IS 漆黒の雷龍   作:レインスカイ

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今月は原作小説だけでなくコミック(小学館より)も発売されるそうですよ。
私は仕事の都合で購入が遅れますが


そして今回もメッセージにて質問が来たので

Q.ブラコンなキャラって『メルク』『ラウラ』『鈴』『マドカ』が例として挙がりますが、誰をブラコンウイルスに感染させるのでしょうか?

A.それはまあ…先のお楽しみという事で。
この作品では楯無さんも色々と面倒を見てくれてますから、彼女もブラコンかも…。
同じ理由で束さんも。
千冬さん?
あの人は元祖ブラコンで…
おや?どうされました織斑先生?
釘バットなんて振りかぶってギャアアァァァァッ!?


狂勇災典 ~ 旋戦 ~

Melk View

 

「参ります!」

 

今日も今日とてお兄さんから直々に剣術の特訓つけてもらう。

お兄さんの太刀筋はとにもかくにも速い。

ときには目で捉えきれない速さにまで達している。

織斑先生との対戦の最中では、それこそ人間の限界にまで至っているのではないのかと疑いたくなった瞬間も垣間見た。

ラウラさん曰く、AICでも止められない速さ。

その速さには私はまだ至っていない。

ISでもそう。

お兄さんの機体である『輝夜』は常識外れの速さ。

だからだろう、この人は私にとって『兄』でもあり、憧れの人。

 

「穿月!」

 

ギャギィッ!

 

「…ほう…」

 

渾身の刺突は捌かれた。

続く填月も容易く避けられる。

幻月(げんげつ)』をはじめとして絶影流の剣技はすべてお兄さんに教えてもらい、鍛えてもらった。

狂月(くろつき)』は、お兄さんの映像を繰り返し見て習得した。

 

一生懸命に修行をして、先日には鈴さにもIS同士での模擬戦で勝利した。

お兄さんにそれを伝えると少しばかり驚かせることができたのがうれしかった。

それでも、お兄さんの実力には遥かに及ばない。

私だってイタリアでは必死に訓練をしてきた。

国家代表候補性になれるようにも、そして専用機所有を目指して頑張った。

そこに慢心なんて欠片も無い。

けど、お兄さんは私よりもさらに先へと歩んでいく。

前を目指して歩みながらも、隣にいる簪さん、そしてその後方から必死に歩んでいく私たちにも気を配ってくれている。

私からすればお兄さんは…織斑先生以上の太陽です。

でもお兄さんはそういった点でも驕らない。

織斑先生が太陽なら、自分は闇夜に浮かぶ朧月だと言っていた。

センチメンタルというかロマンチックな表現ですけど、もっと自信を持ってほしいところ。

でも、それは驕りの始まりだとか。

 

「こっちもいくわよ!」

 

お兄さんの背後から今度は鈴さんが突っ込んでくる。

お兄さんの弟子は、今や私一人だけじゃない。

あくまでも自称ですけど、鈴さんも弟子入りをしている。

 

「やれやれ、二人同時に相手か。

出来ないことはないだろうけど、少しきついな」

 

そういいながらもお兄さんは、右手の刀と左手のナイフ、さらには蹴り技を編み込ませ、私たち二人の二刀流を捌ききる。

もう尋常じゃないですよ。

 

鏡月(きょうげつ)!」

 

昇月(のぼりづき)!」

 

私の二刀と鈴さんの回し蹴りが同時にお兄さんに直撃…しなかった。

 

「絶影流中伝、『双月(そうげつ)』」

 

私の左右からの斬撃に対し、お兄さんは下段から掬いあげるように刀を振るい、そのまま振り下ろす。

その二閃で私の攻撃は捌かれるだけでなく、剣を弾き飛ばされた。

そして次の瞬間

 

「昇月!」

 

鈴さんの蹴りに対し、同じ技をぶつける。

けど、体重差で鈴さんがそのまま吹き飛ばされる。

二人がかりででもコレですか!?

 

「二人ともいい線いってるじゃないか。

模擬戦の後に連携訓練でも積んだのか?

見事なコンビネーションだ」

 

「そのコンビネーションを崩した張本人に言われても皮肉にしか感じ取れないんだけど?」

 

「ですよねぇ…」

 

「正直、危なかったぞ。

ついつい本気を出さざるを得なかった。

だからこちらも…本気で行くぞ」

 

背筋に寒気が走る。

お兄さんが本気を出す瞬間はそんなに回数が多かったわけじゃない。

命がけの作戦の時にはそれこそ向こう見ずな瞬間になる場合がありますけど、生身の戦闘において本気を見た経験は…ただの一度だけ。

先の織斑先生との決闘の時だった。

私たち小娘相手に本気になるなんて大人げないですよ!?

 

「どうした?かかってこないのか?」

 

「り…降参(リザイン)です…」

 

「…同じく…」

 

本気のお兄さん相手に私たちでは太刀打ちできる自信が無いです…。

 

 

 

Ichika View

 

「お疲れ様、一夏」

 

「ありがとな、簪」

 

屋上庭園の一角にあるボックス席に座り、軽く汗を拭う。

ここの所、毎日メルクと鈴が剣術指南を依頼してくる。

クラス対抗戦ももうすぐあるのだが、そちらの訓練もこなしているらしい。

対抗戦までに充分に疲れをとれるようには言っているものの、この二人は剣術の特訓をしているようだった。

俺は弟子をとるつもりは無いんだがなぁ…。

最初はメルク、今では鈴も一緒になっている。

二人とも剣技だけでなく蹴り技も編み込んでいるから、ここしばらくは相手をするのも結構大変だったりする。

とはいえ、俺もラウラを相手に剣の訓練を積んでいる。

マドカと簪はそんな俺たちを見物している事もある。

こちらの二人と手、射撃、砲撃、機動などの訓練は欠かしてはいないようだが。

俺もそちらの訓練に混ざり、同種の訓練を積んでいる。

その際には楯無さんも混ざってくるのがお約束である。

 

「あの二人、どう?」

 

「単独で戦う時よりも、二人でコンビを組んだ時のほうが実力が爆発的に伸びるタイプだな。

さっきのは少しきつかった」

 

簪特製の卵サンドを一口齧る。

うん、胡椒がほどよいアクセントになっている。

美味い。

 

鈴とメルクもサンドウィッチを頬張っている。

今日の昼はこのままこの屋上庭園で過ごすか。

 

「と、思っていたんだけどな」

 

階段からは大勢の足音が聞こえてくる。

やれやれまたか、そう呆れながらも俺は二つ目のサンドウィッチを摘み、その半分を口の中に放り込む。

 

「今日も頑張ってね兄さん」

 

「そうするよ」

 

今日も今日とて東奔西走、全力疾走の日々はまだまだ終わりが見えてこないようだ。

ため息を零し、サンドウィッチの残りを口に放り込む。

それと同時に俺は屋上から飛び降りるのだった。

ゲッ、下で待ち伏せしてる連中まで居るみたいだ。

 

「こなくそ!」

 

木々の枝を掴み、飛び降りる軌道を捻じ曲げ、開きっぱなしになっている窓から二年生の教室へと飛び込んだ。

ったく面倒な連中だ…!

 

 

 

 

Madoka View

 

「兄さんの日常は相変わらずみたいだな」

 

一学期もそうだったけど、兄さんは普段から走り回っている。

本人が望んでそうやっているわけじゃない。

至って不可抗力だ。

今は…あ、窓の珊を足場に校舎の壁面を走って上ってる。

私でもできないな、アレ。

向こう側の校舎の屋上にも待ち伏せがいるのに気付いたのか、途中で走るのを辞めて職員室の窓から飛び込んでいく。

 

「うわぁ、相変わらずねぇ…」

 

「以前は私を担いで食堂の窓から飛び降りた事もありましたよ…」

 

「それはまたご愁傷様…」

 

兄さんはこの生活には不満とかありそうだなぁ…特にこういう風に追いかけてくる女子生徒とか。

しかも相手が丸腰だから刀を振るうわけにもいかず、ナイフも使えない、そして当然だけどISも展開は許可されていないから、走って逃げ回るしかないのだろう。

もう本当に…ご愁傷様…。

 

 

 

数日後

クラス対抗戦当日が来た。

1組のクラス代表は私

2組は鈴。

3組はメルク。

4組は簪。

5組は…誰?

 

トーナメント制の今回の対戦に於いても、くじ引きによって相手が決まる。

私の最初の対戦相手は…メルクか…。

すばしっこいんだよな、コイツ。

その次の対戦としては、鈴と5組の代表。

簪はシード枠に入ったようだ。

 

「最初に戦うのはメルクか。

対抗策は考えているのか、マドカ?」

 

「とにもかくにも逃げ場すら残さないように撃ちまくる!」

 

BT適正オーバーSSSランクの戦い方を見せてやる!

 

タッグマッチトーナメントでの借りを返してやる!

やられたからには倍返しだ!

 

 

 

Melk View

 

向かい側のピットでマドカちゃんがすっごいやる気になってるのが見えます。

いやぁ、なんかバイザー越しにでもものすごい視線を感じるのは気のせいでしょうか?

100m以上は離れているのにも拘らず、視線が合ってますよね…?

 

「…うん、たぶん気のせいです」

 

そう思いながらもテンペスタ・ミーティオを展開し、アリーナの指定位置にまで進む。

さてと、それじゃあ始めましょうか。

両手にブレードを抜刀。

右手には順手に、左手には逆手に握る。

絶影流の構え。

 

対するマドカさんは右手にライフル、左手には大型のブレード形態である『祈星』を展開させている。

 

「全力で行くぞ」

 

「勿論です。

絶影流二代目、メルク・ハース!

最速で…参ります!」

 

いつものように名乗りを上げた直後にブザーが鳴る。

試合開始の合図。

それと同時にお互いの遠距離攻撃が始まる。

マドカちゃんは右手のライフルによる射撃、さらには小手調べと言わんばかりにビットはまだ6基しか出していない。

けれど、それでは私に容易に回避されることを悟ってか一気に数が増える。

タッグマッチトーナメントでは最大数は48基。

けれど、今回はさらに数が増えている。

 

「84基…!?」

 

以前のように隊列を組んでいるかのような動きが見て取れる。

ただし、速度はあのころよりも上昇している。

ブレードを収納し、ライフルを展開。

射撃攻撃は

 

「光学兵器は通用しないよ」

 

「…みたいですね」

 

私の射撃をことごとく受け止めている数基のビット。

アレが光学射撃攻撃をすべて無効化しているようだった。

…なら!

 

「『舞星』!」

 

スラスターに搭載されているブーメラン型武装を一斉に射出。

今の私に操れる最大数は16基。

マドカちゃんに比べればまだまだ。

それでも、このすべてを防御に回せば!

 

 

 

Ichika View

 

「甘いな、メルク」

 

舞星をすべて防衛用に使用しているようだが、それでマドカの射撃が封じられるわけでもない。

いくら楯を構えたところで、マドカの射撃には隙が無い。

凄まじい数の砲口がレーザーを射出し、テンペスタ・ミーティオに直撃する。

これ以上は見なくても結果は明白だろう。

っつーか俺がこれ以上は耐えられそうにない。

 

「しめて…4分15秒か…」

 

発作が起きる直前だった。

輝夜のモニターを開き確認してみる。

以前は5秒も正気を保てなかったが、ずいぶんと成長しているようだ。

 

『テンペスタ・ミーティオ シールドエネルギーエンプティ

勝者 織斑マドカ』

 

やはりというべきか、勝利したのはマドカのようだ。

これにてタッグマッチトーナメントでの雪辱を晴らしたのだろう。

 

「たっだいま~~!」

 

「負けちゃいました~!」

 

二人まとめてこちらのピットに飛び込み、俺に飛びついてくるのだった。

そんな事になればどうなるか

 

「い~ち~か~?」

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

 

いつもの通りだった。

だから俺が何をした?

そし更には

 

「そこの男子生徒、並びにその婚約者と義妹ども、そういう事は余所でやれ。

凰、お前は影に隠れていないで機体を展開させておけ」

 

「…バレてた…」

 

鈴、お前もか…。

もののついでに言うと…

 

「ラウラ、お前はドアの外で何をしている」

 

「ッ!?」

 

気配で完全にバレているぞ。

やれやれ、これにていつもの面々が全員集合か?

 

「だから痛い痛い痛い痛い痛い」

 

だから俺が何をした?

ともかくだ、メルクは敗退、マドカは次の対戦まで時間がある。

簪はさらにその後だ。

っつーかこれ以上の混沌(カオス)は俺としてはお断りだ。

なので

三十六計(毎度お馴染み)

 

逃げるにしかず(逃遁)!」

 

「ヒアアアァァァァッッ!!??」

 

簪を肩に担いで逃げ出すことにした。

事後処理は頼んだぜ千冬姉!

 

 

 

 

Kanzashi View

 

一夏の腕力と脚力は相変わらず凄かった。

人を一人担いでいるのにもか関わらず、すごい速度で走っているみたいだった。

普段から女子生徒に追い掛け回されているからだとは思うけど。

 

「やぁれやれ、あんな風に飛びついてくるとはな」

 

「それだけ慕われているんだと思うよ」

 

アリーナから出て少し離れた木陰で、肩からおろしてもらってからすぐに私は一夏の首に手を回し、キスをした。

慕われるのはいいけど、私の目の前であんな風にされたら恋人としても婚約者としてもちょっとだけ腹立たしいもん。

当たり前だけど、浮気なんて私は許さないからね!

 

「おいおい、どうしたんだ?」

 

「さあ、どうしたんだろうね?」

 

一夏は少し困ったように眉を歪めた。

けど、察しがついたようで、今度は一夏からキスをしてくれる。

そのまま抱きしめられた。

暖かい。

純粋にそう思う。

 

「大丈夫だ、俺には簪だけだから」

 

「信じていいんだよね?」

 

「当然」

 

「じゃあ、態度で示して」

 

我ながらちょっと意地悪だとは思う。

けど、しかりとメリハリをつけてほしいのも確かな話。

 

「判ったよ」

 

そのままもう一度、私達は唇を重ねた。

 

 

 

 

Lingyin View

 

やぁれやれ。

とんでもない現場を目撃しちゃったわ。

そういう事は屋外とかじゃなくて寮の部屋の中でやりなさいよね。

兄貴と簪がそういう関係なのは学園全体で周知の事実。

だから咎められる人なんてそれこそ千冬さんくらいしか居ない。

 

「どうやって呼んだものだかねぇ…」

 

アタシの試合も終わり、この後はアタシと簪の試合が待っている。

それも15分後に。

だから兄貴達が走った行ったであろう方向をダメ元で探しに行ったら偶然発見。

そしたら、夫婦仲睦まじくしていらっしゃる。

だけど人目を考えなさいっての。

 

「うわ、久々に見た…」

 

女子生徒が壁を殴っている光景がここにもまた一つ。

 

織斑君と更識さんの日本代表生コンビ発見!

相っ変わらず仲がいいよね、あの二人

爆ぜろリア充!

(至極今更だけど)あの二人婚約してた!

人目を考えろ!

爆裂しろリア充ゥゥゥゥッッ!!!!

絶叫or壁殴り←今ココ

 

 

って、アレ?

あの女子って、さっきまでアタシと対戦してた5組のクラス代表じゃなかったっけ?

名前は…忘れた、もういいや。

ともかく…兄貴と簪を呼んでこないといけないんだけど…どうしよ…?




クラス対抗戦も後半に

その結果は如何様になるのか

ここで甲龍と天羅がぶつかりあう

ともに彼を慕う者同士

正々堂々とぶつかりあう

次回
IS 漆黒の雷龍
『狂勇災典 ~ 風帝 ~』

ちょっ!?ソレ反則過ぎぃっ!!!!

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