IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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敵勢力の強化ってなかなかに難しいですね。
そして一夏君の体を借りている黒翼天も圧倒的です。
元ネタがわかる人が居たらいいな(願望)


Q.くーちゃんって、オフの日は何をしてるんですか?
P.N.『NOTドキドキYESムキムキ』さんより


A.祝日は一夏君の料理の覗き見をしてますよ。
ただ、平日にオフの場合は、光学迷彩を使ってラウラの授業参観をしているようです。


征天雷禍 ~ 復讐 ~

『黄金の夜明け』と呼称される機体の搭乗者は上空からその場所を睥睨していた。

そこには多くの専用機所有者が、そして自分にとっては忌まわしい少年がいる場所だった。

思い返すのは二年前、人体実験により、そのモルモットとして利用した少年、織斑一夏。

休眠状態のISコアを覚醒させ、操り人形としようとしたが、想定外事象により実験は失敗に終わった。

それどころか、研究に協力していた研究員は一人残らず帰らぬものとなった。

たった二人を除いては。

その男女の研究者たちも憎い、そうなる事を知っていたのではないのかと思わされるほどに対処が良すぎたのだ。

それ以降というもの、スコ-ルが統率する実動部隊は結果を出さなければ予算すら回ってこない。

 

一人、また一人と隊員が減っていき、とうとうオータムと、自身の血縁者だけになってしまったほどだった。

そしてそれを企てたのが、あの二人の研究者だった。

利用された。

そう気づいた時には亡国企業の中枢ともいえる頭目が病床に伏せていた。

そしてその主治医を務めているのが、その研究者達でもあった。

 

自分達の行動能力を奪い取った二人を見返し、組織から追い出す。

それが彼女の現在の目標だった。

そしてそのために多くの専用機所有者が集まるこの機会は絶好の機会だった。

だが、今は彼女にとっては二の次だった。

オータムが討たれた。

それをおこなった少年を殺す、それが現在の一番の目的だった。

 

 

「今日が貴方の終わりの日よ、織斑一夏!」

 

手を振り下ろす。

それを合図に周囲の無人機『バンダー・スナッチ』がCBF会場へと飛翔していった。

 

 

 

Tabane View

 

「くーちゃん!」

 

「了解です!」

 

即座にくーちゃんに合図をだし、放送を流し始めた。

 

『緊急事態発生!緊急事態発生!

来訪者の皆様は至急、避難してください!

繰り返します!』

 

西方の上空には既に黒点がいくつも見えていた。

IS学園の教職員や、私が開発した無人機が次々に観客席の避難誘導を始める。

 

専用機所有者の皆もすぐに反応し、武装を展開させていく。

 

「専用機所有者の皆!

競技用リミッターを解除!

敵機へ抗戦開始!」

 

『了解!』

 

とうとう来た。

亡国企業…!絶対に根絶やしにしてみせる!

 

「虹霞!」

 

私もISを展開させ、旭光を両手に握り飛翔を始める。

敵機が一機接近してくる。

武装は両腕に一体化したブレードとレーザーライフル。

頭頂部から両断してやる。

そう思った直後だった。

 

ドゴォォン!

 

その頭頂部に身の丈ほどもある刃が突き刺さり、地面に縫い付ける。

「黒翼天…」

 

機体は展開されていない。

いっくんの生身の状態で刃を振るい、無人機を両断していた。

 

「まあ、目的は後回しにしてやる。

今は目障りな連中をつぶすのが先だ」

 

「殺しちゃダメだよ」

 

「もとより無人機だ、破壊するだけだろう」

 

その言葉を皮切りに一気に飛び出していった。

その手に新たな刃を握りしめて。

地上に降りてきた無人機は任せていても大丈夫かもしれない。

次々一刀の下にと破壊していっている。

 

大剣を背負い、跳躍すると同時に振り下ろす。

その大剣の柄を足場にさらに高く跳躍し、空中にいまだ対空している無人機を叩き斬る。

着地と同時に新たな刃を展開し、無人機が振り下ろす刃を受け流し、体を独楽のように回転させながら横薙ぎに切り払う。

 

その動きは雷のようだった。

けっして立ち止まらない。

 

「一匹たりとも通すな!」

 

他の皆にも激励を飛ばし、更に走っていく。

 

数で押しつぶそうといっくんに無人機が2機接近してくる。

だけど、意に介さず、一刀の下に両断し、返す刃でもう一機を切り伏せる。

 

ならばと遠距離から砲撃してくる無人機。

それすら回避しながら接近し、頭頂部からぶった斬る。

 

信じられなかった。

生身で無人機に渡り合い、凌駕していた。

それどころか容易に圧倒している。

 

でもあれはいっくんじゃない。

いっくんの体を借りた黒翼天だ。

 

そこからさらに別の無人機に肉薄し、胴をを両断。

新たな武器、長剣を展開させ、再び独楽のように旋回しながら、二機を屠っていく。

 

不利を悟ったのか、今度は無人機が両腕のブレード飛ばしてくる。

それを悉く弾きながら接近し、跳躍しながら大鎌を展開させ、まとめて薙ぎ払った。

斬り払った際に飛び散ったオイルが頬についても無視して新たな刃を呼び出していた。

 

無人機が密集し、砲撃をしてくる。

その中をまるでかいくぐるように駆け抜ける。

そこに一瞬の迷いもなかった。

傷一つ負わずに走り抜け、格闘戦に持ち込もうとしてくる無人機の腕に飛び乗り、跳躍。

後方に飛び、一瞬の隙を突き、右腕に龍の頭部が展開。

咢が開かれ、紫紺のレーザーが幾条も閃き、貫いた。

 

「…凄い…」

 

その戦い方に誰もが息を飲んでいた。

懸命に闘っていた専用機所有者達も目を奪われていく。

 

背後から接近して襲ってくる無人機に、今度は槍を展開して串刺しに。

更にそれを飛び越えてきた無人機には、巨大な鎚をふりおろし、文字通り粉砕する。

そのまま鎚を手放し、大剣を精製し、振り上げ次の機体を吹っ飛ばした。

地面スレスレに飛翔しながら襲ってくる無人機には、さらなる下段から…スライディングをしながら頭部、首、鳩尾、腹部の部位に次々と弓を連射する。

その無人機は配線がイカれたのか、そのまま落下。

隙をすかさず背後から音叉のような形状の剣で地面に縫い付け…両断した。

そんな状態でも抵抗ができるの射撃をしてくるけれど、いっくんは跳躍をして容易に躱す。

そのまま大剣を叩き付けるようにして首を両断していった。

 

ものの数分だった。

敵勢力の無人機の大半をたった一人で…それも、生身で圧倒し、撃破している。

 

「あいつは…一夏、なのか…?それとも…」

 

 

暮桜をまとったちーちゃんも飛び出してきたけど、いっくんに目を奪われていた。

 

「きっと、その両方じゃないかな。

あの太刀筋にはいっくんの剣技にも見受けられる」

 

「だが、生身で…」

 

「圧倒してるね、それも一方的に」

 

『ISを圧倒できるのはISしか存在しない』

それが常識レベルだというのに、彼はその常識を容易に覆す。

主に使用しているのは近接戦闘兵装だけだというのに。

 

「ちーちゃんなら生身でIS相手に戦うとしたらどうやって戦う?」

 

「機動性を殺す、いわば密閉空間に閉じ込める。

そのうえで跳弾によるダメージを考慮させ、頑丈な空間がいいだろう。

そこで相手が想定しない戦闘方法をとるさ」

 

いっくんとてそのノウハウ程度は考えているだろう。

でも、今はそれを考慮していない。

解放された空間の中で、駆け抜けながら近接戦闘兵装を両手に振るっているだけ。

単純だというのに、上空へと逃げた無人機はほかの専用機所有者達によって撃破されていく。

相手は上空からの圧殺を考えていたのかもしれないけれど、むしろこちらが上空と地上からの挟み撃ちにしているような状況を作り出している。

 

 

 

Melk View

 

お兄さんの戦闘は圧倒的だった。

生身で容易に無人機を圧倒し、次々と撃破していく。

 

 

「簪さん!」

 

「こっちは大丈夫!」

 

二人一組になり、無人機1機ずつ撃破していく。

マドカちゃんとラウラさんのタッグ。

篠ノ之博士と織斑先生のタッグ。

セシリアさんとシャルロットさんのタッグ。

鈴さんと楯無先輩のタッグ。

その組み合わせでどんどん無人機が数を減らしていく。

 

「行くよ!」

 

「はい!」

 

簪さんは薙刀の二刀流。

私もレイピアの二刀流で。

普段はあまり組むことのないタッグですけれど、互いに手の内は知っている。

遠慮もない、けれど絶妙のコンビネーションで敵を切り崩していく。

 

敵機の数はもう少ない、

地上にいるお兄さんが一人で撃破してくれたからこそ。

…お兄さんって本当にすごいです…。

 

何やら無人機の近くでしゃがんでゴソゴソしてますけど、コアの回収もしてくれているようでした。

ちゃっかりしてますね…。

 

 

 

Chifuyu View

 

「ふん、木偶どもが」

 

無人機を両断し、そそくさと束がコアを回収していく。

 

「千冬さん、一夏って今は…」

 

「ああ、黒翼天が使っているようだ。

あの調子なら大丈夫だろう、無人機の大半を一人で圧倒している。

観客席は粗方空っぽになったようだし、もうひと踏ん張りだ」

「…はい!」

 

残る無人機はほかのメンバーが一機ずつ撃破していく。

今まで以上に強くなった面々…一夏が育てた面子の前では無人機共では太刀打ちもできずにいるようだった。

 

 

 

 

 

「ヘル・ブレイズ」

 

 

 

 

 

そんな声が聞こえた気がした。

 

『千冬!上空よ!』

 

暮桜の声が脳裏に響く。

その声に応え、私は上空を見上げた。

 

「なん…だと…!?」

 

『太陽が落ちてきている』

 

そう思わされた程だった。

それは巨大な劫火。

束が作り上げた防御特化の無人機も次々と焼き尽くされていく。

それどころか敵機の無人機も無差別に焼き尽くされていく。

 

「総員退避しろおぉっ!」

 

通信を広げ、全員に叫ぶ。

蜘蛛の子を散らすように全員が競技場から逃げ出す。

 

ドゴオオオオオオオオォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!

 

巨大な劫火の塊が競技場に落下する。

そこにあったであろうすべてが焼き尽くされていく…。

そしてそこに敵軍も友軍も関係なかった。

無差別攻撃、その言葉がよぎる。

 

「全員無事か!?」

 

「はい!大丈夫です!」

 

通信が開かれ、全員分の返事が返ってくる。

ただ一人を除いては…

 

「先生!一夏が…一夏が居ません!」

 

そうだ、一夏…アイツは機体を展開していなかった。

あの劫火の飲まれたのだとすれば…骨すら残さず焼き尽くされたかもしれない。

 

「ちーちゃん、西方250m!」

 

「アイツか…!」

 

炎を操る機体。

その単純な言葉で思い出すのはダリル・ケイシーのヘル・ハウンドだった。

ともなれば…あの黄金の機体はヘル・ハウンドと同じアメリカ製だということか…?

 

「真耶、聞こえるか?」

 

『こちら山田です、どうしました?』

 

「避難状況を教えろ」

 

『先ほど確認が終わりました、全員避難できています。

学園の教職員、生徒、そして一般来訪者もふくめて全員です』

 

「一夏の確認は?」

 

『そちらに居ないんですか!?』

 

ダメ、か…!?

やはり飲み込まれたのか…。

 

「織斑一夏君はどこかしら?」

 

前方に居る黄金の機体の搭乗者の声が聞こえた。

その声には聞き覚えがあった。

それも、つい最近。

上品な声には聞こえるが、どこか憎しみを込めた声にみ聞こえた。

 

「何処、だと…!?

貴様アアアアアアァァァァァッッッ!!!!!!!!」

 

「一夏は…貴様が反った攻撃で…焼き尽くしたのだろうが!」

 

白刀『雪片』を握り斬りかかった。

 

 

 

 

Kanzashi View

 

「私たちも行くよ!」

 

「了解!」

 

私の合図で皆も応えてくれた。

セシリアとマドカが一気に射撃ビットを展開して射撃を繰り返す。

その隙をついて私も鈴もメルクも射撃を繰り返す。

ラウラもAICを使い敵を束縛する。

敵機はフルフェイスの下に微笑を浮かべている気がした。

 

「この程度かしら?」

 

「辻風!」

 

天羅に搭載されているミサイルを一斉掃射。

続けて単一仕様能力を発動。

酸素を急激に燃焼させ、大爆発を起こさせる。

 

 

「ラウラ!」

 

「吹き飛べ!」

 

リボルバー・カノンとパンツアー・カノニーアが同時に光を放ち、束縛された相手に直撃…した筈だった。

 

朦々と立ち込める煙が晴れた瞬間に千冬さんと篠ノ之博士、そして鈴、お姉ちゃんが同時に斬りかかる。

 

「『零落白夜・識天』発動!」

 

「『絢爛舞踏』発動!」

 

「『叫天慟地』発動!」

 

「『沈む床(セックヴァヴェック)』発動!」

 

四人がかりでの単一仕様能力の発動をしながらの攻撃。

これで仕留められる…誰もがそう思った。

 

「『プロミネンス』」

 

黄金の機体の両肩から鞭が飛び出し、三人の攻撃同時に弾いた。

信じられなかった光景だった。

 

「質問の途中だったっわね。

もう一度訊くわ、織斑一夏は何処かしら?

あの程度で死ぬとは思えないんだけど?」

 

どの口で…!

あんな無差別な攻撃をしておきながら!

 

「これが最後よ、織斑一夏を差し出しなさい。

彼は…人体実験の続きを受けてもらう予定なのよ」

 

その言葉で誰もが凍りついた。

この声…思い出した…。

 

「そして…私がこの手で殺すつもりなのだから…」

 

二年前、一夏に非道な人体実験を施した者の一人。

あの声の主…!

黒翼天の復讐相手の一人…私はそれを思い出していた。

 

「用が有るのなら…直接出向けば良いだろう」

 

そんな低い声が増したから聞こえた。

 

「だが、好都合だ。

此処で殺してやるよ…。

殺す、その為だけに生きてきたんだ…!」

 

そして

 

 

 

冥闇(めいあん)に終焉を齎せ」

 

「そう…そこに居たかぁっ!」

 

「昏き翼よ!」

 




復讐鬼はとうとう相見える

血塗られた復讐劇

憎悪と殺意と憤怒

焼き尽くす劫火

滅びの雷

その行く末は…

次回
IS 漆黒の雷龍
『征天雷禍 ~ 雷炎 ~』

地獄なら、もう見た

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