昨日が誕生日でした。
祝いの言葉の1つも在りませんでしたw
Ichika View
ここにある培養プラントは合計300…あ、割れてるのが二つあるから298か。
中身がないし、どこかに行ってしまったのか?
それとも大橋に来ていたのがそれなのだろうか?
だとしても数が合わない。
それでも呆れるような数だった。
ここまで数があるのなら、相応にしてエネルギーを食っているはずだが、それは三つもある動力源のうちのどれか、乃至、そのすべてから供給されているのだろう。
しかし、だ。
まだ警戒しないといけないこともあるだろう。
この部屋に入ってきた瞬間に部屋の内側から倒れてきた、顔面を耕されて息絶えていた男を殺害した誰かがこの部屋に潜んでいる可能性だ。
「この船、アメリカから来たみたいだが、アンタは何か知らないのか?」
「知るわけないだろ」
コーリング女史は情報源としては頼りにならない。
早くも情報はコレにて終わりか?
収穫できた情報としては
『奇怪なコバンザメの潜水艦』
『
『そしてそれによる成功例の実在』
と言ったところか。
「坊主、お前はこれをどうするんだ?」
「破壊するに決まってるだろ」
完成された状態での使い捨ての兵を無尽蔵に作り出す装置なんざ存在しないほうがいいに決まっている。
右手に
弓弦を引き、9本の矢を自動生成。
射撃が苦手な俺でも、コイツなら数を射れば当たる。
「オイオイ、本気かよ?
一応人間だぞ、コイツらは?」
「だからどうした?
いずれ誰かがやらなきゃならないんだ、それに現状維持して政府に介入されたらどんな使用用途に向けられるかわからない。
今やらなきゃならないのは『現場の意思の優先』だ。
現状で言えば、プラントの徹底的な破壊だ!」
いずれ誰かが行わなければならない事、その役目が俺に回ってきただけということだ。
弓弦から手を放し、矢が一直線状に放たれる。
9本の矢が次々に撃ち抜き、撃ち抜いた数だけケースが割れる音に、肉や骨を打ち砕く嫌な音が聞こえてくる。
テロリストの心情は俺にはやはり理解できない、こういう音を聞くのが快感になるような輩の思考回路など…。
「胸糞悪いな…!」
こんな感覚はとっとと終わらせる。
『逆鱗』を起動する。
展開させるのは『
スクリュー型のダブルセイバーが猛回転し、空気摩擦によって炎上する。
それを発射させる。
『焼き尽くす』『切り刻む』その二つの工程が同時に行われ、プラントの中身を一斉に火葬させる。
「おま⁉こんなところでそんなもんやらかしたら酸欠になるだろうが⁉」
つもりだったのだが
「あ、やば、それ考えてなかった」
「アホかテメェは!
…お前は部屋の外に出てろ、ガキがやる事じゃねぇからな。
こういうのは軍人の仕事だ」
ここまで片付ければ収穫としては上々だろう、プラントもほとんどが破壊できているはずだし、さっさと撤収しようか。
それから暫くして、培養室からは銃声が鳴り響き続けた。
『アホだろ、テメェは』
うっさい黒翼天、お前には言われたくないっての。
まあ、そう言われても反論なんて出来なかった。
ダストシュートの中に、胃液を流し込んでいたからな。
Tatenashi View
「…派手にやったわね」
モニターに映る損害報告、それはコバンザメのごとくくっついていたらしい、もう一隻の潜水艦内部のプラントの破壊によるものだった。
この豪快さ、いったい誰に似たのやら…
姉弟そろって豪快過ぎよ。
「さてと、それよりも、この潜水艦の出港と、寄港を指示したのが誰なのか、ハッキリさせておかないとね」
『艦長』とか呼ばれる人物に関しては情報は収集出来ていた。
実際にはただただ名前を使用されただけの『身代わり』で、現在はアメリカ本土にて営倉入りされていることが確認できていた。
と言うことは…この船には船員が居るけれど、彼らも使い捨てでしかないという事になる。
「いったい誰なのかしら、今回の黒幕は…?」
「あら、知りたいのかしら?
そんなにも
その声は耳元で聞こえた。
「ッ!」
モニターの前から横転するようにして離れる。
「…な…⁉」
一瞬、そう、ほんの一瞬の判断で命が助かった。
そう感じられた。
目の前の光景を信じられなかった。
モニターと端末、それらは確かに存在していたはずなのに、もうそこには存在していなかった。
『分解』されたわけじゃない、そして『破壊』されたのならまだ判る。
だけど、まるでこれは…『消滅』したかのように…⁉
「相変わらずいい反応ね、忌々しいほどに…‼」
「…『スコール・ミューゼル』…」
Ichika View
培養室を後にして防火扉を閉め、厳重にロックする。
これで相当なヘマが無い限り、炎上するのは培養室だけで終わる…と思う。
寧ろそうなってほしい、切実に。
「火事の跡片付けって面倒だろうな」
「火付け役になろうとしたお前が言っていいセリフじゃないだろ、それ」
言うな、辛いから。
「で、こういう潜水艦ってアメリカには何隻あるんだ?」
「覚えて無ぇよ」
本当に情報源になってくれない人だな。
潜水艦の護衛として使い捨てにでもされたっぽいな。
「イーリス・コーリング、だったか。
アンタはこれからどうするんだ?
アメリカの黒い面を見てしまった以上、国には帰れないだろ?
帰れたとしても、軍籍は抹消されているだろうし、良くて無期限営倉入り、悪けりゃ即日銃殺刑になると思うんだが?」
恨むのなら上官を恨んでくれよ、俺を恨むな。
先に喧嘩を売ってきたのはアンタなんだからな。
「…こんな場所に居るんじゃ、コアの一つを手土産にして日本に亡命するぐらいしかないだろ…。
故国の両親になんて言えばいいんだよ…」
存外にも考えをまとめるのは早かったらしい。
倉持に人材として斡旋してみようかな、肉体労働メインで、なんて考えは浮かんだが即座にその思考回路は捨てておく。
まあ、この考えはいったん捨て置くとして、上に戻るか。
顔面を耕された男の遺体を横目にしながらも俺たち二人は来た道をそのまま戻ることにした。
念には念を入れて、コーリング女史を先に歩ませ、その後方から
ズズン‼
そんな音が聞こえた気がした。
「あ?なんだ今の音は?」
頭上に暗雲漂わせていたコーリング女史にも聞こえていたらしい。
…ああ、嫌な予感がする…。
「なぁ、織斑一夏、潜水艦の中を歩いている最中にこういう音が聞こえる時って、大抵さ…」
「言うな、変なフラグを起こそうとするな」
「いやいや、映画でもあるだろ、こういう場合ってよぉ⁉」
いやさフザけんな、俺たちはまだ上方の潜水艦に戻ってないんだぞ!
あの長ったらしい螺旋階段だって上っていかないといけないのに、こういう場面で起きるとすれば…。
ドドン‼
…培養室付近の方向からも聞こえてきた。
………おい、まさか…
「…アンタのせいだぞ、妙なフラグを立てるから…」
「…私は悪くねぇだろ…」
上は大水、下は大火事、コレなんだ?
答え:『温泉』
そんななぞなぞを思い出す。
けどさ、それを態々やってのけようだなんて馬鹿が現れなくったっていいだろう?
やめてくれよ、相手するのが面倒なんだぞ。
「上はともかくとして…背後から迫ってきてるのは何なんだ?」
「アホか、一人しかいないだろ」
コーリング女史、アンタは本当に軍人か?
そんなことが頭をよぎった瞬間
ドドドン!
壁面の一角が吹き飛んだ。
そこに居たのは…ああ、もう見慣れてきたかも…。
「ミ…ツ…ケ…タ…」
目がイッた白髪の男、『ジャック』だった。
ああ、ヤバいな、特に場所的に。
奴さんが持ってるのはロケットランチャー。
一直線上のこの通路には逃げる場所も隠れる場所も無い。
「ちょっと待てよ⁉
なんでアイツが此処に居るんだよ!
織斑一夏!お前アレを全部焼き払った筈だろう⁉」
「気づいてなかったか?
プラントの一つが先に割れたものが混じってただろ。
大方、そこから出た後に武装やら衣服やらを整えていたおかげで焼き尽くされずに済んだって訳だろ」
大方俺たちが見逃してしまっていた隠し部屋でも在ったんだろうさ。
んで、コイツがあの遺体を作った張本人なのかもな。
「死ねェッ!」
砲口が俺に向けられる。
以前にも居たな、間近でそんなの取りまわしていた人が。
しかも今回は6連装式になっているという厄介さ。
わずかなタイムラグを置きながら砲弾が飛ばされてくる。
逃げ隠れ出来ないのなら…
「迎え撃つしかないだろう!」
一式六刀『景秀』を展開して射出、直撃させるのではなく、弾道を反らす。
そして発射された砲弾同志をぶつけ合わせ、中間距離で爆発処理させる。
本日二回目の出番になる『
ああいう武器は誘爆も危険だからな。
「おい、呆けている暇があるのなら手伝え」
「お、おう、任せとけ」
言ってる間に
本当に物騒だな、
弾薬が尽きて再装填する暇が来るのを待てばいいのかもしれないが、いかんせん俺にはそれを待つのは精神的に宜しくない。
それに今回は(多分だが)頼れる搭乗者が居る。
なのでその人物に丸投げすることにした。
責任転嫁ではない、『適材適所』と呼ぶものだ。
人には向き不向きがあるのだから、向いている人に任せたほうが確実だろう。
「テメェ!織斑一夏ァッ!
用があるのはテメェなんだよ!テメェが出てきやがれ!」
「代理を行かせたからその人相手にしてくれ。
乱射狂はお断りなんだよ、そもそも誰なんだよお前は」
今回で
数えるのも面倒になってきた。
「フザけんなぁっ!」
おっと、銃口の一つがコッチを向いた。
面倒だから…あ、なんか忘れてる気がする。
ズズズン‼
「…またこの揺れ…おい、お前じゃないだろうな?」
流石にIS相手には敵わなかったらしく、取り押さえられた
まあ、言うまでもない、と言わんばかりにニヤニヤとニタついていた。
「この艦はテメェを海の底に沈めるために用意した水葬棺桶だ。
せいぜい苦しんで死ね!」
また大きく揺れる。
挙句…
「あ~あ…」
戻る予定だった通路から海水が流れ込んできていた。
しかもこの揺れ、情報の潜水艦と、この下方の潜水艦が
「おい、どうする?」
「お互いにISを展開して水中を行くしかないだろ。
俺一人を殺すためだけに大きな仕掛けを作ったみたいだが、水中を突き進んでいくしかないだろ!」
「出来ると思ってんのか?」
コイツも馬鹿な奴だ、人ひとりを殺すために船員を巻き込み、自分も道連れになろうとはな。
「ああ、可能だ。
輝夜は一度は海底から上空にまで飛翔したんだ。
この程度、造作もない」
その言葉に
思い通りに殺せなかったのが腹立つらしい。
だが、そんな感情に付き合ってやる気もないし、義理も無い。
「次こそ…次こそ殺してやる…!」
憎悪の過剰をぶつけてくるが、こっちも時間が無い、視界から追い出した。
「殺しに舞い戻ってやる!何度でも…何度でもだ!」
ドン!
作戦が実行できないと理解するや否やの自爆だった。
それにしても…アイツとの対峙はまだまだ続くらしいな…。
輝夜を展開し、右腕の
壁面に向けて『インフェルノ』『スプレッドパルサー』『イグニス』を一斉掃射。
「おま、なんつー無茶を⁉」
イーリス・コーリングの片腕をつかみ、一気に出力最大で背面の翼を広げる。
そのまま水中に飛び込み真上へと向かう。
背後から一気に押し上げてくるかのような圧力を感じた。
どうやら下方の潜水艦が爆発したらしい。
結果的にではあるが目的は達した。
後は…上方に残った楯無さんの状態が気になる。
ドパァンッ‼
水面を突き破り、とうとう海面から飛び出した。
やれやれ、フリーダイビングは今後はお断りだぞ。
「やっと出られた…」
背後でコーリング女史がうめいていたがあいにく無視する。
それほどまでに目の前の状況は逼迫していた。
「なんだ、この光景は…」
上方の潜水艦はあちこちが
まるでスプーンで抉られたかのように丸い穴が開き、内部が丸見えになっていた。
そして港も同様に丸い穴があちこちに開き、港としての機能も壊滅的だ。
「はぁい、やっと戻ってきたのね、一夏君♡」
「強がりはいいですから、状況を教えてもらえませんか?」
「状況は…
上空50mに機体反応。
視線を向けると…そこには…