聞こえにくくするシステムがあるとか。
発砲による反動もまた然り。
整備課にしょっちゅう顔を出しているのほほんさんが知らない筈がないだろう。
「………………」
頭が痛い。発作は何とか抑え込んでいる。それも含めて頭が痛い。
その果てに
ガチッガチッ
と音が。
どうやら弾切れを起こしている様子。
「……よう……」
「えへへ~、やっと挨拶してくれたね~。
じゃあ、対戦始めましょ~」
銃口を今度は当然向けてくるのだが
ガチッガチッ
弾切れをしているので撃てるわけもない。
…どうやらフルオートでぶっ放し続けていたのに気付いていなかったしい。
「あれ~?何で弾切れ?」
「気付いてないのかよ…」
のほほんさんはマシンガンを銃口から覗き込んでいる。危険窮まりない。絶対に真似をしてはならない行為だ。
こんな人が居て整備課は大丈夫なのだろうか?生徒会にしても虚さんが気の毒だ…
「おりむ~、わたしはね~、射撃は得意だけど接近戦は苦手なんだ~、だから~手加減してね~」
先程の行為を見る限り、その発言は信用出来ないからな?
どう対処すれば良いんだよ…
「そうか、生憎だが俺は接近戦しか出来ないからな。だから悪く思うなよ」
雪華は使う必要はなさそうだ。雪片弐型だけで決着を着けよう。
当たり前の話だが、今回は連携訓練はさして意味を成さない試合になって終わった。
「なんか、脱力するような試合でしたね」
「…だな…」
メルクはそのスピードを活かし、ノーダメージで勝利していた。
自分の戦い方を忘れていない、見事な戦いだった。
俺に関してだが、のほほんさんのブレードが遅すぎる為、避けるのは容易だった。こちらもノーダメージだ。
さてと、控室に戻るかな。
Kanzashi View
私達の試合の順番が来た。
此処まで本当に長い時間だったと思う。一試合は最大30分。
決着が着かなかった場合は、シールドの残量エネルギー量にて決まる。
此処までは引き分けだとかは無かった。
きっちりと決着がついてる。
一夏もしっかりと勝っていた。…勝った自覚はあまり無いみたいだったけど。本音は後で虚さんに怒られてた。
「出番だな、簪」
「うん」
私が薙刀の試合をする日も、一夏はこうやって応援に来てくれていた。そして今日の対戦でも応援に来てくれていた。
その思いやりがとても嬉しかった。
「マドカも頑張れよ。
応援してるぜ」
「必ず勝ってくるから!」
マドカも私も気合い充分。一夏の応援があれば、誰にも負けない。そんな気がした。
「じゃあ、行ってきます!」
私は打鉄弐式をカタパルトに乗せ、飛び立つ。
一夏が私の対戦を見てくれるのは初めてだった。だから、この対戦だけは負けたくなかった。
勝って帰る、そう決めた。
『Bピットより入場したのは~!
日本代表候補生、更織 簪 選手!
インフィニット・ストライプスでは、『妹にしたい女の子ランキング』にて、栄光の一位を獲得しています!』
黛先輩の実況が恥ずかしい。
なんであんなにテンションが高いんだろう。
それに、そんなランキングに出馬した覚えなんて私には無かった。
『更織さんに続けて入場したのは!
蝶の羽ばたきは向かいの岸に嵐を呼ぶ!
幻想的な翼に惑わされるな!
オーストラリア国家代表候補生!
織斑 マドカ 選手!
なんと!織斑君と織斑先生の妹さんだそうです!
そして更識さんに次いで『妹にしたい女の子ランキング』では、堂々の二位!』
バイザーに隠されているマドカの顔が真っ赤になってた。
気の毒に…
「この鬱憤、試合で晴らしてやる…!」
「マドカ、落ち着いて、お願いだから」
向かいのピットから生徒が飛び出してくる。二人揃って打鉄らしい。なんだか緊張する。
『それでは、試合開始!』
私は薙刀型の武装である夢現を展開、マドカはナイフを展開する。
「行きます!」
「行くぞ!」
薙刀なら誰にも負けない!応援してくれた一夏の為にも!負けられない!
Madoka View
簪も私も気合充分だった。
トーナメント表の都合で出番となる対戦は最後になってしまったが、様々なチームへの対抗手段を含めたデータが揃った。
多くのデータを所有している私達に敵など居ない!
「狙い撃つ!」
相手が構えたアサルトライフル『焔備』に向けてスターブレイカーを撃つ。
レーザーは銃口に吸い込まれ
ドガンッ!
「きゃぁっ!?」
これ位は非常に容易い!
「まだだ!」
スターブレイカーを収納、両手にナイフを抜刀する。
スラスターを吹かせ、いい気に接近する。今度は接近戦をすると見越し、相手は『葵』を抜刀。
だが、マトモに相手をする気はない!
「簪!」
「任せて!やあぁぁぁっっ!」
サイレント・ゼフィルスの完全停止直後に上空に素早く移動。
その刹那、簪が私の居た場所を通り過ぎ、夢現で斬りかかる。
その間に私はもう一人の相手に視線を向けずにスターブレイカーを撃ち放つ。
レーザーは心臓部に直撃、シールドエネルギーが大きく削られる。
これならビットも
その後も私はスターブレイカーで連射を行う。
牽制を含めた射撃の最中、左手にも予備のスターブレイカーを展開。
牽制して可動範囲を制限し、動きが止まった直後に直撃させる。
これが私の戦い方の一つだ。隠し弾は…私の本気は、兄さんとの対戦まで使わない!
「マドカ!」
「了解!」
スターブレイカーを収納し、即座にポジションを入れ替える!
ナイフを抜刀し再び向かい合った相手に突っ込む!
「兄さんが応援してくれているんだ!絶対に負けない!」
Kanzashi View
マドカとの訓練の中、私達の機体が共に高機動型だと知った。
私の打鉄弐式はサイレント・ゼフィルスには速度では敵わないけど、それでも、出来るだけ速く動けるようにと特訓を積み重ねた。いつかは、一夏にも、お姉ちゃんにも勝てるようになりたいから!
「絶対に負けない!」
二度目のポジション変更の直後、荷電粒子砲『春雷』を二機同時に起動、構えると同時に撃つ!
そして直撃!夢現を構え直し、攻撃!
葵による斬撃を受け流す。一夏やお姉ちゃんがよく使っているこの戦法も、私は吸収した。
だけど、見たままそのまま真似る事だけじゃない、私の…私だけの技術をここで見せる!
「やああぁっ!」
機体を急速旋回させ、石突きで相手を横殴りに、更に反対方向へ急速旋回させ、相手の『葵』を弾き飛ばす。
「これで!」
「終わりだ!」
再び春雷を起動!砲撃!
背後ではマドカがスターブレイカーを両手に構えている。
同時に砲撃、発砲、レーザーと砲弾が相手に直撃し、二人のシールドエネルギーが同時にゼロになった。
「私達の勝ち、だね。マドカ」
「ナイスコンビネーション!」
Ichika View
簪とマドカの試合は見事だった。二人は接近戦で連携を組みながら、的確に対処をしている。
マドカがナイフで攻撃、即座にバク転のような動きで簪と入れ代わる。
夢現で猛攻、その瞬間にマドカはもう一人にビットによる射撃で牽制、スターブレイカーにて確実に仕留めていた。偏向射撃を使わずにである。マドカの射撃によって吹き飛ばされたところで即座にポジションを変更。
ターゲットを入れ替えると同時に荷電粒子法『春雷』を炸裂させ、一人がダウン。
残る一人をビットとスターブレイカーによる一斉掃射で戦闘不能にさせた。
二人揃って切り札である『偏向射撃』『山嵐』を使用していない。二人にとっての基本戦闘である、近接格闘、射撃攻撃だけでの決着だった。
「ただいま!兄さん!」
「一夏!勝てたよ!」
「二人ともお疲れさん、よく頑張ったな」
ピットに戻ってきた直後、二人は俺に飛びついてきた。
簪とマドカにとっては初めてのダッグ戦、こと簪にとっては初めての公式戦だ。クラス対抗戦でのアレはまともな戦績とは言えまい。
その勝利が嬉しかったようだ。頭をなでてやると、二人揃って気持ちよさそうに目を細めていた。
とはいえ、このまま此処で過ごすのは二回戦に挑むタッグの邪魔になる。
現に様子を見に来たらしい千冬姉が
「そこの男子生徒、並びに更識、織斑妹、そういう事は控室に戻ってからやれ」
「…失礼しました…ほら、いくぞ簪、マドカ」
「「は~い♪」」
立ち去る間際まで妙な視線を向けられていた。…どうしろってんだよ、この状況…。
仕方ないので、簪とマドカを抱えて走って逃げだすことにした。
こんな時まで俺は走らなきゃいけないのかよ…
「…メルク、その視線は何だ?」
「いえいえ、仲が良いみたいだなぁ、と思いまして。
混ざってもいいですか?」
辞めんか。
「控室に戻るぞ、遅れずについてこい!」
簪ちゃんとマドカちゃんが大活躍でした。
相手のセリフなんて全然無かったみたいですが、そこはまたご愛嬌。
本日の投稿はコレだけです、それではまた後日!