IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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Q.オリ斑屑兄の名前は、もう決めているのですか?
P.N.『ひゃっくしょい』さんより

A.はい、決めてますよ。
応募はしてないので悪しからず

Q.前回の千冬さんのコスチュームって…タビーですか?
P.n.『ひゃぐるま』さんより

A.そうですよ。
競技が終わって着替えようとしたら、ジャージが無くなって、その代わりにあのコスチュームが置かれていたそうです。
まったく、誰が持っていったんだか。
さて、寮監室に『朔望』のコスチュームを持っていくか


獄雷冥魔 ~ 碧平 ~

Ichika View

 

「ふ~ん、そんな襲撃があったんだ」

 

所変わっていつもの研究ラボ、最近、打鉄をもう一機借り手色々と検証を行っている。

研究成果は…まあ、ほどほどと言ったところだろう。

 

「倉持から帰ってきたところで襲撃してきた複製兵(ジャック)と、内部に侵入してきた兵は、装備もちぐはぐで連携していた様子にも見えなかった。

さらに言うのなら、内部に入ってきた連中、今回の兵とでは性能が違いすぎる」

 

内部に侵入してきた連中は、酷い言いようをすれば、ミリタリーオタクが金で武器を握らされた程度の熟練の低さ。

連携はそんなにあるほうでもないから、外部、俺を焦らせる程度だったのだろう。

楯無さん一人で最後は巻き返せたのがいい例だ。

そして今回のジャック、最後は自爆をした。

 

「今回は生徒の皆に襲撃がバレないようにって事で迅速に済ませた訳ッスね。

はい16889番のサンプルデータっす」

 

「どうも。

そういう理由で今回の単独行動をしていた兵を動かした目的は、『襲撃』ではなく『性能試験』のような気がするわけです」

 

サファイア先輩から受け取ったデータを媒体に臨床試験を演算させてみる。

う~ん…可もなく不可もなく、かな。

 

「なんの性能をッスか?

兵としては集団で集めて戦わせる、とかッスかね?」

 

「最終的にはそうなる危険性が高いです。

近接戦闘型、後方からの援護射撃型、指揮官型、とかでクローンソルジャーが開発されたら各国が倫理観を捨ててでもお得意先になるでしょうからね。

前回は性能試験の前段階、今回は…単独行動の果ての自爆が可能かどうか、と言ったところでしょうね」

 

「怖い話だね」

 

今更になって思ったんだが、なんでサファイア先輩がこのラボに来ているのだろう。

そして…なんでコスプレしたままなのやら。

 

しかもそのコスプレは何なのだろうか。

頭の上には…多分、タヌキの耳。

緋袴の巫女服を着ており、両腰には刀が携えられ、臀部からはタヌキのようなフックラとした尻尾。

この学園の中でコスプレが流行らないのを切実に祈っておくとしよう。

 

「つまり今回の襲撃は、『成果』ではなく、『突撃そのもの』が目的だった、と」

 

「そういう事、ついでに言うのなら、捕縛された場合、自爆が迅速に出来るかどうかの試験でもあったんだろ」

 

最悪の臨床試験があったもんだ。

倒したところで自爆の『散らば諸共』。

捕縛したところで、『駐屯地を道連れ』。

その癖、数だけは確保出来るだろうからと、『数が減ったら補充するだけ』の大量生産品扱い。

そして命令には忠実になるだろうから、一度でもそれを購入すれば需要は確実。

戦場はクローンソルジャーが支配していくものになるのは確実だ。

とはいえ、一つの問題がある。

 

「補充可能な数といえども、一度に運搬できる数にも限りが在るはずだ。

今回はそれを辿りたいところだが…難しいだろうなぁ・・・」

 

そう、兵の運搬が問題だ。

生きているのだから、どのみち食糧問題も出てくる。

普通の軍隊なら、負傷者は生かしておくのがセオリーだが、自爆上等な連中にその常識は当てはまらない。

だが、突撃させるよりも前は確実に生かし続けておかなくてはならないし、そうなると、物資と一緒に保管、運搬可能な何かが必要になる。

前回は兵を上空から降ろしたようだが、アレはアレで効率が悪い。

上空で撃墜される可能性もある。

だが、こと学園に至っては海上の人工浮遊島だ、360°を海に囲まれているのなら…。

 

「船、それも大型でありながら潜伏も可能だとすればその候補は一気に減るわよね♡」

 

ラボに楯無さんまで来たか。

大袈裟に溜息をついて見せる。

広げられた扇子には

 

『その熱意はほかの方向に向けなさい』

 

…俺に言ってるわけじゃないよな?

 

「一夏くん、ちょっと着いてきてくれる?」

 

いやな予感が拭えない。

ってー訳で、簪とサファイア先輩に断りを入れてから俺はラボを後にした。

移動した先は、なぜか駐輪場。

 

「ふふ~ん、なんだか久しぶりに見た気がするわね、一夏君のバイク」

 

「昨日もコレで学園に戻ってきたわけなんですけど」

 

「相乗りさせてもらうわよ、運転手君♡」

 

…サイドカー付きのバイクは選ばなかったようだが、何を企てているのやら。

 

「なんでそっちのバイクなんですか?」

 

心の中身がそのまま口から飛び出した。

束さんからもらったバイクといえば大型のそれだが、相乗りするというのなら、運転手の…早く言えば俺の背にくっつくような形なんだ。

簪やマドカが相乗りするというのであれば、別に抵抗はなくなっているのだが、それ以外ともなれば話は別になってくるだろう。

しかもこの人は、他人をからかい倒すのに情熱を傾ける傾向が非常に強い。

 

「あら♡お姉さんを意識しちゃうの? ここは嬉しく思っていいのかしら?♡」

 

「……簪が聞いてたらどうなるやら」

 

一方通行のタイムスリップは確実だろうな。

この会話も録音しておくべきだったかもしれない。

 

「そうだ、楯無さん、面白い写真が在るんですが」

 

「写真?」

 

ポケットから携帯端末を取り出し、半裸で半分氷結状態の楯無さんinバスルーム。

sideに大天使を模した氷像と雪像のアレだった。

 

「…!?」

 

「この写真、どうしましょうか?

あんまり人をからかおうとするから、この状態になったんじゃありませんか?」

 

「そ、それは…」

 

「いやぁ,あの日は風呂掃除に苦労させられたなぁ、どこかの誰かさんのせいで」

 

誰なのか(・・・・)までは口にしてないからな。

そもそも氷結させられたのは根本的には誰のせいだったのやら。

自業自得だろう。

 

「ごめん、からかうのはこの辺りで終わらせるわ。

本題は目的地に着いてから話すから、まじめにさせて。

それと、都合もあるからこっちのバイクのほうが目立たずに済むのよ。

だから、まじめに言うから、相乗りさせてお願いだから!」

 

…どうやら本当にそれ相応の都合があるらしい。

仕方ないなぁ。

 

「じゃあ、ヘルメットはちゃんと被ってくださいね」

 

「うんうん、物分かりのいい子は嫌いじゃないわ…ゴメン、謝るからその写真を削除してお願いだから!」

 

こういう精神攻撃は俺はあまり好きじゃないんだがなぁ…。

サドルにまたがり、俺もヘルメットを被る。

エンジンに火を叩き込み、アクセルを蒸かせる。

 

「じゃあ、出発進行♪」

 

後ろからまるで締め付けるかのように腕が回されるが、背中の感触は無視してウィリー状態になりつつも正面玄関の柵を飛び越えて大橋を渡ることにした。

危険運転?危険人物を排除してから言ってくれ。

 

 

 

 

安心できることにも、今回は本土側に渡ってからは襲撃だの待ち伏せだのは無かった。

そのまま本土を回ってからしばらく走らせる。

 

「で、どこまで走らせたら気が済むんですか?」

 

「もうしばらく先よ。

そこにバイクを隠せるような場所もあるの」

 

「…?」

 

さらにそのまま走らせること15分。

道なき道まで走らせ続け、到着したのは封鎖された展望台だった。

ボロボロになった柵と、寂れたベンチとかつては雨除けにも使われたであろう屋根が辛うじて残っている。

でも、それだけだ。

何もない、誰も居ない。

おいおい、こんなところまで何の用だよ。

 

「ここに何の用があるんですか?」

 

此処(・・)じゃないわ」

 

ヘルメットを脱ぎ、バイクのシート下に戻す。

ここじゃなければ何処だのだと問い詰めたい気分になりながらも展望台の端へと歩を進める楯無さんの後をゆっくりと歩む。

眼下に見えるのは、切り立った断崖と、昏い海といったところだ。

 

「…無理心中はゴメン被りますよ?」

 

「マジメにしなさい一夏君」

 

そういうつもりでもなさそうで少し安心した。

さて、本題は何なのだろうかね、と。

 

「一夏君、貴方は水泳は得意かしら?」

 

「三年のブランクがありますが、一応人並みには」

 

「迷惑な話かもしれないけど、人並み以上に泳いでもらわないといけないのよ」

 

…そういう事、事前に言うのが普通じゃないのだろうか。

俺としては先に言ってほしいんですけど。

 

「…詳しい話を聞かせてもらえませんか?」

 

本題に入る前の与太話はここまでにしてほしい。

人の気を知ってか知らずしてか、楯無さんは蠱惑的に微笑む。

そして指差された先には…小規模な港と…潜水艦?

 

「あれ、どこの国の潜水艦だと思う?」

 

「何処って…」

 

双眼鏡を使って見てみる。

どこかの国の旗が掲げられているわけでもない、エンブレムが入っているわけでもない。

型式なんかを調べればわかるだろうが、あいにくと俺はそんな知識を持っているわけでもない。

そう、判らない。

 

「で、正解のほどはどうなんでしょうか?

それとも入港記録を調査しますか?」

 

「すぐに人を頼らないの。

さて、正解なんだけど…『判らない』のよ」

 

与太話が続くのなら帰ろうかな…。

大きくため息を溢しつつも訝しげな視線を向ける。

隣に立つその人に。

 

「ちょっと!そんな視線を向けるだなんて心外よ!?」

 

「お疲れ様です、帰り道は気を付けて」

 

「オマケに置き去りにするつもり!?

コラァッ!まだ話は終わってないのよ!人の話は最後まで聞きなさい!」

 

ええぇ、まだ続くのかよ。

俺、こう見えて結構忙しい身なんですよ。

 

「話を戻すわ」

 

「腕も戻してください」

 

だが断られた。

霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)の腕で方をガッシリと掴まれてから話を聞く羽目になった。

 

「あの潜水艦だけど、入港記録も無いし、国籍も不明なのよ。

それどころか、ちょっと前まで視認も出来なかったとされているわ」

 

入国管理局手筈も完全に無視した挙句に俺等に押し付けてきたのか。

まあ、それは置いておこう。

入港記録も無いということは、『レーダーで検知できなかった』という事実も一緒についてくる。

そして視認も不可能だった。

このことに関しては俺としては一つ、心当たりがある。

 

学園から離れ、倉持に出向いていた時にも、同じ現象に相見えた。

あの時にもいくつもの戦艦だとか武装ヘリだとかが襲ってきたわけだが、直前になるまで察知も出来なかったという事実がある。

京都府のことに関して情報をリークしてきた『アイツ』もそれと同じ勢力…というわけではなさそうだったが。

 

さて、レーダーに検知も出来ず、視認も出来ない光学迷彩とでも言えばいいか、そんなSF染みたものが出回っていては非常に危険だ。

IS以上に隠密性が高く、誰も感知も出来ないし、それでテロなんぞされようものなら、どこの誰がやらかしたのかがわからない。

それも潜水艦だの、戦艦まで使えるようになっていたら、軍事力を隠ぺいした状態で併用まで出来るようになる事だ。

兵器の残骸だのが戦場後に残されたとしても、それが証拠としても扱えず、進行した事実すら隠ぺいが出来る。

さらに極端なことを言ってしまえば、都市を壊滅できるような大量破壊殺戮兵器を、誰にも見られることもなく検知されることもなく、気づかれることも出来ず、都市の中央でも使えるようになる。

潜水艦とに戦艦、更にはヘリまで合わせるとなると、相手に感知されぬまま超遠距離からでも沿岸都市の壊滅、港に寄せられているであろう基地も一方的に殲滅したい放題だ。

それほどまでに光学迷彩技術は危険な代物だ。

それが今ではあんなブツに実装されているというのだから世も末だ。

SF映画は見たこともあり、光学迷彩も登場して「カッコいい」とか言ってるのは現実を見れていないのではなかろうか。

あ、あの潜水艦は国籍も所属も不明だったな。

 

「で、あそこまでどうやって向かうと?

さすがに俺のバイクは陸上限定で、水上走行だとか空中遊泳までは出来ませんよ?」

 

「そんなものが できるバイクだったとしてももう驚かないつもりだけど、どっちもハズレよ。

先に訊いたでしょ?『泳げるか』って」

 

この展望台から向かい側手の潜水艦が停泊しているであろう港までは軽く10Km以上はあるんですけど?

 

「ISスーツは下に着てるわよね」

 

「ええ、何かあっては遅いので、念のため」

 

あの仮装から元の制服姿に着替えるついでに一緒に着ておいたが…。

オイ、まさかとは思うのだが…。

 

「さあ、泳ぐわよ」

 

そう言って楯無さんは制服姿のまま飛び込んだ。

かと思えば飛び込むさなかに制服だけが燐光に包まれた。

あ、拡張領域に仕舞ったのか。

仕方ないな、俺も行くか。

制服をシート下に詰め込み、ISスーツに刀とナイフを引っ提げて断崖から飛び降りた。

 

「うわ、冷てぇ…」

 

改めて見てみる。

 

めちゃくちゃ遠いなぁ…。

それに…準備運動位させてくれてもよかったんじゃないか?


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