IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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ここ最近『かぷせるさーばんと』にハマってしまってますw

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獄雷冥魔 ~ 重闇 ~

Tatenashi View

 

輝夜のすべての装甲が解除されたのは一瞬。

その直後には、闇色の魔龍が姿を現した。

 

なんで一夏君がこのタイミングで引っ込んだのかは判らないけど、これは戦力向上と考えてみてもいいのかしら?

 

「どうせ状況は見ていたのでしょう?

なら、あの攻撃を何とか対処を…ちょっと待ちなさいよ⁉」

 

なんで 言ってる間に飛び出して行ってるのよ⁉

 

 

 

Ichika View

 

意識が混濁した直後、目の前の光景は見慣れたものへと変わり果てていた。

黒翼天の領域だ。

 

「…まだ、俺には早いということか」

 

戦場であれば、幾度か駆け抜けた。

それも、こちらの命を狙ってきているような輩相手に刃を手に取ることもあった。

だが、学園祭の時といい、今回の事といい、何故か黒翼天は入れ替わろうとしてくる。

理由は未だに判らない、問いかけても、口を閉ざすだけで何一つ答えようとしない。

とはいえ、俺としては信頼していないわけではない。

アイツはちょっとした頑固者というだけなのだから。

 

おもむろに突き立った剣を一振り引き抜いてみる。

…学園内では抜刀禁止の命令が下された『大百足』。

使う際には両手で振るうような両手剣だけに重量も大きい。

 

次に引き抜くのは最近世話になっている謎語り(シラード)

 

次に引き抜くのは双剣と弓とが1セットになったUnknown Brave(知られざる英傑)

 

「これらは全て…」

 

俺の内側から生じたもの、だったな…。

あれも、あそこも、その総てが…。

どこまで歩いて行っても終わりがないのかもしれないほどに広すぎる領域。

だとするのなら…本当に300000なんて数で済むのか…?

 

その心配は見事に的中していく。

 

涸れ果てた荒野に次々と雷が雨のごとく降り注いでいく。

視界を覆っていく土ぼこりが落雷によって払われては巻き上がる。

その都度に…

 

「…冗談だろ…」

 

その都度に、新たな刃が精製されていくのを感じた。

一振り一振りがすべて形状が違う。

その悉くが、すべて実用性に長けたものだ。

鋸状の刀身を誇る刀、更には三叉槍、斧。

…近接仕様の武器としてはもはや見境も無くなってきている。

あの灰色の機体を相手に手こずっているという事なのだろうか?

それに…あの機体の搭乗者はいったい何者なのだろうか?

 

 

Tatenashi View

 

「冗談…でしょ…」

 

「GURURURUAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼‼」

 

入れ替わった瞬間から戦いは一気に傾いていた。

金色、赤銅、宵闇、白雪の眷属龍を従え、5方位から仕掛けていく。

 

でも、現れたのはそれだけじゃない

 

「織斑一夏ぁぁぁぁぁぁぁぁっっ‼」

 

あの闇色の球体が弾丸の如く迫ってくる。

防御も受け流しもできない疑似的なブラックホール。

かすめるだけでも問答無用で消滅させられるそれが…次々と消えていく(・・・・・)

 

「どういう事…?」

 

目の前で繰り広げられる出来事に頭が追い付かない。

一夏君は、あれを『意識を保たせたVTシステム』とまで皮肉っていたけれど、それによる搭乗者の限界?

だとしてもあまりにも早すぎる…だとしたら…搭乗者がそれに意識を割けていない…⁉

 

「この…虚無の(ヴァニティー)……⁉」

 

ドドドドドドドドドドドドドド!

 

降り注ぐのは剣の雨…どころじゃない、あれはさながら()だ。

むろん、そこから回避を強要される。

だけどそこには

 

「アグッ⁉」

 

眷属の龍が飛び込み、鉤爪で引き裂きにかかる。

振り払おうとしても

 

「離せ!離せぇっ!

ぎ…ギャァァァァァァッッ‼」

 

咬み裂かれる。

やはりというか、もぎ取られた左腕からは、機械のパーツが覗いていた。

やはり、機械義肢…!

しかも、あの日自爆した人物と完全に人格も同じ、個人の人格ですらコピー転写する技術を持っているという事なのかしら…?

 

「よくも…よくもオータムをぉぉぉぉぉ!」

 

「あら、オータムと呼ばれてるのね、あの人物は」

 

だから私はカマをかけることで、博打に出ることにした。

正直、こういうのは好まないけれど、一方的な殺戮を繰り広げられるよりかは幾分かはマシ、の筈…。

 

「彼女、貴女の何なのかしらスコール・ミューゼル?

あの人、今は政府預かりで拘束しているわよ」

 

コレはブラフ。

せっかく捕らえたテロリストではあるけれど、あの状態では流石に政府に引き渡しなんて出来ない。

何せ上半身ぶつ切りで、錯乱とフラッシュバックを続けているんだもの。

生き損ないの死に損ない、ベルトでベッドに縛り付けているけれど、本人は動くこともできず、今も声なき絶叫を続けている。

アレは私としても見るのは辛い。

思わず目を背けてしまっている。

 

黒翼天も今は行動を起こさずにいてくれるのは有難い。

出来る事ならこのまま情報を引き出す事が出来れば…。

 

「…そう、政府預かり…死んだわけじゃなかったのね…それさえ判れば…!」

 

「一夏君、下がって!」

 

次々と闇色の弾丸が撃ち出される。

音も無く飛来するそれは視認してからでないと回避が間に合わない。

直観と無理無茶を繰り返しなんとか150mまで離れるのには成功した。

厄介にも程があるわよ!あの攻撃!

 

「…まだ…⁉」

 

背面スラスターの一部がこちらを向くのが見えた。

そこから閃光が射出される。

こちらはナノマシンを使って水の障壁を展開して防ぐ。

だけど、スコール本人は…

 

「ああ、やっぱり…」

 

今の今まで状況を見るだけになっていた()がとうとう動いた。

 

「邪魔をするなぁ!

虚無の統か(ヴァニティー・ルー)』……⁉」

 

「GURURURUAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼」

 

再び魔龍と冥王の戦いが始まった。

でも、その戦いは先ほど以上に一方的だった。

左腕を失われてしまったからか、左側からの反応が鈍い。

それを見逃すはずもなく、黒翼天は反応が遅れる左側からの武器の射出を繰り返す。

あのブラックホールの攻撃から逃れるのであれば、それは距離を開くことではなく、その逆。

距離を詰め、白兵戦闘に持ち込む事。

一夏君が睨んだ通りだった。

あの機体は、自身の能力に対しての耐性を得ていない。

それどころか、文字通りに消滅させてしまうものだから、耐性を得られない…⁉

更には意識の混濁…あの機体は…搭乗者殺しのものだったと…?

黒翼天もそうだけど、なんで搭乗者に害をなす機体が作られるものなのかしらね…⁉

 

「お前さえ…お前さえ居なければぁぁぁぁぁっっ…!

私は…オータムと…レインと…」

 

言うまでもなく、先に干渉してきたのはスコール達。

今になって一夏君を殺そうとしたところで、すでに起きてしまったことを書き換える事なんて誰にも出来ないわ、誰にも。

 

「織斑一夏ぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!

殺す!アンタだけは殺してやる!」

 

「悪いけど、やらせないわ」

 

時間稼ぎはもう出来た。

それに場所も悪かったわね。

 

「行くわよ、スコール!」

 

禊星内臓のアクアクリスタルをフル稼働。

最近作ったばかりの新しい一刺必殺の大技。

その名も…!

 

「『海竜の突撃(リヴァイアサン・チャージ)』!」

 

噴出される水が推進器(スラスター)の代わりに豪速を生み出してくれる。

その勢いのまま、黒翼天の鉤爪からスコールを引き剝がす。

黒翼天をそのまま吹き飛ばされればよかったけど、そうもいかなかったみたいね。

 

「この程度…!」

 

「この程度が何?どの程度までがこの程度なのかしら(・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「…な…⁉」

 

左腕に握ったもう一振りの禊星を全力で突き出し、もう一段階吹き飛ばす。

でも、この程度じゃ済まさない

 

落ちる床(セック・ヴァベック)起動!」

 

AICをも超越した空間封印で灰色の悪魔を固定させる。

更に予備の蒼流旋を展開。

再びアクアクリスタル全開で水を収集させ、穂先に収束させる。

 

「ミストルテインの槍、発動!」

 

大量の水を一気に水蒸気爆発させる。

吹き飛ばす事は出来るだろうけど、封印結界で威力を受け流す事さえ許さない。

 

「さあ、頭を冷やしてきなさい!」

 

蒼流旋と禊星を連結させ、巨大な三叉槍を形成。

それを全力で振り下ろした。

その瞬間に結界を解除。

複数の能力を一気に制御し続けているから頭が割れるように痛いけれど、歯を食いしばって耐える。

 

ドボォン!

 

スコールが海に落ちた。

でも、これで終わらせる私じゃない。

海に落としてしまえばこちらのもの。

 

「さあ、魅せるわよ、ミステリアス・レイディ」

 

ナノマシンは十分すぎるほどに散布している。

そして、海上ともなれば、それも海に落としてしまえばもう助からない。

 

海竜の禍渦(リヴァイアサン・ヴォーテクス)!」

 

瞬間、スコールが落ちた場所を中心に巨大な渦潮が発生する。

相手が操るのがブラックホールに酷似したものであるのなら、正直に言えば対処方法も無かった。

都市一つが地図上から消え去ったのも、あの機体の特性によるものと考えれば寒気もする。

なら、それを使わせないようにするしかない。

幸いにもフィールドは私に向いている。

海上戦闘ならミステリアス・レイディと禊星による独壇場。

いくらあのブラックホール攻撃で海水を消し飛ばそうとも、それこそ海そのものの消滅なんてできる規模には届かない。

更に…

 

「渦潮の中、掻き混ぜるだけじゃ足りないだろうから…」

 

渦潮の中心点で、そして各所で水蒸気爆発をも混ぜ込む。

あんまり想像したくないけれど、その中にいる彼女は今頃前後上下左右の感覚も失われている筈、そして意識も混濁してるだろう。

 

「彼女は生け捕りにしたうえで拿捕するわ。

悪いけど、貴方の出番は無いわよ、黒翼天」

 

大三叉槍の穂先を闇色の龍に突き付けた。

図体があんまりにも大きいから牽制にならないかもしれないけど、これだけは言っておいたほうがいい。

 

「貴方の復讐に関しては動機は理解出来ないわけじゃない。

でも、もう終わりにしなさ」

 

私の言葉は遮られた。

迫りくる黒の雷によって。

 

ドガァァァァァンッ!

 

「終わらせる、だと…?

アホな事を言ってんじゃねぇ…!

まだだ、まだ終わるわけがねぇ…奴らを…殺すまでは…!」

 

4機の眷属龍がその両腕にドッキングされる。

ちょ、まさか…

 

 

 

嫌な予感は確信へと姿を変えていく。

両肩の装甲も変貌し、龍の顎が開かれる。

あまりにも禍々しい黒い閃光が溢れ出す海面が海底まで一気に蒸発していき、さらにその奥の地盤ごと撃ち抜いていく。

 

「理解なんざハナから求めちゃいねぇ!

理屈なんてものじゃねぇんだ‼

この憤怒は!憎悪は‼俺だけのものだ!!!

奴らの死でしか!消すことなんざ出来はしない!!!!」

 

消える事の無い憤怒

 

「楯突くというのならテメェだろうと敵だ」

 

「…私が一夏君からすればどういう関係なのか知ったうえで…?」

 

「それがどうした」

 

話にならない。

いや、彼はもとより理解なんて求めていない。

復讐、動機、痛み、苦しみ、絶望、そして…死。

それを私達に刻み付けたのは…邪魔をさせない為(・・・・・・・・)

フザけないで!

 

「頭を…冷やせ!」

 

真下の海域に干渉。

海水の水柱が突き上がる。

砲撃の為かその構えのまま大量の海水をそのまま浴びていく。

でも、これでいい。

 

「さあ、また雷でも撃ち出す?

頭から足先まで海水を浴びてるのよ、さぞ気持ちよく通電するでしょうねぇ…。

それとも…弾き飛ばされてみる!?」

 

清き情熱(クリア・パッション)を発動させる。

だけど、当然一発だけじゃない。

頭の先から海水でズブ濡れにしてやったのだから、その海水すべてを使う。

 

「全ての海は私の手の中…」

 

その瞬間だった。

黒翼天の姿がその場から消えたのは。

移動したわけじゃない、まるで…最初からそこに居なかったかのように。

 

「逃げた…まさか…⁉」

 

真下から突き上げる海流に思わず目を閉じる。

飛び出してきたのはあの冥王、スコール・ミューゼル。

 

「死ねェェェェェェッッ‼‼」

 

海流槍の穂先を冥王に向ける。

この海域はすべて掌握しているけど、この速度では………間に合わない…‼

 

「どうした、もう終わりか?」

 

「な…貴方は…⁉」

 

再び現れた闇色の翼が目の前に。

でも、助けられたわけではないのだと、瞬間的に察してしまった。

 

「…あ…ああ……アアアアアァァァァァァァァァァァァァァァッッ⁉」

 

左腕の龍の咢は大きく開かれ、そこに冥王の鉤爪が突き立っている。

そして…そこからは…夥しい流血が飛び散っていた。


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