IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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おはようございます。レインスカイです。
三連休なので頑張ってみます。
とはいっても、初日には投稿ができませんでしたが。


災厄招雷 ~ 届け ~

Ichika View

 

「甘いのよ!」

 

鈴の機体の非固定武装が開き、一瞬光る。

 

「っ!?」

 

何かが衝突したように吹き飛ばされた。

銃声も砲撃音も聞こえなかった。

この攻撃は…?

続けて衝撃が俺を襲う。

二度、三度、そして四度目。

その分、シールドエネルギーが削られていく。

これで残り78%だ。

 

「どうかしら、龍砲の威力は?」

 

心当たりはある。

これが、空間圧縮兵装だ。

 

 

「へぇ、龍砲って名前の兵装なのか」

 

「正式な兵装の名前は『衝撃砲』だけどね。

これでさっき蹴り飛ばされた借りは返したわよ。

倍返しでね!」

 

再び非固定武装が光る。

スラスターを吹かせ、咄嗟に横へ移動する。

後方にて地面から局所的に土煙が立ち上る。

だが、やはり実態弾は見えない。

 

「衝撃砲、空間圧縮兵装の脅威は理解出来た。

タイムラグも、実態弾も無いのは本当に驚かされたぜ」

 

「言っとくけど、実態弾が無いって事は!

弾切れの心配も無いって事よ!」

 

そのまま立て続けに衝撃砲が炸裂する。

ハイパーセンサーには何の反応も無い。

僅かな気圧変化が発生しているだけだ。

勘頼みで旋回する事で、衝撃砲によるダメージを最小限にするのが今は限界だ。

 

「速いわね、アンタは!」

 

「鈴のフットワークには負けるさ」

 

「何でそこと比べてるのよ!」

 

見えた!

 

「そこだ!」

 

雪華を投擲。

照準は鈴の腹部だ。

 

「そんなもの…!?」

 

青龍刀で叩き落とそうとする。

だが、鈴の前で雪華が消えた。

正確には量子変換だ。

 

「消え…!?何処に…っ!?」

 

「此処だ!」

 

雪片弐型のレーザー刃を展開し、左側の衝撃砲を背後から両断し、更に続けて蹴り飛ばした。

 

「うあっ!?」

 

「やっぱりお前は変わらないな、表情に出てるぜ」

 

龍砲は見切った。

鈴はポーカーフェイスが以前から苦手だった。

それは今も変わらない。

衝撃砲を撃つ時に視線を向ける癖がある。

ハイパーセンサーを使いきれていない。

空間圧縮兵装は前後上下左右関係無しに撃てる兵装だとマドカに教わった覚えがある。

第三世代兵装は高い集中力が必要になるが、この衝撃砲は、そうでもないらしい。

だが、衝撃砲はハイパーセンサーと合わせる事で脅威になるが、それが出来ないのなら!

 

「衝撃砲は見切った、もう通じないぜ。

片方だけだと、そこまで連射が出来ないんだろ」

 

「ったく、アンタって奴は…!

ホントに面白い奴だわ!」

 

青龍刀二振りを連結し、それを投擲してくる。

だが、それだけじゃなかった。

ブーメランのように旋回しながら襲ってくる。

なるほど、これも脅威だ。

 

「双天牙月と衝撃砲のコンビネーション!

見せてあげるわ!」

 

「上等!かかってこい!」

 

再度、雪華を展開し抜刀する。

 

「ちょ、その刀、なんで…!?」

 

「驚き過ぎだ」

 

ポーカーフェイスが苦手な奴だな。

コンビネーションが早速失われているぜ。

ハイパーセンサーで探ると連結された双月牙天が俺の背後に接近してくる。

白式を急上昇させる。

 

「んがっ!?」

 

そして双天牙月が鈴の機体に衝突した。

これで鈴のシールドエネルギーが17%減った。

なかなかの威力だ、納得した。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「同情しないで、恥ずかしいだけだから」

 

「…後で衝撃砲の修理に行く時に整備課に頭を下げとく。

それでチャラにしてくれ」

 

「アンタも律儀よね…でも、その前に全力で戦いなさいよ!」

 

青龍刀の連結を解除し、再び二刀流の構えになる。

 

「衝撃砲が通じないのは分かったわ、だったらこっちで勝負よ!」

 

「ああ、小細工無しの剣で勝負だ!」

 

雪華を逆手から順手に持ち替える。

スラスターを吹かせ、全力で双刀をぶつけ合う。

ぶつかる度に火花が散る。

悲鳴のような金属音。

装甲がぶつかる轟音。

土煙が立ち上る、汗が流れる。

互いの刃がぶつかり合うこの瞬間がいつまでも続けばいい。

久しぶりにそんな風に思えた。

楽しい、そして同時に嬉しく思う。

幼なじみとの再会が、こうやって互いに通じ合うものがある事が。

 

「まだだ」

 

「そうね!」

 

「まだやれる!」

 

「あたしもよ!」

 

刃を、刀、剣を、魂をぶつけ合う。

 

「「全力で、勝つ!」」

 

絶対に負けない!

 

 

 

 

Kanzashi View

 

「一夏、凄い…」

 

ピットに向かうよりも前に、私は管制室に来ていた。

そこのモニターで一夏の様子を見ていた。

モニターに映る彼は、汗を流しながらも微笑みながら刀を振るっていた。

楽しんでる。

全力で戦える事に。

 

「一夏さん、凄いですわね。

国家代表候補生相手に、二刀流で互角に渡り合ってますわ」

 

一夏のクラスメイトのオルコットさんの呟きが聞こえてきた。

最初は、何かいざこざがあったらしいけど、今では親しくしているらしい。

 

「わたくしもマドカさんと一緒に訓練してましたが、あの二刀流は何処で教えてもらったのでしょうか」

 

「あれは兄さんの我流だ。

兄さんが独自に作った、格闘複合剣術、『絶影流』だ。

私もまだ熟知していない、使える剣技とて少ないがな」

 

「オルコットさん相手の時には、発作が治ってなかったから、全力を出せてなかったの。

今の一夏が見せているのが、全力」

 

「…納得しましたわ…わたくしも訓練を積み重ねますわ。

全力の一夏さんと剣で渡り合える程に」

 

「私も、頑張る」

 

一夏の努力をずっと見てきたから。

この一週間は見られなかったけど、これからはまた一夏の傍で、彼をずっと見ていよう。

ずっと傍に居たいから。

 

「三人共、今後も努力を積み重ねる事だ。

自分だけの戦い方を見つけるも良し、連携を組むも良しだ」

 

織斑先生(学園では先生と呼んでる)の言葉に私達は頷く。

ただ一人、一夏の戦い方に異議を唱える人も此処には居るの居たけれど。

 

「一夏!なんだそのふざけた刀の振り方は!

ちゃんと剣道をしろ!

お前は剣道を何だと思っているんだ!」

 

時には通信を開いたりしてるけど、一夏が回線を切っているから応える筈もない。

 

「なんで箒さんが居ますの?」

 

「知らない、私に訊くな」

 

「私も知らない」

 

私は後の対戦が控えてるから。

マドカとオルコットさんは、万が一、万々が一に、一夏が発作を起こしてしまった場合にすぐに救助に迎えるようにする為。

なら、篠ノ之さんは?

…またか…とさえ思った。

 

「あ、殴られてる」

 

「自業自得」

 

「ですわね」

 

同情はしないでおこう。

一夏の努力を知らないのに、それを否定するような人は嫌いだから。

 

「一夏は朝早くから剣の特訓をしてる。

かなり早くからやってるけど」

 

「早朝4時半からだ」

 

「は、早起きですわね」

 

私もそう思う。

早朝からバイトの新聞配達、剣術の訓練に、朝食の準備とかもしてた筈。

今はバイトが無いし、朝食は食堂で摂っているから、早朝からの時間は剣術に使いきってる。

 

「鈴も頑張ってる、あんな大きい刀での二刀流。

力任せに見えるけど、有効打を正確に狙い続けてる」

 

「兄さんはそれを二刀流で受け流してる。

そのまま刀で反撃、時には蹴りで対応してる」

 

「足技も我流ですのね。

お見事ですわね、でも、ちょっと足癖が悪い気がしますわ」

 

…お姉ちゃんも同じ事を言ってたとか。

 

「いつから、あの技術を鍛えてますの?」

 

「中学生の頃から。

一夏は中学2年の頃から、ずっと鍛えて、その集大成があれなの」

 

「何故、更識さんが知ってますの?」

 

…口が滑った。

どうやってごまかそう…?

 

「兄さんは、簪の家にある道場に通っていたんだ。

そこで鍛えていたんだ。

そこの流派をベースにして組み上げていたから、兄さんの我流も受け入れられていたんだ。

その道場で私も、簪も一緒にやっていたんだ」

 

マドカが納得のいく言い訳をしてくれた。

ちょっと感謝。

 

「そうでしたのね…納得しましたわ」

 

オルコットさんも納得してくれてる。

助かった、かな。

 

「マドカ、ありがとう」

 

「夕食時にはパフェを頼んだ」

 

見返りをきっちり求めてくる辺りがマドカらしい。

えっと…パフェって幾らだっけ…?

 

 

 

 

Lingyin View

 

「はぁ…はぁ…」

 

強い。

驚く程に一夏は強い。

ISに触れて半年未満なのにこの強さ、楯無さんに鍛えられているらしいから、納得できないことも無い。

そして、経験の無さを埋めているのは、一夏だけの剣術である『絶影流』だ。

この短いようで、長い時間、その中で学んだ。

その真髄は速さにある。一時、刀身が消えてしまうように錯覚してしまう。

それに、アタシが見物に行っていた時には、『蹴り技』なんて取り入れられていなかった。

蹴りすら時には消えて見える。

 

「機体の状況は…?」

 

衝撃砲は片方破損して使えない、そもそも衝撃砲も早い段階で見切られた。

慣れてしまったらしく、もう通じない。

残るは双天牙月と甲竜が持ち合わせているパワー。

だけど、パワーが強すぎると、今度は受け流されてしまい、隙だらけになり、カウンターを叩き込まれる。

 

 

 

 

一夏の特訓は知ってる。

まだ私が日本に居た時、弾や蘭、それに数馬と一緒に、一夏が剣の特訓をしている道場に見学に行かせてもらった。

そこでは一夏が刀とナイフを手に懸命に振るっていた。

汗を拭い、時には派手に打ち倒されながらも、特訓を続ける。

そんな彼に、訊いてみた。

 

「なんで、そんなに懸命になってるの?

あっちこっち打撲だとか擦り傷とか作ってるのに」

 

「今まで、千冬姉に守られてばかりだった。

そのままだったら、いつかは俺は俺自身を守れない。

それに…俺にとって大切な人もだ。

だから俺は強くなりたいんだ。

大切な人を、千冬姉も守れるくらいに。

だから、こうやって刀を振るってる」

 

「目指すは世界最強?」

 

茶化すように言うと、一夏は苦笑いを浮かべて言った。

 

「そこまでは考えてないさ。

それに、有名になりたいだなんて願望も無い。

ただ、俺にとっては大切な人を守れるのなら、それでも良いとさえ思ってる」

 

一夏は、自分のふとももを枕にしている簪の頭を優しく撫で、夕日を眺めて言葉を続けていく。

 

「俺は…俺にとって大切な人を、居場所を守れるのなら…俺は誰より弱くても構わないんだ。

さっき言ってた事と矛盾してるかもな」

 

「そんな事、無いと思うわ」

 

 

かつて一夏はイジメを受けていた私を助けてくれた。

だから、一夏が困っていたら私が助けようと誓っていた。

失恋こそしたけど、それとこれとは話は別。

だから、簪と仲良くなった後も、一夏が発作を起こしたりした時には全力で助けた。

 

でも、両親の離婚で中国に帰る事になった。

それから私は中国で自分を鍛えた。

いつか、いつか一夏とまた出会えたら、一夏が私を助けてくれたように、今度は私が一夏を守れるように。

そう思いながら過ごし、いつの間にかISを乗りこなし、専用機である『甲龍』が与えられた。

それでも、まだ強くなりたくて鍛えている間に、一夏がISを動かし、IS学園に入学したとの話を聞いた。

遅れるような形になったけど、私は一夏が居る学園に編入した。

軍の上層部を脅した、なんて知ったら一夏は何て言うだろう?

 

笑うかな?

 

それとも呆れるかな?

 

それとも怒る…なんて事は無いか。

 

でも、一夏はあの頃と変わらないまま、私と接してくれた。

マドカも、簪も、あの頃と変わらなかった。

それが嬉しかった。胸のサイズが一気に引き離されていたのは本気で悔しかったけど。

一夏がクラス代表になったと教えてもらっていたから、私も同じクラス代表になった。

クラスが別だから、同じ場所に立っていたら接する機会も増えると思った。

まあ、そんな事もなかったけど。

それに、アタシは一夏と親友。

それだけでもいい。

訓練は一週間程は出来なかったけど、その分、此処で見せる。

一夏に守られていたばかりの私じゃないって事を証明する為に!

あの時に私を救ってくれた恩を返す為に!

今度は、私も一夏を守れるんだと、その意思を見せる為に!

 

「この勝負、絶対に勝つ!」

 

剣が、時には足の装甲がぶつかる。

シールドエネルギーは私は69%、一夏は75%、今はまだ互角。

でも、一夏はまだ何か隠し弾をもっている気がしてならない。

有るとしたらそれは

『単一仕様能力』

雪片の名は私も知っている。

あの刀に宿っているものが有るとするのなら、千冬さんが使いこなしていた『零落白夜』の可能性。

でも、それ以外に何かあるとしたら?

予想がつかない。

一夏の機体は、近接戦闘特化、そして高機動特化、なら、何があるの?

でも関係無い。

ガチの勝負で、小細工は要らない!

 

「いくわよ一夏ぁっ!」

 

双天牙月を構え、私は一夏に突っ込んでいった。

 

「来いっ!鈴!」

 

あたしの思いを乗せ、刃を振るう。

一夏へ伝えられなかった思いも、今の私が抱いている思いも!

その全てを、この刃に! 込めて!!

 

「届けええぇぇぇぇっっ!!!!」

 

 

 

Madoka View

 

今でも微かに思い出す。

とても幼かった頃の事を。

歳の離れた姉さんに、同い年の兄さんと過ごした時間を。

でも、幸せな時間は長くは続かなかった。

私は、父母に無理矢理に連れられて、姉さん達と引き離された。

父母が何を思って、姉さんと兄さんを引き離したのかは、今になっても分からない。

後に、無理矢理連れ出した私までをも捨てたのだから、もう理解なんてしたくなかった。

10歳にも満たない子供が出来る事なんて、たかが知れていた。

 

「私はマドカ、織斑マドカだ」

 

自分にそう言い聞かせ、自分が何者なのかを忘れないようにするのが精一杯だった。

ストリートチルドレンのような生活をするのが限界だった。

また、兄さんと姉さんに逢いたい。

姉さんに頭を撫でてもらいたい、兄さんに甘えたい。

でも、何処とも分からない場所でそんな事を願っても、叶わなかった。

空腹で死を覚悟した時に、大人に拾われた。

私を拾ってくれたのは、ウェイザー家の夫婦。

その夫婦に拾われ、私は養子になった。

与えられた名前は

『マドカ・O・ウェイザー』

 

与えられたのは名前だけじゃなかった。

衣服も、暖かな食事も、柔らかいベッドも与えてくれた。

そして教養も。

そこで、私が居る国は『オーストラリア』だと教えられ、世界地図を見た。

絶望した…姉さん達と一緒に暮らした場所からの遠さに。

もう、あの場所に帰れないのではないのかと。

 

そんな想いに更けながら、私はウェイザー家で過ごす。

暗い表情ばかりしていたからか、ウェイザー夫妻は事故で呆気なく他界した。

私はまた…一人になった…。

施設に預けられ、私は孤独に過ごした。

そんな中、私の運命が大きく変わった。

 

「マドカ・O・ウェイザー、君を我が国の国家代表候補生に任命する」

 

施設の子供にも行われたIS適性検査が行われたのが、正にそれだった。

私は施設の子供よりも、オーストラリア全土の子供よりも、ずば抜けた高い適性を持つ事が分かった。

その為、勉強をしている最中に見ていた、モニターに一人の女性が映っていた。

第一回、モンド・グロッソ世界大会決勝戦。

そこで勝利を掴み、『世界最強』の名を手にした人…。

 

「…姉さん…」

 

忘れもしない、私の姉だった。

微かに記憶に残る姉と、特徴が合致する。

間違いなかった、私の姉さんだった。

兄さんの姿は見えなかったけど、それでも私には目指したい場所を見つけた。

国家代表候補生になれば、日本に設立されているIS学園に入学、つまり、国境を越えて、兄さんと姉さんが居る日本へ帰れる。

だから私は必死に勉強を続け、オーストラリアとイギリスの共同開発機である『サイレント・ゼフィルス』を手に入れた。

これは兄さんと姉さんに自慢出来ると思う。

それから少し経って私はオーストラリア政府に無理を言い、日本に先んじて行かせてもらう事に。

その真意は、日本に居る兄さんと姉さんが逢う為。

兄さんがまだ学生だという情報も手に入れていたから、その学校に転入した。

兄さんと姉さんには秘密で、扱いはホームステイとして。

職員室で見た兄さんが驚く姿は見ていてちょっと楽しかった。

 

それから正式に転入してから、血縁を暴露した時の兄さんの驚く様子は見てて楽しかった。

けど、からかうのはそれで終わり。

苦手意識なんて持ってほしくなかったから。

でも驚いた。兄さんには恋人が居るだなんて。

 

「マドカ、牛乳を買いに行こう!」

 

「偶然、私も同じ事を考えてた」

 

楯無先輩のプロポーションを見て嫉妬した。

姉さんもかなりのスタイルだったけど、なんで私と簪、それに鈴はスタイルに恵まれないんだろうとさえ思った。

同い年の本音にすら妙な視線を向けてしまった。

 

兄さんと11年振りに再会してから少し経ってから、兄さんの剣の特訓を知った。

 

物凄い必死だった。

兄さんは、何か悔しい思いをして、心身共に傷を負った。

もう、そんな経験したくなくて、自分にとって大切なものを守れる強さが欲しいと。

だから

 

「兄さん、私も付き合うよ」

 

「マドカもか?」

 

「うん、兄さんを見てたら私もやりたくなってきた」

 

私が手に握ったのはナイフ二刀流だった。

両手にナイフを握り、懸命に振るう。

順手に、逆手にと握り変え、力を入れて何度も振るった。

兄さんは大切な人を守る為に刀を振るう。

なら、私は兄さんの傍に居て兄さんを支えたいから。

ブラコンなんて言われとも良い、シスコンだって構わない。

その両方が私にとっては褒め言葉だ。

ようやく戻れた家族を守りたいのは、私だって同じなんだから。

 

兄さんとは幾度も試合をしてみたけど、全然勝てなかった。

でも、姉さんは兄さんよりもずっと強いらしい。

家族を守る為には、私ももっと強くならないといけない。

そして今、兄さんは特訓の集大成を見せてくれていた。

 

「兄さん、凄い…。

やっぱり、兄さんは誰よりも強いんだ…」

 

異色の二刀流なんて兄さんは謙遜しながら言ってたけど、私にはそんな風には見えない。

あれは、兄さんだけの剣だ。

誰にも真似が出来ない、正真正銘、兄さんだけの剣なんだ。

 

でも、鈴も私の友達。

だからどっちを応援んすれば良いのか迷った。

最初は、デザートフリーパスが欲しくて兄さんを応援しようか、なんて思っていたけど、それも辞めた。

私は家族を応援しよう。

大切な家族を。

だから

 

「兄さん、頑張れ!!」

 

Ichika View

 

ガキの頃から、俺は剣を振るってきた。

最初は竹刀を、それを捨ててからは、刀とナイフを両手に握った。

今はISの刀を握っているが、この感覚もなかなかに気に入った。

右手には『雪片弐型』を、左手には『雪華』を。

その二振りを縦横に振るう。

今の俺の剣は、千冬姉に届くのだろうか。

まだ、距離は開いているのかもしれない。

それでも俺はその高さに手を延ばす。

どれだけ醜くてもいい、悪あがきと言われても構わない。

あの高さに届き、そして越える為に!

そして!守る為に!

 

「届けええぇぇぇぇっっ!!!!」




おはようございます。
レインスカイです。
毎度5000字前後での投稿をしてきましたが、今回はとびぬけて7000字オーバーしました。
昨日は投稿できなかったので、今日は二回投稿できればいいな、なんて思っていたりします。

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