IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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一夏君の料理の技術をいくらかもらいたい作者です


Q.鈴ちゃんがメルクに仕込んだ『おねだり』スキルって、どんな感じですか?
P.N.『匿名希望』さん他、多くの読者の皆様より

A.今作品のメルクの外見は、『学戦都市アスタリスク』にて登場する綺凜ちゃんがモデルです。

そんな彼女が瞳をウルウルさせて上目遣いで『おねだり』なんてしたら…。
作者は悶絶します。
これが簪ちゃんなら、一夏君がノックアウトします。



Q.敵勢力を強化の予定はありますか?

A.現在、資料をまとめている途中です。
登場したら登場したで束さんにスペックデータ紹介をしてもらいます。
束さん、よろしく


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Ichika View

 

マドカとの模擬戦も終え、寮の部屋に戻ってくると

 

「お帰りなさ~い♪

ご飯にします?

お風呂にします?

それとも、わ・た・し?」

 

ビキニの上からエプロンを着用した楯無さんがそこに居た。

そして、俺はというと

 

「さてと、今日の課題を終わらせるか」

 

スルーした。

どこで聞いたっけかな、『スルーもツッコミの内』だと。

更識家でもう見慣れてしまっているんだ、今更リアクションなど起こす事も無い。

楯無さんがスルーされた事にフリーズしてしまっているようだが、それも含めてのスルーだ。

なにせリアクションをするのは俺じゃないからだ。

 

「お姉ちゃん、何をやってるのかな?」

 

そう、簪が過剰反応するからだ。

それを見てしまうと、簪が怒る。

なお、俺がリアクションをしてしまうととばっちり食らう。

理不尽だが。

 

「か、簪ちゃん、こ、これは、そ、その…」

 

「もしもし虚さん、今、お姉ちゃんが」

 

「ストーップ!ストップ!プッリーズ!」

 

簪を怒らせると、楯無さんに数日の間、口をきいてくれなくなるんだとか。

それを防ぐために、楯無さんは、簪の怒りを最低限度にして精神へのダメージを減少させようとする、キャラ崩壊を起こしてまで。

だが、簪には味方が居る、

 

「簪、虚先輩には知らせておいた、1分でこちらに来るそうだ」

 

それも非常に強い味方が

 

「お嬢様、見つけましたよ」

 

そう、虚先輩という手強い敵も居る。

それにしても…楯無先輩はどこから俺の部屋に侵入したのやら。

電子ロックの掛かった部屋に侵入するとか、忍者どころか魔術師か?

 

「一夏く~ん!簪ちゃ~ん!マドカちゃ~ん!助けて~!」

 

ビキニエプロンのまま引きずられていくようだが、それをもスルーする。

こんな事が更識家で半年近く続いていたから、もう見慣れた風景に見えてしまっている。

そしてあんな格好で外を出歩く女性を何と言うか。

言うべきではないだろうが『ド変態』だ。

本人を前にしていう気は無い。

それこそ俺の平穏が轟音を立てて崩れ落ちることだろう。

それだけは防がなくては。

それに何より面倒臭ぇ。

 

「お姉ちゃんもイタズラが好きだよねぇ」

 

「まったくだ、兄さんには簪が居るんだから自重すべきだと思う」

 

「さてと、お茶の準備をするか」

 

…二人がこんな遣り取りをしているにも関わらず俺は茶の用意。

俺のスルースキルが上昇しているのだろうか。

いや、人間誰だって見たくないものは有るだろう、聞きたくない話だってあるだろう。

それに対して多少の耐性が発生してしまっているだけだ。

俺は断じて悪くない。

 

「えっと…今日の課題は、と」

 

さっそく取り掛かるとするか。

今回のレポートは、時限爆弾の解除方法だとか。

もうやってることが専門的過ぎる、まあ、将来の可能性を考えると無理もないけどさ。

IS学園を卒業すると、IS関連の企業への就職が確約される。

代表候補や国家代表もその例だ。

だが、それも含めて例年女子生徒があちこちに出向いている。

…男の俺もそれに含まれるのかは未だに不透明だ。

今や俺も簪も日本代表だが…この先はどうなるやら。

 

「この先、どうなるんだろうなぁ…」

 

「今月には学園祭の予定が入っていたよ」

 

いや、そういう事じゃなくて。

って学園祭?

ああ…この学園にもそんなイベントが有ったな。

昨年には簪が楯無さんに招待券を貰い、のほほんさんは虚さんから招待券をもらい、俺だけハブられた記憶がある。

弾は虚さんから招待券を貰えず、血の涙を流していたな…。

俺はその日は朝から夜までバイトに明け暮れ、更には受験勉強に励んでいたな。

…その日限りは灰色の日だったか。

 

「ねえ一夏、文化祭一緒に見て回ろうよ」

 

「だな、それも楽しそうだ」

 

「なら兄さんがいない間はクラスの出し物を私が預かっておく」

 

「まだ何をやるかは決めてから、だな」

 

俺としては少しばかり不安があるんだがな。

そして、その不安は翌日に的中することになった。

 

 

 

 

 

 

「え~…文化祭の出し物に関してだが…お前らフザけているのか?」

 

クラス代表であるマドカが額に青筋を立ててクラス全体を睨んでいた。

 

教室前方のディスプレイに表示されているアイディア一覧がカオス過ぎる。

『織斑一夏によるホストクラブ』

『織斑一夏とのツイスターゲーム』

『織斑一夏とのポッキーゲーム』

『織斑一夏によるお姫様抱っこ』

『織斑一夏との…………以下省略

 

これに関しては俺としては頭が痛い。

こんなフザけた案件がクラス全体から出ている。

マドカとラウラは案が思いつかなかったらしく、用紙は白紙だった。

…もはやこのクラスの女子の欲望の坩堝となっている。

君らは俺をなんだと思っているんだ。

こんなもんやろうとしたなら、絶対に活動停止だとか言われそうだ。

しかも俺を出し物に利用するとか、俺は共有財産とかじゃないんだぞ。

休憩時間すら俺には与えないつもりか。

 

流石にこれをやるような度胸も無いし、俺には簪が居るんだ。

なので

 

「全部まとめて却下だ!」

 

すかさずマドカからのダメ押しが入った。

するとクラス全体からのブーイングの嵐だ。

 

「え~~~~~~!」

「せっかくの男子の魅力がぁぁぁっ!」

「織斑くんは学園唯一の男子生徒としての義務を全うせよ!」

「僕も一夏に色々と頼みたいことがぁっ!」

「一夏さんとの思いでをたくさんつくりたいですわぁっ!」

 

なんて声がクラス全体に響き渡る。

これを予期していたんだろう、千冬姉はこの時間帯はとっとと職員室に戻ってしまっていた。

薄情な…。

 

「山田先生、どう思われますか?」

 

少ない可能性として頼れるのはこの人だろう。

俺の心情も悟っていただきたいが

 

「え!?わ、私ですか!?そうですねぇ…ポッキーゲー…」

 

「いえ、もう結構です、黙って座っていてください」

 

この人は相変わらず雰囲気を和ませることが出来ても空気を読めない人だったな。

頭が痛い…。

しかしだ、俺にはまだ『怒る』ことが出来ない。

だから俺の代わりに怒る人間が居る。

 

「いい加減にしろ、お前ら」

 

そしてマドカがキレた。

瞬間、ラウラを除くクラスメイト全員の眉間に向けてビットの砲口が向けられていた。

何故か山田先生もその照準に加えられている。

まあ、同類と見られたんだろう。

先ほどの反応を見れば致し方ないだろうけど。

 

「春にも言った筈だな、『兄さんに色目を使う奴は許さない』、と。

まだ何か言って兄さんに迷惑をかけるのであれば…兄さん、アレ貸して」

 

「ああ、いいぞ」

 

輝夜の拡張領域からソレを取出し、マドカに渡す。

マドカもマドカでゼフィルスの右腕を部分展開し、俺が貸し出す武装を受け取る。

威力も強力無比だが、元来は威圧の為につくりだした刀剣だった。

15cm程の鉤爪状の刃がチェーンの動きに従いながら鍔から先端へ、先端から鍔へと走り廻る。

 

ドギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!

と耳にも精神にもよろしくない物騒な音と火花を起てはじめている。

 

そういったものが武器以外で表現できるものがある。

『チェーンソー』だ。

 

「マドカちゃん止めてそれやめて!」

 

「怖い!怖いから!」

 

「人に向けて使うものじゃないから!」

 

「嫌あぁぁぁぁぁぁ!

引き裂かれてミンチにされるうううぅぅぅぅっっ!」

 

ちなみに、今回マドカに貸し出したチェーンソー状の大剣は『大百足』という名が記されていたりする。

開発コンセプトは『威圧』だ。

しかし、外見的には…『チェーンソーと大剣を組み合わせたらこんな感じじゃね?』と思われる。

それにしても見てくれが本当に厨二臭ぇな、今後は展開は控え…いや、もう二度とこの剣は使うまい。

 

千冬姉以外でもクラス全体を黙らせる才能を持つ人は此処に居る。

いや、本当に助かった。

だがまあ、顔を真っ青にして黙ってしまっているだけなんだが。

それと同時に近所迷惑な学級崩壊もしてしまっているのが考え物だ。

 

 

「再度、案を出して欲しい、今度は真面目な案を、な」

 

念には念を入れて軽い脅しをやっておく。

再度配られるアンケート用紙。

その間もビットが収納される事は無かった。

ご愁傷様、と言いたいが自業自得だ。

 

今度は真面目に取り組んでもらおう。

そうでなければ『THE END』だ。

そうして再度収集するが、欲望丸出しの案はボールペンやシャーペンで消し潰され…殆どの人が白紙の状態だ。

唯一書いているのは…ラウラとマドカか。

内容は二人とも同じだ、その内容をディスプレイに表示させる。

 

「『メイド喫茶』…理由は?まずは…ラウラから答えてくれ」

 

「了解した兄上。

喫茶店のような出し物なら材料費や被服費の元でもとれる、そして休憩所も兼ねられる為、そう思ったのでメイド喫茶を提案してみた。

それに、我がシュヴァルツェア・ハーゼでもこのような衣装が世の中に存在すると知った際にはとても人気になっていたんだ」

 

「…情報元は?」

 

「クラリッサだ」

 

ハルフォーフ副隊長…!ラウラをここまで洗脳していたのか…!

また頭が痛くなってきた。

早速出てきた頭痛は、頭痛薬と精神安定剤をかみ砕いてから飲み込んでごまかす。

 

「次、マドカ」

 

「ラウラから、その時のシュヴァルツェア・ハーゼの写真を見せてもらった時の写真を見せてもらったのを思い出したんだ!

それで…姉さんにも似合いそうだと思って!」

 

この場に千冬姉が居なくて良かった。

居れば拳骨10発では済まされないだろう。

…むしろ今度はマドカが欲望を剥き出しにしていないか?

いや、詮索は辞めておこう。

 

「織斑先生がメイド服…」

「やだ、凄い似合いそう…」

「暴言毒舌メイド…」

「踏んでほしい、むしろ罵ってほしい…」

 

…弾を上回る変態がそこに蠢いていた

 

ジャッコン!

 

そんな音がしてクラスメイト全員の頭部にビットの砲口が押し付けられる。

ちなみに今度は後頭部側だ。

例の如く、山田先生にもそれは向けられている。

ご愁傷様。

 

「姉さんを侮辱したのは誰だ?」

 

「おい、お前も似たようなもんだろ」

 

軽くチョップを入れておく。

俺からのツッコミはそれだけだ。

そして今度は妙な視線が俺に向けられる。

そして今度は…

 

「なら織斑君は執事!?」

「燕尾服の執事!」

「やだ、奉仕されたい」

「むしろ毒舌暴言執事でもいい!」

 

ジャッキン!

 

今度は俺の番だった。

拡張領域に入れておいた兵装を展開し、女子生徒達の頭上に掲げた。

これが輝夜の便利なところだ。

機体を展開せずとも武器だけを部分展開としてコールすることも可能だった。

それを知ったのは数日前だが。

そして今度俺が取り出したのは、マドカに貸し出した大剣と似たような構造の大鎌だったりする。

こちらの名は『首削』だ

 

「「…で?」」

 

「メ、メイド喫茶にしよう!」

「メイド服なら私は縫えるよ!?」

「りょ、料理も考えないと!」

「飲み物も用意!ほら、お茶とジュースをメインにして!」

 

凄まじい勢いで決定していく。

話がまとまってきたので、ビットと剣を拡張領域にすべて戻す。

今後も酷似した状況になったら同じ手を使うのもいいかもしれな。、

 

恐怖政治万歳。

 

…思想が既に暴君だった。

 

 

 

「それで、出し物は決まったのか?」

 

「決まりました。出し物は…食事処です」

 

当然ながら千冬姉はいぶかしげな視線を俺に突き刺してくる。

どうせ内心「無難な案を選んだものだ」とか思っているんだろうなぁ。

だがまあ、弁解くらいはしておこう。

 

「発案は俺です」

 

「……どうせ、最初は『メイド喫茶』だとか言っていたんだろう…?」

 

俺がメイド喫茶を提案したかのように言うな。

 

「冗談だ、ラウラあたりがメイド喫茶だとか言ったりしていたのだろう」

 

よくお判りで。

やっぱり頭を抱えていた。

誰だってそうなるよな、現役軍人のラウラがそんな突拍子も無い発言をしているだなんて。

そしてその原因となりうる人物を知っているとなると殊更に頭が痛いよな。

 

「一応訊いておくが…ハルフォーフが原因なんだな」

 

「その通りです、クラリッサ・ハルフォーフ副隊長が原因です…」

 

言い当てられるよな、やっぱり。

あの海向こうのヲタクのことを考えると俺だって頭が痛い。

しかもその内容を部隊のみんなに一環の知識として広めようとするから殊更にタチが悪い。

一学期の時点で洗脳が行きわたっていた。

夏休みに訪れると俺を『お兄様』呼ばわりさせるにまで至っていた。

 

「流石に女子ばかりのところでメイド喫茶なんぞ需要は無いだろう。

食事処にして正解だな、しかし…外見は和風のくせにメニューが洋風じみているものもあるようだな」

 

「色々とメニューは候補があるけどこれから絞っていくよ」

 

「まあ、良かろう、準備をしっかりとやっておけよ」

 

「了解です」

 

さて、出し物が決まって、これからやる事と言えば、衣装の準備だった。

メイド服は流石に却下、セシリアがイギリスに控えさせている侍女がそれらしい今回使えそうな衣装をいくらか抱えているとのことでから少し用意したり、衣装店に借りたりするが、数が間に合わない。

なので必要な布や生地を男子の俺が本島にわたって購入する算段になっている。

そして後日、メニューを決めるためにも野菜だの肉だのも使うから、それの購入もすることになる。

 

「で、俺がやることは生地の購入だけなんだな」

 

「仕方ないよ、女の子にとって3サイズを知られるのは恥ずかしい事だから」

 

此処は男の俺とは感覚が違うみたいだな。

俺は自分の服のサイズだろうが靴のサイズだろうが知られるのは別に構わない。

簪にそんな事を聞こうものなら…例のモードになりそうだから辞めておこう。

今は頼まれた生地を購入し、学園の事務室に送っておくのが最優先だ。

生地の種類のよりけりは、今回同行してくれている簪にいろいろと尋ねてみるのがいいだろう。

男の俺が入れない場所もあるかもしれないし。

そういう所は簪に頼むしかなさそうだ。

 

「じゃあ、出発!」

 

「ああ、しっかりと掴まっておいてくれよ!」

 

久々にバイクの二人乗りで本当に向かう事にする。

こういう時間は…本当に心地いいな….

ずっと続いてくれればとも思うが、生憎と永遠など存在しないのが世の常識だ。

20分程で大橋を渡り切り、目的地のレゾナンスに到着する。

それと一緒に金子も必要になるので、今回ばかりは厳馬師範からもらった口座から引き出そうとしたのだが…。

 

「なんだ、コレ…」

 

師範からいただいた金額が100000000円。

すなわち一億円。

臨海学校の少し前に指輪を購入したから、金額としては99500000円

九千九百五十万程だった、そこまでは記憶している。

なのに…一億円増えている(・・・・・・・・)

どっから湧いた、この不審な金銭。

…後日、師範に連絡を入れよう、そうしよう。

 




学園祭を目前にして皆、力が入る

だが、願は欲望へと変化する

そして学園は欲望の坩堝へと変わっていく。

次回
IS 漆黒の雷龍
『狂勇災典 ~ 坩堝 ~』

今回ばかりは後悔させますよ

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