IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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原作との相違点が久々に

Q.メルクのスタイル(主にスリーサイズ)は成長しますか?
『匿名希望』さんより

A.…質問内容が…。
現在のメルクのスタイルはラウラや鈴ちゃんと似たり寄ったり。
きっと将来は(此処から先は赤く染まっていて読めない)


狂勇災典 ~ 失心 ~

Ichika View

 

教室に移ると、早速マドカと簪は注文を入れる。

二人ともパフェを注文しているようだ。

 

「甘くて美味しい…」

 

「疲れた時には甘いものがいいな…」

 

「二人ともお疲れさん」

 

さっきの数十分で結構疲れていた様子だ。

ヘロヘロのようだ。

客足もずいぶんと間に合ったようだ。

空席がまだいくつかある。

で、俺たちと同じ席に割り込む人も居た。

 

「相席失礼するわよ」

 

赤いチャイナ服に身を包んだ隣のクラスの生徒、鈴だ。

 

「三人ともどうしたの?ずいぶんと疲れてるみたいだけど」

 

「午前中の来客者がかなり居てな。マドカだけでなく簪にも手伝ってもらったんだよ。

ったく、何を目的にしてこんなにも客足が向いているんだか…絶対にリピート客も居ただろうな」

 

「料理して疲れるだなんて私は久しぶりだ…」

 

「私も…」

 

簪は午後の部に仕事が有るが…本当に大丈夫なのだろうか?

休ませておいたほうがいい気がするが…。

 

「そういえばメルクはどうした?」

 

「は~い、此処に居ますよ♪」

 

噂をすれば影がさす、教室に入ってきた。

 

「私は紅茶をお願いします」

 

ドサクサに紛れて注文までしている。

流石はスピードのイタリア、手を出すのが早い。

更には俺たちが座っているボックス席まで一直線だ。

しかし視線は右へ左へと行ったり来たりを繰り返している。

明らかにこのクラスの出し物を気にしている様子だ。

それも仕方のない話だろう、見渡す限りに割烹着ばかりなのだから。

 

「お兄さんの趣味ですか?」

 

思わず刀を抜刀しそうになった。

それを耐えた自分をほめたたえても罰はあたらないだろう。

 

「断じて違う、俺の知人の趣味だ」

 

嘘は吐いてない、むしろ本当の話なのだから。

 

危うくハイカラ喫茶が俺の趣味にまで扱われるところだったぞ。

 

「え?それじゃあ…」

 

メルクの視線が突き刺さったのは鈴だった。

 

「あ、アタシじゃないわよ!?」

 

次に視線が投げられたのは簪

 

「私でもないから」

 

続けてマドカ

 

「いや、違う」

 

いや、誰に視線を向けても無駄だからな。

この手の趣味の持ち主はこの場にはいないのだから。

だが…メイド喫茶にしなくて本当に正解だったな。

今回のコレは『インパクト』が必要だったのだから。

メイド喫茶は男が行くものであり、女子高生には需要が無い。

そして今回は俺の身がかかっているのだから、他の学年やクラスには無いものを、そして需要となるものが必要となった。

それ故に、調理実習室と被服室を幾つも借りている。

 

 

 

 

そうやって午前の部の時間を潰し、時間が終わりそうになった頃だった。

「織斑 一夏さんですよね」

 

俺たちが座っているボックス席に何の遠慮も無しに座ってくる女性が居た。

面識は…無いと言い切れる。

完全に初対面の相手だ。

俺の名は全世界に知られている。

非常に不本意だが。

それこそ知らない人間が居ないほどに。

 

だが、この女の顔を見た瞬間だった。

 

「ぎ、ぐ…!?」

 

「一夏!?」

 

 

Kanzashi View

 

誰かは知らない女性、その人の顔を見た瞬間に一夏が頭を両手で抱え呻き始めた。

まさか…

 

直後に私とマドカの左腕に填められた通信機から警告音が鳴り響き始めた。

 

 

   発作

 

 

そこに至るまでには一瞬で十分だった。

 

「があああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!

ぐ、ああああああああああ!!!!」

 

「一夏!しっかりして!」

 

「兄さん!」

 

どうして!?

発作が起きるのは銃を目前にした時、そして左手の十字架にダメージを受けた時だけだった。

今は、そのどちらでもない。

これまでに起きなかったパターンだった。

 

「――――殺す!」

 

今までに聞いた事の無いほどに冷たい言葉だった。

一夏の姿が消えたと同時に

 

ドガァンッ!!!!

 

来訪者であろう女性の腹部に膝蹴りを叩き込んでいた。

 

「がぁっ!?」

 

「殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!」

 

それだけじゃなかった。

顔面を蹴り飛ばし、教室の外、廊下にまで吹き飛ばす。

壁に叩きつけられたその女性を蹴り飛ばし、天井に叩きつける。

そのまま落下してきた所をさらに蹴り飛ばし窓ガラスを砕きながらその人を中庭へと蹴り飛ばした。

 

「――――死ね!」

 

とうとうIS用のブレードまで取り出した。

止めなきゃいけない。

 

「待って!一夏!」

 

私の声に一夏が動きを止めた。

もしかして…正気に、戻った…?

 

「……簪…?

はぁ…はぁ…俺は…何を…!?」

 

「覚えて、ないの…?」

 

「…?」

 

今の今、自分が何をしたのかを覚えていない…?

そう問おうと思った直後、一夏は倒れた。

 

 

 

 

 

 

「成程、そんな事が起きたのか…」

 

医務室にて私と千冬さん、お姉ちゃんに、いつもの面々が集まっていた。

一夏は気を失ったまま、目を覚ましていない。

今でも思い出すと寒気が走る。

一夏があんなにも殺気を迸らせていた事は、今まで一度もなかった。

それこそ、見ず知らずの人をあそこまで蹴り飛ばすだなんて考えられない。

 

「だが、妙だな…兄さんは今まで今回のような形で発作を起こしたことはなかったぞ」

 

「よね、あの人の顔を見た瞬間、だったわよね…。

初対面だと思うけど…?」

 

「こ、怖かった、です。

私、動けませんでした…」

 

「その時の女に何かあるのではないのか?

何者だ、ソイツは?」

 

思い返しても、名前を訊く時間すら無かった。

視認した直後に一夏が発作を起こしたのだから。

 

「簪、凰、私がドイツに滞在していた間にあの女と接触した覚えは無いか?」

 

千冬さんのこの問いに、私も鈴も首を横に振るう。

一夏とずっと一緒に居たけど…あの人は見覚えが無かった気がする。

 

「全ては一夏次第、か…」

 

当の本人は未だに眠り続けている。

目覚めない限りは訊けない…ううん、訊こうとしたらまた発作を起こすかもしれない。

 

「は~い、失礼しま~す。

あらあら、随分と暗い雰囲気になっちゃってるわね」

 

「お姉ちゃん、どうしたの?」

 

医務室に遅れて現れたのはお姉ちゃんだった。

そして虚さんと弾君と、それに数馬と蘭も一緒に居るらしく、医務室に一緒に入ってくる。

でも、弾君数馬君蘭は医務室には入れなかった。

 

「先程の女性について調べてみたのよ。

学園はまだセキュリティが甘い点があったみたいね。

偽造パスであっさりと中に入られてしまってたわ」

 

「御託はいい、それで、例の女について正体は判ったのか?」

 

「ええ、それはもう!

彼女はISの兵装開発企業『みつるぎ』から来た『巻紙 礼子』…と名乗っているけど、これは偽名ね。

企業を内密に調べてみたけど、そんな女性は存在していないことが判ったわ。

本名はまだ捜査している途中だけれど…おおよそ、所属している組織は判ったわ」

 

「『亡国機業(ファントムタスク)』、だろう」

 

私たちの後ろで今まで眠っていた筈だった彼が目覚めていた。

でも…違う、一夏じゃない!

 

「黒翼天、なの…!?」

 

コイツ(一夏)の体を借りるのは久しぶりだな…何だ、その目は?」

 

その双眸は一夏とは違う、赤に染まっていた。

 

 

 

Tatanashi View

 

とうとう出てきたわね、黒翼天。

一夏君の体を借りて出てきている現場を見るのは、私としては今回が初めて。

簪ちゃんやラウラちゃんは二度目になるのかもしれないけれど…でも、何の目的で出てきたのかしら?

 

「『亡国機業』、貴方がソレを知っているとはね…どこで知ったの?」

 

「何処も何も…俺をコイツ(一夏)の体に埋め込んだのはソイツらだ。

そして二年前、コイツ(一夏)を誘拐した組織でもある」

 

「目的は?」

 

「表向きには…織斑千冬の決勝戦の辞退によるオッズ変動による資金調達。

裏の目的は手頃な人体実験のサンプルの入手だ」

 

人体実験のサンプル、それが一夏君だったという訳…?

 

「人体実験の目的は何だ?

何故、一夏だったんだ!?

日本で連れ去り、わざわざドイツの辺地にまで送り込んだ!?」

 

「さあな、俺は奴らの目的など知らないし、興味も無い」

 

肝心な目的が判らないか、困ったわね…

 

「あの女のコードネームは『オータム』だ。

コイツ(一夏)の左手に俺を埋め込むために左手に風穴を開けた女だ」

 

「一夏君の左手に…まさか、銃で…?」

 

「ああ、銃口を密着させた状態でな。

その後、麻酔も使わずに俺を埋め込んだ」

 

背筋に寒気が走った。

人間の体にISコアを埋め込むだなんて、それでも聞いたことがない。

なのに…ましてや非道な人体実験で…そんな悍ましい事をする輩が居るだなんて…!

 

 

 

Chifuyu View

 

赦さない…!

そんな事をする輩がこの世に居ようなど…絶対に赦さない…!

私の家族をこんな事に利用しようなど…!

 

「貴様はまだ肝心な事を語っていないぞ。

一夏をサンプルにしようとした真の目的。

そしてその人体実験を行おうとした輩が誰なのか…一夏が感情を失った理由を…!」

 

一夏の顔をした別人が俯く。

コイツが何を考えているのか、私には判らない。

 

「ひ、ひゃははははははっはっはっはっはっはっは!

知りたいのか!?

コイツ(一夏)が『怒り』を失った本当の理由を知りたいのか!?」

 

何を嗤っているんだ、貴様!

 

「知りたければ教えてやる!

ただし、…後悔するんじゃねぇぞぉっ!!!!」

 




感情

それは人を人たらしめるもの

なら、それを失った者は何者だ?

なら、それを奪った者は何者だ?

その答えは…闇の中にある

次回
IS 漆黒の雷龍
『狂勇災典 ~ 悪夢 ~』

灰じゃ済まさねぇ…塵になるまで刻んでやる

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