IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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修正しても今回は少し薄いです。
原作小説、来月発売だそうですよ。


原作小説最新巻発売が四月になったらしいですけど、その次っていつになるでしょうね?
P.N.『噛むてくと』さんより
8巻発売

十二ヵ月  →4
↓      ↑
九巻発売   1
↑      ↓
十五ヵ月  →5
↓      ↑
十巻発売   2
↑      ↓
二十一ヵ月→ 7
↓      ↑
十一巻発売  3
↑      ↑
上記からの  ↑
法則でいくと ↑
30ヵ月    10
↓      ↓
十二巻発売 2019/10/25

仕事しろ作者…


獄雷冥魔 ~ 覚悟 ~

Madoka View

 

兄さんが学園を休学してから三日が経過した。

早朝からは自主訓練、それから機体を使っての訓練。

それが終わったらシャワーを浴びてから朝食、そのあとは授業。

お昼にも白兵戦訓練、午後の授業が終わったら訓練に修行。

さらには研究開発だとか、他の生徒への指導だとか料理の監督。

そういった事をクラスや学年に関係なくして回っているため、兄さんにはいつかのように自分の時間が失われていた。

必然的に眠る時間を削っている。

マトモに休む時間が失われていた。

あまりにも多忙すぎるスケジュールに、学園長が鶴の一声として兄さんの休学を申し出てくれた。

最初はそのスケジュールを理由に兄さんは不満そうに頭を抱えてたけど、簪や山田先生、姉さんの説得に折れて休学を受け入れた。

その期間は三週間。

そんなわけで兄さんの姿は学園内には見えない。

 

兄さんの休学を惜しむ声は幾つもあった。

…壊れたりクレーター湖になってたりだとかの都合により使えるアリーナの数も限られ、その使用権だとかでの諍いに兄さんが引っ張られることもあった。

あちこちで起きるトラブルにも兄さんは積極的に顔を出し、諍いを止めたりしていた。

それだけでなく、来年から編入してくるであろう男子生徒のための環境造りにもいそしんでいる。

文字通り、身一つで収まりきらない問題に、身一つで関与し続けていた。

 

まあ、中には兄さんを討とうとする派閥も居たけど、そういった側が居場所を失いつつあった。

兄さんからすれば知ったことではないのかもしれないけど、兄さんにはやることが多すぎた。

この休学期間でゆっくりと体を労わってほしい。

 

「改めて兄さんのすごさが判るよ…」

 

兄さんの部屋の机の上、そこで兄さんから渡されたスケジュール帳を皆で覗き込んでいた。

ずいぶん前に見た兄さんのスケジュール帳のそれよりも真っ黒だった。

付箋を挟んだり、ルーズリーフを貼り付けてまで予定を追記したりだとかしているせいで、スケジュール帳はパンパンに膨れ上がっている。

 

「織斑が休学している間、アイツが取り組んでいた件が放置されることになる。

そこで、各自分配し、分担してほしい」

 

姉さんからの指示で兄さんの後釜を一時的に受け持つことになったけど…。

こういった仕事、少しは分配してくれてもいいのに…。

食堂にて、パンパンに膨れ上がったスケジュール帳を受け取った瞬間、姉さんが兄

さんを殴り飛ばしたのは未だに鮮明な記憶として残っている。

椅子や机をかなりの数、巻き込んでたけど。

 

「こういった問題、私達でもなんとかしないとね…」

 

「お兄さん、仕事溜め過ぎですってば…」

 

「恐ろしいことにもこんなアホみたいなスケジュールを滞りなく進めてんのよね…」

 

「兄上、過労死したらどうするつもりなんだ…?」

 

多分、考えてないと思う。

むしろ、『どうやったらもっと効率よくスケジュールを回して、別のスケジュールのを割り込ませられるのか』とか考えてると思う。

この学園ってこんなにもブラック企業だっけ?

私達が言えたものじゃないけど、皆して兄さんに頼りすぎだってば。

 

「私も一夏と同じ国家代表にまで上り詰めてるけど…ここまでのスケジュールは無いよ…?」

 

「…国の上層部にも訴えるべきじゃない?」

 

むしろこの前の襲撃の時にも無理難題を言ってきたらしいし、その必要性も出てくる。

このスケジュール、血反吐を吐いてもまだ足りないってば。

移動も入れての分刻みのスケジュールとか見た事が無い…。

それに付け加えて、学園内のいろいろな問題解決だとかも含まれるからなぁ…。

兄さん程の働き者は見た事が無かった。

…一応、姉さんもこのスケジュールを学園長にも通告しておくとか言ってた。

兄さんのスケジュールの緩和を計ってくれるらしい。

…兄さんの休学期間を延ばしてもらうことも考慮したほうがいいかもしれなかった。

もしくは、スケジュールの一部を削ってもらうか…。

兎に角、兄さんにはゆっくりと休んでもらおう、そうしよう。

でも修行とかしてそう、…絶対やってるだろうなぁ…。

 

で、私たちは毎日大忙しだった。

訓練はやらなきゃいけないけど、改めて兄さんの仕事量に辟易させられていた。

 

「料理の監督がここまで疲れる仕事だなんて思わなかった…」

 

「しかも味付けを繊細にしたいとか…」

 

「アイツはどこの国の料理人だ…?

テリーヌだなんて料理は私は聞いた事が無いぞ」

 

料理監督の仕事は私と鈴と箒。

 

「う、うむ…つくづく兄上は私達よりも一線を画しているのが実感出来た…」

 

「だよね、しかもアリーナの使用権限の奪い合いとか…」

 

訓練実習はラウラとシャルロットで

 

「ES開発って難しいし、忙しい…」

 

「プログラムもこのままではバグに至るところもありましたし…」

 

開発研究は簪とクロエ。

 

「書類仕事ってこんなにも大変でしたかしら…財閥の仕事量の比じゃありませんわよ」

 

「手が…動かないです…」

 

生徒会の書類関連はセシリアとメルク

 

そんな感じでの分配だった。

当たり前な話、分担したら手が回らなくなり、全員CBFの高機動訓練のような勢いで奔走する羽目になったけど。

この人数で捌いても酷すぎる過労なんだけど。

普段からこんな事を一人で負担してたとか死んじゃうって…!

そのうえ睡眠時間まで削ってるとか正気とは思えない…!

 

「…食堂の食事って学園祭以降美味しくなくなってるのに、ここ三日は美味しく感じるんだけど…?」

 

「寧ろ食事だけが楽しみになってる気がする」

 

「この学園って収容所でしたかしら…?」

 

…あながち間違ってないと思う…。

この学園、懲罰房とかも用意されてる始末らしいし。

なお、一学期は箒がそこの常連になってたっけ。

 

「気の休まる時間は食事の時と、寝る時間だけか」

 

「でも、その寝る時間すらお兄さんは節約してたんですよね…」

 

「…一夏さんに直訴したいですわ」

 

「辞めろ、兄上に訴えてどうする」

 

「ねえ、明日のスケジュールなんだけど…」

 

簪が申し訳なさそうに開く兄さんのスケジュール帳。

そこには

 

『寮監室の掃除』と記されていた。

さらには事細かく。

・可燃ゴミの処理

・非可燃ゴミの処理

・下着、着衣の洗濯

・布団、シーツの清掃

とか書かれている

 

「ちょっと待ってくださいな。

下着類についても記されていますわよ。

織斑先生の下着とか、一夏さんが洗濯してますの!?」

 

「…ああ、姉さん、家事全般が苦手でな…」

 

兄さんから聞いた話だが…私が日本に戻ってくる前までは

 

炊事をすればボヤを起こして消防車が飛んできたらしい。

洗濯をすれば部屋一面泡まみれになったとか。

掃除をすればする前よりも汚くなり。

裁縫すれば赤い沁みが目立ってたとか。

そんなわけで兄さんが小学一年生の時点でそういった事が全般的にできるようになった。

挙句、ゴミ出しだとか、部屋の掃除も達者になって、姉さんはそれに依存するようになったんだろう。

…兄さんの処世術の一環を見た気がする。

 

「それと、このスケジュールだと…」

 

『寮監室の掃除』

その文字の下に

 

16:01~16:27

 

ここも例外なく分刻みだった。

…しかも時間が中途半端ながらも兄さんは全部終わらせるんだろうなぁ…。

よし、ここは死ぬ気で掃除をしよう。

なにせ

 

16:27~16:31

移動、更衣

 

16:33~17:53

実習監督

 

17:53~17:56

実習の片づけ

 

17:57~17:58

移動、更衣

 

17:59~18:01

移動

 

18:01~19:00

生徒会室にて書類処理

 

 

そのあとのスケジュールもすでに組みあがっている。

料理の監督だとか、移動も含めての分刻みのスケジュール!

これを達成するには、いかに姉さんの部屋の掃除を迅速に済ませるかにかかっている。

死ぬ…!死んでしまう…!

 

 

翌日の放課後。

 

「ではこれにて今日の授業を終わる」

 

「「「ありがとうございました!」」」

 

言い切るよりも先に私たちは兄さんの真似をして窓から飛び降りる。

寮へと向かい、入り口に置いていた掃除用具を引っ掴んで再び飛び出す。

そのままISを展開して寮監室の開けっ放しの窓から全員が飛び込んだ!

 

「汚っ!?」

 

ちょっと待って、この前、姉さんに禁酒を言い渡した後には私も手伝って綺麗に掃除したばかりなのに!?

 

「よ、予想外ですわ…!?

これを20分前後で片して終われと…!?」

 

そのあとのことは…まあ、省略ってことで。

そんなわけでスケジュールを全て終えてから兄さんと簪の部屋で寛いでいたけど。

 

「「「…………」」」

 

三日目の夜の時点で全員グロッキーだった。

軽い経験のある私と簪と鈴でもコレはキツい。

セシリアとシャルロットなんてそれこそ目が死んだ魚みたいになってる。

コレはコレでなかなかにホラーだ。

 

「メルク、大丈夫か?」

 

「疲れました…」

 

その言葉を最後に目を回して寝入ってしまった。

って、そこは兄さんのベッド!

 

「私ももうダメだ…!」

 

って箒まで!

 

「兄上、早く帰ってきてくれ…私達では負担が大きすぎる」

 

ラウラまで…!

 

まあ、そのあとのことは、想像に難くないだろう。

 

「む~…!」

 

全員が兄さんのベッドに横たわる状況だ。

 

「簪、そんなに膨れなくても…気持ちはわかるけど」

 

実際、兄さんに腕枕してもらえたらよく眠れるし。

 

「シーツや布団、明日には洗濯しとかないと。

兄さんも落ち着いて眠れないだろうな」

 

それに香水つけてるからだろうか、セシリアが匂う。

汗の匂いを誤魔化すためだとか、オシャレの為だとか、貴族の嗜みだとか言ってたけど。

どちらかと言うと、兄さんは香水の類を嫌ってる。

兄さんが言うには

 

『香水の匂いは料理の薫りをくすませる。

オシャレは必要かもしれないけど、キッチンでは不要なものだ』

 

らしい。

中でもコロンは極端に嫌ってる。

 

「えっと、明日の予定は、と…」

 

気が滅入るけど、スケジュール帳を開いてみる。

午前中はともかくとして放課後を把握しておこう。

 

有り難い事にも明日の放課後は料理の監督だけだった。

 

「良かった、明日は幾分か楽が出来そうだ…」

 

と思ったのも束の間だった。

 

 

何せ、明日の調理実習監督の仕事で行うメニューは

・ワーテルゾーイ

・ヤプウェチュニック

・タラモサラタ

・アサ・ワット

・パラチンタ

 

……ちょっと待って!?

聞いたこともない料理ばっかりなんだけど!?

そしてこれはそれぞれどこの国の料理!?

兄さん国外の料理料理も作れるの知ってたけど国境線とか飛び越えすぎじゃないの!?

寧ろどんな料理!?

こんなの要望してきた人たちも酷過ぎるというか、マニアック過ぎ!?

 

「兄さん早く帰ってきてえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!!」

 

心の底からそんな風に叫ばずにはいられなかった。

 

まあ、夜になって騒ぎ過ぎだと姉さんに怒られる羽目になったけど。

なお、兄さんの料理レポートに記されていたから、調理実習にはなんとか間に合った。

 

 

 

Chifuyu View

 

部屋の中が綺麗サッパリになったからか幾分か今は機嫌が良い。

マドカにあそこまで文句を言われたのは流石にキツかったが。

机の中まで整理されたのは些か不本意ではあるが…

 

「どうやらコレには気付かれずに済んだようだ」

 

机の引き出し、その二重底(・・・)の仕掛けには。

そこには、一夏やマドカにも気づかれないように一冊のアルバムが封じられていた。

十数年振りにそれを開いてみる。

最初のページには、産まれて間もない頃の一夏とマドカの写真が挟まれていた。

家族が増えたのだと、弟と妹ができたのだと嬉しがった幼い私が居た。

その後ろに両親は…写っていなかった。

 

「………コレが貴様等の答えだな…!」

 

私と一夏とマドカが写っている写真だけを抜き取り、スーツの胸ポケットに仕舞う。

それからページを繰る。

最後のページに両親が写っている写真が一枚だけ。

今更になってみたからだろうか、写真に写る二人の顔は笑顔のソレだが、その眼だけはまるで冷たく見えてしまうのは。

それ以外には何も挟まれていなかった。

それだけを確認し、そのアルバムを抱え、部屋を後にした。

 

「やあ、ちーちゃん、いい星空だね」

 

「ああ、そうだな」

 

屋上には束が待ち構えていた。

私がここで何をするつもりでいるのか、察しているのだろう。

束の視線が私が抱えているアルバムに向かうや否や、『虹霞』の兵装である『テスカトリポカ』が大量に展開される。

アルバムを空へ放り投げる。

それと同時に『雪片零型』を抜刀する。

 

一閃、続けて二閃、返す刃で三閃。

幾度も、幾度も繰り返す。

アルバムの欠片が屋上の床に触れるよりも早くにレーザーが射出され、灰となって夜風に消えた。

 

「見せてもらったよ、ちーちゃん。

相変わらずいい太刀筋してるじゃん」

 

「ああ、あの二人には…そしてあの二人にも(・・)強い姉であることを見せたかったからな」

 

だが、それももう終わりだ。

 

「私は、一夏とマドカの姉だ。

ただそれだけでいい。

その為にも…」

 

マドカはあの二人の身勝手で引き離された。

一夏はあの二人の人体実験を受け、自らの心を抉り取った。

 

もう、あんな想いはさせない。

 

「『織斑 四季』」

 

一度は捨てた復讐を一夏が拾い上げるような状況を作り出し

 

「『織斑 未帰(みき)』」

 

長い時をかけ、多くの者を狂わせた。

 

「あの二人は…」

 

なら、私が終わらせる

 

 

「私が…斬る!」

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうそう、学園長からちーちゃん宛てに預かりものだよ」

 

「学園長から?いったい何だ?」

 

束から封筒を受けとる。

何故だろうか、開けてもない段階で嫌な予感が止まらない。

だが開いてみない事に話が始まらない。

中身は…

 

 

『織斑千冬

上記の者に、以下の金額を請求する』

 

 

請求書だった。

しかも結構な金額だ。

 

「…当面は禁酒だな…」

 

くぅ…!

あの日にロマネ・コンティとサングリアを受け取れていたら…!


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