IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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Q.最新巻(11巻)はいつ発売されると思いますか?
P.N.『鮪武士』さんより

A.だから私に聞かれても…
8巻発売

一年間

9巻発売

一年三か月

10巻発売

一年半年

11発売

と予想してます。
なので
2017/1/25
に発売するのではなかろうかとの予想です。
(一切保証はありません)

この法則が成り立つのであれば12巻の発売は2018/10/25…かな…?
(一切保証はありません)


夢想蓮華 ~ 隕光 ~

Ichika View

 

「では、気を付けていって来いよ」

 

職員室に居た千冬姉に外出届を提出してから数日、正式に許可が出されてからアポ当日に至るまで訓練を続けた。

訓練をしながらES開発にも手を出し、学園長にたのまれて男子生徒入学の準備をしたりとこの数日はきりきり舞いだった。

 

「ああ、判ってるよ」

 

バイクのホルスターに以前と同じように刀剣を収納していく。

アヴェンジャーに、クレメンサー、ブラッドサージにクロガネとシロガネ、ヴォリーショナルにリベリオン、そして最後にはイーブルワンを収納して準備完了だ。

 

「しかし…相変わらずこのバイクは化け物のような出力だな。

ここまでの数の剣を収納しておきながらもかなりの速度を出しているのだろう?」

 

「まあな、乗りこなすのにはそんなに時間はかからなかったけど、問題はESエネルギーのほうだな」

 

このバイクは従来のガソリンエンジンのような化石燃料にも頼っていなければ、蓄電させた電気バッテリーなども搭載していない。

束さんが開発した次世代エネルギーであるESエネルギーが搭載されている。

その特徴点としては、使用後に休息させる事で消費されたエネルギーが微速ではあるが自然回復する点だ。

そして化石燃料とは違い、排気ガスなどの排出も発生しない。

電気エンジンのようにエネルギー充填施設や設備が不要。

正に次世代の銘を冠する夢のようなエネルギーだ。

だが、欠点が存在しないわけじゃない。

エネルギーを使用したのちに冷却期間ともいえる回復に時間がかかる点だ。

故に、使用目的が限られる。

それこそエネルギーをそこまで必要としない空間でこそ、その真価を発揮させるわけだ。

エネルギーの回復には時間がかかるくせに、使用量が限定される空間でこそ真価が問われる故に、大気圏内での使用はひどく限られるかもしれない。

だが、その研究に乗り出している機関もいくつか名乗りを上げている。

その一つが倉持技研だ。

もしも、その必要性が説かれ、汎用性に優れたものになれば地球上のあちこちのエネルギー問題も解決していくことだろう。

更には、宇宙空間に飛び出していく為のエネルギーとしても使われることにも繋がる。

その為にもこのバイクは大気圏内での使用に用いられるテスト機体ともいえる。

 

俺が刀剣を収納するのに使用しているスペースもまた『展開装甲』と言われるシステムの応用らしい。

なかなかに難しい話ではあったが、単純な話としては、俺が輝夜をまとって振るう刀『雪片弐型』と同等のシステムらしい。

未だに俺は見た経験がないのだが、束さんが使用している専用機『虹霞』にも搭載されているシステムだとか。

戦闘の最中に、装備を交換を行わずとも必要な形態にリアルタイムで換装が行われるものだそうだ。

世界で開発されている第三世代機はそろって長期戦闘に向いていないという欠点がある。

束さんはそれをあっさりと克服した次世代機を開発したわけだ。

本当に…この世界を何度ひっくり返せば気が済むのやら…。

…俺が言えた話ではないのかもしれないという点が少しばかり悲しい話だが。

 

「だけど、往復するだけなら問題は無いだろう。

俺としては学園側が少しばかり心配なんだが」

 

女神の大楯(イージス)と呼ばれたコンビの一角であるダリル・ケイシーは学園から消え去り、後に遺体が発見された。

そして相棒たるフォルテ・サファイア先輩は修行のためにもギリシャに旅立ち、学園には不在。

更には教師部隊の半数が裏切り、最終的にはその全員が政府に更迭された。

いわば、学園の防衛能力は大きく失われた状態だ。

残る教師部隊の半数、そして在学中の専用機所有者、それが学園に残された最後の防衛能力だ。

まあ、その中には千冬姉に束さんも数え上げられるわけだが。

無論、俺自身も入れるべきなのだが、今日に限っては俺も学園を離れてしまうわけなのだから頭数には入らない。

本当に大丈夫なのか?

 

「安心しろ、学園なら私達が守る。

お前は気にせずに存分に研究にいそしんで来い」

 

「承知したよ。

けど、本当にヤバくなったら呼んでくれ。

輝夜なら数分で飛んで戻れるだろうからな」

 

まあ、地上ぎりぎりを飛んでいたら周囲への被害が尋常じゃないわけだが。

衝撃でビルの強化ガラスだって粉砕してしまうだろうから、文字通りの『飛んだ迷惑』だ。

 

「私を誰だと思っている」

 

「承知したよ、『初代 世界最強(ブリュンヒルデ)』殿」

 

バイクに跨り、エンジンに火を叩きこむ。

そのままアクセルをふかし、俺は一気に加速させた。

モノレールが通る大橋へと飛び出し、駆け抜ける。

 

この学園は全方位が海洋に囲まれ、常時海風に吹かれている。

夏の間こそ心地よかったが、秋になってからは冷たく感じてきている。

風邪にならないように気を付けておこうか。

秋からはやっぱり食事は暖かいもののほうがいいだろうな。

そんな事を考えながら俺はアクセルを深く踏み込み、更にバイクを加速させた。

 

…本当に、何も起きなければいいんだがな。

 

大抵の襲撃なら千冬姉の前には歯牙にも及ばんだろう。

だが、千冬姉が立っていたのは競技の場と講義の場ばかり。

本当の戦場に立っていたわけじゃない。

専用機所有者達もそうだ。

機体が優れていても、本当の戦場に立った経験は殆ど無い。

 

クラス対抗戦での襲撃には、鈴、簪、マドカ、セシリア、楯無さん、そして俺だ。

だが、あの場で襲撃機体を打ち負かしたのは黒翼天だ。

 

臨海学校でも一年の専用機所有者が駆り出されたが、やはりあの場には黒翼天が干渉した。

最終的には俺と黒翼天、簪で対処する形になった。

 

学園祭に於いては襲撃者に対し、黒翼天が干渉した。

無人機襲撃対処も行われたが、そちらは専用機所有者が対処した。

 

いずれのポイントに於いても、他の皆は人間を相手にしていたわけじゃなかった。

いざ本物の戦場に放り出されようものならば戦えるかは判らない。

ましてや人間相手であればどうなるか分かったことじゃない。

 

CBF翌日のテロ組織の連中でも、シールドエネルギーと絶対防御に頼り切った戦いだったから捕縛ができたというだけ。

命のやり取りができたそれだけじゃない。

まあ、一生病院生活三昧にしたのも居たが、ソレはソレだ。

 

だが、ISを用いない襲撃者が発生した場合は?

アイツらは闘えるのか?

 

並の人間を相手にしてISを用いれば最悪、死に至る。

現代のISはそれだけの力がある。

あいつらには…『人間を殺す』覚悟がまだ劣っている。

 

『なら、テメェは殺れるのか?』

 

「殺れるさ。

その覚悟はすでに決めている」

 

『ほう、なら見せてもらおうか、あの連中でな!』

 

大橋を渡り切った先に黒ずくめに身を包んだ10人程の男達が待ち構えていた。

その手にはアサルトライフルにロケットランチャー、グレネードに旧式ダイナマイト。

…おいおい、物騒な連中が街中に居たものだな、警察は機能していないのか…?

 

「ターゲットだ、撃ち殺せ!」

 

途端に銃口が火を噴く。

それと同時に幾発も鉛弾が体を掠める。

 

「ったく、何て日だ!」

 

ホルスターからではなく、輝夜の拡張領域から直接『神狂い(マドネス)』を引き抜く。

双刃が猛回転を始め、空気を切り裂く。

そして頭上でスクリューの如く猛回転するソレを投擲した。

 

ズギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!!!!

 

「…悪く思うなよ、あのまま放置しておけばお前らは学園に向かっていただろうからな」

 

路上に咲く鮮血の徒花を放置し、俺はさらに加速させた。

 

『手足を斬り飛ばしただけか、まだまだ甘いな』

 

「おかげさまでな」

 

これで襲撃が途絶えてくれるといいんだがな…。

頼りにしてるぜ千冬姉。

 

 

 

Chifuyu View

 

「織斑君から通信が入りました。

大橋を渡った先にて襲撃、これを撃退した、と」

 

「政府は何をしているんだ…。

即刻連絡を入れて引き取らせろ」

 

「了解しました」

 

摩耶からの報告に私は指示を出す。

やれやれ、先が思いやられる。

アイツが出かけた直後にコレだ。

だが、その全てを一瞬で撃退したとは少し驚いたな。

簡易報告書を見る限り、『展開禁止』と命じた兵装を使ったようだが、今回は目を瞑っておこう。

 

「ほかの専用機所有者達はどうしている?」

 

「各自訓練に努めています、えっと…第4アリーナですね。

使えるアリーナも限られていますから」

 

ああ、そうだったな。

まったく今年だけでいくつのアリーナが使用不能になるのやら。

壊れてしまった箇所に関しては束が無人機を使って修復してくれているからいいものを。

 

『貴女が言えた義理かしら、千冬?』

 

やかましい。

 

「それにしても、皆さん頑張ってるみたいですね」

 

「ああ、あの小娘共か。

まあ、仕方あるまい。

現在この学園の防衛力は限られているし、政府へのコアの催促が罷り通るわけでもない。

織斑兄がいなければ、あいつらが最終戦力だ。

あいつが不在になっている以上あいつらも今まで以上に励んでもらわなければならんだろう」

 

「あの、それで少し問題が」

 

そういって摩耶が報告書を提出してくる。

それに斜め読みにすると…。

 

「あの…小娘共がぁっ!」

 

各自本気で戦闘訓練を積んでいるのは理解している。

ああ、理解しているさ!

だがな…電磁シールドを破損させてどうするつもりだ貴様等!

 

『だから貴女は人の事をとやかく言えた義理じゃないでしょう。

まずは鏡を見て言いなさいな』

 

やかましいぞ暮桜!

 

 

 

Tatenashi View

 

今年の一年生の専用機所有者達の実力を観客席から見ていたけれど、成長が著しい。

ついこの前、機体が第二形態移行(セカンドシフト)に至ったばかりのマドカちゃんとメルちゃんは、その機体になれるためにも今回は訓練に人一倍勤しんでいる。

マドカちゃんは、元来は高機動を行いながらの射撃と、多数のビットを生かした戦いをメインにしていた。

けれど現在はビットも変貌を遂げ、『ブレード』『ランサー』『分散射撃(スプリット)』『高速射撃(ラピッド)』『シールド』などの機能がすべて含まれている。

以前からも通常の射撃に加え『分散射撃(スプリットシュート)』や『収束射撃(バーストシュート)』『偏向制御射撃(フレキシブル)』を織り込ませていた。

けど、今はそのスケールがいくら何でも突拍子も無い。

 

「『隕光(メテオーラバースト)』!!!!」

 

ドッガアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァンッッッッッ!!!!

 

アリーナのフィールド全土をたった一発の射撃でブチ抜いた。

…射撃じゃなくて砲撃といったほうがいいかもしれないような一発だった。

その正体は、マドカちゃんによる収束射撃(バーストシュート)だった。

ただし、収束させたエネルギー質量が尋常じゃない。

直径150mはあるアリーナをたった一発の収束レーザーで覆いつくしたのだから。

逃げ場なんてあるはずもなかった。

 

「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」

 

対戦相手を務めていたラウラちゃんもかなり息が荒い。

不落の楯でもある『流星』、更にはAICによる不可視障壁による二段構えの防御でも受け止め切れていない。

両肩の大型の砲門もかなりの熱量を蓄積している。

 

「砲撃に対して砲撃を撃ち込んで軽減させた、ということかしら。

なんて無茶をしでかしているのよ…」

 

先ほどの巨大な砲撃は連射性能がないのか、マドカちゃんは今度は剣を構える。

それに応えるかのようにラウラちゃんも両腕にプラズマブレードを展開させる。

そこからは高速の剣技の応酬だった。

マドカちゃんが剣をふるえば、ラウラちゃんの楯が自動で割り込んで受け流す。

その隙をついてラウラちゃんがソードをふるえば、マドカちゃんのビットがシールドを展開して防ぐ。

ビットによる射撃はワイヤーブレードで弾き飛ばす。

 

「技術としては二人とも尋常じゃないわね。

だけど…そこまで!」

 

一試合の制限時間は15分。

最初にそう取り決めておいたから、試合の最中でもそう宣言して取りやめさせた。

 

「引き分けか、悔しいな」

 

「よく言う、あんな出鱈目な砲撃をしておきながら…」

 

「ちょっと負担が大きいんだよね。

ビットの半分を上空に飛ばす手間もあるし、収束させるにも少し時間がかかるんだよね8秒程。

それに今の私じゃ連射が出来ないから、それも克服しないと」

 

…マドカちゃんはまだまだ成長の度合いが著しかった。

だけど

 

「マドカちゃん、あの射撃攻撃は控えておきなさい」

 

コンソールを開き、マドカちゃんに回線を開いた。

 

「え?なんで?」

 

「アリーナのフィールド見てみなさい」

 

そういうとアリーナに視線を下し…

 

「…あ…」

 

アリーナのフィールドが焦土になっていた。

黒翼天の砲撃には届いていないけれど、先ほど放った『隕光(メテオーラバースト)』の威力も常識外れにも程が在った。

黒翼天の場合は威力優先で収束させていた。

片やマドカちゃんは威力よりも効果範囲優先。

普段でもよく使う射撃により逃げ場を失わせて仕留める『(ジェイルフォーメーション)』の究極系かもしれない。

それと

 

「織斑先生がお呼びのようよ」

 

「褒めてもらえるのかな!?」

 

このシスコン…。

その数分後、悲鳴が聞こえてきたのは言うまでもなかった。

まあ、無理もないわね、電磁シールドを吹っ飛ばしてるんだから。


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