IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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獄雷冥魔 ~ 恥走 ~

Tatenashi View

 

相変わらず目隠しをされている一夏君を横目にそろそろスタートラインに立つことにした。

それにしても箒ちゃんのあの衣装は酷すぎる。

トップスはともかくとしての両手は枷で拘束されてるし、枷から尻尾よろしく野太い鎖に巨大な鉄球。

…流石にハンデになりすぎて、障害物エリアは越えられないだろうから、その点は見逃されてた。

 

障害物は敷かれた網に、跳び箱に平均台。

さらにケンケンパと続き、竹馬と多種多様。

 

 

にしても…この競技は失敗だったかもしれないわ。

衣装もそうだけど、それで障害物とかこなしていたら間違いなく下着が見える。

箒ちゃんは文字通り両手がマトモ使えないし鈍足になるし、衣装によっても羞恥心が酷過ぎる。

 

「…ああ、次は私の番だったわね」

 

こうなったら私も覚悟を決めよう。

女は愛嬌じゃなくって時には度胸も必要よ!

そうでなかったら一夏くんとの白兵戦闘訓練の最中に叩っ斬られるわね。

 

「クロエちゃん、この衣装って誰が考案したんだっけ?」

 

「体育委員と、被覆同好会に演劇部にシャルロットさんとラウラさんです」

 

…考える人があまりにも傾き過ぎてるわね。

 

「今回私もラウラの写真を撮り溜めするつもりですので、少しだけ手を出させていただきました」

 

……ヤヴァい。

ハズレ衣装が絶対に増えすぎてる。

私も一つだけ潜り込ませたけど、絶対にハズレが増えてるわ。

もし、そんなの引き当ててしまった日には…

 

「よし、此処は…」

 

「棄権は認められないと生徒会長印が書類に捺されてましたよね?」

 

自分の首を自分で締めてしまってた。

人を呪わば穴二つ、ね。

 

「あ、虚先輩が真っ先に帰ってきましたよ」

 

「うぐ…」

 

ハズレ衣装を引き当てる確率があまりにも高くなりすぎてる。

逃げたい、けど逃げられない…!

 

「お嬢様!」

 

バ、バトンタッチは受けるわよ!

受ければ良いんでしょ!?だからそんなに睨まないで!?

って左手で持ってるのはバトンじゃなくて槍ぃっ!!

 

「っちょ!?危ないってばぁっ!?」

 

 

 

Kanzashi View

 

バトンタッチが即席コントのように繰り広げられているのは何故なんだろう。

千冬(義姉)さんからクロエに、虚さんからお姉ちゃんに、箒から本音にバトンが渡され第二幕が始まった。

 

「ふぅ…ふぅ…ふぅ…」

 

「えっと…お疲れさま、千冬(義姉)さん…」

 

雰囲気がかなり怖かった。

マドカも久々に青ざめている。

 

こんなもの(ウサミミ)など…二度とつけるかぁぁぁっっっ!!!」

 

バシイィィンッ!

 

頭から外して地面に叩きつけ。

 

ドガッドガッドガッドガッ!!!!

 

足で踏みつぶして最後に

 

ドガァァァァァァンッッ!!!!

 

背中に背負った大剣を叩きつけた。

土埃と共に出来上がるクレーター。

布地と繊維がパラパラと散って跡形もなくなった…けど、大剣もウサミミを模してるから迫力は半減してそうだった。

 

 

 

虚さんはといえば…

 

「私はあんな粗暴な性格じゃない、私はあんな粗暴な性格じゃない…!」

 

体育座りをして精神的に引き籠ってた。

虚さんがこんな風に引き籠るのは初めて見た。

『奇跡は得意技』と言っていたのは伊達じゃないようだった。

 

だって弾君を放置した状態だもん…。

 

 

箒はといえば

 

「鍵イイィィィィィッ!!!!

鍵は何処だあああぁぁぁぁぁっっっ!!??」

 

こっちもこっちで酷かった。

錠あれば鍵あり、の筈だろうけど、体育委員会、用意してなかったりして…。

有り得そうで嫌だな…。

 

競技の一つでトラウマを作るなんて、この学園が久々に怖く感じた。

 

「んで、俺の目隠しはまだ続くのな」

 

「仕方ないでしょ」

 

「へいへい、んじゃこのまま瞑想でもしてるよ」

 

「寝ないようにね」

 

「出番近いんだから寝ないって。

…出来れば寝過ごしたいけどさ。

あんな悲鳴聞こえただけで逃げる気満々になるって異常だろう?」

 

うん、私も同感。

今更になって私も棄権したくなってきた。

デモンストレーションでこれって…

 

そんな感じでいながら視線を向けると、クロエが真っ先に籤引きのところにまで到達していた。

 

 

 

Tatenashi View

 

クロエちゃんにわずかに遅れて籤引きマシーンに到達。

ここに立つとことさらに心臓が煩くなってくるのを感じた。

自業自得だっていうのは理解しているわよ?

でもね、引くに引けない状況ってこんなにも早くに来なくていいでしょ!?

 

「では、私はコレで」

 

「クロエちゃん?

番号は見えてるの?」

 

思えばこの娘、ずっと目を閉じてる印象があるんだけど?

 

「はい、見えてますよ?

私の肉体に同期している生体型ISはそういう機能も搭載されていますから」

 

悪いことを聞いちゃったわね。

さてと、クロエちゃんが走り始めたのを確認して私も設備に手を突っ込んだ。

…ハズレ衣装が出ないことを祈りたいわね。

でも番号だけじゃ判らないし、体育委員会に所属している生徒が番号をかなり調整しているでしょうから…。

 

「よし、コレ!」

 

籤を開いてみると番号は…。

 

「46番…」

 

まだよ、まだ希望は在る筈!

 

「私はこの番号だったよ~♪」

 

「んん?本音ちゃんは…23番?」

 

…う~ん、マトモな衣装が出ればいいんだけども…。

 

私が走り始めたころにはクロエちゃんがロッカーから箱を取り出していた。

 

「あらあら?随分軽いですね?

殆ど何も入ってないような…?

センサーで中を先に確認するのは…無粋ですね、ではお先に」

 

「え、ええ…」

 

再びクロエちゃんを見送ってから私は籤に入っていた鍵でロッカーを開く。

 

「うん…?」

 

そこそこ重い。

けど、持ち上げられないくらいじゃないわね。

さっそく抱えて走り出す。

あ、そういえば野外更衣室に入ったら足元から照らされるんじゃなかったかしら?

改めて考えてみると恥ずかしいわね…。

 

「って黛ちゃん!?今からカメラを構えるの辞めて!?」

 

「何言ってるの!シャッターチャンスは見逃さないのは私の主義よ!」

 

「時と場合を考えて!?」

 

「同じ穴の狢に言われても恥ずかしくもなんともないわ!」

 

グサァッ!

 

胸の内にダメージを与えるだなんてどんなマスゴミ魂よ!?

 

「さあさあ早く着替えちゃいなさい!

写真で得た利益の一部は回してあげるから!」

 

「この弩変態!薄情者ォッ!」

 

なんか最近の私、やり込められてるのが多くない?

ペースを失い気味だわ…。

 

「お嬢様、お先ぃ~」

 

「んなあぁっ!?」

 

コントしている間に鈍足な本音ちゃんに追い抜かれちゃった!?

は、はやく()かないと!

なんか変なルビがふられたのは…きっと気のせいね。

 

焦りを振り払って最下位の状態で更衣室に入った。

 

「ライトアップ!」

 

「嫌アアアァァァァァァァァッッッ!!!!」

 

 

Madoka View

 

慌てて兄さんの目だけでなく耳も塞いだ。

なにせ天幕から見える影の様子が酷過ぎた。

 

最初に入って見せたのはクロエだったけど、あの娘…あの動作から察すると…下着まで(・・・・)脱いでる。

待機場所が天幕の近くじゃないのに、絹擦れの音まで聞こえてくる気がした。

 

ジャッ!

 

天幕から出て来たクロエは…裸一貫ではなく、身に着けてるのはエプロンだけだった。

それもフリル付きの実用性よりも外見重視のかわいらしいエプロンだけ。

つまり…裸エプロン。

 

「ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?ですか?」

 

虚さんの近くで気絶して倒れている筈の弾が酷く痙攣した。

キモいから顔面を踏み潰す。

虚さん?精神的にまだ引き籠ってるよ。

難儀な人だな。

 

「マドカ、あれどう思う?」

 

「どうもこうもハズレ衣装でしょ?」

 

「やっぱりアンタもそう思うわよね」

 

鈴も目が点の状態だった。

うん、そうなるよね。

ラウラは…あ、顔を蒼褪めさせてる。

クロエの視線が向いてる方向がラウラだったからだけど。

大慌てで山田先生がすっ飛んできてウインドブレーカーを羽織らせたけど、丈が短い。

前は大丈夫そうだけどお尻が丸見えで殊更に扇情的だった。

 

 

 

Lingyin View

 

ジャッ!

 

次に出て来たのは楯無さんだったけど…、あれ?

また獣耳?

 

「あざとい」といわれても納得できそうだった。

 

二の腕も背中も腰までが剥き出しになった着物に、肘から手首までの振袖。

マイクロミニの着物を腰の帯でくくっているけれど、その帯の両端が太腿半ばまでヒラヒラと舞っている。

胸は上半分が覗き、短い髪をおさげにし、狐を模した大きなカチューシャ。

ボトムは箒よりもマトモだろうけど脛半ばまで、フォールドのように前と後ろをヒラヒラとした布が伸びているけれど、側面から太腿が見えている。

しかも臀部からは付属させていたそれよりも大きな狐の尻尾が生えている。

膝を少し越した長さのハイニーソに高下駄

楯無さんのそれは本当に人を化かす狐のようだった。

んで、決め台詞はといえば

 

「雨天決行!

花も嵐も踏み越えて!

ご主人様への愛一直線!

自他ともに認めるサーヴァン○!

キャ○ター!ここに罷り越しましたぁっ!」

 

…なんとなく、『狐のくせに猫の皮をかぶった着膨れ状態』とか思った。

 

「シャッターチャァンスッ!」

 

「やめて薫子ちゃん!」

 

ああ、はいはい、もうコントはいいから。

 

 

 

Tatenashi View

 

なんなのよこの衣装は!?

しかもこんなカチューシャ!なんで狐耳!?

しかもボトム側がスースーし過ぎてるんだけど!?

 

「けど、これはこれで機能的よね…」

 

脚線はそれなりに自信があるから、側面からこんな風に見えるのなら…制服も改造してみようかしら?

一夏君の反応も伺ってみたい見たいっていうのもあるし、今のように目隠しされていない状態で会いに行ってみましょうかしら?

決~めた、この体育祭が終わったら制服の改造ね♡

 

「クロエちゃん、せめて後ろを隠しなさい」

 

「やっぱりそうですか?」

 

「あたりまえでしょう、お尻が丸見えになってるわよ」

 

「束様に見られてることも時折ありますから、あまり恥ずかしいとは思いませんが」

 

二人きりで居た頃が長かったのかしら?

篠ノ之博士はクロエちゃんを溺愛しているみたいだったし、お風呂にも一緒に入ってそうね。

だからあんまり羞恥心ってものが概念的にも沸かなかったのかしら?

 

あ、本音ちゃんが更衣室から出て来た。

 

「あらあら」

 

本音ちゃんの姿に驚きそんな声が漏れ出た。

 

本音ちゃんの格好はどちらかというとロシアの服装に近かった。

白のワンピースの上に、ライトパープルの防寒用コート、いつもはヘアゴムで雑に束ねられた髪は降ろされ、その頭の上には高い丈の帽子がちょこんと乗っている。

背中からワイヤー製の小鳥の模型のようなもの4羽ほどフラフラと浮かべられている。

あれって、ワイヤーか何かで衣装から吊るされてるのよね?

 

さて、決め台詞は…

 

()っちゃえ、狂戦士(バーサーカー)!」

 

だった。

目も耳もふさがれているはずの一夏君の肩が揺れた気がした。

それと、岩から強引に掘り出したかのような剣だか斧だか判らないそれはとっとと仕舞いなさい。

なんで出したのそんな武器?

 

周りの反応はといえば

 

『なんか台詞が物凄く物騒ぉぉぉぉっぉ!!??』

 

今にも何か飛び出してきそうな…気がした…。

そう、あくまでも気のせいよ!

気のせいったら気のせいなのよ!

 

さてと、いい加減この衣装も恥ずかしいからさっさとゴールしちゃいましょ!

でも結構動きやすいわね、この衣装。

強風でもない限りボトムの前後の布も翻ることもないでしょうし、制服の改造のし甲斐がありそうだわ♡

それさえ気遣えば下着を見られることもないでしょうし。

 

「だからクロエちゃん!

お尻を隠しなさいってばぁぁっ!」

 

両腕を通していた振袖を外してクロエちゃんのお尻を隠しながら背中を押し、私は二位の状態でゴールインした。

本音ちゃんは…鈍足だし最下位になったわね、それに関しても仕方ないけど。

 

「さあ楯にゃん!それともお稲荷様玉藻御前様!

二位に入ったことに関してコメントしてもらうわよ!」

 

「なんで今日は私をピンポイントにして狙ってきてるのよ!?」

 

「いつもは取材してものらりくらりと躱してばっかのお嬢を逃がすわけないでしょ!?

今日は徹底的にインタビューに答えてくれるまで更衣室にも行かせない!」

 

「だれか助けてぇぇっ!?」

 

さすがにこの襦袢のままで居続けるのは恥ずかしいのよ!?

制服を改造したら肌を覆う面積を増やすしかないわね!


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