転生したのに最強じゃないってどう言うことだってばよ!   作:オルクス001

2 / 15
特務支援課

「そろそろ他の奴らも来るだろう」

「そうですか」

 

 そう言うとセルゲイは、そのまま何処かへ行ってしまった。

 現在俺がいるのは、警察の会議室だ。何故、そんな所に居るのかと言うと、先日、彼に連れられこのクロスベル自治区へとやって来た。その際彼は、俺に新しく発足する【特務支援課】なる部署へ勧誘をしたのだ。

 もちろん俺は、2つ返事で引き受けた。なんせ宿を提供してもらえる上、給料まで入ってくるのだから断る理由がない。

 そして、今日がその結成日。俺はこうして他のメンバーを待っているのだ。

 しばらくするとガチャッ、とドアが開き、入ってきたのは、オレンジ色のコートを羽織った赤毛の男性。

 互いに軽く自己紹介をする。

 ランディ・オルランドと名乗るこの男性の印象は、表情が柔らかく、陽気な人だ。だが、ガッチリとした身体で男らしさがありカッコイイ、と言うのが素直な感想だ。年齢は俺より結構上のようだ。

 

「すみません。どいてくれますか?」

 

 そんなことを考えていると、彼の後ろから声がした。

 慌てて彼がよけると、そこには水色の髪をした少女がいた。

 そのままこちらに会釈すると、「ティオ・プラトーです」とだけ言って席につく。

 

「……」

 

 なんとも素っ気のない奴だ。

 ランディは俺の横に座っていて、部屋は完全に静まり返っている。それは決して、心地のいい静寂ではなく、少しの物音すら気に障るような居心地の悪い静寂だった。しかし、その静寂を破るようにドアが開き、一人の女性が入ってきた。

 

「あら? 皆さん早いのね。初めまして、エリィ・マクダエルです。よろしくお願いします。」

 

 銀髪を揺らし優雅に歩く彼女は、お嬢様、と言う言葉がこれ以上ないほどに合っていた。

 

「あと一人だな」

「そのようですね」

 

 エリィは先ほどの青髪の少女の横に座り、俺の言葉に返答した。

 特務支援課は課長のセルゲイ合わせて、6人で構成されらしい。

 しばらくするとセルゲイと茶髪の青年が入ってきた。

 てか、この世界だと赤毛とか青髪とかでも違和感無いね。不思議。

 

「これで全員だな、おい自己紹介しろ」

 

 茶髪の青年はなぜか喋らない。

 

「どうした? 名前と出身だけでいい。」

 

 青年は我に返ったように、慌てて自己紹介をする。

 

「ロイド・バニングス、出身はクロスベルです。警察学校を卒業したばかりの若輩者ですがよろしくお願いします」

 

 ロイドと言う青年は、礼儀正しく挨拶をした。

 

「ランディ・オルランドだ。元は警備隊にいたんだが、まぁ今はいいだろ。よろしく頼む」

「初めまして、エリィ・マクダエルです。出身はクロスベル、よろしくお願いします」

「ティオ・プラトーです。よろしく」

 

 青髪の少女は相変わらず素っ気ない態度で自己紹介をしている。

 

「俺は、カタギリ・リンドウだ。ファミリーネームはカタギリだ。出身は……無い」

 

 セルゲイを除いた4人が、驚きの表情を向ける。

 この故郷がない設定は、なんとも恥ずかしいものだ。自業自得だと言われればそれまでなのだが……。

 

「終わったな。じゃあ早速だが、お前達には実践テストも兼ねて仕事をしてもらう。ついてこい」

 

 セルゲイは有無を言わせず歩いていく。慌ててその後ろを追いかける5人。駅前まで歩き、固く閉ざされた鉄の扉の前まで案内された。どうやらジオフロントA区と言う場所で、魔物が徘徊しているらしい。試験として、それらを倒しながら奥まで進めとのことだ。

 それと【戦術オーブメント】と言う物も渡された。最新型で通称ENIGUMA(エニグマ)と言うらしい。なんでもこのオーブメントを使って魔法を発動させるのだとか。

 最後に彼は、ロイドをリーダーに任命すると、そのまま帰って行った。どうやら正規の警察官はロイドだけのようだ。

 

「押し付けられましたね」

 

 エリィが苦笑いで言い、ロイドはため息を吐いている。

 

「そう言えば皆は何歳なのかな?見た感じ自分と同い年っぽいけど。ちなみに俺は18歳」

「私も18歳よ」

「俺は21だ。固っ苦しいのは嫌いだから、タメでいいぜ」

 

 ロイドとエリィは2歳上、ランディは5歳も上か。

 

「俺は16歳だ」

「14歳です」

 

 2歳下か。

 俺以外は何故か驚いている。

 

「えっ? 警察官は最低でも16歳だったはず……」

「私は警察官ではありません。エプスタイン財団所属で、この武器のテストも兼ねてこちらに来ました」

 

 そう言って取り出したのは魔法の杖のような物。

 

「これは導力杖(オーパルスタッフ)と言うものです」

「へぇー初めて見るな、ちなみにお前らの獲物はなんだ? 俺はこれだ」

 

 そう言ってランディが背中に担いでいたものを構える。それは【スタンハルバード】と呼ばれる物で、導力装置によって衝撃波も出せるのだとか。

 

「私はこれよ」

 

 エリィはハンドガン。射撃なら誰にも負けないらしい。

 競技用の銃を特注で頼んだらしく、とても綺麗に整備されている。

 

「俺の得物は、こいつさ」

 

 ロイドはトンファーだ。攻撃力より、制圧性や防御力に優れている警察官の武器のひとつらしい。

 

「リンドウは?」

「俺か? 俺はこれだ」

 

 俺は腰に提げた刀を抜く。

 

「刀……ですか。トンファーと同じ東方の武器ですね」

「聞いたことはあるが、見るのは初めてだぜ」

「さて、そろそろ行こうか」

「だな」

 

 ロイドの言葉で、ジオフロントA区へと入っていく。

 一体どんな敵がいるのか、楽しみだぜ! 嘘です。まじ死にたくないんで勘弁してください。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。