IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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これにて学園祭編は終わりになります。

Q.ブラコン娘が増えるらしいですが…登場人物紹介にて書き加えられたのを察するに…くーちゃんですか?
P.N.『匿名希望』さんより

A.…………(止まらぬ滝汗)


狂勇災典 ~ 祭終 ~

Kanzashi View

 

各クラスの出し物の片付けも終わり、私達は中庭に集合していた。

太陽は沈み、この時間帯は束の間の休憩時間のようになっており、集合している皆は雑談とかをしている。

そんな中、私と一夏はやや離れた場所で皆の様子を見ている。

けど、一夏は眠ってしまっている。

あの後、王冠を奪い取ったのが誰なのかが気になり、多くの人に追い掛け回されたりして、あちこち走り回っていたのだから仕方ないと思う。

 

「お疲れ様、一夏」

 

一夏の体がゆっくりと倒れ、膝枕をしてあげる形になった。

この学園祭が終わったら今度はキャノン・ボール・ファストが待ち構えている。

そこでもまた何か起きるかもしれない。

何も起きないかもしれない。

それでも一夏は走ってばかり。

今日この時ばかりはゆっくりとさせてあげたい。

 

「そういえば膝枕ってしてあげたことが無かった気がする…」

 

なんか今になって恥ずかしくなってきた…。

逆に一夏に膝枕をしてもらった経験はあるけれど…。

 

「お兄さん、ぐっすりと眠ってますね」

 

「今は静かに寝させてあげるべきだ、静かにしておこう」

 

「お疲れ、兄さん」

 

「呑気に寝ちゃってまぁ♪

しかも膝枕とかさぞかし気分がいいかもねぇ~♪」

 

 

 

「鈴、静かにしてあげて」

 

「はいはい」

 

 

 

 

『これで全校生徒が集まったわね~。

こんな時間に悪いけど、集会を始めるわよ~♪』

 

お姉ちゃんが壇上に立って演説を始めているのがここからでも見えた。

…何故か物凄い楽しそうな表情をしてる。

 

『学園祭の準備に後片付けとご苦労様♪

私も色々と見て回って楽しませてもらったわ♪

1年1組は何と生徒全員が割烹着を着ていて実にハイカラだったわ。

裏メニューに和膳定食がある、なんて噂を聞いていたけど、それを作れるシェフはお休みだったみたいね、ちょっと残念ね。

まあ、それはさておき、生徒会主催の部活動投票結果に移りましょう♪』

 

「あ、そういえばそんなのが有ったっけ…」

 

各生徒が一票ずつ何処かのクラスや部活に投票、最も多くの投票が入れられた部活動に一夏が派遣されるとなっていた。

1年のクラスで投票が多かったら一夏はクラスを移動だったけど…正直、結果は見えていた。

 

お姉ちゃんはいつの間にか用意していたらしいドラムロールをスピーカーから流す。

そして最後にシンバルの音。

…吹奏楽部に協力してもらったのかな?

 

『投票結果による優勝は…一年一組!

『食事処織斑』に決定!』

 

途端に周囲の生徒の歓声が上がった。

そしてお姉ちゃんも驚いていた。

自分が予定していた展開とは大きく違っていたのだから。

でも、今回ばかりは一夏の画策が上回っていたらしい。

 

「有名人は辛いね、一夏」

 

「…んぐ…くぅ…」

 

私は苦笑いしながら一夏の頭を撫でてみる。

男の子らしく、髪は私なんかよりも固い。

せも、触ってみるとなんだかクセになりそう。

でも起こしたりしないように注意しなきゃ。

 

『はいは~いお静かに。

一年一組の皆♪

よく考えていたわね♡

何と、一年一組に投票したら食事処織斑にてデザートが一品無料追加のオプション付き!

女の子の考えうまくとっていたわね!

これにはお姉さんも驚きよ!

考案したのは誰だったのかしら?』

 

 

 

「それじゃあ一夏のクラスへの投票結果が一番多くても仕方ないよね」

 

私は特別参加だったけど、生徒会へ投票してたっけ。

 

『それではもう一つの部門の結果発表に移るわね♪

王子様の王冠を見事その手に収めたのは誰なのか!』

 

副賞として、一夏との同室になれるというオマケではあったけど、みんなが血眼になって王冠を探していたらしい。。

この場に至るまでは口外厳禁だったけど…お姉ちゃんが発表する気なのかな?

 

『王子様の王冠を手に入れたシンデレラは…名乗り上げてみて!』

 

最悪の形での結果発表!?

自ら名乗り出させるなんて酷い!

此処で私が名乗り出たらどうなるんだろう…?

一夏は眠ってるから大きな声を上げるわけにもいかないし…。

 

「更識妹、何を悩んでいる?」

 

「織斑先生…。そ、その…」

 

「…まあ、だいたい察しているがな。

…うちの愚弟の世話は面倒かもしれんが、今後とも頼んだぞ」

 

織斑先生にはバレてたらしい。察しが良いにもほどがあると思う。

この人には隠し事なんて出来そうもない。

 

「どうした、返事が聞こえないぞ、『簪』?」

 

「あ、はい!わかりました千冬さん!」

 

あの人は私を名前で呼んだ。

だから私も名前で呼び返した。

普段は見せない微笑みを零しながら千冬さんは集会の真ん中へと入っていく。

私はそれを見送った。

 

『え~…お待たせしました、今になって情報が届きました。

王子様の王冠を手に入れたのは~、1年4組!更識 簪ちゃんよ!』

 

…織斑先生がお姉ちゃんに教えたらしい…何てことを…。

私としてはこのまま静かに引っ越しをしたかったのに…。

お姉ちゃんのことだから色々と引っ掻き回すんだろうなぁ。

私や一夏の身にもなってほしい。

…言っても無駄かもしれないけど。

もう…一夏、どうしようか?

 

「くぅ…くぅ…」

 

私の気持ちを知ってか知らずしてか、一夏は相変わらず熟睡を続けていた。

 

「皆はキャンプファイヤーに行ってきていいよ。

私はこのまま一夏を見ておくから」

 

「私はこのまま残る。

何か有ったらいけないからな」

 

「ラウラと同じく、襲撃みたいなものが無いとは言い切れないもん」

 

「なら私も残りますね、理由は先に言われちゃいましたけど」

 

「アタシだけハブられるのは面白くないからアタシも残るわ。

暇つぶしに星くらいは見えるからね」

 

空を見上げれば、いくつか星が見え始めている。

篠ノ之博士が夢見た星空は、こんなものではないかもしれない。

いつの日か、たどり着ける日が来るのかは分からないけれど…。

でも、もっと凄い星の海を私達は目にしたことがある。

コアネットワークに直接ダイブしたあの時に。

コアネットワークは人の心をモデルとして作り上げたものだと篠ノ之博士は言っていた。

私達は、その中に飛び込んでみたけれど、途絶えていた道も確かに存在していた。

遮断していたのかもしれないけれど、今となっては確かめようが無い。

 

つながらない心もあるかもしれないけれど、私と一夏の心はきっとつながっている。

そう信じてみよう。

 

 

 

 

Tabane View

 

「報告は以上です」

 

「ご苦労だったな、更識。

しかし…束、お前の予想は外れていたようだな」

 

ちーちゃんが面白そうに私に視線を向けてくる。

『予想が外れた』とは黒翼天の事だろう。

黒翼天自体は、いっくんが創造した力の具現化。

それに関しては間違いはなかった。

 

「そうだね、予想は外れた」

 

黒翼天が持つ自我は、コアから生じているものだと思っていた。

だけど違った。

黒翼天の自我は、いっくんが自分の意思で切り離したいっくんの感情のなれの果てだった。

コアは、それを制御するためのリミッターになりつつある。

黒翼天の待機形態など、とても言えない状態になってきている。

言うなれば、いっくんの精神そのものが待機形態なのかもしれない。

 

「それに…『殺さなかった(・・・・・・)』のではなく『殺せなかった(・・・・・・)』か…」

 

「前例はあるよ、六月にも似たような事例はあった。

それがまた今になって影響していたとするのなら…」

 

 

「簪ちゃんが、黒翼天にリミッターを施した、そういう事になるわけですね」

 

名付け親だけでなく、躾を施した、とまで言っちゃえるかもしれない。

いっくんが親バカになったとしたら、簪ちゃんは厳しさを以て接する母親、ってところかな…?

いっくん、今から尻に敷かれるコースが見えてきてるよ、もうちょっと頑張ってみようよ。

 

「オータム、とか呼ばれていた女はどうなってるの?」

 

「今は独房に入れています。

自害用に使うと思われていた歯に仕込まれていた毒入りのカプセルも没収しましたし、自白剤投与も行いましたから、意識が戻り次第、情報を吐くものだと思われます」

 

 

「どのみち両腕両足がもう無いんだ、逃げることも出来んだろう。

凰達に増援が来ないかどうか見張らせておいたがその心配もなかったようだからな。

一夏で人体実験を施そうとした馬鹿者の正体も見えてくるだろう」

 

あれ以降の増援が無かったとするのなら、彼女一人の潜入だったということになる。

無謀だぁねぇ。

だから無人機を増援を寄越していたんだろうけれど、回収すら出来ずに撤退していった。

流石に数の違いで不利を悟ったのかもしれない。

 

「ちーちゃんは今後どうなると思う?」

 

「さあな、だが、奴らの好き勝手にさせる気は無い。

一夏も戦う覚悟を決めねばならんかもしれんな」

 

 

その必要もあるかもしれない。

いっくんはすでに30人を超える人を殺している。

恐怖や怒りでは自分の力を制御できない。

だから切り離した。

強すぎる感情は力を暴走させる。

それを知ったから、いっくんは自らの感情を切り離したのかもしれない。

けど、力を制御させるものも、また感情。

命を奪う恐怖も持ち合わせていないけれど、そんな機会は与えたくない。

だから守らなくちゃいけない。

これはとんだ皮肉だと思う。

誰よりも強い力を持っている人が自らに制限を施しているのだから。

はやく…少しでもはやく『IS=兵器』という公式を世界から取り除かなくてはならないだろう。

その為にも、戦いはどこかで終わらせる必要がある。

いっくんが望む平穏にたどり着くためにも。

いっくんが、いつの日かその力を手放せる日が来るように、幸福な未来を得られるように。

 

 

 

Kanzashi View

 

一夏に続き、私の生徒会入会が決まり、部屋も同じになる。

あれから何人もの人が追い掛け回してきたけど、ラウラとマドカと鈴が言いくるめてくれた。

篠ノ之さんが睨んでくるけど、そっちはマドカが対処していた。

蹴り飛ばしてたけど、大丈夫なのかな。

 

「これで荷物は全部か?」

 

「うん、だいたいは終わりだよ」

 

「じゃあ、荷解きを始めるか」

 

「そ、それは開けちゃダメ!私の服だから!下着とかもはいってるの!」

 

「…スマン!部屋から出ておく、マドカ、手伝ってあげてくれ」

 

「兄さんは肝心なタイミングでデリカシーが無くなるんだから」

 

「…重ね重ねスマン…」

 

一夏が部屋から出て、マドカと本音が荷解きを手伝ってくれる。

危うく一夏に下着類を見られるところだった。

一緒の部屋で過ごすことになっても、これを見られるのは恥ずかしい。

 

「お~、かんちゃん、おっき~。なになに~?97~?」

 

「ほ、本音!」

 

「ぐ、私はまだ95なのに…!」

 

この二人に引っ越しの手伝いを頼んだのは失敗だったかもしれない…。

今になって私は後悔してしまった。

 

「は、早くクローゼットに仕舞って!

人の下着で遊ばないで!

本音!それは私の寝巻だから!

マドカ!本音を止めるの手伝って~!」

 

「ん、分かった。

本音、いい加減に…ってちょっと待て!

簪の下着を持ってどこにいくつもりだ!?」

 

 

 

 

Ichika View

 

部屋の中に居る訳にもいかず、廊下にて佇んでいたが…部屋の中がずいぶんと騒がしい。

『女が三人寄れば姦しい』とか言ったっけか。

まさにそんな感じだった。

簪の引っ越しだけでそこまで騒がしくなる理由がよく分からんが。

 

「い~ち~か~君」

 

こういう騒ぎが起きているときは大抵、この人は面白がって寄ってくるんだよな。

野次馬根性とか呼ばれるものだろうけれど、一種のパパラッチを思い浮かべてしまうのは別に悪いことではないだろう。

 

「どうしました楯無さん?」

 

「学園祭は楽しめたかしら?」

 

「よく分かりませんね。

所々記憶が飛んでるんですよ、それこそ演劇の途中から何があったのやら」

 

「…そう…」

 

「けどまあ、悪くはありませんでしたよ。

夏休みの間もそうでしたが、皆がどれだけ自分を鍛えているかがよく分かりましたから」

 

 

 

 

Tatenashi View

 

そう、皆はそれこそ必死になって自分を鍛えてきた。

一夏君も例外じゃない。

見ない間に凄まじい力をつけてきた。

掲げた目標に近づきたいから。

その高みを超えたいから

いつの日か、守れるようになりたいから。

そんな綺麗な言葉で飾っていても、私達はその奥にある本当の想いを知ってしまった。

力を求める根源的な理由、それは『復讐』と『殺戮』にある。

一夏君自身はそれを忘れてしまっているのが救いだったかもしれない。

あの千冬さんすら下してしまった。

けれど、越えながらも力を追い求めようとしているのはどこか危うさを感じる。

力を追い求め続け、その果てには何があるのかは、私にもわからない。

『黒翼天』と『輝夜』、そして『絶影流』。

彼はあまりにも『力』に恵まれすぎているようにも思えた。

 

「ねえ一夏君」

 

「何ですか?」

 

「将来の夢は何かしら?

お姉さんに教えてくれる?」

 

「今となっては曖昧ですね。

…しいて言うのなら…平穏な生活、でしょうか。

『世界初の男性IS搭乗者』なんて箔がついているわけですから、毎日が慌ただしすぎるんですよ」

 

「だから『平穏』を?」

 

「それもありますけどね。

『風潮』のせいで嫌な日々が存在したのも確かなんですよ。

だから、そういう風潮も取り除いて、本当の『平穏』を作ってみたいって思うんです。

机上の空論、甘すぎる理想かもしれませんけどね」

 

誰もが平等な世界なんて存在しない。

誰もが幸福に送れる世界は存在しえないだろう。

一夏君が思っているのはただの優しすぎる理想でしかない。

 

「本当にそんな世界を創れると思う?」

 

「まさか、思い描いているのが幻想だというのは分かりきってます。

平等なんて存在しない、それを如実に作り出しているのが今という時代ですから」

 

そう、この世界はあまりにも不平等。

そして今の時代はそれがあまりにも露見し過ぎている。

『IS』が世間に発表された瞬間から、人間の半分が差別対象にされた。

反逆思想を唱えれば、それだけで投獄、最悪は女性が感情任せに『処刑』名目の『殺害』すら辞さない場合も珍しくなくなっている。

 

けれど、目の前の彼は、感情任せの今の時代に現れた例外(イレギュラー)として存在している。

彼からISを奪えという声がいくつか聞こえてくるのも確か。

例外(イレギュラー)を生かしておく理由は無い」と謳い、殺害しようとする声も聞こえてきている。

けれど、力に恵まれているとはいえ、優しさと厳しさを誰よりも持っているこの少年を、異端者としてみようとする理由が私には理解出来なかった。

 

「まあ、輝夜と一緒に世界大会に挑んでみるのも面白そうですけどね。

輝夜の能力と、俺の剣が世界にどれだけ通じるのかを試してみたいんですよ」

 

「あら、また武者修行のつもり?」

 

「楯無さんも如何です?

簪に追い抜かれたままでは釈然としていないでしょう?」

 

「じゃあ、この後で試合を挑ませてもらうわね。

場所は第3アリーナでね」

 

「了解」

 

お姉さんはね、負けっぱなしじゃ性に合わないのよ。

全力でいくから覚悟しなさい♪

 

まあ、それはそれとして…

 

「今日からは簪ちゃんと一緒の部屋で過ごすようになるわね」

 

「ええ、ドイツでも似たり寄ったりの日々でしたけどね。

気が早いかもしれませんけど、きっと(未来)の予行演習にもなると思いますよ」

 

あらあら、本当に気が早いこと。

まあ、一線は踏み越えていないらしいからお姉さんとしてはまだ安心できるけど。

 

「お幸せに」

 

彼に聞こえないように小さく呟いた。

あ~あ、ちょっとだけ嫉妬しちゃうわね…。

一夏君は簪ちゃんとよろしくやってるし、虚ちゃんは弾君と仲良くしてるし…私は運命の出会い()には程遠いのかしらね…?

 

「でも、部屋がずいぶんと騒がしいわね」

 

「荷解きで騒いでいるのかもしれませんね。

俺の部屋でもあるんですが…今は入りづらいのでこうやって廊下で暇をつぶしているんです」

 

「なるほどね…」

 

そんな折だった。

 

バターン!

 

派手な音をたてながら部屋のドアが勢いよく開かれた。

中から飛び出したのは簪ちゃんと、本音ちゃん。

部屋の中には疲れ切ってヘトヘトになっているらしいマドカちゃんも見えた。

 

「本音!私の下着返して~!」

 

「ぶっ!?」

 

なんてものを持ち出してるのよ本音ちゃんは!?

しかも両手に持ってるし!?

 

「わ~!かんちゃんてやっぱり大きい~!」

 

「ほ、本音ぇっ!返してってばぁっ!

い、一夏も目をそらしてないで助けてよ~!」

 

「いや、見るわけにもいかないだろ」

 

まあ、それはそうよね。

妙なところで紳士ぶっちゃってまぁ♪

 

「え~?でも臨海学校ではかんちゃんの裸を見ちゃったんだよね~♪」

 

「ほ、本音!!!!」

 

ちょっと待ちなさい。

そればかりは聞き捨てならないわよ。

 

「い~ち~か~く~ん~?

それってどういう事かしら~?

事と次第によっては、ただでは済まさないわよ~?」

 

なんて言いながらも手加減なんてしてあげないけどね♡

機体(ミステリアス・レイディ)を展開し、更には篠ノ之博士にもらった新しい兵装『禊星』を両手に構える。

 

「って待ちなさい!」

 

いきなり逃げ出すのはどうい了見よ!

しかも凄く速いし!

上等よ!一晩だろうと追いかけてやるんだからぁっ!

 

ちなみに…この後、千冬さんに見つかって私だけ大目玉を食らう羽目になった。

 

 

 

 

 

「本当に信じてくださいってば!

一夏君は廊下は走ってなかったですけど天井走ってたんですってば!」

 

「たわけ、重力に歯向かって天井を走る人間がどこに居るんだ」

 

「貴女の後ろです!」

 

「…俺?

いや、勢い任せで壁を数歩走るくらいはできますけど、さすがに廊下全体の天井を駆け抜けるだなんて俺には出来ないですって」

「さっきやってたでしょおおおおぉぉぉぉぉぉっっっ!」

 

 

 

 

で、後で模擬戦をしてみたけど…展開は一方的だった。

私の劣勢にて。

 

「イイィィィィヤアアアァァァァァァッ!!!!????」

 

「どうしました楯無さん?

逃げてばっかりじゃ決着も着かないでしょう?」

 

「そう思うのならその武器を仕舞って!!??

すっごい怖いから!!!!」

 

一夏君は輝夜の能力を最大限に活かして攻撃してきている訳じゃない。

一振りの巨大なダブルセイバーだけ。

けど、その刀身と使い方が私の恐怖感を加速させていた。

 

要はアレ、殺傷能力を高める為に、返しが幾つも取り付けられたかのような外見。

しかも刀であれば峰にあたる部分すら、返しが幾つも見受けられる。

刀身の先端はまるでドイツ軍御用達のコンバットナイフのよう。

更には刀身の長さだけでも3m近くある。

それをダブルセイバーとして振り回す…というかスクリューの如く猛回転している。

剣の柄が在るべき場所は直径60cm程のリングになっていて、そこに手を入れているだけで剣が浮遊しついるかのようにも見える。

つまりはあの武器が自動で猛回転、そんな状態で現在の私はつかず離れずの距離で追い回されていた。

 

「それに、俺ばかり日常茶飯事とばかりに追い回されるのは理不尽でしょう?」

 

 

「だからってそんな刃物を振り回してまで私を追い回すの!?

悪い事をしたって思ってるから!

お願いだからその剣を仕舞ってってばぁっ!」

 

「ほらほら、早く逃げないと『神狂い(マドネス)』でスライスされますよ?」

 

「一夏君の意地悪うぅぅぅ~~~!!!!」

 




王蜘蛛の脅威は去り、再び訪れた平穏

彼女は願う

この平穏が続くことを

次回
IS 漆黒の雷龍
『征天雷禍 ~ 速天 ~』

変なところで抜けてますよね…

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