転生したのに最強じゃないってどう言うことだってばよ!   作:オルクス001

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タイマン

 刀を下段に構え、ヴァルドを見据える。

 

「オラァァァァァァアアアアア!」

 

 雄叫びをあげ、突進してくる彼。

 ちょっ! 無理! 怖い!

 振り下ろされるバットを横に飛んで回避。

 俺がさっきまでいた場所にはヒビが入っている。

 マジかよ……。

 

「⁉︎」

 

 気が散っていた俺は、横からの攻撃を避けることが出来ず、刀で防いだ。

 

「グッ⁉︎」

 

 しかし、完全に防ぐことなどできるはずもなく、俺の軽い体は吹っ飛ばされた。

 これじゃ防御の意味が無いな。受け流しとか俺出来んのか?

 再び襲いかかるバットを刀で受け流す。

 素人感満載だが、なんとか使えそうだ。

 その後も右へ左へ、とにかく避ける、流す。

 

「おいおい! 避けてばっかりじゃ勝てねぇぞ?」

「んなこたぁわかってる」

「おい、もしかして余裕こいてんのかぁ? クソがぁ!」

 

 そう言うと、バットを地面に叩きつけた。

 そして、一直線に衝撃波のようなものが向かってくる。

 そろそろやばいわ。主に俺の精神が。早々に決着をつけないと。

 俺は彼に突進して、袈裟懸けに斬り下ろす。

 しかし、バットで防がれ弾き返された。

 その瞬間、俺の腹部がガラ空きになる。

 慌てて体制を立て直そうとするが、遅かった。

 

「オラァ!」

「ぶるぁ⁉︎」

 

 腹に強烈な蹴りをくらい、文字通り宙を浮く。

 うげぇ、吐きそう。

 ロイド達が何か言っているが、意識がぼやけて聞き取れない。

 本当にどうにかしないと、俺が死ぬ。マジで。何か打開策が欲しい。

 ……一発逆転の技……ロイド見たいな……!

 

「いいこと思いついた。俺マジ天才」

 

 策は思いついた。威力……いや、成功するかだな。

 

「おい、これで終わりじゃないだろ?」

「ああ、もちろん」

 

 よろよろと立ち上がると、俺はヴァルドを見据え、再び刀を構える。

 

「風の傷!」

 

 そう叫びながら刀をその場で振り下ろすと、振り下ろした場所から3本の衝撃波が、彼を襲う。

 彼は腕をクロスして、衝撃に構える。が、衝撃波は彼の予想に反して、身体を斬った。

 もちろん俺はそんな技使えない。だが、アーツで再現することはできる。やっぱ俺天才!

 

「少しはやるな。だが、これくらいじゃ俺は凌ねぇぜ?」

 

 成功はしたものの、威力は望めないか。なら……。

 再び刀を振り下ろし、同時に走る。

 

「反撃開始だ! クソが!」

 

 風の傷で横に回避したところを斬る。

 しかし、またもバットで弾かれ懐に隙ができる。

 

「同じ手は効かないぜ?」

 

 俺は拳を握る彼にアイシクルエッジを繰り出し、攻撃の隙を与えないようにする。

 その全てを避け、こちらに飛びかかる彼を難なく躱し、腹部に膝蹴りを入れた。

 

「グッ!」

 

 呻き声をあげ、軽く吹っ飛ぶ。

 周りにいる奴らは、俺の膝蹴りの威力に驚いているようだ。

 それもそのはず、見た目細い俺があの巨体を蹴り飛ばしたのだから。

 まぁ、種も仕掛けも無いわけじゃ無い。

 今のは風アーツで一時的に蹴りの速度を上げ、あいつの身体を動かすまでにしたのだ。

 そんなことできるのかって? なら逆に聞こう。誰がそんな使い方ができないと決めた?

 

「チッ、なかなかやるな」

「そりゃどうも」

 

 だが、あれだけでは終わらせてくれない。

 再び間合いを詰められる。

 バックステップで距離を保とうとするが、左腕を掴まれ引き寄せられる。

 

「なっ!」

 

 俺の顔を狙うバットを彼の足元にこけるようにして躱す。

 まぁ、足元に転がった敵を彼が見逃すわけも無く。容赦ないキックが腹部を襲う。

 もうやだ。

 素早く体勢を立て直し、拳を構える。

 

「ファルコォォォォォンパァァァンチ!」

 

 炎をまとったパンチを肩あたりを狙って繰り出す。

 もちろん威力は望めない。何しろ装備のクオーツが少ないからな。

 だが、相手の体勢を崩すには十分だった。

 俺のパンチをよけるため身をひねるヴァルド。これを好機とばかりに足払いをする。

 バランスを崩し倒れこむ彼の首に刀を突きつけた。

 両者とも動かない。

 

「俺の……勝ちだ」

 

 俺は静かにそう宣言した。

 

「いいぜ。教えてやるよ」

 

 その言葉を聞くと、刀を鞘に収めロイド達の元に戻った。

 

「おお、すげぇな。意外とやるじゃん」

「どうも。あいつが手加減してなかったら死んでたけどな」

「まったく、本当に無茶をしますね」

「すまんすまん」

 

 俺の適当な謝罪にジト目で訴えるティオ。

 それを無視して、ヴァルドに事件の内容を聞いた。

 内容はテスタメンツで聞いた内容と真逆のことだった。

 先日仲間の1人が闇討ちにあったらしい。背後からスリングショットで、気絶させられたところを袋叩きだったようだ。

 双方の話を聞いた俺達は頭を抱えた。なにせどちらも同じ理由で潰し合うのだ。怪しいが嘘をついているようには見えない。

 しかも、その事件は()()()()()()()()()

 どう考えてもおかしいのだ。

 この事件を解くには、何かが足りない。決定的な何かが。

 

「あら? あなた達はこの間の」

 

 うわ、この間の記者じゃん。

 

「自己紹介がまだだったわね。私はグレイス・リンよ。気軽にお姉さんって呼んでね」

 

 呼んでね! じゃねぇよ! 記事に散々書きやがって……。

 聞けば彼女、取材でここに来ていたらしい。

 ロイドと何やら話して彼女はどこかへ行ってしまった。

 どうやらこの近くにある中華店で、おれ達が知りたがってる情報を教えてくれるらしい。

 

「行くかないだろ。見返りを要求されるにしてもまずは話を聞かないと、必要かどうかはわからないからな」

「俺もロイドに賛成だぜ」

 

 そういうわけで彼女のいる中華店に向かうことになった。


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