IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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明けましておめでとうございました←遅すぎ

Q.『激辛外道』を上回る『愉悦』ってどんな感じですか?
P.N.『極』さんより

A.『味覚の天敵』『一匙で1日分のカロリー摂取』『預金口座の大敵』
と思っていただければ。
例の店主ですが、翌日には解雇されたそうです。(財政的にも苦情が殺到した為)


夢想蓮華 ~ 辿道 ~

Ichikia View

 

あれから二日経過した。

倉持技研に連絡を入れてから実際に向かってみたが、やはり報告通りの状況だった。

襲撃犯は悉くが四肢両断された達磨状態。

戦艦や潜水艦に関しても悉くが撃沈されているが、燦々たる有様だった。

上空から襲ってきたIS部隊も四肢両断の達磨状態。

しかし、気になるのは、機体に搭載されていたコアが抜き取られていた件だった。

 

「騒がしいのが収まったらこいつ等が技研の出入り口の前に積み上げられてたんだよ」

 

と篝火博士が言っていた。

まあ、潜水艦だとか戦艦が海に放置されていたのはそれこそ無視しておこう。

 

「コアは回収したんですか?」

 

「いんや、私達が確認した時点でコアは抜き取られてたよ」

 

「そうですか…」

 

イギリス製第二世代機『メイル・シュトイローム』

フランス製第二世代機『ラファール・リヴァイブ』

アメリカ製第二世代機『ファング』

中国製第二世代機『龍』

日本製第二世代機『打鉄』

 

各3機ずつ、合計15機。

しかもどいつもこいつも銃器だとかがてんこ盛りの殲滅用パッケージでも載せていたらしく、物騒な外見になっている。

こと銃器に関しては俺からすれば文字通りの『目に毒』なので、そうそうに倉庫に放り込んでもらった。

途中で援護してくれた所属不明機に押し付けたのは確かだが、見事にやりきってくれたらしい。

信用する対価として『情報』を明け渡してきたが、それは未だに誰にも見せていない。

まあ、見せられる代物でもないしな。

ブツがブツとしても問題だろう。

亡国企業の内情だとか、その組織の拠点の一つだとかが記されてたりするとか。

 

「捕えたのはコレだけじゃないよ~」

 

妙な笑みを浮かべながら技研の地下施設に案内される。

廃材置き場の奥から女の絶叫が聞こえてくる。

 

「…あの…もしかして…」

 

「そう、ヘリやら戦艦やら潜水艦から引きずり出されたらしい連中だよ」

 

そんな連中まであの猛禽の搭乗者はご丁寧に引きずり出してきたのかよ、律儀な奴だな。

 

「まあ、中には手足の一部が欠損してる人も居てさ。

応急処置してるけど、あんな状態だから下手に解放も引き渡しもできなくてさ」

 

「だったらなんで俺をこんなところに案内してるんですか」

 

「連中をどうするか、君にも相談したくてね…」

 

普通に引き渡せばいいんじゃねぇのか…?

そう思ったがすぐに思考を戻す。

昨今のご時世、警察も実際にはアテにならなかったりする。

まあ、理由としては風潮のせい、と言えば判りやすいだろう。

 

「それを俺に相談されても困るんですけど」

 

実際に困る。

今でさえ罵声やら罵倒やら悪態やらのブラックワードが『旧廃材置き場』改め『即席拘置所』から響き渡っている。

教育に悪いことこの上も無い。

輝夜にあんな言葉を聞かせたくないので地下から立ち去ることにした。

 

「コネとツテを使って『新生国際IS委員会』に通知しておきます。

新しく設立されたアソコならああいった連中には容赦がないので」

 

「助かるよ少年。

あ、それと君のバイクは無傷だから安心してね」

 

ありがとうございます。

バイクが無事、そのことに関しては内心ガッツポーズをしている俺がいた。

現金過ぎるのは自覚しているさ、ああ、自覚している。

 

「んで、こっちがあの連中の機体ですか」

 

「そうだよ、なんか興味があるのかな?」

 

「………」

 

 

 

『IS』

正式名称『インフィニット・ストラトス』

元来の開発使用用途は、単独での大気圏離脱から、宇宙空間での作業、宇宙航行技術開発のためのマルチパワードスーツ。

だが、現在はその目的は全世界レベルで無期限で計画凍結され、兵器開発に向けられている。

ISを宇宙技術に利用している国は現在は世界中を見渡しても一切存在しない。

形としては『スポーツ競技』とされているが、その手に握られているのは兵器であり、他者を傷つける以外に能の無いものだけだ。

その能無しのものを使って定期的に国自慢と兵器自慢を『国際スポーツ』としているのが『国際IS武闘大会 モンド・グロッソ』だ。

ISを兵器開発として禁止している『アラスカ条約』も、この武闘大会にだけは抜け穴になっている。

 

だが、条約など知ったことではないと言わんばかりに暴威を振るう者も居るのも確かだ。

そういった連中の中には、中東国家の貧民や難民を相手に兵器実践という名義の『殺戮』を繰り広げている輩も居る。

そして、テロリストは、国境線を選ばずに蹂躙を繰り広げている。

無人機然り、コンピューターウィルスを利用してのハッキング然り、だ。

愚かしい話かもしれないが、戦争やら兵器やら、そういった類の物が歴史的な技術開発に繋がったりしている。

 

だが、更なる例外もいる。

市街地に居る一般人も同じだ。

『自分が女』だからという理由で偉ぶり、男性を貶めたり、在らぬ罪を負わせたりとかも珍しくもない。

ISに触れた事も無い無能な女もそんな感じだから、正直に言うと鬱陶しい。

例え『触れた経験が在る』だけの人間も偉ぶるのだが、それも理由としては理不尽だ。

例えIS学園の卒業生だったとしても同じだ。

学園で何かを成し遂げたわけでもない、一般生徒でしかなかったのに、他人を貶める理由にもならないだろう。

 

まあ、300000もの刃を持つ俺が他人のことなど言えた義理ではないのかもしれないが。

 

「で、どうしたのさ少年?」

 

「いえ、機体の損傷なのですが…」

 

血糊とかはこの際は無視する。

これはあの連中の血糊だろうからな。

それに多少の出血なら俺は慣れてしまっている。

 

「機体の損傷?」

 

この損傷には見覚えがある。

例の飛行機の事件だ。

これも写真から見たものと痕跡がなんとなく似ている。

となれば…あの飛行機をやったのはあの猛禽の機体…?

いや、いまいち確証を持てないな。

ここは判断は保留しておこう。

 

「この機体だけど、どうしようかなぁ」

 

「解体して利用すればいいでしょう。

『コアだけでなく機体をも奪われた』国家は基本泣き寝入りするしかありませんからね」

 

「まあ、それもそうか」

 

解体して使える部品はそれこそいくらでもあるだろう。

リサイクルだと思えば使うのも簡単だ。

材料費だとかの予算も削れて、必要な部品も手に入る、一石二鳥だ。

まあ、こんな思考がテロリストの始まりなのかもしれないが。

 

「じゃあ、俺はこれで戻ります」

 

「あいよ、お疲れさ~ん」

 

相変わらず緩いな、あの人は。

しかし、ファッションを何とかしてほしいものだ。

以前はISスーツの上に白衣。

前回はスクール水着の上に白衣。

そして今回はスポーツ用レオタードの上に白衣ときたもんだ。

なお、今回は手書きだったのだろうか、胸元には手書きにて『びりがか』と来た、なんで左右逆に読ませる仕様になってんだ。

意識しているのかは知らんが俺からしたらいい迷惑だ。

 

『浮気はダメだよ、パパ』

 

ドガッシャアァァァァァンッッッ!!!!

 

走行中に横転した。

めちゃくちゃ痛ぇ…!

 

「輝夜、どこで覚えた、そんな言葉」

 

『一学期のころに散々言われてたでしょ?』

 

…そんな言葉覚えちゃダメだろうに、ホントに教育に悪いなぁ…。

あ、バイクは無傷だ、良かった良かった。

肋と鎖骨にヒビ入ってるっぽいけど、気にしなくていいや、放置しておいてもそのうちに治るだろう。

今はそれよりも考えることが多いんだ。

 

えっと、ISコアネットワークの更なる上位ネットワークの解析と、それを搭載するためのES用送受信デバイスの開発に、エネルギー経由バイパスの開発。

それに機体開発だって急がなきゃならん、それに先日出来たばかりの第6アリーナのクレーター湖の問題だとか。

それと、あの猛禽の機体の搭乗者が渡してきた亡国企業(ファントム・タスク)の内情だとか、組織の拠点の一つの情報の真偽だとか、今年色々と起こりすぎているイレギュラー問題だとか。

それだけじゃねぇ、一般生徒から頼まれている料理のコーチングだとか、IS訓練のスケジュール。

他にも、来年から入学してくるであろう男子生徒のための環境作りだとかの問題もある!

そして生徒会の仕事から逃亡しようとする楯無さんをとっ捕まえるのも俺の仕事の一つになってきているから問題だ。

将来の問題の前に、現在の障害が多すぎるだろうに。

頼むから俺のスケジュール何とかならないか!?

 

ドガッシャアァァァァァァァンッッッ!!!!

 

手っ取り早く言うと、運転しながらの考え事って本当に危険だよなって話だ。

お、バイクは無傷だ良かった良かった。

それに単独事故みたいだし、巻き込まれた人も居ないときた。

久々に幸運に恵まれたみたいだ。

少しばかり機嫌が良いし、今日の夕飯には少しばかり豪華なものを作ってみるかな。

えっと、今夜作るメニューは何にするか…。

 

なお、二度あることは三度あった。

学習しろよ、俺。

あ、今更か。

 

 

 

 

 

 

 

「あら、お帰りなさい一夏君。

どうしたの?

あちこち土埃が着いてるけど」

 

学園に戻ってから、俺は生徒会室に訪れた。

なお、千冬姉にも来てもらっている。

 

「気にしないでください、それよりも確認したいことがありまして」

 

俺はあちこち破れた制服の内ポケットから一本のUSBを取り出して机の上に置いた。

あの猛禽の機体の搭乗者が明け渡してきた情報が詰め込まれたUSBだ。

 

「…これは何だ、織斑?」

 

「ある筋から手に入れた機密情報です」

 

流石に亡国企業(ファントム・タスク)実働部隊副隊長からもらいました、とか口が裂けても言えないよな…。

 

「ただ、真偽の程が俺には確認が出来ないので、裏付けの調査を頼みたいんです」

 

組織の拠点の一つが京都府に存在しているのは何らかの裏付けができるかもしれない。

だが、組織の内情については流石に難しいだろう。

出来ることなら本拠点の事も情報に入っていたら良かったんだが、そんな虫のいい話は転がっていないだろう。

 

「内容は後で確認させてもらうわね。

結構な準備も必要かもしれないから。

千冬さんもそれでいいですか?」

 

「内容如何にもよるがな、裏付け調査を依頼してくるほどだ。

よほどの重要機密情報なのだろう。

それを私すらも知らん情報ルートを使ってまで得てくるほどだ」

 

「…俺が疑われるのは百も承知だ。

だが、俺だってこんな情報を手に入れるとは思ってもみなかったんだ。

それに入っている情報を不用意に信じるつもりはないが、万に…いや、億に一つの可能性があるとしたら調べてもらいたいんだ」

 

「…良かろう、だがあまり不審なことはやってくれるなよ」

 

不可抗力である。

 

 

 

一つのヤマは越えた。

多少の嫌疑を向けられたのは予想していた通りだった。

まあ、仕方ないといえば仕方ないのだが。

だが、悔いは無い。

 

「後、気になることがあるとすれば…」

 

中庭で戦った男の素性だ。

道連れにするつもりで自走式の機関銃をブッ放してきたあの男。

 

「殺しに舞い戻ってやる」

 

その言葉を最後に息を引き取った。

だが、奴と戦っている最中に気がかりになる節はあった。

 

上空へと投げた刀が落下し、奴の右腕を勢い任せに斬り落とした。

その際に、奴は確かに『また(・・)』といった点だ。

…俺が以前に奴の腕を斬り落とした事が在ると言うのか…?

ダリル・ケイシーの場合は、拳銃を暴発させて右手を吹き飛ばした。

対戦して追い詰めた際には右手を装甲とまとめて斬って捨てたが、あの男と同一人物と考えられるわけもない。

ダリル・ケイシーはすでに死亡が確認されている。

死者が蘇るなどナンセンスにも程がある。

まあ、俺の場合は例外中の例外だが。

 

あんな奴とは戦った覚えもない、あんな奴との遭遇は今回が初だった筈だ…?

 

「…黒翼天、お前は何か知ってないのか」

 

『知るか』

 

だろうな。

いずれにしても、あんな奴との遭遇は二度とお断りだし、奴は俺を道連れにするつもりでの攻撃で確実に死んだ。

危惧する必要も無い筈だ…筈なんだ。

 

Prrrr!

 

「おっと、電源切るのを忘れてたか」

 

だが着信したことだし応答しておこう。

 

「束さんか、どうしたんだろうか?」

 

そんな風にボヤいている間に勝手に通話画面に代わり、さらにはテレビ電話の状態になった。

オイちょっと待て、俺の携帯にこんな機能は搭載されていなかったはずだぞ、どうなってんだよ!?

 

『は~い、いっくん!

いっくんが戦った男の解析が終わったよ!

地下の私のラボに来てね♡』

 

…まあ、この人なら色々とやらかしそうだよな。

部屋にクロエがこっそり隠しカメラを設置しても黙認していたくらいだし。

 

言われるがままに地下施設の一角に備えられたラボへと通う。

その先にはやはりと言うべきか、千冬姉に山田先生に楯無さん、更には厳馬師範も姿を見せていた。

 

「情報は私のところにも届いているよ!

大活躍だったそうじゃないか一夏君!」

 

そういって俺の頭をワシャワシャと撫でまわしてくる。

ああもう、その親馬鹿いい加減に卒業してくださいよ。

 

「無理でもやらなきゃならなかったんですよ。

それに、あまり詳しい事は判らないんですけど、皆が動けない状況だったみたいですから」

 

千冬姉に視線を向けるが、沈黙して答えようともしない。

山田先生も同じくだ、俺には教えられない何かを隠しているのか?

いや、この際それは危惧しないでおこう。

それよりも、だ。

 

「束さん、先ほどの連絡の内容ですけど」

 

「うん、早速話すよ」

 

俺が多少疑われたとしても安い話だ、俺がこの人たちの信頼に応えればいいんだ。

 

壁の一部が開き、巨大なカプセルが姿を現す。

その中には…奴が居た。

遺体であったとしてもその身を戒める拘束具は外されていなかった。

20代半ば、髪は色を失ったかのような白、そして獰猛そうな輪郭。

まぎれもなく、俺が中庭で交戦した男だ。

 

「この男、DNAを調査して判明したんだけど随分と昔に世間様を大騒がせした人間だったよ」

 

大昔?

こんな20代半ばの男が?何の冗談だ?

 

「『ジャック・ザ・リッパー』って言えば判るかな?」

 

「切り裂きジャック、ですか…!?」

 

楯無さんもさすがに驚愕を隠せないでいたようだった。

千冬姉も同じく、だ。

だが、ありえないだろう。

『切り裂きジャック』といえば、もう一世紀以上も昔の人間であり、最後は霞のごとく姿を消したとも言われている。

そんな人間が生きているはずもない、いや、生きていたとしても、こんな20代の姿で現れるはずもない。

 

「…それは、子孫という事かね、博士?」

 

「さあ、どうなんだろうね。

切り裂きジャックは正体不明とされていましたが、実際はそれがどこの誰なのかは特定できませんでした。

それ故に、逮捕も出来なかった」

 

おいおい、それじゃあ話がピンからキリまで繋がらないだろう。

 

「言いたい事は判るよ。

一つ『何故、その男が今になって姿を現したのか』。

二つ『何故若い姿のままなのか』。

三つ『襲撃の動機と亡国企業との関係性』。

…こんな所かな」

 

それだけじゃないっての




未だに見えぬ影の先

届かざる視線の先

どれだけ手を伸ばせど

それは霞の如く遠ざかる

次回
IS 漆黒の雷龍
『夢想蓮華 ~ 無銘 ~』

で、結局正体不明ですか

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