IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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不定期更新はまだまだ続く。
いつまで続くかは判らない。

Q.《痛みの森》を突破する際難しすぎます。
装備だけでも教えてもらえません?
P.N.『クルフフ』さんより


A.小説に関係無い質問エ
まあ、いいか
双剣 虚空ノ双牙
大剣 シラード
大鎌 万死ヲ刻ム影
双銃 DG-0
鎧  我が分身
装飾品 影法師


ミッションで『覚醒n回』があればテンションゲージを半分充填状態で『武獣覚醒』『魔導覚醒』。

『HIT数をn回』であれば、双銃で遠距離から撃ちまくれば容易にクリア出来ます。

『戦闘不能回数n回以下』は、魔法ダメージ50%カット、物理ダメージ50%カット、を装備品につけとけば、事前対策にもなり、回復も充分に間に合いますので。

物理攻撃無効化の特性を備えている相手には、各属性魔法攻撃も能力を持った召喚符を使えば動きを止められますから、余裕で対処も可能です。


獄雷冥魔 ~ 代拭 ~

Dan View

 

「お世話になりました、山田先生」

 

「お大事に」

 

顏の上半分が足跡に、下半分が真っ赤に染まってしまってた俺だが、ようやく現場復帰だった。

なんかグラウンドが騒がしかったけど、スルーしてた。

手当てをしてくれてたテントの隅で虚さんが体育座りして精神的に引きこもってるし、そっちの方が重要だ。

 

「虚さん、大丈夫ですか?」

 

ひとまず訊いてみたけど

 

「私はあんな粗暴な性格じゃない、私はあんな粗暴な性格じゃない、私はあんな粗暴な性格じゃない」

 

以下エンドレス。

でもさ、プールじゃビキニ姿を見せてくれてたんだし、こういう服装の虚さんも新鮮だよなぁ。

たしか…『サリー』とかいうファッションだったっけか。

女性のファッションはまだ理解が浅いなぁ、俺。

でも『似合ってましたよ』とか言ったら逆効果になりそうだな。

 

「どうするべきかな…」

 

そっとしておこう。

救護のテントから出てブルマ女子だらけで目の毒になりそうなグラウンドに目を向けてみると…。

 

「え、なにこの視線」

 

幾つもの視線が俺を貫いてくる。

 

「ねぇ、織斑君の代わりに…」

 

「うん、折角の男子だし…」

 

「太鼓のバチを握ってもらうだけなら、いっそのこと…」

 

なんだろうか?

不穏な雰囲気に、ヤヴァイ囁き声が聞こえてくる気がした。

視線もヤヴァイだろ。

メールで顔文字にすると

 

〈●〉〈●〉

 

↑な感じだ。

無機質な視線向けないでくれよ!?

なんか今すぐ逃げたい!

 

「諦めろ五反田」

 

「そりゃ無いっしょ千冬さん…」

 

なんでこのウサ耳ル、何も言ってないのに何もかも悟ってんの!?

俺はまだ状況すら理解できて無いっすよ!?

「何ですとー!?」とか叫びたいのは俺だよ!?

 

「諦めて道連れに、そして巻き添えになれ」

 

「アンタそれが本音だろ!?」

 

ツッコミを入れた俺は悪くねぇっ!

誰か状況を説明してくれぇーっ!

っつーか、一夏の野郎は何処に行ったんだ!?

こ、此処は俺の心の癒し、こと、数少ない良心、こと、麗しの恋人(虚さん)に状況説明を!

 

「私はあんな粗暴な性格じゃない、私はあんな粗暴な性格じゃない、私は…」

 

まだ引きこもってました。

 

「はい、これ」

 

逃げ出したくなった俺に、鈴がなんかメモみたいなものを突きつけてきた。

 

「ぶはっ!?

お前なんつー格好してるんだよ!?

魔法少女か!?

しかもネコミミの!?

ギャHaHaHaHaHaHaHaHaHaHaげぶはぁッ」

 

笑い声に返されたのは、容赦の無い、腹パンだった。

意識を失いそうになったけど、その瞬間、妙な声が聞こえてきた。

 

「いやぁ、それにしても…年甲斐にもなく恥ずかしい格好してますねぇ」

 

「させてるのはアンタでしょうがああぁぁぁぁっっ!!」

 

片方は鈴の声だけど、もう片方は誰だったんだか。

ガスガスと硬質なものを叩きつけるような音が聞こえてきたのは…多分気のせいじゃないだろ。

一応写メールで鈴のコスプレ姿を数馬に送信しといた。

 

 

 

「だから、何このメモ?」

 

「今やってる競技のルールよ。

3秒で頭に叩き込みなさい」

 

「ンな無茶な!?」

 

心の叫びをあげたい俺の肩を鷲掴みにしたのは、メールの送り主の黛さんだった。

何この人怖い。

 

「織斑君が退場しちゃって、その代わりに走ってくれる人が必用になったのよ。

流石は高いポイント競技よねぇ」

 

「俺は一夏の代替品じゃないっスよ!?」

 

あいつ何処に行って何をしてんだよ!?

 

 

 

 

んで、結局走るハメになった。

 

「なんでこんな事になるんだよ…」

 

念のために藍越学園の制服着てきて良かったぜ。

私服はそんなにセンスなんて無いからな。

鈴はあの猫耳魔法少女の格好したまま観客席に戻ってる、とっとと着替えりゃ良いのに。

 

「えっと…78番?」

 

籤を引いたタイミングでジャッと音がして天幕が一つ開いた。

出てきたのは、銀髪のちっこい女の子。

あ、プールで俺を蹴っ飛ばした奴じゃねぇの!?

もれなくコスプレしてたけど。

 

頭の上には大きなリボン、トップスは…何だろうか。

ドレスと甲冑が一緒になったかのような優美な姿だった。

両腕はガントレット、指先まで覆われている。

ボトムは、鎧のアクセントが施されたスカート。

上下、リボンも揃ってカラーはライトパープル。

 

ゴツいブーツを履き、手には…何だありゃ?剣か?

数メートルの金色の剣らしきものが握られている。

 

鏖殺公(サンダルフォン)最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)!」

 

それがその子の台詞だった。

以後、一歩も動けてなかったけど。

手に持ってるものが大きすぎて重すぎるんだろ。

何あのでっかい剣?みたいなの?

重すぎるからか、その場に放置して俺も走る。

んで、簪ちゃんの代走をしてたのは…

 

「見ない方が良かったな」

 

凄ぇ揺れてます、救護担当の先生。

挙げ句、後ろで転んだらしく「眼鏡、眼鏡何処ですか~?」を四つん這いでやってるし。

そそっかしいなぁ、山田先生は。

さぁて、さっさと天幕に入って着替えますか。

 

「78番ってーと、此処だな」

 

ロッカーから段ボール箱を取り出すと…なかなかの重量だ。

担いで走るくらいは出来そうだな。

 

「本当になんでこんな事になったんだか」

 

天幕に入る直前、そんな鬱憤を溜め息と一緒に吐き出した。

逃げ出した一夏をぶん殴るべきかもしれないけど、とてもじゃないが勝てる気もしない。

一夏って喧嘩はしないほうだけど、腕っぷしは俺達よりもはるかに上だからな…。

 

「えっと…なんだ?この衣装は?」

 

 

 

Meik View

 

ラウラさんが巨大な剣?らしきものを放り捨ててから1分ほど経過した頃、その隣の天幕が開きました。

えっと…お兄さんの友人の弾さんでしたっけ?

トップスには、革製のライダージャケット、袖口にはヒョウ柄のファーのようなものが覗いてます。

ボトムは、レンガ色のゆったりとしたズボンに白色の頑丈そうなブーツ。

手には黄土色の大きな剣が、握られてました。

で、セリフが

 

「聖なる探索の始まりだぁっ!」

 

『また査問会に呼ばれますよぉっ!』

 

…なんだか扱いが不憫な気がします。

本人は蹲って地面をバンバン叩いてますし。

 

「俺はナンパな男じゃない、俺はナンパな男じゃない俺はナンパな男じゃないぃぃぃっっっ!!」

 

虚先輩と似たようなことに…この学園って本当に怖い場所に思えてきました…。

 

十数秒地面をたたき続けてからようやく走り始め、障害物競走らしくはなってきたんですけど、態々コスプレってする意味あったんでしょうか…?

 

「なんか、(アイツ)…不憫よね…」

 

「ですよね…」

 

お兄さんが急に簪さんを担いでグラウンドを脱走し、有無を言わさずに代走者に仕立て上げられ、無理にコスプレさせられた挙句にトラウマを刻み込まれて…。

この競技だけで犠牲者(・・・)を何人作り出すのやら…。

 

 

 

 

Ichika View

 

気づけば雪に覆われた摩天楼。

この場所は黒翼天が言うには俺自身の領域らしいが、なんでこんなところにまた来てるんだろうか?

 

周囲を見渡してみる。

…相変わらずの寒々しい景色、なのに気温はまるで感じ取れない。

足元の雪にも触れてみるが、やはり『冷たい』という感触も得られない。

足元の感覚だって前回に続いて妙だ、『雪を踏んでいる』のではなく、『浮いている』といった不安定な感触だ。

俺の領域ってのは輝夜や黒翼天の猟奇よりも不安定でイリーガルだよな…。

 

「で、俺をここに放り込んだのは何の用事があってのことなんだ?」

 

「さぁな」

 

背後には俺と同じ姿をした太々しいやつ。

修行させてやるとか、今回はそんな風には見えない。

競技を途中で脱走できたような感じはするからその点については感謝するけどさ、記憶が途中から完全に途切れてるから、その点については感謝したくないね。

 

「お前、以前から俺の体を使って好き勝手やってるみたいだけど、今回は何をしたんだよ?」

 

「知るかよ」

 

会話にならねぇ…。

え?それとも本当にコイツがしでかしたことじゃないってのか?

いや、何したのか知らないし、何かしたのかも知らないし。

 

そうこう考えてる間に領域が目の前から消失する。

 

気づけば寮の自分の部屋だった。

右腕、動く。

左腕、動く。

両足、動く。

よし、五体満足。

身体機能にはさして異常もなし。

 

「…あ、起きたんだ?」

 

「お、おう…」

 

いや、本当に何があった?

時間を確認すると、あれからまだ数分しか経過してないようだ。

簪はというと、学生服に着替えている。

…体育祭は終了した、ということなのだろうか?

いやいや、数分しか経過してないのだから終わったということは有り得ない。

途中退場したようなものだから、その直後ということだろう。

何故、簪が妙な雰囲気をまとわせているのかは知らないし、知りたくもない。

 

「えっと…状況の整理が出来ないんだが、教えてもらっていいか?」

 

「私も…よく理解できてなくて…」

 

これは、どっちかというと知らないほうが身のため、精神の為になりそうだ。

周囲にも聞かないでおこう。

教えられそうになったらとにもかくにも口をふさぐ方法を用意しておくということで。

じゃあ早速だが。

 

「さてと、調理実習室に赴くかな」

 

「え?調理実習室に何しに行くの?」

 

「疲れて帰ってきた選手一同にの為にいろいろと用意しておかないとな」

 

早い話が、腹を満たして口を塞ぐというものだ。

というか俺にはそれしか出来ない。

 

「メニューは何にするかな。

そうだ、購買でいろいろと購入しておいて…。

簪、何してるんだ?」

 

俺の机の引き出しをがさがさと物色し、…あ、俺の予備のスケジュール帳。

 

「一夏」

 

「…ん?どした?」

 

「このスケジュール、本当に消化するつもりだったの?」

 

なんか会話のペースを簪に握られてるなぁ。

 

「ああ、そうだけど…」

 

バラバラと簪がスケジュール帳をめくりながら斜め読みしてる。

なんだろうか、懐柔とかする気も無いんだが…できそうにも無い。

 

「没収します」

 

「…お、おう…」

 

逆らっちゃいけない気がするから生返事を返すだけ返す。

下手に逆らおうものなら楯無さん以上のレベルで、一方通行のタイムスリップさせられそうだし。

かくして、俺の予備のスケジュール帳も俺の手元から失われる結果になった。

 

しかし…腑に落ちないな。

予備のスケジュール帳の場所は簪には教えてなかったと思うんだが、誰かが告げ口でもしたか?

メルク、だろうか?いや、そんな余裕は無さそうだったし、違うだろうな

 

「はあ、仕方ない、か」

 

半ばあきらめながら俺は脱衣場に入り、コスプレ姿から制服姿へと着衣を改めることにした。

部屋を出るころには

 

右腕に簪がガッシリと抱き着いてきていた。

先程までとは様子が違っていらっしゃるよこのお嬢様。

 

「えっと…どうしたんだ?」

 

「二人きりでいられるのってなんだか久しぶりな気がするから」

 

「…?昨日まで休学してたのに、か?」

 

「昨日と今日だけでも慌ただしかったからかな、二人でいられる時間がとても貴重に思えるの」

 

そりゃ確かに。

昨日は学園に到着した直後に手合わせを願われてから一蹴。

その直後からは…徹夜してまで学園全生徒分、および教職員分の弁当を作るはめになり…。

あ、これからその二の舞か。

自分で言っときながら今日も徹夜に突入しようとしてるだなんて、働き者だな、俺は…。

 

「同感だ」

 

毎日が慌ただしいからかな、二人でいられる時間は俺にとっても貴重だ。

これから調理に入らないといけないけど、その時間を楽しもう。

やっぱり選手一同の為の食事じゃなくて、俺と簪の二人でいただく夕飯の用意ってことにしておこうかな。

夕飯には時間が早すぎるから、その準備や下ごしらえからって事で。

 

「さてと、メニューは何にしようかな」

 

「その前に、行ってておきたい所があるけど、いいかな?」

 

行きたい場所?

…まあ、今日はやってる事が事だからな、『生徒会』名義で強行取り調べをしたところで構うまい。

 

「よし、生徒会名義での強制執行と押収の書類もできた。

行こう、一夏」

 

カップ麺も真っ青な勢いで書類を作り上げる簪だった。

え?まだ30秒も経過してないよ?

にも拘わらずその手には書類がホログラムで出来上がっている、ペーパーレスって便利だよな。

書類らしきものはPCに入ったままの状態でもいつでもどこでも取り出せるのだから。

きっと俺がのんきに寝ている間に書類も作っておいたんだろう、そう思うことにした。

 

部屋を出てからロックもして、行きついた先は、新聞部部室。

どういうわけか今回の体育祭の運営委員の本部にここが選ばれているのだとか。

まあ、俺も思うところが無いわけではないので、ささっとドアを開いて中に入ることにした。

 

ガチャガチャ

 

おっと、用心深く施錠してるよ。

マスターキー取りに行くのも面倒だし、まあいいか

 

一般の居室のカギは、電子ロックではなく、シンプルなまでの鉤爪型の閂だ

ツマミだとかそんな感じのものになってるし、鍵がなければ外から開くことができないんだよなぁ。

マスターキーを借りに行くのも面倒、ピッキングとか俺には向いてないし、仕方ない。

 

キン!と甲高い金属音が一度だけ。

それだけであら不思議、施錠されていたドアが開くようになりました。

どうやら老朽化していたらしいな。

 

「学園って本当にセキュリティが杜撰だよな」

 

「一夏も結構豪快になったよね…」

 

「何のことやら」

 

そう言いながら俺は刀を鞘に戻す。

 

なお、部屋の中身はレッドカードクラスだった。

さあて、押収押収っと。

 

「んじゃ、生徒会執行部、推して参る…なんてな」


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