IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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ようやく用意が出来た…

Q,大剣『イーブルワン』って誰の武器ですか?

A,『ゴッドイーター』シリーズより、『ソーマ・シックザール』氏の武器になります。


狂勇災典 ~ 求力 ~

Lingyin View

 

皆に通信を入れてみる。

ほかに侵入者らしき機影が存在しないかどうかを。

 

『敵影1!

こちらも交戦します!』

 

メルクからの通信が入る。

あっちは…マドカとペアを組んでいた筈。

そっちはそっちで対処してもらおう。

 

「アタシ達は…!」

 

西方に視線を向ける。

 

 

前方、はるかな距離に敵影を見つけた。

見覚えはあった…!

一学期、クラス対抗戦の時に侵入し、蹂躙を繰り広げた挙句、黒翼天に粉砕された無人機。

それとは少しだけ違う。

背面には相変わらずバカでかい砲門を構えている。

そして両腕にはブレードと一体化している大型ライフル。

発展機…!?

いや、なんであろうと構わない!

 

「叩き潰すわよ!ラウラ!」

 

あの日の無力感を思い出す。

3対1でようやく五分五に持ち込むのに精一杯だった。

兄貴が感情を失った。

それらを思い出し、一瞬で頭に血が上る。

 

「当たり前だ!」

 

双天牙月を連結し、力の限り投擲。

続けて双星を抜刀する。

その間にラウラがパンツァー・カノニーアによる精密砲撃を始める。

直後、アタシも最前線へと飛翔する。

こうやっている間に、東西南北へと散開した皆もこの場に集まってくるはず。

敵はたったの2機のみ。

数で押しつぶそうが、その前に粉砕するなりしてやる。

そうでしょ、甲龍(シェンロン)

 

「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

 

左手の刀を順手に握りなおす。

そして瞬時加速をしながら右腕の刀を弓を引き絞るかのように構える。

瞬間、矢を打ち出すかのように風を抉るようにして刀を突きだす。

絶影流初伝『穿月』

そして相手の装甲を抉った感触が伝わってくると同時に左手の刀を突き出す『填月』。

一気に無人機が吹き飛ばされる。

そしてその場所には

 

「潰れろぉぉっっ!!!!!」

 

ラウラがすでに先回りしていた。

右肩の砲と、左肩の大型砲が同時に光を放つ。

吹き飛ぶ先には海洋が広がっている。

この方角なら学園にも日本本土にも戦闘被害が広がらないはず。

このまま追い返す…いや、叩き潰す!

 

ラウラが放った砲弾が直撃し、爆発が巻き起こる。

それと同時に甲龍の衝撃砲を構え、最大出力での砲撃を行った。

 

 

「やれ!鈴!」

 

AICが発動されたのを感じた。

これであの無人機はもう動けない。

この隙に切り刻んでやる!!

 

「おらあああぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

両手の刀で切りかかる。

右腕を切り落とす。

零れ落ちるのは人間の赤赤とした血ではなく、機械のオイルと、それに塗れた配線だとかギアだとか。

でも、それが落ちていくのは一瞬だった。

 

「鈴!気を付けろ!コイツは!」

 

「福音と同じ!」

 

パーツが損壊すると同時に拡張領域から新しいパーツをコールしている。

しかもそのスピードは福音よりも速い!

高速切替(ラピッド・スイッチ)かっての!?

不幸中の幸いなのは、この無人機が福音並の機動性を持ち合わせていないって事。

機動性に関しては前回の無人機と並ぶか、それより僅かに上ってレベル。

でも、アタシ達だってあの時よりも実力をつけてきたんだ。

絶対に負けない!

 

「上等!

だったら交換も間に合わないくらいに粉砕してやる!」

 

 

そしてアタシの目の前にコンソールが広がった。

 

『経験値が一定数値蓄積されました

第二形態移行(セカンドシフト)を開始します

確認ボタンを押してください』

 

 

 

甲龍、アンタはやっぱり最ッ高の相棒だわ!

 

いくわよ、何処までも!

 

一切の迷いもせずにアタシはそのボタンを押した。

背後の衝撃砲が増設される。

二門から四門、そして六門、その一部が椀部装甲にも移る。

脚部装甲にも角のようなスパイクが生まれる。

空中を翔けていた双天牙月が手元に帰ってくる。

それを右腕に握った瞬間、左手にも全く同じ形状の剣が現出していた。

連結された双天牙月が二つ。

ダブルセイバーの二刀流だった。

甲龍から新たに銘が変化する。

甲龍(シェンロン)から神龍(ジェロン)へと。

 

黒翼天に比べれば、まだまだ幼竜ともいえる存在かもしれない。

だけど、いつか兄貴の背中に追いついて見せる。

だから…!

 

「いくわよ…!神龍(ジェロン)!」

 

新しい剣『双極牙月』を握り、一気に突っ込んだ。

 

ドガァァァァァァァァァンッッッッ!!!!!

 

両手の剣を全力で振り下ろす。

受け止められた、だけど、神龍のパワーに抗いきれなかったらしく、両肩から見える配線がショートしている。

 

「ブッ潰れろぉぉぉぉっっっ!!!!!!!」

 

剣を即座に手放し、機体を縦方向に猛回転させながらの回転踵落とし。

絶影流奥伝『狂月』

それだけじゃない。

 

ドォォンンッッ!!!!!

 

狂月が直撃した直後に、さらなる衝撃で無人機の頭部を粉砕した。

 

零距離での衝撃砲直撃と同じ威力になった筈だった。

白兵戦に持ち込み、たとえ防御されたとしても衝撃を放つ。

零落白夜とは違う形での防御不能の攻撃力。

 

 

ドガガガガガガガガガガガッッ!!!!

 

無人機がアサルトライフルを向けて射撃してくる。

ラウラが間に入り込み、AICを発動。

全ての鉛玉が慣性停止決壊によって止められる。

 

途端、神龍が金色に輝きを放つ

 

単一仕様能力(ワンオフアビリティ)…『響天慟地(きょうてんどうち)』発動っ!!!!」

 

背後、両腕、踵の衝撃砲が唸りを上げる。

それを中心にして衝撃が球を描くようにして広がった。

しつこく無人機がアタシに向けてきた実弾は、その衝撃の球に触れた途端に粉砕された。

 

「終わらせるわよ!神龍!」

 

 

 

 

 

Laura View

 

悔しいな、レーゲン。

わが戦友は、どこまでも強くなっている。

私も兄上とはいつも勝負をしている。

刃を交え、いつもいつも敗北した。

ISでの勝負ともなれば、かつてはAICで動きを止めてから切り刻むという必勝パターンを持っていた。

だが、福音との戦い以降はそれすら通じなくなった。

3体もの龍を従え、どこまでも昇っていく、まさに昇り竜。

私は背を追うどころか見上げなければならないのでは、そう思わされた。

私を育ててくれた教官を…私に生きる理由を与えてくれた兄上を追いかけ、そして隣に並んでみせるとレーゲンと兄上達に誓った。

 

 

「私とて…いつまでも敗れ続ける訳にはいかないんだ!」

 

そうだろう、レーゲン!

 

コンソールが勝手に開くのを視界の片隅にとらえた。

そこに表示されている文字を見て小さく笑いが込み上げる。

そうか、お前も強くなりたいんだな、レーゲン。

 

「ならば共に行くぞ」

 

我々もあの高みに辿り着く為に、一条の(リヒトー)となって!

 

コンソールに表示されたボタンを力強く押した。

 

非固定浮遊部位にスラスターが増設される。

内臓されているワイヤーブレードが更に数が増える。

そのうちの一部が腕部装甲に収納される。

プラズマブレードが長くなり、まるで兄上が振るう刀の様だ。

 

なんだ、お前も対抗意識を剥き出しにしていたか。

 

「ならば、私たちも行くぞ」

 

『…無論だ…』

 

一瞬、すぐ傍で声が聞こえた気がした。

ISコアの声だろうか…?

きっとそうなのだろう。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ『シュヴァルツェア(黒き)リヒトー(閃光)』!

 

標的を殲滅する!」

 

両手に篠ノ之博士からもらった兵装である『流星』を掴む。

スラスターを最大出力、さらに両腕に握る流星に搭載されているスラスターも最大出力にまで至らせる。

速い…!

かつてのレーゲンとは比べ物にならない。

 

「鈴!このまま奴を倒すぞ!」

 

「当然!絶対に叩き潰す!」

 

敵機がしつこく銃弾とレーザーを放ってくる。

銃弾は鈴が弾き、レーザーは私が楯で食い止める。

だがしつこい!

 

単一仕様能力(ワンオフアビリティ)『永劫停滞』発動!」

 

 

両腕の装甲が強い輝きを発する。

慣性停止結界がそれを中心に全方位に広がっていく。

鈴もその光に飲み込まれるが、動きが止まることはなかった。

停止したのは、銃弾とレーザーだけだった。

敵だと、危険だと判断したもののみ拘束する、正に封印結界だ。

 

「終わらせるぞ!」

 

両腕の楯を左腕装甲に搭載する。

もはや、無駄な攻撃は無意味だ。

一撃で仕留める!

 

左腕のプラズマソードを伸ばす。

その刀身は、やはり兄上の刀の如く、わずかに反っているかのようだった。

あの人こそが、私の目指す頂点なのかもしれない。

 

流星のスラスターを最大出力にまで展開させる。

さあ、これにて終幕だ。

 

 

Lingyin Vie

 

 

ラウラも覚悟を決めたって横顔をしているようだった。

互いに頷く

神龍が発生させた衝撃をすべて右腕に収束させる。

その状態のまま連装瞬時加速。

そして

 

「「砕け散れええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!」」

 

神龍となって生まれ変わった赤紫の椀部装甲が、ラウラが突き出した光の刃が無人機の胸部を貫いた。

そしてそれと同時に走る衝撃が内部から機体を爆散させた。

砕け散ったパーツの中、黒い球体が落ちていくのを見つけた。

妙に気になり、海に落ちていく途中のソレを拾い上げた。

 

それはISコアだった。

しかもご丁寧にもコアナンバ-が刻印されていた。

 

「…あの時には…一人で戦う事すらできなかったのにね…」

 

「だが、途中からは独壇場だったじゃないか」

 

「お互い様でしょ」

 

今になって自覚できた。

アタシは…まだまだ弱い…!

だから…だから強くなりたい…!

 

「ラウラ、索敵をお願い。

ほかに敵が居たら叩かないと」

 

「了解した。

ほかのみんなにも伝えよう」

 

そう言って今度はラウラはほかの皆に通信をつなげ始めた。

 

「…コアナンバー『226』、か。

確か…アメリカに預けられていたコアだったっけ…?」

 

アメリカ製第二世代機である『王蜘蛛(アラクネ)』といい、襲撃犯はアメリカにでも縁があるのかしら?

それとも、兄貴を誘拐した連中とはまた別の勢力…?

 

「確認が終わった、ほかの襲撃は無いようだ。

帰投するぞ」

 

「了解よ、兄貴が心配だものね」

 

学園には、所属不明反応がいくつか出ている。

その反応を追うようにアタシは新たな相棒『神龍(ジェロン)』と共に飛翔した




最初の復讐は終えた

だが、残るは三人

その居場所はいまだに判らない

だが、彼女たちは迷う

報復と平穏への願望

その願は如何に重いのかを

次回
IS 漆黒の雷龍
『狂勇災典 ~ 祭夜 ~』

魂の叫びだ!

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