IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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Q.次回作執筆予定でしたら、前回『萌え袖』を披露してくれたメルクも登場させてあげてください!

Q.メルクちゃんを次回作でも妹ポジで登場を!

Q.ぺったん娘のメルルンを次回作にも登場を!

A.予想以上に多いメルクの人気にビックリです、萌え袖メルクは私も見たい。
次回作に関してはまだ構想途中ですって。
主人公の経緯などは推敲できてます。
ん~~、人気があるみたいなので、出来れば登場させる方向付けにしますか。
しかし嫁キャラとしてではなく妹ポジの要望が多いようで、そっちにもビックリです。

Q.前回にて楯無さんに起きた事を教えてください。
P.N.『匿名希望』さんより

A.では簡略に。
長いのでご注意を。


「ブ、『ブルマ』を借りるって、何処から…。
見渡す限りブルマだらけだけど…こうなったら…」

鈴ちゃん、爆睡中のマドカを発見、ロックオン。


「悪いわねマドカ、アンタに恨みは…無い事も無いけど、そのブルマ借りるわよっ!」

猛ダッシュし、飛び付く…寸前

一夏
「うちの妹に何してんだお前は」

アッサリと受け流された挙げ句に投げられて、そちらに楯無さんが。
鈴ちゃん、受け身を取りながら手が伸ばし…

ズリイィッ!!

楯無
「………え?」

公衆の面前にてボトムレス。
…そう、中身ごと。


「……借りてきます!」

楯無
「イヤアァァァッ!!
鈴ちゃん返してェェェッ!!
それお気に入りの下着だからぁぁっ!!」

黛女史&岸原女史
「シャッターチャァァァァンスッッ!!」

楯無
「アンタ達、後で覚えてなさいよぉぉっ!!」


「覚えてて欲しいんだ、…お姉ちゃん、そっちの気が…。
ごめん、もう話しかけないで」

楯無
「言葉の綾よぉぉぉっ!!
本気にしないで!
誰でもいいからズボンでもいいから貸してぇぇぇっ!
本音ちゃん、こんなタイミングで褌なんか用意しないで!?
そんなもの何処から持ってきたのよ!?
それと一夏君は何処に行ったのよ!?」


「書き置きを残して立ち去りましたよ」

『鍛練に戻ります』

楯無
「相変わらず逃げ足が速いわね!?
って撮影辞めなさいって言ってるでしよぉぉぉっ!?」


獄雷冥魔 ~ 弓剣 ~

??? View

 

「ちぇ~っ、壊されちゃったか」

 

学園で過ごしているであろうあの人(お兄ちゃん)の姿を見たいと思って、組織の備品庫から勝手にドローンを飛ばしたのに、アリーナ?だっけ?そこに到着した直後に撃墜された。

何処に居るのかまでは判らなくて、複数のものを飛ばしたのに、それ全部撃墜されるだなんてね。

 

「ああぁぁぁぁっ!最悪!

この前に逢った時には装甲越しで顔も見えなかったから直接見たかったのにいぃぃっ!」

 

顔を見られると思ったら弓が邪魔で見えなかったし!

そもそもあの人(お兄ちゃん)の傍に居て、下半身丸出しにしたり、バスタオルを巻いたりしてる変態は誰なのよ!

 

「今度は直接逢えると良いなぁ…ねぇ、お兄ちゃん」

 

直接逢えても邪魔が入らなければいいなぁ…。

邪魔が入ったら…八つ裂き?蜂の巣?首チョンパ?

 

オニイチャンノコノミノママニシヨウカナ…?

 

ズタズタにしちゃおうかな…?

 

 

 

Ichika View

 

午前中の競技を終えたのを確認し、俺は椅子から立ち上がる。

のびをしながら首を傾ければゴキゴキと不健康な音が聞こえてくる。

午前中は大半寝て過ごし、起きた以降を修行に費やしていたし、穀潰しもいいところだろう。

だがまあ、一晩かけて全校生徒及び、教職員全員の弁当を作ったのだから大目に見てほしい。

 

なお、ドローンの件は、盗難品だと判明したらしい。

動機は盗撮だろうけど、容疑者は不明だ。

…学園のセキュリティ問題の面も考えなくてはならないのに、妙な話が絡んできたな。

 

「おい、マドカ、起きろ」

 

「んむ?もう朝ごはん~?」

 

違う、昼ごはんの時間だ。

簪も苦笑いしながらマドカの体をゆする。

男の眼には毒になるような絵面になりそうなので目をそらす。

仕方ないだろう、その光景から目を逸らすのは、不可抗力だ。

 

「おはよう…」

 

「全然早くないぞ、ほら、これでも飲んで目を覚ませ」

 

緑茶が入ったペットボトルをマドカに投げ渡す。

右目で目を擦りながら左手でキャッチ、相変わらず器用な奴だ。

 

「んく、んく…ふぅ…」

 

「マドカ、目が覚めた?」

 

「ん~!よく寝た…おやすみなさ…」

 

ペチン!

デコピン一発。

いい加減に目を覚ませっての。

 

「もう起きたからデコピンは嫌!」

 

起きたようで何よりだ。

寝ぼけ眼ではあるが、それに関しては見逃しておこう。

 

マドカは多少眠そうにしながらも首を傾けてはゴキゴキと鳴らしている、誰に似たんだか。

 

「さて、これから昼飯になるが…控室にでも行こうか」

 

「そうだね、そこならそんなに熱くないし、冷暖房完備だから快適に過ごせそう」

 

「込んでそうだけどな」

 

俺たちが真っ先に考えるくらいだ、同じように考える者もそう少なくはないだろう。

いや、ほとんどがそうかもしれない。

嫌だなぁ、ぎゅうぎゅう詰めの状態の食事とか。

 

「兄さん、制服忘れてる」

 

「ああ、悪い悪い」

 

置きっぱなしにしていたコートを受け取ろうとしたが、受け取る直前で手を翻された。

って、おいおい、渡してくれるんじゃなかったのか?

 

「…なんか女臭い」

 

「…事情があってな、後でクリーニングに出す予定だ」

 

「もしかして、さっきの借り物競争が理由?」

 

簪、ナイスアシスト!

説明しやすくなったぞ!

 

「ああ、実はな…」

 

で、先程の借り物競争で起きた事故の話を二人に説明した。

ついでにメルクが謝罪しに来たことも忘れずに言っておく、そうでもしなければメルクが悪者扱いになってしまいかねない。

涙目になってしまっていたが…あれは素であろうことは大方予想している。

鈴が仕込んだ場合はもうちょっと演技臭いだろうからな。

 

んで、そんな説明をしている間に、ほとんどの控室がほかの生徒に占拠されてしまっていた。

やぁれやれだ。

 

弁当は各自更衣室に置いているはずなのだが、皆は早いなぁ。

しっかし、この学園の体操服は何とかならないのか?

毎回思わされていることなのだが、『女子の体操服、ボトムはブルマ』というのは男の眼には毒でしかない。

男子の俺もボトムは短パンなのだが、勝手に改造してトップもボトムも長袖長ズボンのジャージ型になっている。

なお、夏用のものは無く、冬用の長袖長ズボンのジャージだけだ。

 

俺は午後から競技に参加することになっているので、弁当を持ってくるついでにジャージに着替える。

その際、刀とナイフは専用の肩提げ式の吊革に携えるのを忘れない。

護身具扱いで帯刀しているのだから、手放すわけにはいかないだろう。

 

「さてと、控室は殆ど埋まっていることだし…観客席にでも行こうか」

 

更衣を終えて簪達と合流しようとしたときに背後から呼び止められた。

声の主は…はい、われらが暴君織斑先生(我が姉貴)でございましたとさ。

 

「あ、これお弁当です」

 

「うむ、ご苦労…だが、要件はそれではない」

 

なんでございましょうか?

わざわざ呼び止められるような理由なんて思いつかないのだが?

おっかし~なぁ、何かしたっけか俺?

 

そんな思考を巡らせる最中にもこの御仁は両手の指をゴキゴキと鳴らしてらっしゃる。

ああ、はいはい、なにをやらかそうとしてるのかだいたい察してしまったよ、面倒臭ぇなぁ…。

 

影踊(かげろう)流歩法『傾陽(かぶらび)』!」

 

ビュオォッ!

 

一気に間合いを開く長距離後退の歩法を使った瞬間と拳が降りぬかれるのはほぼ同時だった。

 

「逃げるな!」

 

「せめて殴ろうとする理由くらい言ってくれよ!?」

 

「簪から訊いていただろうが!」

 

ん?簪が?

…………………………………………………………ああ、思い出した。

『学園に戻ったら覚悟しておけ』だったか?

修行や料理や開発の事ばかり考えてたからすっかり忘れてた。

おかしいな、修行だとか訓練ばかりしてたのがバレてしまっているのは自覚しているが、あの怒り様は考えてもそれだけでは足りてそうにないぞ?

理由が判らぬままに殴られても殴られ損じゃねぇか。

そう考えて俺は走ることに専念し始める。

殴られる危険性を考慮し、空間を存分に使うことも決して忘れない。

床を走るのは当たり前だが、勢い任せで壁面を走り、時には天井にすら足をつけ、立体機動を続ける。

以前にも言った気がするが流石に天井なんて走れねぇよ。

 

「チョコマカと逃げ回りおってぇっ!!」

 

そりゃそうだろう

 

背を向ける形で床に着地したと同時に、足をバネにして『臆裏陽(おくりび)』を使い、更に距離を開く。

流石にグラウンドに出ればIS使ってまで追ってきそうな気がするので、天井の下を走り続ける。

下手にものを壊すこともできないだろうからな。

 

「いや本当に、殴られる理由なんて思いつかないんだが」

 

学園で待機していた連中ならともかくとして…ああ、あいつらは料理で黙らせたから考える必要も無い。

となれば俺は千冬姉個人に何か恨まれることをしでかしてしまったという事だろうか?

胸に手を当てて考えてみるが、とんと思いつかない。

 

「落ち着いてくれよ、流石にアル中が因縁吹っかけてるようにしか見えねぇから」

 

一応穏便に説得を試みてみるが

 

「誰も飲酒などしていない!

お前が居ない間は酒は一滴も飲んでないんだ!」

 

逆ギレされた始末。

だが、マドカを経由しての禁酒生活か。

少しは生活を健康的に過ごせる気はするのだが…

 

「そりゃいい心懸けだとおもうぜ?

肝臓ボロボロにもなることはこれ以上無いだろうし」

 

「手遅れみたいに言うなぁっ!!!!」

 

おっと、藪蛇だったか。

 

「だめだこりゃ、完全に酒が切れたアル中を相手にしてるようにか思えない」

 

「誰がアル中だぁっ!!!!」

 

おっと、火に油だったか。

だが独り言にまで反応すんなよ。

 

頭に大雑把に入れていた休学期間中のスケジュールを思い起こしてみる。

その中で千冬姉を怒らせるような何かがあっただろうか?

 

「う~む、ツマミだとかアルコール分解を促す料理だって献立も用意していたはずだったから、マドカ達が取り組んでくれていた筈だが…?

それとも、数日おきに入れていた寮監室の掃除か?

まあ三日に一回入れていたから、多少面倒に思われていたかもしれないけど…けど、休学直前に殴られてるからチャラになった筈だろうし…?」

 

だめだ、まるで思いつかない。

 

「まあ落ち着いてくれよ。

そうでもしないと食事にもありつけないだろ。

腹の中を空っぽにしての急激な運動は体に毒だぜ?」

 

「だったらさっさと殴られろ!!」

 

逆ギレパート2

 

「うわぁ暴君が居る」

 

心の中身がそのまま口から飛び出した。

 

「誰が暴君だぁっ!」

 

おっと、地雷だったか。

それに今更過ぎる。

 

「やべ、口に出てた」

 

しっかし気のせいだろうか?

千冬姉が拳を振るう度に結構な衝撃波が出てるような…?

いや、んな事があってたまるか。

『飛来する斬撃』ならぬ『飛来する()撃』とか常識はずれにもほどがあるだろう。

 

もうそろそろアリーナの円状廊下を一周する。

ってーか、いつまでつづければいいんだよ、コレは?

 

…しゃぁない、もうちょっとばかり付き合ってやるか。

今日は朝だけでなく昼飯も抜きってーことで。

不健康な生活送ってるなぁ、俺は…。

 

已む無く携帯を開いて簪の番号をコール。

お、すぐに出てくれた。

 

「もしもし、簪、聞こえるか?」

 

『一夏、今どこにいるの?』

 

「円状廊下を駆け抜けてる。

悪いんだが先に食事を始めておいてくれ、当面そっちには行けそうにない」

 

『何があったの?』

 

「千冬姉に追っかけまわされてる。

理由は不明だ、まるで思いつかない、心当たりがない。

ってーわけで、また後でな」

 

簪には悪いが一方的に通話を終わらせた。

臆裏陽を幾度も使ったからか、いつのまにやら彼我の距離はだいたい40m程に離れつつある。

お、このままだったら逃げ切れるんじゃねぇの? 

 

ロッカーに入れておいたカロリーメ○トを齧り、エネルギーを補充っと。

 

「なあ輝夜?千冬姉が怒る理由って何か思いつくか?」

 

『私に聞かれても千冬伯母さん(・・・・)が何に怒ってるのかわかんないよ』

 

…あ、輝夜が俺を父親呼ばわりしてたら千冬姉への呼称はそうなるだろうな。

聞かれたら十中八九殺されるだろうな。

 

「なあ黒翼天」

 

『俺に話を振るな』

 

冷てぇっ!

 

やれやれ、それじゃあ昼休み一杯逃げ回るとしますか。

俺の昼飯は…大方、のほほんさんの腹の中にでも納まるだろうな。

…ひとまず今は逃げ回ることを最優先しておこう。

 

「おめおめと逃がすと思うなぁっ!!」

 

「…誰でもいいから止めてくれよあの人を…」

 

世界最強の暴君を相手にそれは命知らずか。

 

コイツは想定外、冗談抜きで暮桜を展開しやがったよ…、ああもう面倒くさいな…。

けどいい機会だ、試してみようかな。

 

そう思いながら輝夜の拡張領域から双剣を引き抜く。

先程も使ったばかりだが、白と黒の二刀小太刀と籠鍔付きの大弓がセットになった『知られざる英雄(アンノウン ブレイヴ)』だ。

 

「いっちょ腕試しと行こうか!」

 

よくよく考えたらいい機会だ。

限られた空間でISを相手にした想定での機動白兵戦戦闘。

この好機を逃す手は無いよな!

 

 

 

 

Kanzashi View

 

一夏から連絡を受けて私達は中庭に移動してから食事を始める事にした。

私はコロッケ弁当、本音はカツサンド、マドカは一夏とおそろいの和風弁当。

 

「いただきま~す!」

 

予想していた通りというか、一夏のお弁当は本音が手を出してしまっていた。

ああ…折角の焼き鮭もこんがりと焼きあがった皮も食べてしまってる…。

炊き込みご飯も米粒の一つも残さずにがっついちゃって…味噌汁も残さずに飲み干してしまってる。

 

「…本音、兄さんが食べる分も残ってないじゃないか」

 

「えへへ~、おりむ~の作るごはんがあんまりにも美味しくて…」

 

「まあ、その気持ちは判らないでもないけど…」

 

なお、屋敷では最後にフィンランド料理に手を出そうとしてた。

もう何処まで料理に着手しようとするのか判らない。

間違いなく言えるのは『国境線を飛び越えすぎ』という事。

 

「かんちゃんはどんな料理が好みなの~?」

 

「う、う~ん…一夏が作ってくれる料理は全部好きだけど…お気に入りは幾つもあるし…」

 

「わ~、新婚夫婦みたい~」

 

「本音!からかわないで!」

 

た、確かにお互いに指輪だってしてるし!ドレスだってもう手元にあるのもそうだけど!

父さんが新居を探すべきかと一夏と相談してたのも見かけちゃったこともあるけど!

子供は何人にするんだとか相談してるのも見かけちゃったけど!

一昨日のデートの最中、父さんが幼児向けの玩具のカタログを書店で読みふけってるのも見かけたけど!

 

「はぅ…」

 

一気に頭の中のキャパシティを超えた。

それもこれも父さんと本音が悪い。

父さんは将来、親莫迦だけでなくジジ莫迦は確実だと思う。

 

 

 

Madoka View

 

最後に残しておいたお気に入りの焼き鮭を齧る。

うん、ちょうどいい塩加減と焼き具合。

お昼になっても皮がパリパリとした食感を残してる、それに身もフワフワ。

 

「本音、簪をからかいすぎだよ」

 

「えへへ…」

 

「簪がキャパ超えおこしてるからいいけど、怒ったらどうなるのか判ってるよね」

 

正直、簪があのモードになったら私はすぐに逃げ出す。

今になっても立ち向かえる度胸が無かったりする。

でも…兄さんから聞いた話だと…もっと凄い事になるんだとか。

あの楯無さんが半裸で氷漬けというか、氷像と雪像に巻き込まれている写真を鈴に見せてもらった。

当の鈴はお腹を抱えて笑い転げていたけど、簪のあのモードを思い出したらガタガタと震え上がっていた、うん、その気持ちは理解できるし、もう二度と経験したくない。

でも兄さんはその状態になってる簪を見ても平然としてたり、殺気を受け流してる。

姉さんがキレてても呆れる様子を見せるだけだったり、簪のあの状態を平然としてたり…うん、やっぱり兄さんは偉大だ。

 

「ふぅ、ご馳走様」

 

真っ赤になっていた簪も元の状態に戻り、私はスープを飲み干してから両手を合わせた。

水筒から緑茶をコップに注ぐ。

うん、食後にはこれだよね。

メルクは相変わらず梅昆布茶を気に入って飲んでるけど、私は緑茶かな。

 

「あ!マドカちゃん見つけた!」

 

中庭に飛び込んできたのはルームメイトの清香だった。

ハンドボール部で鍛えてるからか、結構な脚力を見せてたっけ。

 

「どしたの清香?」

 

「アリーナで織斑君と織斑先生が乱闘してるの!」

 

「…え?」

 

ランチジャーと水筒を急いでバスケットに戻し、私達はアリーナに走った。

そこには

 

「いい加減にしろぉっ!

いつになったら殴られるつもりだお前はぁっ!」

 

「ンな事を言われてもだな…」

 

廊下や天井に壁面に斬撃の痕跡が大量に…。

数は…えっと…斬られた形跡に突き刺さったような形跡とが…数えるのやめた、面倒くさい。

 

声がする方へと駆けていくと…姉さんが暮桜を展開し雪片を振るい、兄さんが生身で二刀小太刀を順手に持ってたり、逆手に構えてたり。

理由は判らないけど、腰には弓も見えた。

姉さんは刀を振るい続けているけど、息が上がっている。

片や兄さんは、両手の小太刀を振るいながらも、小太刀を順手、逆手にと持ち替えては往なし、躱し、捌き、受け流し、時には弾く。

それを繰り返しながら後退して姉さんの息切れを狙ってる。

姉さんもこの円状廊下では暮桜の機動性を十全に発揮できないから、結局は兄さんのペースに持ち込まれている。

『零落白夜・熾天(しきてん)』を時に振るう姉さんを相手に持久戦へと持ち込もうとするとか、兄さんはかなりのチャレンジャーだな…。

やっぱり兄さんには二刀流が似合うなぁ。

 

「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」

 

「ふぅ……ふぅ……」

 

休憩時間終了間際にはお互いに息が上がっていた。

でもどちらかというと兄さんの方が余裕がありそうだった。

 

「ぜああああぁぁぁっっっっ!!!!」

 

先に動いたのは姉さんだった。

右上段からの袈裟切りの一刀両断。

 

斬!

 

その一閃よる衝撃波が廊下の両壁面を抉りながら走り、金属同士が接触する耳障りな音が響く。

思わず耳を塞ぎ、目を閉じる。

 

数十秒後、肌で感じる衝撃が失われ、塞いでいた耳から手を放し、目を開く。

 

「俺の勝ちだな」

 

凛と響く声。

視線を向けると

 

「凄い…!」

 

「一夏…いつの間にあそこまで…」

 

隣にいる簪も驚愕していた。

そこには

 

刀を振るい切った姿勢の姉さんの姿と、体を大きく仰け反らせながらも近距離で弓を構える兄さんの姿。

一見している私でも判る、兄さんが居るのは常時展開されているシールドの内部だ…。

それにしても、気のせいかな?

兄さんが弓に番えている矢が、螺旋を描いているように見えるのは?

 

「俺の弓と千冬姉の刀、この距離でどっちが速いか、試してみるか?」

 

うん、どう見ても兄さんの勝ち。

だって姉さんの雪片…半ばで折られてる…。

 

 

だけど時と場合を考えなよ。

生身でISを圧倒し、しかも世界最強と謳われた姉さんに勝つとか。

兄さんも姉さんも尊敬してるし大好きだけど、今この場に於いては両者に呆れるしか無かった。


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