IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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今回は薄っぺらいですので悪しからず

Q.仮装障害物競走ですが、のほほんさん、楯無さんも参加させてあげてください。
出来ればリレー形式で
P.N.『ソーン』さんより

A.いやいや、そんなまさか……アリか?
ならば彼女達の仮装(衣装)も追加で募集ですな。


Q.最新巻、読みました?
P.N.『匿名希望』さんより

A.まだです
全ては夜勤が悪いんだ(白目)
休日出勤が悪いんだ(目の下に隅)
睡眠不足が悪いんだ(死んだ魚のような目)


獄雷冥魔 ~ 不視 ~

Ichika View

 

「じゃあ、また一週間後に、な」

 

「うん、学園のことは私たちに任せて」

 

夕日が沈む夕方頃、モノレール駅の前で俺と簪はその言葉を最後にして別れた。

駅から借りた台車に楯無さんを載せて押していく光景はシュールの一言に尽きるのだが。

まあ、毛布にくるまったままだから殊更にな。

あの人が何をやらかそうとしていたのかは訊かないでおくことにした。

簪があそこまでのオーラを漂わせていた程だったからな…訊いたら後で面倒な役を押し付けられそうな気がしてならない。

そこまで対処できるかってんだ。

 

モノレールが学園にむけて出発したのを見送ってから俺は屋敷に向かった。

んで、さっそく特訓に戻る。

残り少ない休学期間での習得と、取入れには時間が圧倒的に少ない。

その為に歩法『臆裏陽』の真髄を再び頭に叩き込みなおす。

そして、絹江さんからもらったヒントを足場にして…

 

「…ああ、なるほど、そういうことなのか…?

いや、だとしてもな…」

 

ぶっちゃけて言うと歩法『臆裏陽』と奥伝『陽絡舞』は限りなく近いものだということが分かった。

だが、明確に違うものがある。

『奇襲』であることは変わらないのだが、違いがあるとすれば

 

『臆裏陽』

・一直線上での肉薄

・可視ではあるが、反応出来ない速度の接近

 

『陽絡舞』

・決まった軌道は無い。

・不可視であり、反応そのものを許さない

 

 

で、絹江さんの言葉を組み合わせ、導き出される答え、それは…

 

「で、答えは出たようですね?」

 

「ええ、ただ、コレをこの短期間でできるかは判りませんが」

 

藪の祖過労が関係ない、今回は道場ではなく、護衛部隊総勢150名を引っ張って庭へ出ていた。

いや、いつも居るからいい加減に見慣れてしまっている強面グラサン集団ではあるのだが。

 

「んじゃ、よろしく頼む」

 

「「「こちらこそ、()」」」

 

その呼び方辞めて、お願いだから。

 

 

 

 

Kanzashi View

 

「えっと…その…」

 

学園の学生寮の戻って来てみたら…案の定というか、想像通りというか…。

死屍累々だった。

マドカ、メルク、鈴、ラウラ、クロエ、セシリア、シャルロットが娯楽室で倒れている…というか疲れ果てていた。

 

「姉上…帰ってきてくれたのか…」

 

「あ、うん、その…ただいま…」

 

「お兄さんのスケジュール、滅茶苦茶です…」

 

ああ、うん、やっぱり原因はそれだよね。

 

「かんちゃんお帰り~♪」

 

「あ、本音」

 

とびついてくる本音を受け止め、そのまま姿勢を整える。

何が楽しいのか、腕をパタパタと振り回してくる。

 

「かんちゃんが居ない間~、みんな頑張ってたよ~♪」

 

「うん、それで本音は何してたの?」

 

みんなが一夏に代わってスケジュールを片付ける間、それを緩和させるためにあちこちに交渉に出向いてもらうようにしていた()

 

「色んな人と~、色々と相談してたんだけど~、それを上回る勢いで次々に予定が飛び込んできました~」

 

…予定が飛び込んできた?

どういう事?

それも想定して緩和してもらうのが本音のお仕事だったよね?

 

「それに関しては私からご報告させてもらいます」

 

緩和どころか怒涛の勢いで予定が飛び込んできた事情を聞き出そうと思っていた瞬間、虚さんも娯楽室に入ってきた。

何やら手には書類を抱えていた。

 

「一夏さんのスケジュール()を参照にしましたが、例の風潮の扇動もありました」

 

それに関しては私も少なからず察していた。

でも、一夏はそんな人が相手だろうと自分にできるベストを尽くしてきていた。

自己犠牲(・・・・)ともとられかねない献身願望(・・・・)とも言える行動で、期待を上回る行動で。

だから、誰もが一夏に過度な期待を、そして願望を見出そうとする。

それが雪だるま方式で積み上げられていった結果が、長らく続く一夏のスケジュールの根底だった。

 

そして今の時代に蔓延している風潮に乗せられている者は、それすら利用する。

期待に対して、臨んだ結果を出せない状態になるのを…『役立たず』の烙印を一夏に焼付ける為に…!

そしてそれ今回は、一夏と一緒にいる皆にまで…!

 

「それらの行動をしていた者に関して調査をしてきました。

どうやら、『凜天使』と繋がりがあるようでした」

 

「調査ありがとう、虚さん」

 

「いえ、あのスケジュールの最中に調査するのは正直、骨が折れました」

 

虚さんも疲労が溜まっていたらしく、顔が少しだけやつれてる…。

 

「一夏が帰ってきたら、ご馳走作ってもらわないとね」

 

「えっと…私としては、その…」

 

あ、虚さんは弾君との食事会でも楽しみにしてるのかも。

お互いにクスクスと笑いあった。

屋敷に居る間は、一夏と一緒に食事を作っていたけど、これくらいのスケジュールの割り込みは良いよね?

 

「では、今回スケジュール()をねじ込んできていた連中を一か所に集めるように予定を組み替えます。

これにて皆さんの負担も半減は出来るかと思います」

 

…それでも半減程度なんだ…。

やっぱりこのスケジュール()をどうにかしないと、マドカ達まで過労死しちゃうんじゃ…。

早急に対処しよう、それか予定を白紙に戻そう。

 

 

 

一夏のスケジュール()を改めて見直してみる。

三年間の間使い切るつもりでいたのか、三年分が一緒になっている。

教師が持っている出席簿のような外見だけど、中身が異様だった。

一日一日のスケジュールは分刻み、あちこちから付箋が飛び出してそこに予定を追記していり、それでも足りなければ、飛び出す絵本よろしくルーズリーフが開く仕掛けになっていたり。

もう一学生が組んでいいスケジュールじゃない、というか付箋やルーズリーフに栞を挟みすぎててパンパンに膨れ上がっている。

なお、どういうセンスをしているのかは知らないけど、背表紙には『我がスケジュールに一片の死角無し』と書かれていた。

死角どころか死活問題になりつつあるんだけど…。

後々に訊いた話だけど、お父さんが一夏にプレゼントしたものらしい…まあ、どうでもいいけど。

 

 

 

「で、私のところに相談しに来た、と」

 

「はい」

 

虚さんと一緒に寮監室に来た。

 

「まあ、アイツは頼まれたことに関しては余程の事に『嫌だ』と思わぬ限り受け入れるからな。

それが今回の始まりだったわけだが」

 

「それだけではありません」

 

私は虚さんから受け取った書類を取り出し、それを手渡した。

上から下まで読んもらったけど、少し驚いた顔をしてもう一度読み返していた。

 

「成程、…形式上確認しておくが、事実なんだな?」

 

真実(・・)です」

 

「良かろう、早急に動くとしよう。

そうだな、この者らが部屋を留守にする瞬間、…授業時間中がいいだろう。

その時にまとめて拿捕する」

 

そう言い放ち、義姉(千冬)さんはペットボトルのミネラルウォーターを一気に飲み干した。

あれ?お酒、辞めちゃったのかな?

まあ、健康上は良いかもしれないけど。

 

「だが、あの愚弟め、アイツが居ない間にもアイツを中心とした騒ぎが起きて周囲を巻き込むとはな」

 

  こ 巻 居

  れ き な

  如 こ い

  何 ま の

  に れ に

織   る

斑   と

    は

 

 

…ムッ…

 

義姉(千冬)さん、その言い方は聞き流せない」

 

「…いや、冗談だ…すまない。

寧ろ…アイツは巻き込まれているだけだ、………アイツ等に…!」

 

 

 

でもさっきの冗談には、ちょっと呆れるかも。

 

「…で、一夏はどうしていた?

私としてはそちらも気がかりなのだが?」

 

ああ、やっぱりこの人は一夏の事を大切に思ってるんだなぁ。

同じだけマドカの事も案じているんだろうけど。

 

でも、どう答えようかな?

『慌ただしくしてました』、とかかな?

それとも『修行してました』とか?

あ、でも折角の休学期間だったんだし『ゆっくりと体を休めていました』とか?

 

「…言い淀んでいる時点で察しているんだが…?」

 

「あ、あはは…。

簪お嬢様、見抜かれてますよ」

 

「…う…」

 

返事も返してないのに見抜かれるだなんて…私って判りやすいのかな…?

 

「まあ、コレは本人に尋問…いや審問して確認するとしよう」

 

…そして処刑宣告。

一夏、逃げ切ってね…!

…難しいかもだけど。

 

「さて、ガキ共はもう寝る時間だ、部屋に戻れ、布仏、簪」

 

それを最後に解散したけど、私はその場に少しだけ留まった。

 

「ん?どうした?」

 

「いえ、あの…禁酒したんですか?」

 

そう、この部屋からはアルコールが排除されたのか、今は冷蔵庫にもビールの一本も無いらしい。

アルコールに弱過ぎるらしい私からすれば助かるけど。

 

「…マドカに没収されてな…。

今頃は誰の胃袋に入っているのか…」

 

あ、そういう事情なんだ。

 

 

 

Chifuyu View

 

一夏を休学させてからだろうか、マドカが少しばかり厳しくなった気がする。

これでは姉がどちらなのか判らない気がする。

 

「…掃除でもするか…」

 

部屋の中を見渡せば色々と散らかっている。

二週間ほど前にマドカと一緒に掃除をした形跡すら見当たらない始末になっている。

『掃除が出来るまで禁酒』を言い渡されてから少し経過したころだっただろうか、『掃除が出来る様になるまで(・・・・・・・・・)禁酒』とまで言い渡される私には、もはや立つ瀬もないのかもしれない。

ロマネ・コンティ、サングリア、飲みたかった…。

冷蔵庫の中に詰め込んでいたビールも没収され、ミネラルウォーターが並んでいるだけ。

日々のストレス解消に、飲んで忘れようと思っていたが、それすら出来ない。

 

ボトルを開きながら明日以降の予定を見てみる。

一夏が休学を終えた翌日には学年別の体育祭が待ち構えている。

その中の予定を見てみるが、被服同好会と体育委員会が談合して妙な競技も生まれてしまっている。

なんなんだ、この『仮装障害物競争』とかいうのは。

嫌な予感しかしない。




もう少しだけ一緒に

叶うなら、そう願いたくて

次回
IS 漆黒の雷龍
『獄雷冥魔 ~ 懐背 ~』

なんなんだお前ら?

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