IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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とある映画を参考にしての今回の執筆。
いや、大変でした。

Q.『究極の幻想 漆』にて登場する『雲・闘争』氏のバイクの銘は『フェンリル』と呼ばれてるの知ってました?
それと、一夏君のバイクに銘はありますか?

A.彼のバイクに銘があったとはコメントが来るまで知らなかったんです、はいマジで。
一夏君のバイクの銘は…まだ未定着です。
しっくりくる銘が見つからないもので…。


煌翼冥天 ~ 厄走 ~

Ichika View

 

アクセルをふかせる。

そのまま先のトンネルに突っ込む。

背後を確認

 

「…くそ!先を越されたか!」

 

先ほど確認した時よりも背後の機体の数が減っている。

内一機がトンネルの先に回ったのは明らかだ。

 

「くたばれ異端者(イレギュラー)!」

 

「ほざけっ!」

 

ドガァッ!!!!

 

ブレードを剣で食い止める。

そのまま至近距離で銃口を向けられる。

剣で弾いて銃口をそらす、その直後に発砲され、弾丸が頬を掠め、空中に赤い飛沫が迸る。

頭痛に意識を持って行かれそうになるが、堪える。

此処で意識を失おうものなら蜂の巣にされる。

 

再度襲ってくるブレードを今度は剣の側面で受け止める。

刹那、視界の端で違和感を感じた。

トンネルの外から差し込んでいた日の光が急速に失われていた。

見れば…打鉄の一機がトンネルの出口にてバス(・・)を頭上に持ち上げていた。

 

オイオイ冗談だろう。

あのバスの中には生命反応は無い。

ただし、熱反応は伺える。

エンジンが入っている…!

あろうことかそのバスを…!

 

「潰れろぉっ!」

 

ぶん投げてきやがった。

目の前のラファールはそれを察知したのか、切り結ぶのをやめ、後方に引いていく。

置き土産と言わんばかりに銃を発砲していく。

バイクの装甲で弾いたが、目の前のバスの問題は片付いていない。

クレメンサーを収納し、刀剣『ニバンボシ』をホルスターから抜刀。

バイクのシート部を蹴り跳躍、空中から襲いくるバスを

 

「おおらあぁぁっ!!!!」

 

ドガッシャァァァァァッッッ!!!!

 

フロント部分から終端部まで一刀両断した。

…ヤケクソになれば何だってできるものかもしれねぇな…!

 

「隙だらけだぁっ!」

 

バスをぶん投げてきた打鉄が『葵』で串刺しにすると言わんばかりにつっこんでくる。

長剣『ニバンボシ』にて受け止め、受け流す。

今度は左手に巨鎚『コラップラー』を展開

 

「吹き飛べぇっ!」

 

そのままバットよろしくコラップラーで殴り飛ばした。

吹っ飛ばした先には、ぶった斬ったバス。

 

「っっ!!??」

 

ドガアアァァァァァァン!!!!

 

燃料に火が付いたのか派手に爆発した。

好都合なことにもその爆発に巻き込まれたらしい。

こりゃまた手間が省けた。

俺はバイクに着地し、さらにエンジンを点火させる。

そしてトンネルの出口に達したが、100m程走った先で次のトンネルに突入する。

 

「まだ来るか」

 

イーブルワンを輝夜の拡張領域に戻し、右手に白刀『雪片弐型』、左手に黒刀『天龍神』を握る。

前方からはアサルトライフル『焔備』を連射してくる打鉄、背後からはアサルトライフル『ガルム』をぶっ放すリヴァイブ。

勘弁してほしいね…!

 

再びシートを蹴り跳躍、前後から挟まれた状態だが、弾丸を回避するためには仕方ない。

好機と見たのか、両者揃ってブレードを引き抜いて突っ込んでくる。

 

「貴様さえいなければ…篠ノ之博士が道を間違えることもなかったんだぁっ!」

 

「我らの理想の邪魔をする者は…死ねぇっ!」

 

「死んだ経験の無い奴が…軽々しく『死ね』とか言うんじゃねぇよ!」

 

両手のブレードを逆手に握り直し

 

ドガガァンッ!

 

前後からのブレードを防ぐ。

 

「影踊流…『日輪(ひのわ)』!」

 

力ずくで払うのと同時に体を旋回させる。

そしてブレードを手放し、前方と後方の機体の腕を掴み

 

ドガシャァッ!

 

互いを衝突させる。

再度ブレードを握り、打鉄のスラスターを切り裂く。

そのまま後方のラファールに飛び移り、逆手に握った両手のブレードを

 

「おらぁっ!」

 

ズガァッ!

 

こちらもスラスターを破壊するだけにしておく。

楯無さんにあれだけ言われたんだ、殺しはしないでおく。

 

「き、貴様ぁ!待てぇっ!」

 

誰が待つか。

俺は再び跳躍、幽霊自転車状態になったバイクのシートに着地し、再び加速させた。

 

ドガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!!

 

背後からまだアサルトライフルを撃つ音が聞こえてくる。

だが、まるで当たらない。

狙いは…

 

「あ、そっちか…」

 

トンネルの天井に鉛弾が当たり続けている。

そしてそんなところに撃っていれば当然

 

「落ちてくるよな、天板が…」

 

鉄板だとかコンクリートで作られたそれを落として押しつぶそうって魂胆か。

見え見え過ぎる。

そして狙い通り落ちてきた。

ただし…連中の方向へと芋蔓式に

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!??」

 

「おのれ織斑一夏ぁぁぁぁぁっっ!!!!

よくもやったなあああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

 

おいおい、責任転嫁してんじゃねぇよ…。

なんつー間抜けなテロリストだよ…。

 

「学園からは遠ざかるは、あっちこっちぶっ壊されて道が途絶えるわ…今日は遅刻確定だな」

 

頭痛は今は少しだけ弱くなっている。

だが、いつまで意識が持つかはわからない。

今は…コイツらをうまく合流予定ポイントまで誘導しないとな…!

 

 

 

 

Chifuyu View

 

一夏(アイツ)には一人で通学するように言ってしまったが、少しばかり不安に思えてきていた。

モノレールに乗っている専用機所有者(小娘)達は今は楽しそうに談笑こそしているが、どうせ一夏(アイツ)の事ばかり話しているのだろう。

 

「くぁ…いかんな、まだ眠気が残っているようだ」

 

昨晩の事は忘れてしまおう。

よもやマドカがあの寝間着(着ぐるみパジャマ)を学園から持ち出しているとは思ってもみなかった。

おかげで昨晩もまたあの寝間着を切る羽目になってしまった。

よくよく思い出してみれば、この二年間、マドカのおねだりに抗えた試が無い。

ただの一度もだ。

姉の威厳がその都度にガリガリと削られているような気がしないでもない。

 

Prrrrr

 

不意に私の携帯が鳴りだす。

束が不毛な事ばかり言って来る度に握り砕いてしまい、これにて14台目だ。

この先、どれだけの機体を握り砕いてしまうかは定かではないが。

 

『自業自得じゃないのかしら?』

 

やかましいぞ暮桜。

 

「…私だ、真耶、どうした?」

 

『大変です織斑先生!

織斑君が市街地で襲撃を受けているんです!

敵機は5機!港湾エリアに誘導中!

至急専用機所有者を応援に回ってほしいと…』

 

バキメキベキボキグシャァッ!

 

『あらら、14台目を握り砕いちゃったみたい』

 

やかましいぞ暮桜…!

 

昨日といい今日といい…!

テロリスト共は私の弟に何か恨みでも在るのか!?

恨みがあるのはこちらだというのに…!

 

「専用機所有者全員に告ぐ!

至急本土側の港湾エリアに迎え!

朝っぱらから織斑が襲撃をうけている!」

 

『了解!』

 

マドカ、簪、ハース、凰、ボーデヴィッヒ、更識姉、オルコット、アイリスが窓を開いて飛び出していく。

日常生活の中ではめったに見られにクレイジーな光景だが、今回の事態が事態だ。

 

「あの…私はどうすれば…?」

 

隅の席にて朝っぱらから黄昏ていた篠ノ之がいたのを忘れていた。

 

「ああ、そうだったな、お前はこのまま通学しろ。

他の生徒が不安がらないように見ておけ…と言っても、このモノレールにはすでに私とお前しか居ないわけだが」

 

「私は…一夏の力になれないのですか…?」

 

「力になれないと思うのなら、一夏(アイツ)に出来ない事を…お前にしか出来ない何かを出来るようになってみろ」

 

「…私にしか、出来ない事…」

 

…ヒントをやりすぎただろうか…?

いや、これでもいいだろう…なあ、一夏。

教職というのはやはり難しいものだ、お前はこれまで家庭教師のバイトをしてきていたからそうでもないかもしれんがな、一夏。

 

 

 

Kanzashi View

 

「朝から襲撃とか、非常識過ぎ…」

 

モノレールから飛び出して全員が機体を纏い、目的地まで飛行している最中、私はそんなことを呟いてしまっていた。

一夏からしても事態は最悪なのは判りきっているのに…。

 

「しかも市街地ときてるから殊更にだ、輝夜は戦闘能力が高すぎて撃退どころか周囲に甚大な被害を与えるから今回は私達が兄さんサポートしないと…」

 

マドカも今回は火力を制限して戦わなければいけないからつらいかもしれない。

それでも一夏のためとあらば全力を出す所存だろう。

 

「昨日といい今日といい、襲撃が続き過ぎでしょ、どんだけモテてんのよ兄貴は」

 

「兄上としてはテロリストに慕われるなど御免だろうがな。

山田先生から聞いた話では、相手は銃火器も振り回している。

兄上が発作を起こすよりも前に港湾エリアにたどり着ければいいが…」

 

「じゃあ速く行きましょう!

お兄さんが心配です!」

 

「そうそう、皆、加速するわよ!」

 

お姉ちゃんの合図で全員が一気に加速する。

目指す先は

 

「あら、あそこみたいよ」

 

市街地と港湾エリアのちょうど中間地点で大きな爆発が起きた。

そしてもうもうと立ちこめる煙のなあから見覚えのあるバイクに制服が見えた。

 

「一夏!」

 

剣を片手にバイクを操縦だなんて映画の中みたいなことをしながら走行している。

発作が起きかけているのか、時折に頭をかけている。

私はすぐさま天羅のスラスターを最大出力にし、空を駆けた。

 

 

 

 

Ichika View

 

粉塵の中を駆け抜ける。

港湾エリアに到着した途端に再びロケットランチャーが撃ち込まれ、地面が爆発する。

 

「こなくそっ!」

 

前輪を持ち上げた状態でエンジンを更に回す。

爆発によって隆起した瓦礫を足場にバイクが空中へと飛び出す。

あろうことか港湾エリアに点在する倉庫の屋根の上をバイクで走る羽目になった。

もう映画の世界じゃねぇか…!

 

それでも連中は容赦なくアサルトライフルだのを振り回してくる。

直撃コースの鉛弾を剣で弾き飛ばし、それ以外はガン無視。

屋根の上を駆け抜けていけば当然、端に追い込まれる。

 

「死ね!織斑一夏!」

 

「その言葉はもう聞き飽きてんだよ!」

 

ロケットランチャーを真正面から撃ち込んでくる。

車体を倒し、バイクでスライディングのような真似事をしてギリギリ避ける。

後方にて爆発音、倉庫の一角が吹き飛ばされたのだろう。

だが構っていられない。

そのままの姿勢で屋根の端から飛び出す。

 

「ぶごっ!?」

 

ロケランをぶっ放してきたバカ女の顔面に後輪を叩きつけ、再びエンジンをフルスロットル!

そのまま空中に飛び出し、7m先の地面に着地する。

衝撃が半端ないが、なんとか反動を抑え込み、倉庫の影に入り込んだ。

先程踏みつけた女はといえば…

 

「へぇ、少しは美人になってるじゃねぇかよ」

 

鼻はへしゃげ、顔の皮がめくれ、前歯も八重歯も抜け飛んだのか砕け散ったのか、見てるだけで気持ち悪ぃ。

映画の中のゾンビのようだ。

 

「男のくせにぃっ!

よくも私の顔に傷をつけたなぁっ!死んで詫びろぉっ!」

 

セリフがワンパターンになってきてるな、この連中は…。

 

「やれやれ、これにて諦める連中じゃねぇよな…」

 

港湾エリアに到着してからまだ1機も撃墜はしていない。

これ以上バイクと剣だけでISを撃墜できると思うほど、俺も楽天家じゃないしな…。

 

『兄さん!救援に来たよ!』

 

不意に通信回線が開かれ、マドカの元気な声が聞こえてきた。

 

「ようやく来てくれたか、待ち侘びてたぜ」

 

次々にコンソールが開き、見知った顔が幾つも飛び出してくる。

 

『一夏、まだ無事だよね!?』

 

簪が顔を蒼褪めさせていた。

 

「なんとかな」

 

『よかった…』

 

安堵させることはできたが、俺としてはまだ不安があるんだよなぁ。

 

「じゃあ、ここから連中を洋上に誘導するぞ。

海上に戦場を移せば、周囲の迷惑なんてことにはならんだろう。

マドカ、セシリア、牽制射撃を頼むぞ」

 

『任せて!』

 

『承知しましたわ!』

 

「メルクと簪は奴らの退路を断ってやれ!」

 

『了解です!』

 

『うん、判った!』

 

「ラウラ!以後の指揮は頼んだぞ!」

 

『了解だ兄上!』

 

さてと、俺達もそろそろお返しといこうか。

 

「来い…輝夜!」

 

散々なまでに民間人を巻き込みやがって…。

俺のバイクの修繕費用と、制服の発注金、それにブッ壊した市街地だとかバスにトンネルに高速道の修繕費用だとかも含めて払ってもらうぞ。

さあ、溜まった鬱憤を晴らさせてもらうとしようか…!

 

右手に雪片、左手に雪華を握り、俺も飛翔する。

まとめて撃墜してやるよ…!

 

 

Laura View

 

そこからは我々からの一方的な展開だった。

敵機は僅か5機。

しかもラファール・リヴァイブは第二世代機。

こちらにもシャルロットが第二世代機の同機に搭乗しているが、腕前は格別だった。

 

「そんなんじゃ、折角のリヴァイブが泣いてるよ!」

 

そう叫びながらシールド・ピアースを叩き込む。

まずは1機を撃墜させた。

 

「行くぞセシリア!」

 

「任せなさいな!」

 

私はセシリアに背を預けながらの近接格闘になっていた。

…コイツは…弱いな

所詮は世の中の風潮に乗せられ、ISに搭乗しているだけで勝者になっていただけの女か…!

こんなやからが兄上を討ち取ろうなど…

 

「赦すものかぁっ!」

 

セシリアからの射撃が敵機の兵装をまとめて打ち抜く。

あちこちで爆発が起きるのを確認しながら私はリヒトーに命令を下す。

一切のタイミングラグも発生させずに左肩にパンツァー・カノニーア改が展開される。

そしてお得意のリボルバー・カノンとともに照準を合わせ、ロックオン。

 

「てぇぇっっ!!」

そして砲撃、それに続けて爆炎が立ち込める。

二門同時の砲撃にて2機目を撃墜したのを確認した。

 

 

 

 

Charlotte View

 

ドガァッ!

 

僕が握るブラッド・スライサーと敵機のリヴァイブに搭載されたブレードがぶつかり合う。

でも、軽い。

何だろう、まるで乗り慣れていないみたいに感じられる。

 

「これだから量産機は!」

 

「その声!まさか!?」

 

嘘だ、信じたくない。

あの人は既に国外追放されているはず。

 

「久しぶりねぇ、泥棒猫の娘」

 

…デュノア社総帥夫人

 

「ブルーメ・ガルンド…」

 

「目上の人間を呼び捨てとは…なんのつもりよこの売女(ばいた)がぁっ!」

 

ドォンッ!

 

グレネードランチャーが発射される。

ギリギリで回避する。

目の前の事実に驚いたけど、受け入れるしか無い。

目の前に居るのは、父さんを苦しめたあの女だ!

母さんを死に追いやった人だ!

 

「あの女とアンタ、そしてあの男さえいなければ、私は…私達はぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

「そんなの、自業自得じゃないかぁっ!」

 

使い慣れた『レイン・オブ・サタディ』を両腕に展開、即座に一斉掃射を始める。

 

「お前をあのガキに接触させたのが間違いだったんだ!

あの女の娘を使ったのが間違いだったんだ!

一か月もの猶予をお前に与えたのが間違いだったんだ!

汚点はぁっ!私が消してやるぅっ!

そうすれば、私の罪は消される!

そうだ、私はぁっ!

罪人なんかじゃないぃぃぃっっ!」

 

錯乱している。

いつからだろうか。

逮捕された日?

それともその後日?

判らない。

けど、僕達に関わった事で錯乱しているのだとしたら、少しだけ哀れに思えた。

そう思うと、母さんの仇だとか、父さんを苦しめた人だとしても、憎しみを抱けなくなってきた。

なら、今度こそ絶とう。

名も知らない、一人の敵として。

 

左腕のシールド内に搭載された鈍色の杭を構える。

脚部装甲を『霞星』へと換装する。

 

「そんなんじゃ…せっかくのリヴァイブが泣いてるよ!」

 

そして…一気に肉薄し、シールドピアースを叩き込んだ。

 

 

 

 

Lingyin View

 

「いくわよメルク!」

 

アタシは両脚装甲に備え付けられた双星を抜刀した。

 

「参ります!」

 

メルクは両手にライフルを握り、牽制射撃を始めている。

二連装のライフルを二つ同時に操っているから、その弾幕は途切れることが無い。

それに乗じてアタシも一気につっこんでいく。

 

「おらぁっ!」

 

兄貴に教わった剣術、その速さと手数で圧倒していく。

アタシの場合は全力で刀を振るえば隙が出来てしまう。

それを埋めるために衝撃砲をブチ込む。

訓練はしているから視線で射線を悟られないようにしながら。

 

「なんで!なんで邪魔をするのよ!?

あんな男なんて消してしまえば世の中のためでしょう!?」

 

「フザっけんじゃないわよ!

アンタらはそのために何やってんのか理解してんの!?

どんだけの人間を巻き込んでるのかわかってんの!?」

 

「尊い目的のためには…犠牲がつきものよ!

そうやって世界常に変革を」

 

ブチッ…!

キレた。

こんな奴が居るから…兄貴は自分の心を自ら削り取るに至ったんだ…!

赦さない!

 

「『叫天慟地』発動!」

 

敵機のリヴァイブがアサルトライフルを撃ってくるが、その全ての鉛弾が衝撃の防壁によって砕け散る。

 

「アンタらの愚行…腐りきった骨の髄ごと…砕け散れぇっ!」

 

右手の刀を強く握りしめながら一気に肉薄する。

兄貴が得意としていた瞬時加速(イグニッション・ブースト)

今では全員が使えるようになっているその加速技術で懐に潜り込んだ。

 

「絶影流初伝『円月』!」

 

機体を独楽のように旋回させながらの側面からの回し蹴りで吹き飛ばす。

その先には当然にメルクが。

脚部の武装がグワッと音を起てて開き、まさに鵬の足のようだった。

その足で敵機の両腕を掴み取り。腕部の杭状武装で容赦無くスラスターを打ち抜いて破壊する。

…出た、メルクの独壇場が…。

 

「行きますよ鈴さん!」

 

「任せろぉっ!」

 

衝撃砲から射出されるエネルギーが左の拳に収束される。

メルクが上空に舞い上がり、そして一気に下降してくる。

まあ、絶対防御があるから搭乗者は死なないとか思ってるクチだろうけど、それは大きな間違い。

この先は入院生活満喫を覚悟してもらおう。

 

「ぶっとべぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!」

 

神龍の拳がリヴァイブの装甲をへしゃげさせながらメリ込んだ。

リヴァイブは再び空中に投げ出され、そしてシールドエネルギーが底を吐いたらしく展開が解除された。

 

「これで」

 

「3機、みたいです」

 

これにて折り返し…と、思っていたけど…残りは呆気無かった。

簪と楯無さんにとって水上戦闘ともなれば、完全に独壇場だった。

水の障壁を作り逃げ場を無くし、簪がそこにミサイルをこれでもかと撃ち込んでいく。

たとえ逃げても次々に水蒸気爆発を越して逃げ場を無くし、最後は生きたまま氷漬け。

…容赦無さ過ぎだろうに…。

まあ、これにて4機。と。

 

 

 

Ichika View

 

やっぱり皆の援護は有難い。

俺も両手の刀でリヴァイブの銃器を片っ端から切り刻んでいく。

 

 

「こんな男なんかに…!」

 

「ボキャブラリーが足りないな、語学を学びなおせ」

 

「誰に物を言ってるのよ!?

私はアナウンサーをやってんのよ!?

語学なんてアンタよりもはるかに学んでるんだ!」

 

「ああ、聞いた覚えのある声だと思えば局長さんに殴り倒されていたアナウンサーか。

不要な発言でクビになった途端にテロリスト入りとはな、随分とケツの軽い女だ」

 

「誰のせいだと思っているのよ!」

 

喧しい、自業自得だろう、責任転嫁も大概にしとけ。

輝夜の背後から3機のドラゴンが飛び出し疾風を切り刻んでいく。

黒翼天(アイツ)も鬱憤が溜まっていたのかもしれないな…。

 

そう思うと自然と苦笑がこぼれ出す。

とはいえ、任せっきりというのも気分としてはあまり宜しくない。

 

「合わせてくれ」

 

『…フン…』

 

レイシオが下がり、射撃に専念し始める。

ペイシオとウォローがその鉤爪で俺と同調して残る1機を切り刻んでいく。

 

「お前さえ…お前さえこの世に居なければ、私は…!

そうよ、アタシが失職したのはアンタのせいだ、死ねぇっ!」

 

「生憎、その言葉ももう聞き飽きているんだ…『インフェルノ』!」

 

右腕の咢から漆黒の砲撃が撃ち出され、直撃する。

 

「自分がやったことをもう一度考え直してみろ」

 

続けて『イグニス』による連続射撃。

更には『スプレッドパルサー』によって機体の全体をまとめて撃ち抜く。

 

「そして…お前の罪を数えろ…もう二度と出られない牢獄(棺桶)の中でな!」

 

雪片と雪華を連結させ、大弓『六条氷華』を展開させた。

 

「『零落白夜』発動!」

 

エネルギー弾9発が直撃し、機体の展開が強制解除された。

数秒後、搭乗者が海に落ちた。

もうじき10月になる、そんな時期に海を泳ぐ羽目になればどうなるか…まあ、風邪をひいてもノコノコと誘導されているんだから自業自得だろう。

とはいえ、連行すべきだろう。

市街地の道路に、ビル、住居、公共車両の破壊、怪我人だとかを考えたらキリが無いだろう。

そういった諸々、償ってもらうとしよう。

このまま雷を落としてやれば海水は痛快に通電してくれるだろう。

海の中に居ながら真っ黒焦げにしてやることも出来るかもしれない。

 

「…だが、裁くのは俺じゃあないか…」

 

学園に通信を開き、襲撃者をとっ捕まえるのに成功した事を報告する。

内容としては…連行してこいとの事だった。

さてと、どうなることやら。

 




一つの事が片付くも

次の事が舞い込む

一時の平穏でも許されるのなら

この時だけでも平穏を

次回
IS 漆黒の雷龍
『煌翼冥天 ~ 儚願 ~』

誰かの為に作る喜びは何処に行ったのよ!?

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