ゲーマー兄妹はVRMMORPGを始めたそうです。   作:EDFストーム1

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今回はキリトのあのシーンです。

それでは第二十四話です、どうぞ!



ビーター

時間は少し戻りキバオウ達の発言によりプレイヤー達全員がお互いを疑い始めたころ。

キリトは、キバオウ達の発言でとても焦り始めていた

 

(まずい。この流れははまずい)

 

俺は密かに息を詰めた。俺1人が糾弾されようと罵倒されようが問題ない。

しかし、空達を始めとする他のβテスター達への敵意が暴走するような状況だけは何としても避けねばならない。だが....どうすれば......

一瞬俯き、薄黒い床を見た俺の視界に、いまだ表示されたままのシステムメッセージが鮮やかに浮き上がった。獲得経験値とコル、そしてアイテム。

 

そして俺の脳に一つのアイディアが浮かんだ。続けて、巨大な葛藤が体を揺さぶる。この選択肢を取れば、俺は今後どのような目に遭うか解らない。かつて危惧したように、闇討ちで殺される危険すらある。

しかし、少なくとも空達へ向けられる敵意は多少だが減らせるかもしれない

 

 空達の方を見ると何かごそごそ話し合っている。あの空達のことだ、俺なんかよりもきっともっと先にこうなる事を予測していて作戦でも立てていたのだろう。だがお前らはこれからの攻略には必ず必要不可欠な存在になる奴らだ、ここでお前らに糾弾や罵倒を降り注がせるわけにはいかない。あいつらが行動する前に俺がやってやる!後は任せたぞ空。

 そして俺は考えついたアイディアを行動に移す。

 

 

「くはははははは!くはははははは!!!」

 

キリトの笑い声に全プレイヤーが視線を向ける。

 

「元βテスターだって?俺をあんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」

 

俺は出来る限りのあくどい顔でキバオウの方を向いた。

 

「な、なんやと!」

「SAOのβテストに当選した1000人の内のほとんどがレベリングのやり方も知らない初心者だったよ。今のあんたら方がまだましさ、でも俺はあんな奴らとは違う。俺はβテストの時に「 」と決闘して気に入られて一緒に行動していたのさ。「 」と♠♥♦♣達と一緒に行動してたから他の奴らが到達出来なかった層まで上った。刀スキルを知ってたのはずっと上の層で刀を使うモンスターと散々戦ったからだ。そして製品版には「 」と♠♥♦♣達は参加していない、だからこの情報は俺しか知らないのも当然だ。他にもいろいろ知っているぜ、情報屋なんか問題にならないくらいな」

 

キリトの言葉に誰もが愕然とする。

 

「な、なんやそれ.....そんなんβテスターどころやないやんか.....もうチートやチーターやんそんなん!!」

「そうだそうだー!チーターだ!」

「ベーターでチーター、だからビーターだ!」

 

まわりのプレイヤー達もキリトに怒りを向ける。

 

「ビーター....良い呼び名だな、それ。

 そうだ、俺はビーターだ。これからは元ベーターごときと一緒にしないでくれ。

 あと二層のアクティベートは俺があいといてやるよ。この上の出口から主街区まで少しフィールドを歩くから、ついてくるなら初見のモンスターに殺される覚悟しとけよ」

 

全プレイヤーが絶句している中、キリトは話しながら先ほど手に入れたコートオブミッドナイトを装備して不適に笑い第二層へと続く扉へ歩き始める。

歩き出した俺をアスナとエギル、空と白、テトにステフがじっと見つめてきた。

六人とも、何もかも解っている、という眼をしていた。

俺にとってはそれが救いだった。

 

(あの野郎....まさか俺達がやろうとした事を1人でするとはな)

 

キリトを見つめながら空は思う。空達が行うはずだった作戦と完璧に同じとまではいかなかったがほとんど同じ事をキリトはやったのだ。

 

(にぃ....どうする?)

(そりゃ追いかけるに決まってんだろ、それに少し話したいこともあるしな。おいテト、ステフお前らも行くぞ)

 

小声で会話を交わし俺達はキリトを追いかけ、その光景を目にしたアスナも空達に続きキリトを追いかけた。

そしてキリトは第二層へと続く扉の前に立ち扉を開き奥にある螺旋階段を登って行こうとするが

 

「待って」

 

なんとか追いついたアスナがキリトに待ったを掛ける。

 

「あなた、戦闘中に私の名前読んだでしょ」

「ごめん、呼び捨てにして......それとも、読み方違った?」

「読み方....?私、あなたに名前教えてないし、あなたのも教わってないでしょう?何処で知ったのよ」

 

俺は一瞬驚きながらもアスナはこれがパーティを組むのが初めてだということを思い出しアスナに答える。

 

「あぁ...そうえばこれがパーティ初めてって言ってたか。

 ここら辺に自分の以外に追加でHPゲージが見えるだろ?その下に、なにか書いてないか?」

 

そうキリトに言われてアスナは左上あたりに表示されているアイコンを確認する。

 

「き......り......と。キリト?これが、あなたの名前?あとこの下のは?」

「あぁそうだ、その下のは同じパーティのあいつらだ」

「なぁんだ....こんなところに、ずっと書いてあったのね」

 

アスナは口に手を添えてくすくすと笑う。

 

「君は強くなれる。剣技だけじゃなく、もっとずっと大きくて貴重な強さを身につけられる。だから....もしいつか、誰か信頼できる人にギルドに誘われたら、断るなよ。ソロプレイには絶対的な限界があるから....」

「なら、あなたは.....?」

 

俺はその問いには答えず、パーティ画面を開きパーティを解散させる。

そして俺はこんどこそ扉の奥にある螺旋階段を登るため前に進む。

 

 

 

 

 狭い螺旋階段を登って行くとまた大きな扉が現れる。

 そっと開けると、いきなり途轍もない絶景が眼に飛び込んだ。

扉の出口は急角度の断崖の中腹に設けられていたのだ。狭いテラス状の下り階段が岩肌を沿って左に伸びているが、俺はまず第二層の全景をぐるりを一望した。

 様々な地形が複合していた第一層と異なり、第二層はテーブル状の岩山が端から端まで連なっている。山の上部は柔らかそうな緑の草に覆われ、そこを大型の野牛系モンスターがのんびり生息している。

 第二層の主街区である”ウルバス”は、眼下のテーブルマウンテンを丸ごとひとつ掘り抜いたような街だ。俺がここから階段を下り、先刻言ったようにフィールドを一キロばかり踏破して、ウルバルの中央広場にある転移門に触れればその施設がアクティベートされ、第一層のはじまりの街にある転移門と連結される。

 万が一、俺が本当に道中で死んでしまっても、あるいはここでぼんやり座ったままでいても、ボス消滅後から二時間後には自動的に転移門が開く。しかし今日、最初の攻略部隊がボスに挑むことはもうはじまりの街にまで伝わっているだろう。今頃は転移門の前では多くのプレイヤー達が、青いワープゲートが出現する瞬間を待ち構えているだろう。だがβテストと同じく二時間後に自動的に転移門が開くかどうかは解らないが....まぁβテスト通りなら彼らのために早いところウルバスまで行かなくてはならないが.....もう少しだけ、ここで絶景を楽しむくらいの権利は俺にもあろう。

 

俺は数歩前に出ると、岩肌から伸びるテラスの端に腰を下ろした。

連なる岩山の彼方、アインクラッドの外周開口部から、青い空がほんの少しだけ見えた。

何分、そのままでいただろうか。やがて背後の螺旋階段を上がってくる足音が聞こえた。俺は振り向かずにいると足音の主達は扉を出た所でしばし立ち止まりこちらに向かってくる。

 

「......来るな、って言ったのに」

 

俺がそう呟くと、欄入者が不満な声で答えた。

 

「ちげーよ。お前が言ったのは死ぬ覚悟があるなら来いって言ったんだ」

 

「.......そうだっけ、ごめん」

 

「それにな、あんな話し終わった後じゃ結局俺達だってビーター扱いだっつーの。まぁお前よりかは、まだましだろうけだどな。俺達はビーター扱いだけだがお前はあそこまで言っちまったからな.....」

 

あそこまで言ったらもう後戻りができないのは先に作戦を立てていた空達には解る。

このソードアートオンラインはユーザー名が表示されないので第一層攻略に集まったプレイヤー達以外で容姿を知る者は少ない。装備などで変装すればほとんどバレる事は無いだろうが.....

 

「ま、しょうがないだろ。あの空気を変えるにはああする他以外なかっただろ。それにお前らだって俺なんかよりも先にこうなるって気がついてたんだろ?」

 

「まぁな、お前これからどうすんだ?ずっとソロでやってくつもりか?」

 

「あぁ、お前らと組むまではずっとソロだったんだ、たいしたことじゃないさ。空達こそこれからどうすんだ?どっかのギルドにでも入るのか?」

 

「特に戦力が不足してるわけでもなし、今のところはギルドに入る予定もないな。俺達もこのまま四人でやってくつもりだ....まぁパーティが増えるかもしれないけどな」

 

ディスボードの仲間達が見つかったらステフ同様パーティに入れるから、今よりも増える可能性はある。もし大人数見つかったらみんなでギルドを作るのも悪くないか、など考える空。

 

「......そうか」

 

本音としてはこいつらがどこかのギルドに入って攻略メンバー達を引っ張って行く存在になって欲しかったが空達がギルドなんかに入ったらまわりのギルドメンバーが脚を引っ張ってしまうか。

そんなことを考えながらキリトは一分程の沈黙する。

 

「ま、今はとりあえずさっさと転移門のアクティベート済ませちまおうぜ、うちのテトも早く行きたくてうずうずしてるからよ。どうせはじまりの街にある転移門の前に大勢のプレイヤーが待ってるだろうしな。道のりも同じだしウルバルにつくまで、よろしくな」

 

続いた沈黙を空が断ち切り俺も大きく息をして立ち上がる。ここからウルバルまでは約1Kだがこの面子ならモンスターなどいても進行速度は落ちないだろう、しせいぜい20分もあれば余裕で着くだろう。

俺もテラスから腰を上げて立ち上がり、第二層の主街区ウルバスの転移門をアクティベートするために俺達は前に歩き始めた。

 

 

 

 




どうも、プログレッシブの存在をつい最近まで知らなかったストーム1です。
原作で第一層とかやってないから資料はアニメだけだと思ってたらこんなとこで書いてあったんですね....
これ読んでたせいで更新めっちゃ遅れました....orz
てかこの回書くのむちゃくちゃしんどかったです、今後の展開が決まる重要シーンですし慎重に書かないといけなかったし(^^;)

それではまた次回、お会いしましょう!

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