今年も執筆がんばっていきますのでよろしくお願いします。
スピード感溢れる形になっていたらいいなぁ…。
A.岸原女史の化けっぷりってGEシリーズの『スヴェンガーリー・コテイホウダイニテッシロ・トリガーハッピー・ゴシャヒメ=チャンサマ』なのは判りましたが、一夏君のは誰の真似ですか?
P.N.『いつも心は後ろ向き、万年厄年な雨男』さんより
A.『FF13』より、スノウ・ヴィリアース(当時21)です。
とある場面にて見られるバイク爆走シーンより抜粋しました。
Ichika View
やれやれ、面倒な役を引き受けちまったもんだ。
今更になってそんな想いが出てくる。
だが、今更であったとしても、今になってそんな御託をウダウダと言っていられない。
「えっと…放送席だから、あっちか」
競技場の観客席の一角に臨む放送席に入ると、鰻重を頬張っている山田先生と、コンビニ弁当を突っついている黛先輩が居た。
弁当の格差が兎にも角にも酷いな、オイ。
だが黛先輩の目の前には俺が用意したお握り弁当の残骸も転がっていた。
山田先生が満喫している鰻重は俺が作ったものだが。
「あ、ご苦労様です織斑君」
「どうも、弁当を満喫していただいているようで何よりです」
「本当に料理上手ですよね、作り方を教えてもらえませんか?」
「企業秘密です」
鰻重に使っている特製のタレに使っているのは…企業機密だ。
配分は誰にも教えていない。
そして下に敷き詰めているごはんは、今朝炊き立てのコシヒカリ。
マズイだなんて誰にも言わせない。
言ったらメシ抜きの刑に処す。
「山田先生のお弁当も織斑君が作ったものなんですか!?」
「ええ、そうですよ」
「織斑君、女子力高いね」
うっせーよ。
小学生のころから台所に出入りしてたら、いつの間にか作れるようになっていただけなんだがな。
まあ、更識家だとか、ドイツだとかで料理修行もやったけどさ。
「今回出場する人達にも料理をふるまうようになったので、そのついでですよ」
「その『ついで』で生徒全員のお握りまで作ってるんでしょ?
一人で作れるような料理じゃないってば…」
「コンビニ弁当は栄養が偏りすぎてて健康にはあまりよくありませんよ」
「そういうなら織斑君にお弁当作って欲しいんだけどなぁ…」
「全力でお断りします」
キッパリと断らせてもらった。
こちとらいつもいつも新聞部に追われている身だ。
この程度の仕返し位は許されて然るべきだろう。
べきだ。
べきであってほしい。
切実に。
「ところで黛先輩はなんでこんなところに居るんですか?
此処、大会関係者の席ですよ」
「午後の部も実況役を努めてるから」
他に居ないのか実況役。
いい加減にその席を後輩に譲れ新聞部部長。
この際、4組の向日さんでも構わないから。
…いや、あの人も十分にパパラッチの素質があるからこの際二人まとめてリコールお願いします。
俺に知人で実況をマトモにできる人は…うん、居ないな。
もう少し交友範囲を広げるべきだろうか。
「それでは織斑君、競技開始時には、フラッグを頼みますね」
「そんな役まであるんですか」
俺、今日はいくらなんでも多忙過ぎじゃねぇか…?
まあ、良いけどさ。
そして渡されたスタートフラッグがまたデカい。
長さは3mはあるだろう。
これはアレか、ISの競技なのだから、スタートフラッグを振るうのもISを使え、と。
過剰に目立つ役なんて御免こうむりたいんだけどなぁ。
…意地で生身で振るってやる。
そう決めた。
…が、問題がここで一つ
「山田先生、コレ、長すぎでしょう、付け加えて言うと…なんでポールの中に鉛が詰められているんです?
どう考えても嫌がらせでは?」
そう、異様に重い。
ポールの部分は、ステンレス製でいいだろう。何で鉄なんだよ。
しかも芯と言わんばかりに鉛が詰め込まれているから異様に重い。
山田先生も運ぶのに苦労したんだろう、カートを使って運んでいたらしい。
「えっと…日本政府からの指示だそうで。
それと、コレを振るう際にはISを展開しないように、と」
風潮に踊らされている阿婆擦れの為政者が未だ政界に居るって事か。
つくづく嫌になるね、この世の中が。
「…代わりを用意してください、振るうだけで腕がおかしくなりそうですから」
「で、ですよね…」
風潮に踊らされている阿婆擦れの思い通りになってやる気はない。
そしてそういう視線は今も周囲から感じていた。
観客席に居るであろう誰かの視線
風潮に踊らされて世界を自分の目で見ていない誰かだろう。
「…気に入らないな…」
それは至極今更な言葉だった。
ずっと前から感じていたことなのに…束さんだって今の世の中を作ったことを俺に謝罪までしていた。
だから、極力気にしないでおくようにしていた。
それでも、今になってそんな言葉が飛び出す自分に少しだけ驚いていた。
『お前でもそんな言葉を吐くとはな』
「俺だって人間だ、多少のイレギュラー性は持ち合わせているみたいだけどな。
だが、人間である以上、好むものも在れば、その真逆も在る。
それだけだ」
『…フン…くだらねぇ…』
それが人間だ、相棒。
代わりのフラッグを受け取り、俺は改めて会場を見渡してみる。
午前中の競技を終えた後なのだが…観客は満員御礼、いつぞやみた映像のの中のように通路や階段に座り込んでいる観客も居る様子。
ちゃんとした席に座れと言いたいが、席が空いていないから仕方ない。
お、弾に数馬、それに蘭が居るみたいだ。
そしてその隣には厳つい爺さん…じゃんくて厳さんだ。
更にその付近には…厳馬師範に、奥方も居た。
親バカここに極まれり、と。
まあ、見物に来てくれるのは別に構わないんだけどさ。
「いっく~ん!束さんも来ちゃったよ~!」
「『来ちゃったよ』じゃないでしょう、何をしに来たんですか?」
そして今の世の中を作り出した張本人もこの場に来るんだから、何このカオスは?
「今年のCBFの実況役は私が勤めるの!」
「だそうですよ、黛先輩、ご退場願います」
「ええ!?」
競技が始まる前から前から滅茶苦茶になってるよ、関係者席限定でさ。
で、結局のところ
実況:黛 薫子
解説:篠ノ之 束
と落ち着いたわけだ。
何かあった時には俺が力ずくで止めねばなるまい。
束さんがそれで譲るとは欠片も思えないが。
「あ、そうだいっくん。
午後の専用機所有者の部だけどね、入場の時に派手な演出するようにしといたんだ」
「派手な演出?
スモークだとか、火薬でも使うんですか?」
「ノンノン、そんな地味なことはしないってば♪」
俺の表現でも十分に派手なものだと思うのだが…まあ、この人の考えていることは人知の及ばぬ領域だとか、現代からしても非常識だとかに分類されるそれなのだろう。
期待はしないでおくが、この競技場が壊れない程度にしておいてもらいたい。
「で、どんな非常識な演出なんですか?」
「それは見てのお楽しみ♡」
果てしなく不安だ。
アンタが居る時点で不安材料しかないのは…経験からなるものかもしれない。
「あ、そういえば生徒会長さんが呼んでたよ?」
「楯無さんが?」
選手入場までの残り時間は20分程だ。
見ればグラウンド入口の辺りに手等の彼女が手を振っていた。
…気楽そうにしてるな、あの人は…
「判りました、行ってみます」
Tatenashi View
面倒そうな表情を浮かべる彼。
「こんな時間に何の用だ」とでも言いたいのかもしれない。
いや、胸の内でそう言っている。
けど、言いたいことがあるのは私も同じだった。
「こんな時間に何の用ですか?」
ああ、はいはい。
『心の内側がそのまま口から飛び出した』とかそういうアレね。
「あらあらご挨拶ね。
そんな事を言われたらお姉さん困っちゃうわ♡」
ペースを掴ませてなんてあげない。
だから私はいつものように振る舞った。
二年間もの付き合いがあっても私はこんな事を繰り返している。
でも、今回はコレが重要だった。
「出来るなら手早くお願いしますよ。
もうそんなに時間が無いんですから」
「んもう、判ってるってば♪」
呆れ顔の彼の背後へ回り、ラスティー・ネイルを展開。
一夏君の首筋に突き付けた。
「動かないで」
先ほどまでとは違う冷たい声。
自分でもこんな冷たい声が出せるのかと思うと少しだけ驚いた。
「何のつもりですか?」
「それはこちらのセリよ。
一夏君こそ、今回のCBFが終わったら何をするつもりなの?」
彼の手がピクリと動いた。
顔は見えない、けどその表情は何となく判った。
「今回のCBFも何らかのイレギュラーな事態が起きる。
そう思っているのは確かなようね。
でも勘違いしないで、そう思っているのは一夏君だけじゃないのよ」
確かに、今年のIS学園ではイレギュラーな事態に陥ることが多い。
クラス対抗もそうだったし、臨海学校でも大変な事態に陥ったと情報を得ている。
そしてそれらの件の中心には、必ず一夏君が居た。
「悪いのは君じゃないのよ」
「だが、俺はもうそこまで楽天家じゃない」
ああもう!イライラさせられるわね!
思い詰めるのは勝手だけど、一人で勝手に結論を出して背負おうとするのは一夏君らしくもない!
「一夏君を中心にして多くのことが起きたのは確かね。
でもね、一夏君がそれを願ったわけでも、呼び寄せたわけじゃないでしょう!」
「…」
「皆に負担を抱えさせたくない、そう思うのも勝手よ。
でもね、今の一夏君、勘違いしないで。
『君は一人じゃない』のよ!」
表情は見えない、でも判る。
動揺している、それも激しく。
あんなにも一度に何人分もの料理を用意したんだもの、何か裏があるかと思ったけど…。
「
でもね、それ以上に皆の中心に君が居るの。
なのに、そこから君が居なくなったらどうなると思う?」
「…皆が傷つくことはないかもしれない」
「否、ね。
二度と消えない傷を、君が刻み付けることになるのよ」
君が皆に優しくしてくれているように、皆も君を心の支えにしている。
初恋が散った、なんて女の子も居るだろう。
それでも、どこか一夏君を頼りにしていた。
いつだって、皆の中心には一夏君が居た。
なのに、彼はこの日を境に姿を消そうとしていることも、そして人を殺す覚悟までしている。
でも、そんな事は絶対にさせない。
例え…例え、過去に何十人もの人の命を食らっていたのだとしても…!
「考えてみなさい、君が居なくなった後に皆がどう思うのかを…!」
「…俺が居なくなったら、ですか…。
確かに、今となってはあんまり考えられるものじゃないですね。
簪もマドカもメルクも鈴もラウラも俺を慕ってくれている。
セシリアやシャルロットもなんだかんだ言いながら色々と言ってくるな…。
確かに、俺にとっては陽だまりのような居場所ですよ。
捨てるには惜しい、去るのも辛い…だけど…俺のせいで傷ついてしまうのなら…いっそ…!」
ああもう面倒臭いわね!
「一人で背負うのはやめなさいって言ってるのよ!
何もかも一人で背負おうとはせずに、少しは皆にも手伝ってもらいなさい!
何が起こったとしても君に非も罪も無いのよ!」
「…!」
「考えなさい、考えるのも放棄するというのなら…その指輪、今すぐに捨てなさい。
貴方を簪ちゃんと一緒に居させるわけにはいかないわ」
ここまで言ってしまえばいくら一夏君だって踏みとどまってくれるはず。
彼が求めているのは平穏であって騒乱ではない。
「…俺に…非は無い、か…。
その言葉だけでも有難いですよ。
…考えてみます、言われたとおりに。
バカみたいですよね、俺…」
「そうね…とんだ大馬鹿者よ、一夏君は」
ここで私はラスティー・ネイルを下した。
それを察したのか一夏君が振り返ってくる。
「軽くなった気がする…。
引きずり過ぎて…擦り減ったかな…」
「肩の荷にも下してしまいなさい。
言ったでしょう、一人で何もかも背負おうとするなって」
「それも含めて考えておきますよ。
俺は…あいつらが悲しむのを見たいわけじゃないですし。
だから、この指輪を捨てたりなんてしませんよ、コレは俺の誓いですから」
「それがわかったのなら良いわ。
さあ、行きなさい、もう時間が無いから」
どこか軽くなった表情の彼を見送りながら手を振った。
やれやれ、義弟が難しいことを考えていたらサポートするのは姉の役目ではあるけれど…結構大変ね。
「本来は私の役目だったのだがな、お前に押し付けてしまったようだ」
「あら千冬さん、いつからいらしたんですか?」
近くの部屋の扉が開き千冬さんが姿を見せた。
その横顔は、どこか安堵しているかのようだった。
「最初から気づいていただろう?」
そりゃあもう!
伊達に暗部の長をしてませんから。
「
だが、あそこまで思ってしまっていたとはな…。
生存本能がマトモに備わっていない
「ええ、確かに彼は危うい場所に居る。
今にも事切れてしまいそうなほどに…。
私も今回ばかりは痛感させられました…。
彼は、『自分を人間だ』と思っているのと同じだけ…『駒』だと思っているんです。
それも…何度でも代用できる『捨て駒』だなのだと。
でも、これで思いとどまってくれたものだと思います。
自分が『代えのきかない命』なのだとして」
「そうあってほしいものだ…」
やぁれやれ、弟君が立ち止ってると背中を推してあげるのも大変ですね、姉の身の上の人間は。
一夏君、簪ちゃんを悲しませたら許してあげないんだからね♡
青空の下、その時は迫る
始まりの瞬間か
終わりの始まりか
飛翔する先にあるのは栄光か災厄か
次回
IS 漆黒の雷龍
『征天雷禍 ~ 走翔 ~ 』
…なんつー登場の仕方だよ…。