P.N.『蛇足』さんより
A.楽には死ねないでしょうね、確実に。
Q.女の子達の胸囲の格差社会を教えてほしい、と以前に申した者ですが、一部に女の子とは言えn
A.言わせねぇよ!?
成人年齢に至ってて女の子とは言えない人が混じってるだなんて言わせねぇよ!?
ふぁっ!?背後から凄まじい殺気が(此処から先は赤黒く染まっていて読めない)
Kanzashi View
「負けた…」
みんなと 戦闘訓練をしていた中で私は、お姉ちゃんと試合をした。
それこそ、最初から一切の手加減は無しで。
けど、それでも負けた。
決定的な差があるとすれば、それは能力の有効範囲の設定。
私はフィールド全土、そしてお姉ちゃんはアリーナの外へも干渉した。
ミステリアス・レイディと天羅の能力の共通点があるとすれば、それは膨大な量のナノマシンによる広範囲への干渉。
私は無意識にフィールドだけに干渉するに止めていた。
けど、今回はスケールの規模でもお姉ちゃんに軍配が上がった。
「お、簪、気が付いたんだ」
「鈴…」
「楯無さんなら千冬さんに呼び出されたわよ。
何もかも吹っ飛ばしたからってことで、拳骨とお説教をもらいにね」
ニシシシと鈴が笑いながら私を見下ろしてくる。
私もそろそろ体を起き上がらせ、アリーナのフィールドを見渡してみる。
…地獄絵図というか…何もかもが吹っ飛んでいた。
「…手加減無いなぁ…」
「いや、お互いさまでしょ。
簪の場合は海を広範囲にわたって凍り付かせてたわけなんだし」
観客席も実況席も吹っ飛び、マドカの砲撃でフィールドは焦土と化していた。
そこにあの爆発で、抉れてしまってた。
「皆、そろって強くなったと思わない?」
「それに関しては私も思ってる。
一夏が育てたからだろうけど」
「家庭教師のバイトがこんな形で出るんだから教育者にどんだけ向いてるんだか」
中学生の頃は私も苦手な科目に関して教えてもらったためしが有ったっけ。
あの頃には本当に助けられたなぁ…。
「で、今は機体の開発元に出かけてるんだけどね。
どんな開発研究になるのかは私も楽しみ」
どんなパワードスーツを将来設計をするんだろう。
私も手伝ってる一人として興味が強く出てきていた。
Ichika View
どこぞの目障りなテロリストをまとめて切り刻み、千冬姉に連絡をして政府側に引き取らせてからも俺はバイクを走らせる事数時間、倉持技研に到着していた。
「前回に来た時も思ったが、自然の中に囲まれているよな」
周囲は緑化でも図っているのか、いくつもの山の連なりに、数多くの木々に囲まれ、清流が流れている場所もある。
場所によっては海風も吹き込んでいる。
一般的な工場とはかけ離れたイメージがある。
「さてと、バイクは…以前にも使った駐輪場にでも置かせてもらおうかな」
それと、バイクのコンソールからディスクを取り出しポケットに仕舞う。
このバイクもESエネルギーで稼働しているから、これも研究開発には使える代物だ。
束さんが提唱した次世代型パワードスーツである
だが、まだそんなに開発が進んでいるわけでもない。
女性利権団体だとかのテロリストがES開発を目障りに思い、襲撃を仕掛け、人材に機材が文字通り消し飛ばすパターンもある。
実際に、そんなケースが幾件か続いている。
「やあ、織斑君、待ってたよ」
「どうも、お久しぶりです」
建物の前で倉持技研のスタッフでもある篝火博士が待ち構えていた。
最近ではES開発のためにスペース確保をしていたっけか。
「輝夜の調子はどうかな?」
「相変わらずですよ。
データ解析だとか抽出に関しては頑ななようで」
「ありゃぁ、相変わらずだね。
ESが開発できれば再び時代の転換期が来るんだけどね」
ISの開発に関して終わりを告げる頃合いがこの人にも見えているらしい。
どうにも俺と同じくらいの頃合いに停滞すると見ているとか。
「それよりも、なんでスクール水着なんて着てお出迎えなんですか?」
そう、この人は束さんと違うベクトルの変人だ。
以前はISスーツの上に白衣だったが、今回はスクール水着の上に白衣ときた。
しかも胸にはなぜか『かがりび』と書かれているが、楯無さんとは違い、字が汚い。
スタイル云々に関しては特に何も言わない。
それに俺には簪がいるのだから、ほかの女性にはそんな視線は向けることもない。
「さっきまで川に潜ってたんだよ。
ちょうど空腹だったから魚を焼いて食べようかと思ってね。
少年もどうだい?」
スクール水着の上には白衣。
右手には銛、左手にはとれたてピチピチの川魚だ。
「遠慮しておきます」
「ありゃりゃ、そりゃあ残念。
って何だいその視線は?
変人か何かを見るような視線をしちゃって」
充分すぎるほどにアンタは変人だよ。
束さんといい、篠ノ乃といい、自覚のない変人って扱いに困るなぁ…。
「で、データはあるのかな?
あのバイクのデータは!?」
「ええ、こちらです、どうぞ」
「よっしゃぁ!これで開発を進められるかも!」
まあ、それで研究開発がすすめられたら俺としても万々歳だ。
博士に続いて俺も建物に入ろうとした瞬間だった。
「篝火博士ぇっ!
水浸しの状態で建物の中をうろつかないでくださいと何度言ったら判ってくれるんですかぁっ!」
「細かいこと気にしないの。
あ、バスタオル持ってきて」
持参してなかったのかよ、どおりで水浸しでの登場だと思ったよ。
「持参してくださいよ!」
あ、俺の代わりに言ってくれた。
「じゃあ、乾くまで待ってる」
「そのままでいるつもりですか!?」
風邪ひいても知らんぞ、俺は。
ほかの女性スタッフまですっ飛んできてから数十分後、ようやく研究開発の話に入れた。
「篝火博士は、束さんの開発したISをどう思っていますか?」
「まあ、世紀的な発明だけど、それでゆがんだ時代が生まれたものだとも思ってるよ。
女尊男卑なんてそれこそ副産物のようなものでしょ?
動かしたこともない女性がなんで男性を迫害するのか、とか思ったことがあるはずだよ少年?」
まあ、確かにそうだ。
酷い言い方をすれば人類の半数が迫害の対象となった時代が現在のそれだ。
束さん問うてみたが、あの人もなぜ俺がISを稼働できるのかはわからない、とのことだった。
その言葉から推論が一つ生まれる。
それは『女性のみが稼働可能な理由も定かではない』というもの。
まあ、それも問うてみたが含み笑いを見せられただけだった。
これはあくまでも俺の推論に推論を重ねたものでしかないのだが、あの人は自分を超える誰かの登場を期待していたのではないだろうか。
言わば、ISによって人類を試し、それを超越した存在を作り出せる誰かを待ちわびていたのではないのか、と。
だが、ISの開発により、歪んだ時代が生まれ、個人の意思が弾圧されるようになった。
だから、再び時代の転換期を自ら作り出したのではないのか、と。
「ISの開発は10年もすれば停滞を迎える。
俺はそう推論していますが、博士はどう思いますか?」
「私も同じくらいに停滞すると思ってるよ。
だから私たち科学者や開発者は博士が提唱してくれたESの時代を作り出すようになったんだよ。
それに、少年が提唱した『汎用型パワードスーツ』の開発も面白そうだからね」
俺が提唱したESはいまだ机上の空論に近い。
それこそいまだに霧の中を手探りで進んでいるかのように。
だが、否定はされていない。
「イレギュラーな俺が言うのも妙な話かもしれませんでしたがね」
「人類なんて全員がイレギュラーだよ。
双子だろうが何もかも同じってわけじゃないだろう。
見た目が同じでも魂の中身までは大きく違うものさ」
良い事を言ってくれる。
人類皆イレギュラーか。
「それに、時代は変わるもの。
いつまでもISに固執しようとする女性利権団体や女尊男卑主義者は言わば、時代の波に乗れない負け犬だよ」
「時代の波を作り上げようとしている俺たちが勝者とは限らないでしょうけどね」
こんなおしゃべりをしている間にもお互いにキーボードをタイプし続けている。
様々なデータがコンソール上に流れているが、いまだにエラー表示が多い。
あまりにも難しいロジックだ。
エネルギー分配率は苦労してくみ上げている。
だが、宇宙空間はいまだに未知が多い。
まるでその未知をいまから解いてしまえと言われているかのようだ。
簪が『まるで解けない氷をつくっているかのよう』とか言っていたの思い出す。
「輝夜に何かヒントになるものは無いか…?」
過去のデータを参照にしてみる。
「ほほう、白式だった頃のデータは引き出せるのか…」
「まあ、それでも閲覧には制限がかかっているんですけどね」
輝夜がその気になればこれらのデータを見せてくれなくなる。
時々だが、やんちゃな娘の日記帳を覗き見ている父親のような気分に陥ってくる。
「ん?装甲の材質が変化しているね?
「いえ、その後も続いています。
訓練の最中も、戦闘の最中も…そうか…リアルタイムでの
状況の変化に順次に、それも即座に…リアルタイムで対応出来るようになれば…。
ISの学習能力に頼るような形になるが、今は一縷の望みが出てきた。
だが、それには更なるエネルギー調整が必要になる。
「少年、何コレ?」
「コレってコアネットワークへの出力回路の情報…」
「違うよ、コアネットワークとは違う回路が生まれてるみたいだよ」
…は?
視界が暗転する。
だが、それも数秒だった。
目を開く、そこは幾度か目にした、剣を無限に内包した荒野だった。
「…黒翼天、お前か?」
『ふん、輝夜がお前にってことでな』
傍らから服を引っ張る感触。
それにつられて視線を移す。
そこにはラウンドベレットを被った白い少女が居た。
白いラウンドベレットのしたからは視線を感じるのだが…相変わらず素顔を見せてくれない。
だが、そこには敵意などは一切感じ取れない。
あくまでも好意的な視線だ。
「…で、どうしたんだ?」
『あなたが一つの夢をみつけたみたいだから、その為にもプレゼントを、ね』
『今し方お前が見つけた情報は、その為のものだ』
ああ、そうか。
コアネットワークに類似した未知の情報がそれか。
『そして、それを作り出したのは私達じゃないの』
『あの小娘どもだ』
「束さんが渡した『星シリーズ』か!?」
輝夜には存在せず、みんなが持ち合わせているものだとすれば、真っ先ににそれが思いつく。
簪の『
マドカの『
メルクの『
鈴の『
ラウラの『
セシリアの『
シャルロットの『
楯無さんの『
だが、それらの兵装の内のいくつかは、各自の機体の
まさか、あれらの兵装がコアネットワークを再構築させているとか、か…?
『再構築、とは少し違うかな』
『コアネットワークが崩壊した試しは無い。
だがあれらには所有者の意識をコアネットワークにダイブさせる効力もある。
実際に、あの小娘どもはその力を使った。
あのクソ兎にせがまれるままにな』
「だが、そこで何らかの弊害が有ったんだな?」
コアネットワークは、世界中のすべてのコアと繋がっているとされる情報共有スペースでもある。
恒星間距離でもリアルタイム通信が行える、とされているが、実際にそんなことを試した者は誰一人として存在して居ない筈だ。
そんな距離にまで至る技術は完成されていないし、完成しても、地球に戻れる保証がなければ、その技術はお蔵入り同然だ。
いや…すでにお蔵入りにされて兵器にされているか。
『あの小娘共がダイブした先は…本当にコアネットワークだったのか?』
『私も同じ疑問を抱いた。
本当にコアネットワークなら、私達が感知できない筈がない。
でも、違うとすればそれは』
「コアネットワークではなく、それよりも更に上位の未知の空間ってわけか」
コアネットワークの
人の心がISコアの自我に直接干渉し、新たな空間が創造された、ってところか。
二次元の存在が三次元の存在に干渉出来ないように、従来のISコアですら干渉出来ない上位ネットワーク空間か…。
だが、その空間には人間の意識が干渉出来る。
そしてそのい空間の創造を、束さんすら想定出来ていなかったとしたら…。
「すべてのコアへの一括命令すら可能になるんじゃ…」
『はい、貴方が目指す上で必要となるものが出来ちゃうね♡』
ISコアに変わるESの中枢システムが、そのネットワークシステムを導入するだけで代用が出来るというわけだ。
そして、それを導入すれば、例え一機のESがエネルギー枯渇に陥り、冷却期間すらスルーし、ネットワーク上から別のESからエネルギーを経由させ、充填出来る。
…宇宙航海に必要なエネルギーが、上位ネットワークから自動充填され永久機関が構築されるわけだ…。
だが、これらのシステムが既に出来上がったとするのなら…
『クソ兎が作り出そうとしていたESは、既に完成間近だったというわけだ』
『そして貴方が、その切っ掛けを作り、完成に至らしめた。
判るよね?
もう、
貴方が目指そうとした先に製造…ううん、私達は…ESに進化したの』
ESに至っていた、だと…。
あ、あのなぁ…それならそれで…
「先に言っておいてほしかったんだがなぁ。
隠し事をするのは輝夜の悪い癖だぞ、俺の今までの研究開発は何だったんだ」
俺が苦笑をすれば輝夜もラウンドベレットの下でクスクス笑う。
それでも意地で素顔を見せてくれない。
まったく、どこまでも意地が悪いなぁ。
「ここまで教えてくれたのなら、もう少しばかり情報開示をお願いしたいんだがなぁ」
『ダ~メ♡
先に何もかも答えを教えたら研究やる気をなくしちゃうでしょ?』
よく判ってらっしゃる…。
そんな風に考えてる傍から視界が白に染まっていく。
その中でかすかに見えた輝夜と、岩の上に佇むもう一人の俺の姿。
俺の分身ともいえるアイツはこうやっていつも俺の姿をまねる。
まあ、一番身近な人間という理由かもしれんが。
『じゃあ、これからも頑張ってね、
拝啓 千冬姉へ
16歳と一か月半で10歳前後の子持ちになってしまいました。
…どうでもいいけど間違いなく殺されるな。
非現実世界で現実逃避というややこしい事をしながら現実世界へ戻ってきたわけだが。
「お~い少年、どうしたんだいボーッとしちゃって」
「あ、いや、なんでもありませんよ」
あまりにもぶっ飛びそうな思考をいったん破棄してからコンソールに視線を戻す。
輝夜が折角見せてくれたヒントを台無しにするわけにはいかない。
今まで見てきた全てを、蓄積した経験を元に必ず…
「少年、夢中になってるところ悪いんだけど」
「どうしました?」
「読んでもないお客さんが来ちゃってるみたいだよ」
輝夜のコンソールが自動的に開かれ、レーダーが反応を見せる。
…本当だ、呼んでもいないお客さんがわんさか来てるよ。
「悪いんだけど、ここには今戦える人が居ないんだ。
少年、頼めるかい?」
「やるしかないでしょう」
空には
研究所搭載の赤外線センサーが確かなら陸上にも30人程の歩兵部隊。
更には海には潜水艦が浮上しているのが見える、それが合計5艇。
「倉持技研ってこんなプレゼントを贈られる程に面倒な事してない筈なんだけどねぇ?」
「世界各地で同じことが起きているのは御存知でしょう。
とうとうここが狙われる順番になったって事でしょう」
潜水艦にもヘリにもあの面倒な連中『凜天使』のエンブレムが刻まれている。
…本当に面倒な連中だな…。
『今度は厭うな、皆殺しだ』
「迷ってる暇は、無さそうだな。
ああ、殺すさ…研究に障害はつきものだからな」
コールを省略して輝夜を展開。
続けてレイシオ、ペイシオ、ウォローを一斉展開される。
今度はかなりの人数が相手だ。
一刀だけで相手をしていてはキリが無い。
拡張領域から刀剣を無尽蔵に呼び出す。
「篝火博士、戦力がないのでしたら、此処のの研究者達を緊急用シェルター避難させてください。
お望み通り、あの連中は俺が相手をします」
「ごめんネ少年、頼んだよ」
レーダーを更に詳しく見てみる。
歩兵の人数は55人か。
これくらいなら…。
「千冬姉、戻るのが遅くなるかもしれないけど勘弁してくれよ」
迫る炎
禍々しい歪
幾らでも湧き出る蛆のように
彼女達は迫る
歪な意地を抱えて
次回
IS 漆黒の雷龍
『夢想蓮華 ~ 戦禍 ~』
…消えちゃえ…