IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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今週末の投稿ができるか不安です。
なので先取り気分でご覧ください。
本日は2話投稿できるかは分かりませんが


発作 ~ 声 ~

Ichika View

 

規定位置にて白式を完全停止させる。

よし、これなら機体のマニュアル操作は大丈夫そうだ。

問題は…オルコットが所持している武装だ。

『スターライトmkⅢ』射撃特化の機体に宛がわれたライフル型の武装だ。

 

「あら、本当に来ましたのね」

 

「…………」

 

初期化と最適化が済むまで27分と50秒か…。

 

「貴方に最後のチャンスをあげますわ」

 

「…聞くだけ聞いておこう」

 

聞き流すかもしれないけどな、体調的にも

それと内容次第でも

 

「この戦いでわたくしが勝利するのは自明の理、頭を下げて謝罪をすれば多少痛めつけるだけで終わらせてあげますわよ」

 

目の前にウィンドウが展開される。

内容としては

 

『警告:熱源確認、ロックオンされています』

 

なんとも行儀の悪い女だ。

未だに模擬戦は開始されていない、それなのにすでにロックオンしているとは。

コイツも所詮は『女尊男卑』だなんて風潮に踊らされている一人の人間ってわけか。

 

「…願い下げだな…」

 

「そうですの…でしたらお別れですわね!」

 

試合開始と同時に発砲する。

開いては俺にライフルを向けている、それだけで発作が起きそうだ。

既に頭が割れそうになっている。落ち着け、置き換えるんだ『銃は弓』『弾は矢』そう思え!

 

「システム!武装を確認!」

 

ウィンドウが展開する。武装一覧だが…『現在使用可能』なのはブレードが一振りのみ。

…冗談だろう。『一覧』の言葉の意味は理解している。だが、間違っても『一つだけですが、ご覧あれ』という意味ではない。

こんな話、ラウラが聞いたら呆れてしまいそうだ。

だがこんな冗談に付き合ってくれる人なんて他には思いつかないしな。

あ、でも簪はお笑いの番組を見てツボにはまってしまっていた時もあったし…。

おっと、今はそれよりも回避に専念だ。

 

「くっ!この!堕ちなさい!」

 

「誰が…!」

 

ハイパーセンサーのお蔭で視界はピットに到着するよりも前に比べればクリアになっている。

射撃にも慣れてきた、後は…

 

左腰に微かな重みを感じる。そこには鞘に納められた刀が一振り。

これが白式の武装か。迷わずに抜刀する。

刃の部分は青く染まり、背は白に染まっている。

銘は

 

「『雪片弐型』…千冬姉のおさがりか?

ありがたいけどな…もう一振りくらいはあってほしかったかな、ナイフとか…せめて脇差しとか」

 

視線をオルコットに向ける。

するとまたも逆上している。

そしてウィンドウが開く、どうやら通信を入れてきたようだ

 

「中遠距離型のブルー・ティアーズに剣一本だけで立ち向かうなんて貴方はどれだけ愚か者ですの!?どれだけわたくしを侮辱すれば気が済みますの!?」

 

武装を俺のせいにしてもな…こっちはスペックにはノータッチなんだぞ。

 

「そんな愚か者には…!」

 

ブルー・ティアーズのスカート部分から何かが分離する。

そのまま落ちる事も無く、意思を持っているかのように空中を走り回りながらレーザーを撃ってくる。

BTシリーズの真骨頂、ビット兵装だ。

対処方法は熟知している、俺の体がどこまでついてくるかが問題だけどな…。

タイマーを確認する。

 

「残り…25分30秒…!」

 

 

 

 

Madoka view

 

兄さんが出撃すると同時に姉さんが管制室に飛び込んできた。

途端に顔が怒りに染まる。

 

「誰が医務室からの退室を許可した?

あいつはまだ三日は安静にしておかなくてはならないんだぞ」

 

「兄さんは…自力で…私は止められなかったんだ」

 

「それに、そうでもしないと後悔する人が居るって…」

 

「あの馬鹿者めが…後で説教だな、お前達もだ。

しかし、だ…」

 

姉さんの視線が後ろへと向かっていく。

そこに居たのは

 

「何故お前が此処に居る、篠ノ之」

 

兄さんに暴行を振るった張本人がそこに居た。それも、さも当然とばかりのような振る舞いで。

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止だ、早々に出ていけ」

 

「私は一夏の幼馴染です、無関係ではありません」

 

どの口で…!

 

「おちつけマドカ」

 

姉さんが耳打ちをしてくる。

なにか話があるのかもしれない、今は耳を貸しておこう。

簪も今は耳を貸しているんだし。

 

「後々正式な方法で追い出す、それまで耐えろ」

 

「…姉さんがそういうなら」

 

「分かりました…」

 

ナイフを抜こうかと思ったが、思い留まった。

今だけは見逃してやろう。だが、次は無いと思え…篠ノ之 箒!

 

 

 

Ichuika view

 

残り…5分!

今の所、射撃攻撃は殆ど回避している。訓練の成果は活かせている。

残存シールドエネルギーは…98パーセント。相手は100パーセント。

 

「逃げ回るのがずいぶんと得意なようですわね!男のくせに!」

 

「背負っているものが多くてね、それを傷つけないようにしているんだ」

 

「背負って、いるもの…?」

 

「お前よりは多いと思うぜ。俺が守っているもの、それは…」

 

背後のビットを切り裂く!

まずは一基!

 

「家族だ、俺には妹と姉が居る。誰よりも守りたい人がな!」

 

すかさず真上のビットも叩き斬る!これで半分だ!

オルコットに一瞬の隙ができる。

此処で瞬間加速!

一気に間合いに入り込む

 

「かかりましたわね!」

 

スカート部分から新たなビットが展開される。

そこに見えたのは…弾頭ミサイル!

二発同時に発射されるのだろう。

だが構うものか。

最初の一撃を叩き込むには僅かな時間があればいい!

応えろ白式!もう少しだけ速く!

今の俺の体調で使える剣技は一種類のみだろう。

この技は速さこそが命だ…!

 

絶影(たちかげ)流…初伝…!」

 

更識家で最初に学んだ剣技。

ただの一閃でしかないが、それでも俺が習得し、魂に刻み込んだ一撃

 

穿月(うがちづき)!」

 

片手に握る刀での神速の刺突だった。

 

瞬時加速には至らぬスピ-ドでの一閃。

最初の一撃を叩き込む為の賭けには…

 

 

 

「きゃあああぁあぁぁぁぁぁぁっっ!!!!????」

 

「ぐおっ!?」

 

半分は負け、半分は勝った。

ミサイルの1発は狙いが反れたが、もう1発は直撃。

シールドエネルギーは残り83%にまでダウンする。

吹き飛ばされる。

地面に直撃するよりも前に姿勢を自分の手でマニュアル制御。

姿勢制御が整うのと同時に足から着地、転倒しないように足裏のスパイクを起こし、地面を抉りながら減速させる。

だが目はオルコットから決して反らさない。

先程の砲撃に続けてまだミサイルを撃ってくる。

目が血走っている、先程の一撃が完全に想定外だったんだろう。

ミサイルの数は6発。

それを視認した瞬間にスラスターを一瞬切り、サブスラスターを逆方向に向けて吹かせる。

それに遅れるような形でメインスラスターも全開、最大出力!

『後退加速』!

 

俺を追うようにミサイルが追ってくる。

視界がボヤけて見えてしまう…だけど見極めろ!

 

目を見開け

 

決して閉じるな

 

間合いをつかめ

 

瞬間を見極めろ

 

絶対に怯えるな

 

 

瞬間、俺の視界は土埃で覆われた。

そして…『あの声』がどこからともなく聞こえてきた。

 

『5秒ダ…ソノアイダダケ…ヒダリウデヲカシテヤル』

 

 

 

 

Kanzashi view

 

「一夏!」

 

試合の最中、相手からミサイルを放たれた。

訓練は積んでいる、だけど今の彼の体調でそれに対応できるかは分らなかった。

対応できなかったとしたら…。

 

「姉さん!兄さんが!」

 

「安心しろ、あいつがあの程度では終わらないのはお前達二人が判らないわけではなかろう」

 

モニターを見てみる。

凄まじい土埃の中から白い光が溢れていた。

 

「…あれ…?」

 

白式とは違う何かを感じた。…まるで、『漆黒の何か』を…

 

 

 

Ichika view

 

ミサイルをかろうじて回避するが、衝撃までは避けきれなった。

残るシールドエネルギーは…63パーセント。

目の前に現れたウィンドウには『「初期化」「最適化」が完了しました』の文字。

背後の非固定武装が大きく展開され、一対の翼のように広がるのを瞬間的に確認。

くすんだ白は完全な純白となり輝いている……左腕だけは違ったが。

左腕が肩まで何かに変質したかのように変化しているのを確認する。

これは…白式の左腕でもなければ同一の装甲でもない。

何か…禍々しさを感じた。

武装一覧には未だに何も出現していない。『ロード中』の文字が出ているが、それだけだ。

でも構わない、この左腕を貸し与えてくれているのが誰かは分らないが、それも5秒だけだ。

 

「おおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」

 

土煙の中から瞬間加速で飛び出す!

オルコットは怯えて…それとも竦んでいるかのようだ。

だがこの際、どうでもいい!

擦れ違いざまに左腕を振るい、薙ぎ払った。




おはようございます。
今日の夜は夜勤なのにPCに向かい合っているレインスカイです。
あ、はい、今日だけは平日なのに大丈夫ってことです。
始まりました、クラス代表決定戦。
何やら一夏君は流派だとか剣技を口にしてますね。
更識家で学んだ剣技を自分なり改良して編み出したものです。
技の名前も色々と考えてストックしてあります。
得意なのは二刀流なんですがね。
さて、『声』が聞こえてますね、それが誰の声なのかはまだ判明してません。
そして肝心なのは武装一覧に表示されている『ロード中』の文字。
『白式改造』のタグを此処でようやく活かせます。
ではまた次回にて。

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