IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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ある日の更識家護衛部隊の皆さん

護衛1
「いやぁ、若はどんどん腕を上げていくなぁ」

護衛2
「厳馬様と奥方様が直々に修行をつけているから已む無しなんだろうがなぁ。
あの齢であの腕っぷしはなかなか居ないぞ」

護衛3
「刀奈お嬢様と簪お嬢様が体育祭に出場されていた際、厳馬様を一人で組み伏していただろう」

護衛4
「そうそう、お嬢様達に並走しながらカメラでバシャバシャ撮影しまくってた厳馬様にシャイニングウィザード!
あれには驚かされた。
俺も飛び出していきたかったが、娘の前で醜態を晒すわけにはいかなかったからなぁ」

護衛5
「そのシャイニングウィザードが由来だよなぁ、若が『蹴撃の貴公子』なんて呼ばれ始めたのは」

護衛6
「一昨年前はシャイニングウィザード、昨年は自転車で轢き飛ばしからのスクリュードロップキック。
あれにも驚かされたぞ。
どうやら奥方様からの指示だったそうだが」

護衛7
「後に若に聞いたが、簪お嬢様のお弁当を届けに行った際に目撃して、いてもたってもいられなくなったとか」

護衛8「それでも翌日にはピンピンしてた厳馬様もどうなってんだかな、ハハハ」

護衛9
「今年もやらかしてたらバイクで轢き飛ばすんじゃねぇの?」

(間)

護衛10
「おい、なんか聞こえないか?」

護衛11
「あっちの方向って若が休んでる方向だったか」

護衛12
「簪お嬢様と奥方様も居た筈だが…これ、厳馬さまの悲鳴じゃないか?」

護衛13
「お嬢様方や奥方様の名前を叫びながらの絶叫にも聞こえるが…」

護衛1~150
「…なんだ、いつもの痴話喧嘩か」

護衛14
「だったらほっとけほっとけ。
俺らは休憩しとこうぜ、折角料理長が苺大福まで用意してくれてるんだ。
休めるうちに休んどこうぜ」

護衛15
「この後でまた若が『手合わせを頼みたい』って言ってくるだろうからな、ハハハハハ」

今日も更識家は平和なようです。


獄雷冥魔 ~ 剣舞 ~

Ichika View

 

「簪、忘れ物は無いか?」

 

休暇も最終日となり、剣も納得できる形にしてから俺は学園に戻る準備をしていた。

とはいっても俺の場合はボストンバッグと刀とナイフ程度で、そこまでまとめる必要もない。

だが、女子はそうでも無いだろうし、部屋の前で待つこと10分…待ってるうちに入らないか。

 

「うん、もう大丈夫だよ」

 

簪も肩提げの鞄が一つだけ。

思い返してみれば休暇でこの家に戻る時にもそこまで大きな荷物は持ってなかったな。

とはいえ、何を入れているのかが気になるのは何故だろうか?

 

「むぅ、一夏のえっち…」

 

「…そういうつもりは無いんだがな」

 

それに毎日寝床が同じだったのに何を今更になって仰いますやら。

まあ、俺の場合は最低限度の着替えと、レポート云々程度なわけだが。

二人分のカバンをバイクの収納スペースにしまう頃には西の空が茜色に染まっていた。

それを確認しながら俺はバイクに跨る。

本来ならこの時間には学園に辿り着いておくべきなのだろうけれど、師範が「あれも持っていけ、これも持っていけ」とのことで時間を取られてしまった。

その本人は廊下に正座の刑を現在進行形で続けている。

それに付け加え、昨年までの簪や楯無さんの写真やアルバムを見せて自慢したりで徹夜させられそうになった余罪も在る。

つまり、見送りには来ていない。

あの人、威厳が無いよなぁ。

それが原因で長女は『楯無』を襲名したんじゃないだろうなぁ、おい。

 

門の前には絹江さんと、相変わらず暑苦しい強面グラサン集団150名だ。

 

「一夏さん、ゆっくり休めましたか?」

 

「どちらかというと毎日動き続けていた記憶しか」

 

「鍛錬に夢中になってましたね。

けれど、時にはゆっくりと時間を過ごし、周りを見てみることも重要ですよ」

 

肝に銘じますよ。

その為、昨日一日は簪とのデートに費やした。

先日にも見かけたテロリスト予備軍については…まあ、蛇足か。

 

「今回、貴方が完成させた剣術は貴方だけのものです。

恐らく、ほかの誰にも出来ないでしょう」

 

「かもしれません。

俺が剣術を教えている相手には無茶なことはさせないようにしてますからね、多分…伝授はしないと思います」

 

剣術の伝授を願う者が二人居るわけだが、あくまで『できる範囲』でしかない。

無理はさせない、それは俺の信条だ。

無理や無茶をするのは俺だけでいいだろう。

 

「簪ちゃん、貴方はこれからも一夏さんが無理をしないようにしっかりと見てあげなさい」

 

「うん、判った。

絶対に無茶はさせないように気を付ける」

 

信用されてねぇなぁ…死にたくなってくる。

無理無茶をするのは俺だけでいいんだが、それでも限度は弁えてるつもりだぞ…多分。

 

「それと、孫の顔を見られるその時を楽しみにしてますよ♪」

 

「はぅ…!?」

 

無視してスロットルが壊れる勢いで急発進させた。

あわやウイリー状態になってしまったが、さすがに簪も荒っぽい運転に少し離れてしまったのだろう、しがみついてきた。

絹江さん、気が早すぎですってば、スピード違反だろうに。

家庭を持つと人は変わってしまうのかもしれないな、教訓にしよう。

なお、簪はというと顔を真っ赤にしてるんだろうな、首に至るまで。

…見る気はないけどさ。

 

だが、察しているのがバレでもしたのか、腕の力が強くなった。

『抱き着く』というよりも『締め付ける』感じで。

だが簪の腕力だからそんなに痛くもないけどさ。

 

今回は厳馬師範のバイクではなく、誕生日に束さんからもらったあの大型バイクを乗り回している。

刀剣収納スペースがあったりするため、個人的にも気に入っている。

先の襲撃の際にもコイツには大変に世話になった。

なお、襲撃があったりしたためか、束さんがこのバイクに魔改造を提案したり、施そうとしていたりするため、その都度クロエの手を借りてストップを言い渡している。

刀剣収納用のホルダーはともかくとして、壁面走行だとか、ミサイル発射管とか誰がそんなもん得するんだか。

あわや間に合いそうになかった時もあったが、千冬姉の真似をして罠を施していたら、その日の夕方に感電して痙攣する兎が一羽見つかっていたりする。

 

おっと、マドカたちにメールを飛ばしておかないとな。

メールを送って数十秒後、早速だが返信がすっ飛んできた。

えっと…何々…?

 

『いろいろと言いたいことがあります』

 

…おいおい、こっちも私刑宣告か?

なにやら黒い意志が感じ取れるのだが…シャルロットが干渉しているのかもしれないな。

 

「どうしたの一夏?」

 

「学園に戻ったら忙しくなりそうな気がしてさ」

 

「それは最初から判ってたでしょ?」

 

ごもっともで。

さあて、残る道のりをとっとと走り抜けようか。

 

通常はモノレールを使って大橋を渡り切るのだろうが、俺には関係無い。

というかここのモノレールを使った試しがほとんど無かったりする。

学園の出入りをする際にはバイクを使っての移動がメインだった。

大型車両が走行する大橋上の道路にバイクを向けてスロットルを回す。

 

さてと、俺の代わりに忙しくしていた連中の顔を見に行こうか。

この三週間あわただしくしていただろうからな、少しばかりは機嫌取りでもしてやらないと。

 

 

 

大橋を渡り切って守衛に軽い挨拶をしたころには夕日は完全に沈んでいた。

明日からも少しばかりは忙しくなるだろうし早いうちに休んでおかないとな。

 

「ん?メールだ」

 

「誰から?」

 

「鈴からだ、学生寮前に来い、だとよ」

 

早くも集団リンチのフラグが立っていた。

面倒だなぁ。

しかし、こんなメールを出さずとも、どうせ寮に行くのは判っているだろうに。

裏口から入ってやろうかと思いもしたが、それはそれで面倒な気がしたので、バイクを駐輪場においてから学生寮へと足を向ける。

簪と他愛のない世間話だとか、今日の夕飯のメニューは何にしようか、とか。

そんなん話をしていた頃に

 

「待ってたよぉ、一夏ぁ?」

 

なにやら妙なオーラを漂わせていたシャルロット・アイリスが待ち構えていた。

彼女の手には何故か知らんがサバイバルナイフ。

なんつーもんをぶら下げてんだお前は?

 

「ボク()いろいろと言いたいことがあってさぁ。

一夏が休学している間、一夏が担っていたスケジュールを代行してたんだけど、あんまりにも忙しすぎて、途中で何度もダウンしたりしてさぁ」

 

「俺とて休学は不本意だったさ。

その間のスケジュールを任せることは本意じゃなかったぜ?

だが、俺はいろいろと時間を削ったりしてあのスケジュールを整理して、それを予定通りに流してただけだぞ」

 

「…え?あれでスケジュール整理してたの!?」

 

本当に、この反応どうにかならないか?

それを千冬姉にも教えたはずなんだが絶句した挙句に鉄拳制裁だもんな。

 

「でもさ、釈然としないからぁ…少しばかりの八つ当たりくらいは許されるよねぇ?」

 

途端にあちこちから影が飛び出す。

右前の木陰からは鈴、獲物は青龍刀による二刀流。

寮の屋上からはセシリアの弓。

左前の寮の陰からはマドカとラウラがナイフ二刀流で。

背後からはメルクが十字剣による二刀流。

真正面からはシャルロットがサバイバルナイフと手裏剣。

木の枝からは篠ノ之が刀を、茂みからはクロエが仕込み杖を携えて。

 

…もう簪も絶句している。

だが、俺からすれば軽い話だ。

右手で刀を、左手でナイフを抜刀する。

 

「よし、お前らの修行の成果を見せてみろ」

 

飛来する矢を刀で弾く。

 

「ぜやぁっ!」

 

「気配をもう少し隠してみろ」

 

篠ノ之の刀をナイフで弾き飛ばし(パリング)、そのまま首の後ろ、襟首にナイフの柄を差し込み、勢いそのままにシャルロットに投げ飛ばす。

 

「「うわぁっ!?」」

 

はい、開始3秒で二人ダウンな。

 

マドカとラウラのナイフを刀だけで受け止める。

それと同時に背後のメルクの双剣に対し

 

ドガァッ!

 

鍔を足裏で受け止める。

 

「えぇっ!?」

 

「メルク、太刀筋がまだまだ遅いぞ!」

 

見えていないとでも思ったのか?

刀の刀身が鏡代わりになってハッキリと視認できているぞ。

そのまま双剣の太刀筋を捻じ曲げ、剣先が地面にめり込む。

そのままバックステップしてラウラとマドカのナイフを捌く前に受け流す。

おっと、またもや矢が飛んでくる。

これも再び

 

ギャギィンッ!

 

刀で弾く。

 

「まだだ兄上!」

 

ナイフ二刀流に加え、ドイツ軍式柔術『黒兎式(こくとしき)』を織り交ぜてくる。

だが軽い!

 

「ぬ!?」

 

両手の刃を上空に投げる。

視線がそれに一瞬逸れる。

その刹那にラウラの視線が上空に向かう。

 

「ラウラ!隙だらけになってる!」

 

その瞬間をカバーするかのようにマドカが大きく踏み込んでくる。

縦横無尽に振るわれるナイフに対し、俺はステップだけで回避する。

なかなかに鋭いな。

マドカの声に反応したラウラも突っ込んでくる。

なかなかのコンビネーションだ、見違えたぞ。

 

「ぜぁっ!」

 

「せぃっ!」

 

真正面からの刺突に対し跳躍して躱す。

攻撃が空振り、姿勢を崩した二人の首根っこを引っ掴み。

 

「これで終わりな」

 

投げ飛ばした際に気絶したであろう篠ノ之に圧し掛かられていたシャルロットに向けて再びぶん投げる。

二人そろって受け身をとって着地をするが、場所をかんがえろ、お前ら。

 

「ヘギュッ!?」

 

「ブフェッ!?」

 

マドカは篠ノ之の腹、ラウラはよりにもよってシャルロットの顔面だった。

…後でどうなっても知らんぞ。

足をバネにして突っ込んでくるが、

 

「タイミングが悪い」

 

上空に投げた刀とナイフが刃を下にして落下してきた。

 

「「いぃっ!?」」

 

二人の鼻の先端の薄皮一枚を裂いて。

無論、体は驚愕に震えながらも緊急停止、だが勢いを殺せずに姿勢も保てなくなった瞬間に首に手刀を振り下ろし気絶させる。

 

ドズシャァッ!

 

そのまま盛大に転倒する。

はい、これで4人!

 

ラウラの手からすっぽ抜けたナイフを拾い、寮の屋上に投擲

 

「ヒィッ!?」

 

セシリアが構える弓の弓弦を両断した。

 

そのまま残るマドカとラウラのナイフ残存3本も投擲。

 

ビキッ!ビキッ!バキャァァッ!

 

弓をブッ壊した。

これでセシリアもダウン判定、これで5人!

 

残るはメルクとクロエと鈴だ。

地面に突き刺さった刀とナイフを握り背面に振るう。

 

「やっぱり、お兄さんは凄いですね…!

とても、三週間も休んでただなんて信じられませんよ」

 

「生憎、修業は怠らない主義でね」

 

左から接近する影。

今まで沈黙していたであろうクロエだった。

いいとこで突っ込んできたな。

だが、甘い。

刀を傾け

 

ギャギィッ!

 

メルクの双剣とクロエの仕込み杖を衝突させた。

 

「クロエ、お前の隠形は見事だが、やはりまだ膂力が足りていないな」

 

「御忠告痛み入ります、ですが」

 

クロエの姿が消える。

それと同時に刀から感じる重さが半減する。

だが、その隠形は完全じゃない。

 

メルクの刃を受け流し、姿勢を崩させる。

メルクの制服、背面にかすかな違和感。

芝生の一部が足形に凹む。

…そこだな

 

ベチン!

 

「痛いです!」

 

デコピンをクロエの額に打ち込む。

これで6人。

 

「お前も終わりな」

 

ゴィン!

 

「痛いです!」

 

刀の籠鍔でメルクの後頭部を軽く弩突いて、リアタイアさせた。

これで7人。

 

 

 

 

Chifuyu View

 

学生寮前が騒がしいので見に行くと

 

「…何をやっているんだ、アイツらは」

 

うちの愚弟といつもの面々が手合わせをしているようだった。

やはりと言うべきか、修業を怠ってはいなかったようで、人数の差などさしたるハンデにもなっていなかった。

優勢になるどころか、数秒経過しただけでで圧倒し始める。

どれだけ修業を積んでいるんだか。

ナイフを真上に向かって数本投擲する様子も見受けられた。

…屋上に伏兵が居たのか?

容易に対処したのちに、残る面々も圧倒し、制圧完了したのかと思えば、残る鳳がかかっていく。

だが、一夏の太刀筋に追いつけず、のど元に刀を突き付けられて試合が終了した。

手合わせが始まってから僅か1分半…。

 

「まったく、あの脳筋バカどもめ」

 

だが、全員生半可な修業はしていなかったようだ。

最後は全員正座させられている。

簪の手による軽い手刀で仕置きは完了したようだが、それぞれ文句を言っている。

さて、駄々を捏ねるガキ共をどうやって黙らせるのか見せてもらおうか。

 

「お前ら、今日の夕飯は何が食べたい?」

 

「「「「「煮込みハンバーグ!」」」」」

 

…食うもので黙らせるのか、お前は…!

 

 

 

Kanzashi View

 

ものの1分半の試合が終わった後にも非難轟轟だったのに、一夏の一声で帰ってきた返事はといえば、マドカ、鈴、ラウラ、メルク、クロエのそろった声で

 

「「「「「煮込みハンバーグ!」」」」」

 

だった。

これにはセシリアも箒もシャルロットも絶句してた。

 

「ええぇぇーっ!?

言いたいことが大量にあるって言ってたのにどうしたのさ!?」

 

「料理で釣られるのかお前たちは!?」

 

「お、驚きですわね…」

 

…かもしれない。

 

「煮込みハンバーグか、ちょっとばかり手間暇かかりそうだな。

簪、手伝ってくれるか?」

 

「う、うん、判った、手伝うね!」

 

いったん部屋に行ってから二人分のエプロンを持ってくる。

材料は…調理実習室から拝借することになった。

エプロンは、勿論自前。

デニムの生地で作られたお揃いのエプロンだった。

 

メニューは『トマトソースの煮込みハンバーグ』だった。

…一夏のレパートリーはどこまで広がっていくんだろう…。

なお、トマトソースはトマトジュースから作ってた…。

手順を省くために少しだけ省略したいとかなんとか。

 

まず最初に、一夏が用意してくれた材料を私にパス。

渡された玉ねぎは、半分はハンバーグ用にみじん切りに、半分は煮込み用に薄くスライス、人参は千切りにする。

 

その間に一夏はミンチに塩コショウ、パン粉、牛乳、卵、みじん切りの玉ねぎをよく混ぜて、形を調えて小判型に形成していた。

相変わらず仕事が早いな…。

形成を始めるのに40秒も経ってない。

聞いた話では洋食店にもバイトで入っていて、その経験だとか。

 

次に私はお鍋を用意する。

鍋に水、コンソメ、薄切りの玉ねぎ、人参を入れて沸騰させて、トマトジュースを入れて弱火で煮る。

ここが一夏流というか、手順省略術。

ホールトマトからでなくても、十二分に味付けが出来るらしい。

 

続けて一夏がハンバーグを焼く工程に移ろうとした最中

 

「しかし…一夏が本当に同い年なのか怪しくなってきたな…」

 

「だよね、あの様子だと、すごく年上に感じられるよ」

 

「『兄』として慕われてますが、あれなら『父親』としても通用しそうですわね」

 

順番に箒、シャルロット、セシリアが余計なことを言っていた。

当然、一夏の耳にも届いているわけで、そしてそういうことを言われると一夏は機嫌を少しだけ悪くするわけで…

 

「篠ノ之、シャルロット、セシリアは晩飯抜きな」

 

「「「殺生な!?」」」

 

「その分、ミニハンバーグを作って他の皆の皿に盛りつけるから楽しみにしとけよ」

 

「あ、あはははは…」

 

言ってる途中からハンバーグにする予定だったそれを小さくちぎってミニハンバーグ…というかミートボールにしていた。

なお、余計なことを言っていた三人は皿洗い担当になってたりする。

けどまあ、かろうじて慈悲もあるわけで、三人分のお皿の上にはキャベツの千切りだけが盛り付けられた。

3人分でキャベツ一玉という周到な制裁&お皿洗いだもんね…。

 

「お、いい具合に焼けてるな♪」

 

調理がトントン進むからか、みんなの修行の程を確かめられたからか、一夏の機嫌が良さそうだった。

続けて私は鍋に入れていたスープに調味料を追加投入。

追加するのはケチャップ、ソースに塩コショウ。

それだけ投入したフライパンごと一夏からハンバーグを受け取る。

 

「お、美味しそうです…」

 

「参考になります…」

 

メルクとクロエの呟く声が聞こえ、どちらからともなく微笑んだ。

さて、あとは弱火で30分。

その間に、消化に優しい野菜スープ、キャベツやトマトにラディッシュであしらえたフレッシュサラダ、バゲットなどの用意もしないと。

 

食べてみた時の皆の反応は、まあ、おおむね想像通りだった。

それじゃあ、あの三人には悪いけれど、お皿洗いを頑張ってもらおう。


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