IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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学園祭編となったらアレでしょうね

Q.コメントにて「オータムさんを殺っちまえ」な意見多く出てましたね(汗)
もしも殺るのならこんな武器を出してほしいとです。
・ω・)つ『資料』

A.彼女のクレイジー振りを出したらとんでもない事になっていたとです。

資料拝見しました。
雨^ω^){Thanks!
登場させてみます。
なるほど、あの人の剣ですか。
…怖っ!?


狂勇災天 ~ 王冠 ~

Ichika View

 

…久しぶりに見たな、この世界…。

 

「って事は、居るんだろう輝夜?」

 

「うん、まあね」

 

見渡す限り、青い空と白い雲、そして広がる鏡の大地。

そんな中、ラウンドベレットを被った少女が一人だけポツンと立っていた。

 

「で、俺は何をしていたんだ?

深層同調(シープ・シンクロ)現象を起こしているようだが、俺はやろうと思ってなかったんだが…」

 

「貴方がここに入ってきたんじゃないの、私が貴方を此処に連れてきたのよ」

 

「何の為に?」

 

「休息が必要だと思ったの。

身体面じゃなくて、精神面でね」

 

あっそ。

俺、そんなに精神面で疲れてるように見えるのかねぇ?

簪達と一緒に居れば休まっていると思っていたんだが…そんな風にも実感していたつもり、だったのかもしれない。

 

「で、俺はこっちに入ってくる直前は何をしていたんだ?

簪達と一緒に居たところまでは覚えているんだが…?」

 

「疲労で倒れたのよ。

いくら厨房になれているからと言っても、貴方は人間、限界が存在するんだから♪」

 

ISのコア人格って俗世じみているのも存在するんだなぁ…。

こればかりは知らなかったぜ。

しかし…疲労、ね。

納得できない理由じゃない、が…信じていいのか?

いや、まがりなりにも俺の相棒んだ、信じよう。

 

「現実世界の俺の体はどうなっているんだ?

まさか…臨海学校の時みたく死んでなんかないよな?」

 

「『彼』が居るから心配は無いと思うわ」

 

黒翼天か、アイもアイツで信頼されているんだなぁ。

まさか輝夜からも信頼されていようとはな…。

 

「休息はもう充分だ、そろそろ現実世界に戻りたいんだが、いいか?」

 

「もう行っちゃうの?

こんな所でももっと体や精神を休められると思うけど?」

 

「いつまでも休んでなんかいられないさ。

それに立ち止まるのは俺の性に合わない、だから歩み続けるんだよ」

 

『立ち止まるな、歩みつけろ』

『驕るな、研鑽を積み続けろ』

それが俺の在り方だ。

だから、立ち止まってなんていられない。

 

「『未来()』へ歩んでいるつもりか、それで?」

 

世界が塗り替えられる。

無限の蒼穹と鏡の大地は消える。

その代わりに広がるのは、どこまでも広がる乾きすぎた荒野、赤黒い塵風、そして天を覆う雷雲と黒い雷。

輝夜の領域じゃない、これは黒翼天の領域だ。

そして目の前にはIS学園の制服を纏った男が一人現れる。

あの時と同じ、俺と同じ姿。

俺と同じ顔、声、違いは瞳の色と人格くらいだろう。

 

「『過去』は拭えない、振り切ったつもりでも人は過去を捨てられない生物だ」

 

「そうかもしれない、捨てたつもりになっても、いつまでもしつこくまとわりついてくる。

それでも未来()を目指して歩んでいける筈だ」

 

「そのつもりが、『過去』にブチ当たっていたとしてもか?」

 

「何が言いたいんだ、お前は」

 

「さぁな…テメェが逃げられねぇような過去とぶつかればどうなるか…見物だな」

 

俺を試しているのか…?

それとも何か別の意図で…?

相変わらずコイツは判りにくい奴だな…。

 

「…捨てちまえ」

 

「捨てる?何をだ?」

 

「お前は力を求めたから、捨てきれねぇ過去にその足を掴まれた。

あの女とおなじようにな、掴まれたが最後、あとは泥沼だ。

それが嫌ならお前が得た力なんざ捨てちまえ。

鎧も刀も身分も思い出も、なにもかも捨てちまえ。

何もかも捨てて、みっともない生活でも何でも出来るだろ」

 

「…俺がISを動かせるのは…お前が関係しているのか?」

 

「違うな、お前の力だ。

感情云々の話など関係無い。

そしてそこにお前が抱えた如何なる過去も関係無い」

 

そうか、黒翼天(相棒)関連でもない、か。

俺だけが持っている『何か』。

学園に入学するよりも前に念入りに検査は受けたが、俺がISを動かせる理由はいまだに判らない。

言ってしまえば『特異体質』。

それを持ち合わせてよかったのかと問われれば、俺としては『是』とも『否』とも答えられない。

簪達と一緒に過ごせる時間ができたのは幸いだ。

俺を慕ってくれる奴だって居る。

望んでいた以上の力を得られるかもしれないと思ったりもした。

 

だから、俺は狙われた。

 

俺だけが持っているかもしれない何かを。

俺の身を。

俺の命を。

オマケに俺には生存本能が無いと来た。

今でこそ持ち合わせているのか怪しいぐらいだが…。

…よくよく考えたら、つい最近の事すら振り切れてねぇじゃねぇかよ…。

俺はオレ自身の命の価値すら把握出来てないのか…?

そういうつもりは無いんだけどなぁ…。

 

「捨てられねぇよ」

 

「あぁ?」

 

「過去は確かにいつまでもまとわりついてくるだろう。

振り切ったつもりでも、一瞬で足を掴まれる。

それでも未来()へ歩める筈だ」

 

「それで過去にブチ当たってもか」

 

「その先にだって歩める道は在ると信じていればな」

 

「…後悔する事になるぞ、お前は取り返しのつかない道を歩む事になる。

それも…テメェの手を血染めにする程の道だ」

 

「その覚悟はするさ」

 

刀を願う、手元に光が収束し刀を象る。

俺だけの(バルムンク)を掴み、鞘から引き抜く。

 

「コイツを振るうようになってから、俺だけの絶影流(剣技)を得た瞬間から感じ取っていたさ、その必要があるのかもしれない、と。

絶影流(コレ)は競う為の剣じゃねぇ、戦場で戦い抜き、殺したうえで生き延びる為の殺人剣術だ」

 

「覚悟は上等、か……なら、久々に見せてもらうとしようか」

 

黒翼天もまた剣をその手に握る。

それだけじゃない。

乾いた荒野に数えきれない刃が目覚める。

そのいずれもが血に飢えている、そう感じさせた。

 

「いいぜ、かかって来いよ」

 

右手に(バルムンク)、左手には銘も無い無骨なナイフ。

俺だけの二刀を力強く握る。

黒翼天は…鋸のような刃がついた片刃剣…。

蛮刀かよ、悪趣味な…。

まあ、他人の事をとやかく言うつもりは無いけどな…。

 

 

 

 

 

 

Out Side

 

学園に通じる唯一の大橋、その橋脚に彼女は居た。

 

「クソッ!あの餓鬼が!

よくも…よくもオレの顔を蹴り飛ばしやがったな…!

記憶を失ってるって報告はウソじゃねぇのか…!」

 

彼女の顔は無残なものだった。

顔は彼の蹴撃により歪み、前歯は失われている。

そして…右目は蹴りによる衝撃で完全に潰れ、失明していた。

 

「殺してやる…」

 

『駄目よオータム。

殺しては駄目。

あの子に埋め込んだコアは覚醒しているんだもの。

それが使い物にならなくては意味が無いわ。

あくまでも生け捕りよ、もののついでに右手のISまで奪ってきてくれると大助かりよ』

 

「あんなクソガキ、どうやって生け捕りにしろってんだ!?

判ってんのか!?

人の顔見た瞬間に殺戮マシーンになってんだぞ!?

忘れたわけじゃねぇだろ!?

二年前、あの場に居た連中を笑いながら皆殺しにしてたガキだ!」

 

『本当に殺戮鬼になっているのならね?

本人がそういう力を制御出来ているかも興味が沸くわ。

それに捕獲なら貴女の専売特許でしょう?

期待してるわよ』

 

「…くそっ!やりゃあいいんだろうが!」

 

通信機を地面に叩き付け、踏み砕く。

そしてオータムと呼ばれた女の視線は、IS学園に向けられていた。

だが、彼女は後に後悔する事になる。

最大の過ちを三つも犯したことを。

一つの間違いは、IS『王蜘蛛(アラクネ)』をステルスモードに切り替え、コアネットワークから寸断していた事。

これにより、ネットワーク越しにも状況が伝えられない。

 

二つ目の間違いは、罠が既に張り巡らされている場所へ単身で潜り込もうとしていたこと。

王蜘蛛をも上回る捕獲の網の存在を知らなかった。

 

三つ目は…決して触れてはならない龍の逆鱗に触れてしまった事だった。

 

 

 

 

Ichika View

 

「また、此処かよ…」

 

数度は世話になっている医務室の天井に半ば呆れ、半ば落胆した。

周囲を見渡せば誰も居ない。

…少しばかりさみしく思えてしまったのは気の迷いだろう。

とは言え…

 

『…………』

 

ベッドの傍らには『ウォロー』が居るわけだが。

何のつもりだ黒翼天。

 

体を改めて見下ろす。

異常はどこにも無い。

教室で倒れた際に何があったのかは必要以上に知ろうとは思わない。

疲労でたおれたのなら、それは俺が不甲斐ないからだ。

携帯電話に着信が入っている。

見れば楯無さんからだ。

内容としては…

 

『午後の部からは帯刀しておくように』

 

…何のつもりだ?

構わないが。

 

「…お前ら、そこで何をしてるんだ?」

 

医務室の入り口となる扉が中途半端に開かれ、そこから視線が三人分。

トーテムポールの如く上から順に、蘭、弾、数馬の三人だった。

 

「い、いやぁ、その、なんだ。

一夏が倒れたって聞いたからな、心配して見に来たんだよ」

 

「心配しましたよ!」

 

「でも、その様子なら心配なさそうだね」

 

「まあ一応な、この通り少し寝たら回復出来たし、もう大丈夫だ。

お前らも学園祭を楽しんで行ってくれよ。

特に弾、お前は虚さんと楽しくやっとけ」

 

「ほっとけバーロー!

余計なお世話だ!心配して損したぜ!

ったく、行くぜ数馬、蘭!」

 

そのまま弾は蘭と数馬をひきずっていく。

俺はそれを見ながら心の中で謝罪をする。

これでいいのだと、自分の中で折り合いはつけられないのは、まだまだ甘いのかもしれない。

 

時計を見れば午前の部が終わる頃合いだ。

仕方ない、一旦調理実習室に向かうか。

っと、その前に刀とナイフを取りに寮へ戻るか。

 

 

「は~い、一夏君♪」

 

お騒がせな人がそこに居た。

開いた扇子には『神出鬼没』

流石に仕組みが気になったので奪い取ろうと思ったら避けられた。

それでは気を取り直して

 

トラブルメイカーが現れた!

コマンド

→逃げる 逃げる 逃げる 

 逃げる 逃げる 逃げる 

 逃げる 逃げる 逃げる

 逃げる 逃げる 逃げる

 

「何が何でも逃がさない!」

 

茶番過ぎた。

もののついでに二番煎じだった。

 

「で、何の要件ですか?俺はこれから仕事なんですけど」

 

「刀とナイフを持って何の仕事なのかしら?」

 

…メールの内容に素直に従ってしまっていた自分が憎い。

 

「それじゃあ話を戻すわね。

生徒会主催『観客参加型演劇』に参加しなさい!」

 

相談ではなく事後承諾では?

 

「観客参加型?そんなの聞いたことがありませんよ」

 

「ふっふふふ♪

興味があるみたいね♪

じゃあ早速見てもらいましょうか♪

衣装は問題ないわよ、マドカちゃんに教えてもらって採寸する暇も省いてあるから♪」

 

こっちにも情報をバラ撒いていたのかよ…。

俺のプライバシーはどこに行ったんだ。

勘弁してくれよ…。

そもそも『観客参加型演劇』とは何だ?

観客をゲストとして迎え入れるとしても演劇ではアドリブばかりになって劇にもならないのでは?

…成立しないな。

なので断ろうと思ったのだが

 

「あ、ちなみに虚ちゃんも承諾済みよ♪」

 

虚さん、その意欲は別の方向に向けてください。

楯無さんの暴走を制御できる貴女が何をやっているんですか。

衣装を作ったのはまさか貴女じゃないでしょうね…。

楯無さんは裁縫を苦手しているから出来るわけでも無し。

のほほんさんは…ダメだ想像ができない。

簪は裁縫を得意としている面があるが…俺の服を作るには至っていないだろう。

そもそもそんな場面も見ていない。

作っているとしたら俺にそれを言わない筈が無い。

なので簪も除外。

ならば演劇部か?

いや、女子校育ちのお嬢様方がそんな事をするわけでも無し。

絶対に虚さんが俺の衣装を作ったな!

この場は逃げる以外に道は無い!

 

「あ、ちなみに…全校生徒が一夏君出演決定ってことを知ってるから♪」

 

逃げ道がなくなった!なんつー話を流しているんだこの人は!

 

「だ・か・ら♪一夏君が出演しないと成立しないのよ♪」

 

スッゴイいい笑顔で語るが…今だけはこの笑顔が憎かった。

輝夜を展開したくなる衝動に襲われるが、それを限界ギリギリで抑え込む。

バルムンクを抜刀すればこの場は大混乱だろう。

そちらの衝動も抑え込む。よし、耐えきった。

 

「何の八つ当たりですかコレは」

 

「八つ当たりなんかじゃないわよ♪

生徒会の、だ・し・も・の♪」

 

もう逃げ道は塞がれている。

前以外に道は無し。

尤も、その道は真っ暗なわけだが。

前門の狼、後門の虎、なお、横道は無しだ。

どうする俺!?

 

「出演拒否は可能ですか?

俺はクラスの出し物があるわけでして」

 

「ダ・メ♪

生徒会の出し物はクラスの出し物よりも優先事項が高いのよ♪」

 

そんな話は初めて聞いた。

理不尽にも程がある。

結局逃げられないわけか。

やれやれだ…この人からマトモに逃げられた試しなんて今まで無かったわけだし、これも運の尽きだろうな。

今ならこの人の背中には悪魔の翼とか尻尾がニョキリと生えてきても自然な光景になっていたことだろう。

 

 

 

Kanzashi View

 

午前の部が終わる少し前、私は生徒会室に集められていた。

でも、集まったメンバーは私だけじゃない。

マドカ、ラウラ、メルク、鈴も。

何の話か分からない。

それは皆も同じらしい。

思い思いに首を傾げている。

ただ、よからぬ事を画策しているのだけは察することができていた。

 

「全員集まったみたいだから話を始めるわね。

午後の部には生徒会の出し物をするんだけど、一夏君も出演するのよ」

 

「一夏が?生徒会の出し物って何なのお姉ちゃん?」

 

お姉ちゃんがスッゴイいい笑顔で扇子を広げる。

そこに書かれているのは『灰被姫』。

英訳すると…シンデレラ。

…ありきたりな演劇だけど…それじゃあ王子様の役が一夏になるのは明らか。

…一夏は私の恋人、だから演劇とはいえ、他の人と結ばれるのをそのまま見ているだけなのは何だか嫌だな…。

 

「た・だ・し!只の演劇じゃないわ。観客参加型演劇よ」

 

「観客参加って…どういう事ですの?」

 

「つまり、景品付きってことよ。

学園上層部では一夏君が部活動に参加していない事が問題視されているのは知っているわよね。

そこで、部活動に入らないのなら生徒会に入ってもらうことにはなったけど、もう一人役員のメンバーが欲しいのよ。

マドカちゃんと簪ちゃんは一夏君のサポートって役割で正式なメンバーには上層部では納得してもらえてないのよ。

そ・こ・で!

一夏君と尤も連携が取れるのは誰なのかを知るために、この演劇を思いついたのよ」

 

「兄上との連携か。それなら私が」

 

「いえ、私だって連携なら負けてません!ですからお姫様の役は…」

 

「まあ、あいつとの連携ならアタシでも」

 

「勝手を言うなお前ら!兄さんとの連携なら私だ!」

 

「皆がやる気でいるのならお姉さんは大歓迎よ♪

全員まとめてシンデレラになっちゃいましょ♪」

 

そして伝えられる演劇の内容。

…これ以上と無いほどに無茶苦茶だった。

簡単に言えば王子様役の一夏の頭の上に乗せられている王冠を奪い取れば勝ち。

手段方法は問わず。

ただし、ISを使う攻撃は無し。

勿論、一夏も反撃をしてくる。

そして今後、一夏と連携が取れるようにするためにも

 

「王冠を奪った人は、一年生寮の2016号室へご案な~い♪」

 

2016号室、言うまでもなく一夏の部屋、つまりは同居!?

 

「お姉ちゃん、この事を一夏は知ってるの?」

 

「ここまで言っておくと一夏君が完全に姿をくらまして演劇として成立しないでしょ?」

 

「…武闘派すぎるのも演劇として問題だらけだと思うよ…」

 

「兄さんが気の毒だ…」

 

凄い今更だけどね

 

「それだけが目的じゃないわ。

午前中に居たあの人、多くの生徒が集まれば必ず目撃者が出るわ。

逆に人目を避けるような動きをしていれば監視システムにて一目瞭然って訳」

 

目的は王冠ではなく、あくまでもあの人。

同室云々は、あくまでも副産物でしかない。

 

「準備は万全、迎え撃つわよ皆」

 

その言葉に全員が力強く頷いた。




灰被姫は一人とは限らない

彼女達が狙うのは王子の王冠

されど王子が刀を抜けば一筋縄ではいかない

そして今日も今日とて彼は全力疾走を繰り返す

蜘蛛はそこまで迫りつつあった

次回
IS 漆黒の雷龍
『狂勇災典 ~ 逃遁 ~』

み、見るなあああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!』

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