IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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欲望の坩堝になるでしょうね、生徒会長さんのお蔭で。
それに対抗する為に、一夏君が今回本気を出します。

Q.妹分にフリーパスをアッサリと渡しちゃうは、メルクにおねだりスキルを仕込んだ鈴ちゃんに弁当作ってあげるは…一夏君ってやっぱり…
P.N.『匿名希望』さんより

A.デフォでシスコンでしょうね。
しかも自覚が無いタイプの

一夏「シスコンじゃねぇ。
断じてシスコンじゃねぇ」

…説得力が無いよ一夏君


Q.今後SAOやモンハンの刀剣出したりしますか?

A.モンハンは未経験ですので出さないかと。
SAOや、他のゲームから出したりする可能性は在ります。
元ネタが判ったら画面前にて「元ネタはアレかな?」と微笑んでいただけたら幸いです。


狂勇災典 ~ 坩堝 ~

Ichika View

 

学園祭には、生徒一人につき、学園外から一人を来訪させることができるらしい。

最初は弾でも誘おうと思ったが、虚さんが先に招待状を送ったそうなので、その妹の蘭を呼ぼうと思ったら簪が

 

「蘭には私から送ったよ」

 

との事。

なので俺は数馬を指名しておいた。

 

そして学園祭まで残り10日と迫った頃、全校生徒が体育館に召集された。

なんでも、全校朝礼だとか。

この学園にもそんな催しがあったのかといまさら認識した。

それにしても何事だろうか、今回の集会を算段したのは楯無さんだろう。

そしてその本人が壇上に出てくる。

相変わらずその手に奇妙な扇子を持って。

 

「は~い、みんな、朝早くから集合してもらってごめんね~」

 

などとにこやかに言っているが…間違いない。

悪びれてない、絶ッ対に悪びれてない!

 

「おっと、まずは自己紹介が先よね。

今年は色んな騒動があったから知らない人も居るものね」

 

そこで何故に俺に視線を向けるのか。

騒動の中心には俺が居ることが多いが、断じて俺のせいではない。

不可抗力だ。

 

「私は君達生徒の長、つまりは生徒会長よ。

名前は『更識 楯無』よ、よろしくね。

さあ、10日後に用意されている文化祭だけど皆も楽しみよね。

もちろん私も楽しみしてるわ。

そこで、皆がもっと出し物に力を入れれるようにクラス対抗、そして部活動対抗である催しをしようと思っています」

 

そこでまた俺に視線を向けてくる。

嫌な予感がした。

それこそ全力疾走してこの場を逃げ出したいと思うくらいに。

いや、もうそろそろ脱走しても良いのでは…?

 

「申し訳ありませんが、そのまま整列しておいてください」

 

背後にいつの間にか虚さんが居た。

…アンタも忍者みたいだよな…その手にもっている苦無とか…いや、それらしい家系だけどさ。

 

「今年のIS学園全体での共通出し物として計画したのは『全部活動対抗 織斑一夏君争奪戦』です!」

 

催しの内容としてはこうだ。

学園祭にて、生徒や来訪者にどの出し物が一番印象に残ったのかを投票させる。

もっとも投票数が多かった部活動に俺を入部させるとのこと。

 

「ちょっと待てっ!」

 

無論、俺はそんな催しの商品になるなどと言った覚えはない。

 

そう叫んでみようと思ったが、全校生徒の黄色い歓声に消されてしまった。

これが女子高生の力というやつだろう。

これまた酷い考えを出したものだ。

きっとマドカや簪も苦情を口にしているんだろうが、この黄色い歓声でつぶされてしまっているだろう。

後で生徒会室に殴り込みに行くとしよう。

 

「それでは今回の集会はこれでお終い!

皆、文化祭も、その準備も思いっきり楽しんでね!

私達生徒会も出し物を用意しているから、それもよろしく!」

 

その言葉を皮切りに集会が終わった。

全校生徒から妙な視線を向けられるのが辛く、俺は全力疾走して体育館から逃げ出した。

この学園に入ってからは走ってばかりだな、とはいえそんな事を考えるのは後回し、向かう場所生徒会室だ。

 

「…この棟の最上階だったな」

 

だ~!廊下を走っていくのも面倒だ!窓の桟を足場に壁を登ってしまえ!

 

そして三階にある生徒会室に窓から飛び込んだ。

俺が此処から飛び込んでくるのを予想していたのか、開けっ放しの状態だ。

 

「…あら、一夏君、早かったわね」

 

その本人は呑気に茶を飲んでいた。

香りからしたらほうじ茶だな。

ってーか俺より早いってどうやってんだよ!?

 

「やぁねぇ、体育館で君が見ていたのは、投影機よ、つまりは立体映像。

この学園の設備はどれをとっても世界最先端技術、あれくらいの立体映像だって簡単に作れるのよ」

 

「それで虚さんをも欺いて生徒会室でお茶を啜っていた、と。

技術の無駄遣いじゃありませんか?」

 

「あら、有効活用でしょ?」

 

全校生徒を呼び出して集会をしたのに、その本人がボイコットって…。

 

 

 

「お姉ちゃん!体育館でのアレ!どういう事!」

 

「俺としても教えてもらいたいんですが」

 

さて、簪も来たところで本題に移らせてもらうとしようか。

何を思っての今回の計画なのかを。

虚さんも到着し、生徒会に所属していたらしいのほほんさんも集合し、話は本題に移る。

 

「じゃあ、全部話しちゃいましょうか。

一夏君、君が部活動に入ろうとしないから、学園上層部も悩んでいたのよ」

 

そう言ってもなぁ…。

放課後の俺の過ごし方と言えば…。

1.『訓練』

2.『課題・書類の処理』

3.『部屋にて料理』4.『新聞部・放送部からの逃亡』

 

…こんなのばっかり。

……灰色の青春になりつつあるな。

最後のだけは絶対に余計だと思う。

 

「そんなの俺の勝手でしょう。

そもそも、データを仔細に報告しろと言ってきてるのに、今度は部活をしろだなんて言って振り回すんですか?」

 

「そうなのよ…そ・こ・で、一夏君が望んで部活に入ろうとしないのであれば、公平な場で入部を決定しようと思ったのよ。

そこで思いついたのが今回の催しよ♪」

 

「一夏の意思が反映されていない以上、公平だなんて言えないと思う」

 

だよな、俺としても簪の意見は尤もだと思う。

俺の承知も了解も承諾も無いのに景品扱い。

現状で取りやめようとすればどうなるか、今度は暴動だ。

 

「…ほかに方法は無かったんですか?

俺と簪の関係は周知の事実でしょう、どっかの誰かのせいで」

 

「逃れる道があるとすれば、一夏君が部長となって新しい部活動を作ることだけど、部活動は部員が最低でも5名必要、更には担当顧問が必要よね♪」

 

ISでの技術向上を目的とした部活動とかどうだろう。

部員になってくれそうなのは…俺以外だと…簪、マドカ、ラウラ、メルク、鈴といった具合か。

顧問には…山田先生に頼んでみるとか。

 

「あ、ちなみに、部活設立の期限は5月だから、もう期限がきれてるわよ」

 

「このタイミングで逃げ道を塞ぎますか!」

 

酷いにもほどがある。

希望を目の前にチラつかせておいて叩き落とすとか鬼だ。

 

「と、言うわけで…一夏君には今回を機にどこかの部活に入ってもらいます♪」

 

「…断ると言ったら?」

 

「じゃあ生徒会に入る?

やる事は沢山あるけど」

 

やる事が多い生徒会か、はたまたどこの誰とも知らない人ばかりが居る部活動に入部させられるか。

はたまた、顔も名前も一致していない生徒が多くいるクラスや部活に放り込まれるか…どれもこれも嫌過ぎる。

 

「申し訳ありません一夏さん、簪お嬢様、学園上層部からの命令と言う事で、生徒会ではどうする事も」

 

「どうにも俺の人生は前途多難みたいですね…」

 

納得はできない、釈然としない、理不尽、不条理などと文句は幾つでも言いたいが、今回は身から出た錆のような感じだ。

受け入れるしかあるまい。

思いっきりため息をこぼす。

ため息をするたびに幸福が一つ逃げるというが、俺の幸福は今後どれだけ逃げ出してしまうのだろうか…。

 

はぁ…

 

ここでまた俺の幸福が一つ逃げ出すのだった…

 

「楯無さん…あいにくですけど、今回ばかりは後悔させますよ…」

 

「え?なんで私!?」

 

一年一組(うちのクラス)の出し物は食事処だ。

俺の技術の全てを出し切ってやろうじゃねぇか…!

 

 

 

そこから先が更に大変だった。

メニューに関しては、問題は無い。流石は女子の集まり、料理上手は幾らでも居る。

なお俺は全面的に裏方だ。

最初は俺を執事に仕立て、「執事による女子への奉仕を!」などと、のたまう人も居たが、マドカの視線に恐怖したようで撤回されている。

 

「メニューは…オムライス、ロールキャベツ、茶碗蒸し、ショートケーキにパフェ、サンデー、アイスクリームにエトセトラエトセトラ…。

流石女子校、性格丸出しなメニューばかりだ」

 

作れないメニューは、一部を除けばなさそうだ。

そのメニューはマドカが受け持ってくれる。

材料はこの数日で購入している。

俺とて和膳を提案したものの、「喫茶店に似合わない」と一蹴されそうになった。

しかし1-1の出し物は食事処だ、関係あるか。

 

だが、今回の出し物には、俺の身柄がかかっている。

それこそ一蹴させてもらった。

 

「チーズリゾットか、これを作ったのはドイツ以来だな」

 

レシピを見ながら、少しだけ懐かしんだ。

他にも色々と作ったよな…。パエリアにパスタ、カレー、ラウラが苦手としたゴーヤ入りの料理とか。

おっと、今は懐かしんでいる場合じゃないな。

 

材料が幾つか入ったダンボール箱を持って、運んだ先にはあちこちに修繕の形跡が見受けられる調理実習室の隣にある第二調理実習室。

今日は此処でレシピを公開する約束をしていた。

 

「お待たせ、それじゃあレシピを公開するから、よく覚えてくれよ」

 

ただ、放課後の時間は有限。

調理実習室を使える時間も限られている。

なので、レシピを一つずつ見せると時間の無駄。

なので、幾つか同時に調理する必要がある。

 

「兄さんの手際は凄いぞ。よく見て覚えてくれ」

 

かなり慌ただしいけどな。

 

 

 

Madoka View

 

そこからは久々に行う曲芸の始まりだった。ドイツ軍駐屯地でもやっていたが…やはりこれはキツい。

パエリア、リゾット、ハンバーグ、ホットサンドにカレー、パスタにサラダ、牛ホホ肉の赤ワイン煮込み、調理実習室の端から端までを行ったり来たりの繰り返しだ。

走り回りながら、私はドイツ軍駐屯地での仕事を思い出す。

あの時にも、こうやって走り回っていたんだよなぁ…。

シェフは厳つい顔をしていたからだろうか、兄さんにばかりオーダーが入っていたんだった。

『全力で(厨房)を駆け抜ける青春』

料理人を夢見る人に相応しいフレーズかもしれない。

それを物理的にやっている兄さんは、周囲から見れば、ただのコメディアンかもしれないが。

 

「レシピ通りにやったら、こんな感じだ。じゃあ、この中で出品するメニューを選んでくれ」

そうは言っても机の上に並ぶのは

パエリア、リゾット、ホットサンドにカレー、オムライス、パスタにサラダ、和風キノコソースハンバーグ、茶碗蒸し和膳定食(これだけは譲れない)、牛丼、牛ホホ肉の赤ワイン煮込み、スコッチエッグ、バウムクーヘン。

より取り見取りだ。

このメニューを一人で全て作るのは苦労する。

だからこそのメニューの厳選だ。

 

「凄い、これだけのメニューをホントに一人で作りあげた…」

 

「しかも洗いものまでしてる」

 

「マイ包丁まで持ってるし…」

 

「織斑君、女子力高い…」

 

「もう婿に来てほしい」

 

「むしろこっちから嫁入りすべき…?」

 

「無理無理、織斑先生が義姉とか…」

 

「それに更識さんっていう婚約者まで既に居るんだから」

 

…喋る暇が有るのなら食べて、品を選べ。

料理は暖かい内に食べるべきだろう。

ラウラとマドカは早速食事を始めている。

マドカはホットサンド、ラウラは牛丼だ。

この調子なら夕飯は食べないのかもしれない。

続けてシャルロットがリゾットを食べ始める。遅

れてセシリアも茶碗蒸しを、のほほんさんは和膳定食だ。

他の皆もゆっくりと食べ始める。

 

「兄上、おかわりだ!」

 

「味わって食べろよ、なんでそんなに食べるのが早いんだよお前は」

 

「クラリッサは言っていた。

『牛丼というメニュー。

それは、押し込むように掻き込んで食べるものだ』と」

 

あの人は…食事に関しても洗脳をしていたのか…!

もうそろそろ本当に辞表を書くべきではないのか、ハルフォーフ副隊長?

 

「ほら、おかわりだ。今度は味わって…」

 

言うが早いか、ラウラは牛丼(二杯目)を掻っ込んでいた。…もう、ほうっておこう。

 

「ごちそうさま~。

私はホットサンドに一票!」

 

マドカからホットサンドに一票入れられた。

それを皮切りに他の皆も試食を始める。

 

「美味しい!」

 

「やだ、織斑君って本当に女子力が高い…」

 

「女として自信が無くなってきた」

 

「男の子の手料理なんて初めて…」

 

「うちの兄貴もこれくらい出来ればいいのに」

 

「私の弟もよ」

 

…評価の最中、なにやらこの場に居ない人がディスられていた。

当の本人には同情しておこう。

それが何処の誰かは知らないが。

 

ここからが本番だった。

今回場所を予約しておいた第二調理実習室を貸し切り、あちこち走り回る。

俺が作れるメニューを次々に作り上げていく。

和風定食に、洋風のメニュー、そんなに知識は多くはないのだが、中華メニューも取り入れていく。

 

「なにかいい香りがする…」

 

そんな声が聞こえた。

見れば見覚えのない生徒がそこに居た。

どうやら料理の香りに釣られたようだ。

 

「…好都合だな…」

 

ちょっと此処で意地の悪いことを考えた。

 

「入ってきていいぜ。

ちょうど料理の施策をしてるところだから、好きなだけ食べて行ってくれ。

今日の夕飯は俺の奢りだ」

 

「じゃあ、友達呼んできていいですか?」

 

「ああ、好きなだけ呼んで来い!」

 

セシリアには配膳として回ってもらう。

彼女にだけは裏方は絶対に任せられない。

そしてそれを監視させるためにシャルロットとラウラも配膳をやってもらう事にした。

材料は学園の中でも購買で売られている。

噂では、どこかに保存食だとかが山のように隠されていると聞いた。

…この学園は籠城する事も計算に入れて作られているのか?

いや、所詮は噂だろう。

 

「岸原さん!これから忙しくなる!

このまま第二だけじゃなくて第三、第四調理実習室も借りれるように手続きを頼む!

できれば、更に隣の第一、第二、第三被服室もだ!

更に全員分の夜間実習申請も!」

 

「そんなに!?

ともかく了解!」

 

そこからは本当に忙しくなった。

先ほどの生徒が友人を呼んできて、更に呼び水になった。

っつーわけで、30分も待てば…

 

「三番テーブル!オーダー頼む!」

 

「はい!」

 

「四番テーブル!カルボナーラが仕上がったぞ!」

 

「了解!持っていきます!」

 

「次!六班!仕上がったか!?」

 

「出来ました!18テーブルに持っていきます!」

 

大繁盛である。

呼び水が更なる呼び水となり、そこから鼠算のような勢いで生徒やら教師が押し寄せる。

第二、第三、第四調理実習室にて調理と接客、更にお隣の第一、第二、第三被服室でも接客をしている。

予想以上の盛況だった。

 

 

俺は基本的に裏方、クラスで出すメニューは未だに決まっていない。

今回のこのオーダーから、注文量が多かった料理を選び、レシピを渡し共有してしまえばいいだけだ。

残るは、最終的なメニューの決定と午前の部と午後の部、どちらを担当するのかを決めるか、だ。

出来れば俺は簪と学園際を見て回りたいんだがな…

なので、早速

 

『もしもし、どうしたの一夏?』

 

「簪のクラスの出し物は何だろうかと思って気になってさ」

 

『4組はクレープ屋さんだよ。今はどんなクレープを出すか思案中なの』

 

クレープか…デートの時にも時折ではあるが、そんな店にも寄っていたな。

簪がよく注文していたのは、バニラアイスクリームが乗せられたクレープだったな。

作り方を見せてもらい、俺の家で御馳走した時もあった。…簪は目を輝かせていたっけか。

 

『私は午前の部は自由時間になるかな』

 

「了解だ、じゃあ午前中は俺も時間を空けておくよ」

 

『うん!学園際、一緒に見て回ろうね!』

 

さて、話は決まったな。

 

「俺は午後の部に裏方に回らせてもらうよ。

午前中は三人に任せた、レシピの通りに作れば料理は作れるから、ちゃんと練習しておいてくれよ」

 

「「「は~い」」」

 

いい返事だ。期待してるぜ。

さて、次に配膳班と誘導班の様子を見てくるか。

 

「12番テーブル、お客さんがお帰りだ!」

 

「はい!今行きます料理長!」

 

…誰が料理長か…

 

 

 

Chifuyu View

 

放課後になってからしばらくたってから私の元に届けられた書類の多さに少しだけ辟易させられた。

調理実習室と被服室をいくつもまとめて借りてなにをしているのやら…。

岸原から届けられた書類を目に通しながら流石に気になってくる。

それにそちらの方向が騒がしい。

 

「あ、千冬さんもこれからお夕食ですか」

 

「いや、少々気になることがあってな」

 

「と、言いますと?」

 

先ほど届けられた書類の束を麻耶に見せてみる。

相変わらずこのコイツはニコニコとしたままだ。

 

「それでしたら知ってますよ。

学園祭で出すメニューを決めるという事で、現在アンケートを取っているんだそうです」

 

「…は?」

 

アンケートだけで何故騒動みたいな事になっているんだ?

 

 

 

「…………」

 

実際に来てみたが…何が起きているんだ?

見渡す限り生徒の山、中には教員も何人も姿が見えた。

 

「ポワレ、お待ちどうさまで~す!」

 

「ありがとうございました!

またのご来店を!」

 

「36番テーブルのキッシュ出来たよ!」

 

「このロールキャベツ美味しい!」

 

「あ、私は地中海風カレーお願い!」

 

「デザートに杏仁豆腐を!」

 

「カルパッチョ!?こんな本格的なメニューまで!?」

 

「こっちはカルトッチョよ!?

どこの本格的な料理人が作ってるのよ!?」

 

「あ~…オムライスなんて子供の時以来だわ…」

 

「焼き鳥には塩を少しだけかけると美味しいのよね…」

 

「オッサンかアンタは!?」

 

「この鰻重は絶品だわ…」

 

「ウソッ!?北京ダックまで作ってる!?」

 

「料理長!業火野菜炒め出来ました!」

 

「よし!32番テーブルへ!」

 

…何処の料理店だ、此処は?

しかも和風、中華、洋風とお構いなしのようだな…。

しかもすさまじい行列のようだな…。

その行列を幾つもの教室を使って補っているのか。

 

そして接客対応をしているのは一年一組の生徒の半分程。

先ほどから内線を通じて調理実習室に連絡を入れてオーダーを伝えているようだった。

…此処まで派手な演出をしていたクラスは今まで見たことがない。

 

「噂話としてですが、織斑君が考案したそうですよ」

 

「…一夏が?」

 

「いらっしゃいませぇっ!

何名様でしょうか?」

 

普段は物静かな夜竹が接客をしている。

しかもイキイキとして。

 

「あ、ああ…二人だ」

 

「でしたら第三被服室へご案内します!

こちらへどうぞ!」

 

そのまま案内された第三被服室へ来てみると…繁盛しているようだった。

 

「あ、ち~ちゃん!」

 

「束、お前まで何をしている…?」

 

「夕飯食べに来てるんだよ?

この小龍包、絶品だよ?

中にはプリプリの海老が入ってるんだから、しかも海老味噌使ってるから味が深いんだから!」

 

…これは全て一夏が作っているのか?

他の生徒とが食べている料理を見てみれば、我が家の食卓にて見覚えのあるメニューも見受けられる。

む、凰もハースも更識の姿も見受けられるな。

 

「ご注文は何にいたしますか?」

 

その声に振り向くと…ラウラに似た少女が一人。

…クロエだったか、お前は何をしているんだ。

 

 

 

「特別ウェイトレスにくーちゃんも参戦してるんだよ」

 

そのようだな…。

 

「なら、黒ビールをジョッキで二つ。

ツマミには…」

 

「申し訳ございませんが、アルコールは扱っておりません」

 

ちっ、こういうところは徹底していたか。

 

「…なら、そうだな…いや、ちょっと待て、せめてメニューの一覧を見せろ」

 

「はい、こちらになります。

当店はそれに従い、お料理をお持ちしていますので」

 

見覚えのある料理名があちこちに並んでいた。

…アレだな。

夏休み前に渡してきた『織斑家秘伝料理レポート』のコピーだな。

しかも料理の名が幾つも増え、ぱっと見には倍以上だ…。

アイツめ…どんな修行をしてきているんだ…?

 

 

「なら、そうだな…海鮮丼でも作ってもらおうか」

 

「あ、でしたら私も同じものを」

 

「かしこまりました。

少々お待ちください」

 

ちょっと待て、本当に用意するつもりなのか!?

…7分後、本当に海鮮丼が用意された。

 

「お醤油は、魚介の味を活かす為に薄口を、山葵はほんわさを使わせていただいております」

 

「おい、この予算はどこから来ているんだ」

 

「それは、企業機密です♡」

 

「企業機密だよ、ちーちゃん♡」

 

 

そうか、お前が資産を分け与えているという事か。

何処までも過保護な奴め…。

 

右隣に座っている真耶に倣い、私も海鮮丼を食べることにした。

…悔しいが、本当に美味しかった…。

 

 

 

Ichika View

 

「ありがとうございました!」

 

最後のお客さん、学園長を見送り、俺たちは一息をついた。

これにて本日の営業は終わりだ。

 

「さてと…。

それじゃあ後片付けと、オーダーの集計とメニューの選別だ」

 

「みんな、あともうひと踏ん張りだ!

頑張ろう!」

 

マドカが全員の士気をあげる。こういうところでもサポートしてくれるから本当にありがたい。

マドカがいい子でホントに良かった。

さ~て、メニューは今日中に決められるだろうし、後は裏方担当に調理方法を覚えさせるだけだな。

接客に関しても皆は問題は無かっただろうし、当日は今回とお内容にこの場所を貸し切ってしまえば…!

 

「…いけるな、コレなら…!」

 




欲望渦巻く学園

だが、欲望はゆっくりと外からも近づいていた

そう、教室の外にはすでに陰謀が

次回
IS 漆黒の雷龍
『狂勇災典 ~ 権謀 ~』

吹き飛べぇっ!

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