IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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Q.バレンタイン、ホワイトデーの小説で楽しませてもらいましたが、ハロウィンの番外小説は執筆されるのですか?
P.N.『IS学園用務員志望者』

A.現在執筆中ですとも。
もう少しばかりお待ちください。

Q.輝夜や黒翼天もスンゴイですけども『零落白夜・識天』って、一番のチート臭がするっすね。
そのアイディア考案に至るまでの経緯が知りたいっす。
P.N.『バンブー』

A.実は一夏君VS千冬さんを執筆する随分前から…それこそ執筆スタート時から『零落白夜・識天』に関しては推敲を続けていました。
それこそ最初は『直撃させたらエネルギー奪取』というものを頭の中で考案し、そうなるようにしていたのですが、別作者様に先行されましたので、「同じものになっていけない」と思い、大急ぎで内容変更したのでした。
一夏君の姉上なので、どうせなら黒翼天や輝夜に対する最終手段ともいえる能力にしようと思うに至り、現在の『零落白夜・識天』の『エネルギー自動搾取、時間経過におけるその速度、攻撃威力の累積加速』に至りました。

Q.原作の簪お嬢様は猫アレルギーですが、今作の簪お嬢様も猫アレルギーですか?

A.いえいえ、そのような設定は無いですよ。
寧ろ、原作での『簪ちゃん猫アレルギー』こそ急拵えの後付け設定みたいに思えて…

Q.今作の一夏君は『猫派』『犬派』のどちらですか?

A.
一夏「…猫派かな」

作者「…身内贔屓じゃないのかい?」

一夏「気のせいだ」


夢想蓮華 ~ 戦禍 ~

Ichika View

 

「あ~…千冬姉、忙しいところ悪いな」

 

『何の用だ、こちらも忙しいんだが』

 

おいおい学園でも何か起こってるのか?

 

「倉持技研に襲撃者だ。

例の…何つったっけ?…ゴキ天使だっけか?」

 

『凜天使、だろう、まさか同時に襲撃が起きているとはな…それで、どうした?

政府を介しての増援を要求したいのか?』

 

まさか、それこそ悪い冗談だ。

政府は穏健な人に変わりつつあるらしいが、それだけだ。

過去の強硬派が居なくなったわけではない、増援を依頼したところで来るかどうかも怪しいところだ。

 

「いや、必要無い。

俺達だけで充分だ、こっちが片付き次第学園の防衛に戻る」

 

『すまんな、学園の防衛システムは束が復旧させている真っ只中なようでな。

だが、それだけを確認する為だけに連絡を入れてきたわけではなかろう?』

 

流石は我が姉貴、勘が鋭くて話がサクサク進む。

 

「応援は不要っつったけど、この人数相手じゃ手加減してられねぇんだ。

だからよ、幾らか殺すことになるが、構わないか?」

 

『冗談で言っているようではないようだな。

だが、お前は本当に判っているのか。

テロリストといえども相手は人間だぞ、現に』

 

「俺はそのテロリストのせいで二度も死んだ人間だ。

そろそろあの連中にも命の重みを理解させる必要があるだろう」

 

『加減はしておけよ、そして極力生け捕りにしろ』

 

なし崩し的ではあるが許可は出た。

さあ、どれだけ生き残れるのか…。

出来ることなら、ISを兵器とするのはこれで最後と願いたいんだがな。

 

「レイシオは上空の部隊、ペイシオは海上部隊、ウォローはIS部隊、俺が歩兵部隊を、と言いたいところなんだがなぁ…」

 

黒翼天が俺の言うことなんざ聞くわけもないんだよなぁ…。

 

『勝手にやらせてもらう』

 

と言って本当に勝手に飛んで征ってしまっていた。

今に始まった事では無いが、本当に勝手な奴だよ。

 

「インフェルノ!」

 

ドゴォォォォォォォォンッッ!!!!

 

なんって言ってる場合じゃないか。

 

「たかが研究所にミサイルを撃ち込もうだなんて非常識な奴らだな!」

 

拡張領域から兵装を一斉展開、150000もの刃を召喚する。

その中から俺は最も巨大な刃を両手に掴み取る。

16mもの刀身を誇る鋼の塊。

そこにレーザーで構成された刃が灯る。

右手に握った剣の銘は、『シュベルト・ゲベール』。

左手に握った剣の銘は、『アロンダイト』。

そのどちらもが対人戦闘、対IS戦闘に向けられた剣ではなく、その本質は…対()刀だ。

 

「まずはあの艦からだ、叩き斬るぞ輝夜!」

 

極大極重量の刃を肩に担ぎ、一気に海上部隊を断ち切るために俺は飛翔した。

途端、敵艦から機関銃だの砲弾だのミサイルだのによる弾幕が張り巡らされる。

 

「舐めるなよ…」

 

周囲に展開していた刃が一斉に空をかける。

機関銃、砲弾、ミサイル、そのすべてを射抜き、それと同時に砲台すらも射抜く。

 

「おおああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!

 

極大の刃を大上段に振り上げ、そして…一切容赦も無く振り下ろした。

 

海上に…紅蓮に染まる大輪の華が咲いた。

 

「こんなの、貴方がやる事無いよ。

ほら、さっさと皆の所に行ってきなってば」

 

今し方、俺は右手に握ったシュベルト・ゲベールを振り下ろした…筈だった。

だが、振り下ろすより直前に艦は爆散した。

艦の陰から出てきた何かが容赦のない砲撃をぶち込んだからだ。

 

「誰だ、お前…!?」

 

「だから、そんな事を気にしてる場合じゃないでしょ?

こうやってる今もIS学園では騒ぎが起きてるんだよ?」

 

声には敵意も殺意も無い。

それどころか、命そのものに対する尊厳すら持ち合わせていないかのようだった。

 

「私を疑ってる場合じゃないでしょう?

まだるっこしいなぁ。

じゃあ選択肢を提示してあげるよ。

一つ

『倉持技研の防衛と凜天使の撃退を私に任せてIS学園に全速力で帰投する』。

ああ、研究者達も私が守るから、その点に関しても問題は無いよね」

 

「…残りの選択肢とやらも聞いておこうか」

 

「あはっ☆いいよ~♪

もう一つの選択肢は、『私を信用しないで倉持技研も学園も諦める』、でどうかな~?」

 

めちゃくちゃ極端過ぎる選択肢じゃねぇか…。

だが、コレだけは知っておきたい。

そして問いただしておきたい。

 

「お前を信用できるような根拠はあるのか?

顔も見せずに声だけを聞かせ続けるだけのお前を…!」

 

「あるよ。

だって貴方にここで死んでもらったら困るのは私も同じだからね」

 

…見えないな。

姿だけでなく、目的も、動機も…!

シュベルト・ゲベールを納刀し、腰から雪片を抜刀する。

 

「だから、そういうのを時間の無駄っていうの。

開発研究で忙しくしてるなら『時は金なり』!『タイム イズ money』ってのは厳守でしょ!?」

 

何なんだ、コイツ…。

ひとまず敵ではない、というのは本当のようだ…。

だが、信用していいのか…?

 

「なら、コレならどうかな?

開発途上のES、将来テストパイロットしてあげる♪」

 

「間に合ってる」

 

「…あぅ…」

 

「だが、現状即座に判断するには時間がいくらあっても足りそうにない。

…非常に不本意だがこの場を任せる」

 

ああ、この場を任せるというのは非常に不本意だ。

どこの誰かもわからぬような奴に「この場を任せろ」だなんて言われて二つ返事で頷くような輩が居たら見てみたい。

 

「だが、この場を任せる以上、任せていいのだと言えるような何かを要求しておこうか」

 

「じゃあ、対価に情報をこの場で支払うね」

 

煙の中に隠れる機体から情報が送信されてくる。

いったいどのような情報なのか、即座に拝見を…。

 

「なん、だ…コレは…!」

 

おいおい、コイツは正気か?

 

「…亡国企業(ファントムタスク)の内情。

これで対価としては充分かな?」

 

…ありえない。

俺もかの組織については触りだけを聞いている。

半世紀以上も活動を続けている組織だ。

未だにその組織の全貌は判明しておらず、その本拠点も判明していない。

 

だが、譲渡された情報には、世界中に点在する拠点が一つが記されていた。

なんで内情を知っているんだ、コイツは…!?

 

北で爆音と紅蓮。

潜水艦が浮上した直後に沈められたようだ。

そしてその上空には…猛禽が佇んでいた。

 

「私はね、その組織のメンバーの一人なの。

亡国企業(ファントム・タスク)実働部隊副隊長。

だけど、名前は秘密」

 

猛禽が翼をはためかせ、南のヘリを切り裂く。

そのままスピードを維持したまま、次のヘリを撃墜し、ラファールリヴァイブを両断する。

…間違いなく手練れの動きだ。

 

『ボサッとしてんじゃねぇっ!』

 

黒翼天の声が響き、レイシオが傍らに飛翔し、砲撃に反撃する。

 

『おい、なんだアイツは?』

 

「判らん、敵じゃないらしいが…。

この際四の五の言ってらんないか」

 

通信回線は未だに開かれたまま。

だが音声限定通信だ。

 

「ここらのは俺がやる。

お前は技研に近づく歩兵部隊を頼むぞ」

 

「オッケー☆」

 

「まだ訊きたいことが幾つもある、答えてもらうぞ」

 

「いいよー☆

スリーサイズから靴のサイズまで何でも」

 

プツッ

 

通信を切った。

もういろいろと面倒そうな輩に思えたからというのは断じて嘘ではない。

なんか面倒な奴と知り合ってしまった気がする…。

だが、すべて任せるようではやはり立つ瀬がない。

 

「じゃあ、学園に戻るためにもここらの敵は一掃しておかないとな!」

 

レイシオに続き、ウォロー、ペイシオを呼び戻させ、右腕の龍咬(たつはみ)にドッキングさせる。

照準は、残る潜水艦に戦艦、機動ヘリにISが15機。

 

「まとめて消し飛べ!

『エクサフレア』ァァァァァッッッッ!!!!!!」

 

学園内部では使用が禁じられているが、この海上であれば文句は無いだろう。

右腕から雷光を噴出させながら、そのまま

 

「おおらああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!」

 

横方向に薙ぎ払う。

薙ぎ払った傍から次々に艦が爆散していく。

 

「さっすが~♪」

 

「こっちは敵メンバーの生け捕りの指示も受けている。

艦をこれだけ潰せば意気消沈にさせるのも容易なはずだ」

 

「あとは私に任せて学園に戻りなよ。

歩兵部隊はそんなに人数が居るわけでもないみたいだから」

 

「任せるぞ」

 

「オッケー☆」

 

何者なのかはわからない。

だが、自身があの亡国企業(ファントム・タスク)のメンバーであることは自白した。

信用はできない、だが、今は四の五の言っていられる状況ではなさそうだった。

 

「『災厄招雷』発動!」

 

だが、学園に何らかの危険が差し迫っている以上、これ以上は気にしていては時間の無駄だ。

非常に不本意だが、任せるのが妥当か。

 

目の前に立ちはだかろうとする打鉄をシュベルト・ゲベールで搭乗者ごと掻っ捌く。

速度を維持したまま、ラファール・リヴァイブをアロンダイトで両断。

それを最後にわき目も降らずに俺は海域から離れ学園へと飛翔した。

 

 

 

 

??? View

 

「流石はお兄ちゃん、あれだけの数の艦に加減もなしに吹っ飛ばしちゃったか」

 

海に集まっていた艦はこの国の軍にも見つからず、また、レーダーにも感知もされずに倉持に近づいた。

その技術の正体は、総統の治療にあたっているという名目で近づいている、あの二人の研究者によって開発された光学迷彩技術だった。

電波を吸収することによってレーダーに感知されないだけじゃない。

視認不可になるだけでなく、それを発動させている間は、姿だけでなく、熱源や音までをも隠してしまうという悪質なもの。

確か、この技術の固有銘は『ユニバーサル光学迷彩』だったかな。

 

「でも、制限時間があったみたいね」

 

光学迷彩が発動し続けていれば倉持技研に近づき、砲撃も続けられていたはず。

にも拘わらず、姿を見せたということはその光学迷彩技術には時間制限があったと思われる。

それすら知らず、この女性利権テロ組織は使っていたのだから幼稚だ。

 

「なんで邪魔をするのよ!?

あんな男も、それにソイツに協力するような場所なんて消してしまえばいいものを!」

 

「あの男が居る限り世界に平穏が無い!

私達は世界の為に我々が持てるすべての戦力を投入しているんだぞ!」

 

「それに!

ISの存在を脅かすようなものを作ろうとする人間も!

研究を進めるような研究所などこの世に必要ない!」

 

「それを推し進めようとする輩など…織斑一夏など抹殺すべきだ!

この世界の意志が判らないの!?」

 

くだらない。

くだらないエゴと義憤と自尊で、あの人を…隊長(お兄ちゃん)を殺そうとしたっていうの…?

 

私の周囲に集まった残存機体は…

日本製第二世代機『打鉄(うちがね)』遠距離砲撃用パッケージ撃鉄(げきてつ)装備型。

フランス製第二世代機『ラファール・リヴァイブ』高火力パッケージ搭載型。

イギリス製第二世代機『メイルシュトローム』、ロケットランチャー搭載型。

中国製第二世代機『(ロン)』、大型砲搭載型。

アメリカ製第二世代機『ファング』。

それぞれ各3機、合計15機。

これがコイツらの最後の全戦力らしい。

 

世界中の汎用機を奪取してきたらしいけど…残念(ざぁぁぁんねぇぇぇぇん)

お兄ちゃんに牙を剥いたのなら…生かしておいてなんかやらない。

()ってあげる、できるだけ苦しませてあげるからね…。

 

「…消えちゃえ…。

恐怨禽斬(きょうおんきんざん)』発動」

 

キヒ…キッヒヒヒヒヒヒ…………キヒヒヒヒ……消えちゃえ…。




憩いの時

けれど、悪意は静かに忍び寄る

襲撃者は迫る

それは、もう目の前に


次回
IS 漆黒の雷龍
『夢想蓮華 ~ 想光 ~』

なんでスカートを掴むんだ!

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